美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

長坂コレクション ヨーロッパ絵画展_美術館「えき」KYOTO 7/28まで

2019年07月08日 | 美術館・展覧会

京都駅ビルにある、美術館「えき」KYOTOで「長坂コレクション ヨーロッパ絵画展」が行われています。日本人コレクターでは珍しく、オールドマスターの作品が充実しています。

  • 長野市の個人コレクターが蒐集したバロックと19c近代絵画の作品を披露
  • 巨匠の作品は含まれないが、当時の普通の画家たちが描いた作品はどれも個性的


普通の市民たちが楽しんだ作品からは、壁に架けられてさぞかし華やかになった自宅の一室の趣が伝わってくるようです。



長坂コレクションは、長野市で自動車整備会社を経営する長坂剛が、ここ30年ほどで蒐集した非常に新しいコレクションです。流通している作品数も多く日本人に人気の印象派やポスト印象派には手を出さず、17cバロック絵画と、19cでも写実主義といったオールドマスターに属するジャンルに絞っていることが特徴的です。

巨匠の作品は流通していないこともあるでしょう、蒐集品は日本ではほとんど知名度のない画家の作品です。私も大半が記憶にない画家でした。そのことがかえって当時の普通の市民たちが楽しんだ作品を目の当たりにするようで、興味深いところです。



【公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

展示は時代順に構成されています。スペインやイタリアなどカトリック教国のバロック絵画はこの時代、宗教や神話の寓意を題材にした作品で占められていることがわかります。

展覧会のチラシ表紙にも採用されたオノリオ・マリナーリ「聖チェチリア」は、長坂コレクションでも一押しの作品なのでしょう。展示も独立した空間で別格の扱いでした。女性の意味深な表情が観る者に様々な連想を働かせます。マリアーノ・サルバドール・マエーリャ「聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ」は、バロック絵画らしい光と影の使い分けが効いています。

バロック絵画でもオランダやフランドルの宗教画は、風俗画の先進国としての表現が伝わってきます。ルーメン・ポルテンヘン「占い師」はその代表例です。

19c近代絵画は、フランス以外の画家の作品が目立っています。

クリムトが頭角を現す前のウィーンに君臨していたハンス・マカールト工房作品「恋人を待つ」はドキドキしている少女の一瞬の表情をとらえています。

ヴィクトリア朝時代のイギリスの画家、エドウィン・トマス・ロバーツ「街頭の子供たち」は貧しい子供たちを描いていますが、表情は生き生きしています。ミュージカルの踊子のように今にも動き出しそうです。

新古典主義の画風のフェリックス・ジョゼフ・バリアス「お気に入りの鳴き鳥」は宗教画の寓意を思わせるような表現が目につきます。少女の衣装の繊細な描写から、当時の生活の様子がリアルに伝わってきます。

エルンスト・ベルガー「庭で編物をする女性」は印象派のように屋外の明るい陽光を描いていますが、表現は写真のように写実的です。裕福な女性の至福の時間がしっかりと表現されています。



美術館「えき」KYOTOは小振りな美術館で、今回のような個性的な展覧会では京都でもよく知られた会場です。京都駅ビルにあるため、何と言っても行きやすいことが特徴です。展覧会にちょっと寄り道したい時など、特におすすめできます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



幅広いバロックの魅力をキュッと集約
________________

<京都市下京区>
美術館「えき」KYOTO
長坂コレクション
ヨーロッパ絵画展 ~バロックから近代へ~
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:美術館「えき」KYOTO、京都新聞
会期:2019年7月4日(木)~7月28日(日)
原則休館日:会期中なし
開館(拝観)受付時間:10:00~19:30

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。

長坂コレクション
【公式サイト】http://www.nagasaka-collection.co.jp/



◆おすすめ交通機関◆

JR/近鉄/地下鉄 京都駅下車、ジェイアール京都伊勢丹7Fへ
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:5分

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※休日やイベント開催時は、渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 名作レビュー「創造力なき日... | トップ | 美の偉人ものがたり「原三溪... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

美術館・展覧会」カテゴリの最新記事