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同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

夕凪の街 桜の国

2007-08-11 21:45:00 | 映画-2007年

「語り継ぐこと」

 原作の『夕凪の街 桜の国』が面白かったのと、田中麗奈のファンだってコトで公開前から期待してましたよ。
 そんなわけで観てきました。

 原作を先に読んでいて、それのファンだってコトで、どうしても原作との比較になるけれど。
 原作は原作として、この映画はこの映画として良くできていると思いました。

 原作はページ数の少ないマンガということもあって、けっこう説明がなかったりして。どちらかというと淡々と語るカンジだったのだけど。
 映画の方は、そういった淡々とした惨さがなくなって、わりとベタな作りになってます。もっといえば泣きの作りを徹底しています。

 夕凪の街編は死亡フラグが立ちまくっていたし、状況説明的なセリフが多かったです。
 原作が皆実の想い・雰囲気に読者が心情を重ねていくのに対し、映画版はもっとストレートに想いを伝えていると思いました。
 正直、語り過ぎな部分がむず痒かったし、皆実と打越さんが今際の言葉を交わしていることに、ちょっとしらけた部分もなくはなかったけど。
 でも、「語り過ぎな語り」を含めて、伝えなければならないことをわかりやすくしているという、真っ直ぐな作り方は、これはこれで良かったと思います。

 桜の国編はというと。まず、田中麗奈の七波が原作っぽくて良かったな~。テラカワユスw
 んで、こちらの方はかなり原作にはなかったオリジナル要素というか、夕凪の街編も含めて、原作では分からなかった設定がきちんと回収されていました。
 たとえば、京ちゃんの存在にきちんストーリーがあったり、打越さんのその後が描かれていたりと。
 こういったオリジナル要素のおかげで、この映画全体がかなり分かりやすい内容なったと思います。
 さらに言えば、原作では七波が自分の追体験を通して、自分なりに消化しようとするのに対し。
 映画版は東子や凪生を巻き込んで、2人の生き方にも影響を与えていく。
 おかげで、よりハッピーなエンドになったように思えました。

 とまあ、以上が原作との比較だったのだけど。
 原作にも映画にも通じているのは、原爆に対する怨念とか反戦性を色濃くメッセージにしているのではなく。
 被爆後の日常を通して、彼らの日々の想いを静かに語っているということ。
 フィクションとはいえ、こうした体験を追体験する(東子と七波が広島に行ったときのように)ことで、しみじみと心にしみていったような気がします。
 確かに理屈の上では核兵器を否定することはできないし、日本が核の傘下にいるのは否定できません。
 とはいえ、唯一の被爆国の国民として、彼ら彼女らの感情を「しょうがない」で片付けてしまっていいのだろうか?
 皆実の死は「しょうがない」ものだったのか?
 そういうことを静かに問いかけてくるような、そういう作品でした。

『夕凪の街 桜の国』(映画館)
http://www.yunagi-sakura.jp/
監督:佐々部清
出演:麻生久美子、田中麗奈、他
点数:7点


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