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働く女性たち…「企業戦士のお局さま 雅子」会社への復讐 駆け込み寺居酒屋ポン吉 46話

2022-09-19 14:40:46 | 日記
働く女性たち…「企業戦士のお局さま 雅子」会社への復讐 駆け込み寺居酒屋ポン吉 46話

 JR西大路駅周辺には一流企業の本社が数社ある。どの会社も始業時間は9時なのにランジェリメーカーの「フラワー」へ向かう女性社員はなぜか?それより早い7時過ぎごろから駅やバス停から本社に向かっている。しかも早朝出勤する女性たちは若い人は少なく、いわゆるキャリアー組というのか?もう40~60歳ぐらいのベテラン女性社員が目立つ。

 この駅近くで「洋風居酒屋ポン吉」を経営しているマスターの音吉は毎朝の散歩でこれらを目撃していた。店の客の多くはこの「フラワー」の女性社員だが、この早朝出勤するメンバーには顔見知りはいなかった。その夜、音吉はフラワーの女子社員の慶子にこれらのことを聞くと慶子は、
「そうなのよ~9時出勤なのに係長や課長は早くから来て仕事をしているの…それに夜も遅いし…あれを見ていたらこの会社で出世をするなんてことを思わないわ…」
「しかし、子供や家族もいるのに…それでは家庭不和になるのでは?」
「家庭、子供?、そんなものあのお局さんらにはありません。会社のため、仕事のためと働き続けて婚期を逃がした人ばかりです…」
「そうか~高度成長期にあの会社は大きくなったが、そんな犠牲の上に成り立っているのか…しかし、それはすべてがすべてではなく中には恋愛して結婚した人もいるのでは?」
「そう、その当時は結婚して妊娠すれば一旦会社を退職するというルールがあったらしいの、そうなると出世競争から脱落するので結婚どころか恋愛をするチャンスもなかったらしいの…」

 それから暫くして慶子が上司の課長とともに店に来た、その上司は雅子さんといいフラワーに入社して30年といっていたかもう53歳ほどになると勝手に音吉は判断していた。この慶子さんは一流企業の企業戦士というより、
「疲れ果てたおばさん」
という雰囲気でこの部下の慶子とは親戚筋というので慶子には気を許していた。

 この雅子もママの幸子が気に入ったのか、それとも幸子の誘導尋問が上手いのか雅子とは気が合いよく話をしていた。幸子は雅子に、
「この店もそうだが、会社周辺では会社の幹部の方々は食事や飲み会をなさらないのですか?」
「幹部といっても私たち課長程度では責任ばかりが重くて…それにやはり若い部下とのお付き合いはなにかと気を使いますから…」
「そんなものですか?」
「はい、それにグチの一つでもいえばそれが即会社に筒抜けになります。ですから会社でも外でも企業戦士の建前ばかりで生きていますから…もうそれで30年、男女平等とかという美しい言葉に騙されて女を忘れて会社に奉仕してきました」

 そこで音吉が雅子さんに、
「毎朝早く出勤されているようだが…」
「そう、これは誰にも命令されていないが、そういう雰囲気で朝は誰よりも早く夜は誰よりも遅くというのが暗黙のルールになりました」
「しかし、それでは疲れるでしょう?」
「はい、もう私も53ですから…それでもなんとか…定年まではと頑張っています」

 こんな会話があってからはこの雅子さん、仕事をなるべく定時に終わってこのポン吉に来るようになった。しかも、朝は早朝会議や定例の早朝本社や駅前周辺の掃除以外の日は定時に出勤してきたものだから、「雅子の反逆とか雅子の復讐という」
ウワサが社内に乱れ飛んでいた。そして雅子も若い女子社員の部下を連れてこのポン吉に遊びに来ていた。その雅子は部下に、
「若いというのは最大の武器になります。それはもちろん仕事も遊びも恋愛にも通じます。その若さをすべて会社に奉仕してきた私は遊びも恋愛も知りませんでした。これは人間としては最大の不幸になります。この課の課長としてはみなさまを私のような不幸な人間にしてはいけないということに気が付いたのです。もちろん、このことで課の仕事や業績に支障がでればダメになります。しかし、我が課は私が定時出退勤してもなんら変化がなかったことになりました。つまり、無駄なことを長年してきたことを心から反省しています」

 もちろんこんな雅子の演説が部長どころか社長まで届くのには3日もかからなかった。雅子の上司の部長は吉川雅子を部屋に呼び、
「吉川課長は誰かに洗脳されたのか?」
「はい、最近、よく飲みに行っている居酒屋のマスターに「私は疲れていると指摘」されたのです。私はその言葉に目覚めて少し遅めの出勤、少し早めの退勤をしたところ化粧のノリが良くなってお洒落にも気を遣うようになりました。すると余裕なのか?世の中が広く見えるようになりました。世の中の女性は普通に遊んで恋愛をして結婚、そして子供を育てるという幸せがある。もちろん私にはそんな夢はなくなりました。
しかし、こんな普通の夢さえ叶わない企業戦士育成の我社の社風を改善したいと思い、私の首を覚悟で課の働き方改革をすることになったのです」
「そうなのか~いや、私の孫娘もこの会社に就職したいといってはいたが、私は吉川課長の出世物語を聞かしてやるとその孫娘は「そんな会社」は嫌だといって辞退していた」

 その話は部長から社長に報告されたが、社長は笑ってその問題は「お局さんらが考えることでその判断は若い女性社員がする」とだけいって吉川課長には特にお咎めはなかった。もちろんこれらは本社どころか海外の支店まで流布されて雅子は社内で時の人となっていた。その雅子と慶子がポン吉で話をしていた。
「課長…いえ、雅子おばさま、最近お綺麗ですが、何かあったのですか?」
「いえいえ、それは言えません…」
「でも…早出残業を拒否されただけで人間がそんなに簡単に元気になるというより綺麗になるのはガッテンがいきません」
「慶子さんも恋をすればわかります…」
「えぇぇぇ~おばさまが…恋…相手は誰なの?」
「……………」
「わかった…!、この店の音吉さんなの?、いったいいつの間に…?…」
「いぇね~、この店のママさんか音吉さんを一晩貸してくれるというので…つい、その気になって忘れていたオンナを取り戻したわ~これからの人生はオンナで生きるの~ホホホ」
「えっ??…一晩?…借りる?〜ま、まさか〜おばさんと音吉さんが、つ、つまり、Hをしたの?」
「はい、私たちは大人ですから音吉さんに人生の気付薬を注入してもらつたのよ〜もちろん、1回限りのママとの約束を守ります」

 このフラワー関係企業の社員全体では推定雅子さんのような未婚のお局様が100名ほどいる一方で男性のバツ1で50代以上の社員が300名ほど在籍していることが人事課の調査で分かった。そこで顧客のシニア向けの婚活サービスの会社をフラワー100%出資で立ち上げることになったが、この会社の社長に雅子さんが抜擢された。

 その報告を雅子は音吉と幸子ママ
にしていた。
「私と音吉さんとのたった一晩のアバンチュールがフラワーの社長の耳に入ってそれに社長がなぜか?感動したらしいの…」
 幸子ママは、
「それは良かったわ~これからも音吉さんにはこの駆け込み寺居酒屋ポン吉の名に恥じないように世の中の不幸な女性を救ってもらわなくては…ですよネ~音吉どん?」
 音吉はそれに答えず黙って席を立ち店の外に出ていった。






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