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真夏の爽やかな時間を根津美術館で_「優しいほとけ」展 8/25まで

2019年07月31日 | 美術館・展覧会

東京・南青山・根津美術館で「優しいほとけ・怖いほとけ」展が行われています。根津美術館は尾形光琳「燕子花(かきつばた)図」を筆頭に日本や中国の絵画コレクションが著名ですが、仏画&仏像も優品を多数所蔵しています。

  • 仏画&仏像35点が企画展会場に集結、1Fホール常設展示の仏像と共に根津の仏様ワールドを堪能
  • 2Fでは常設の「青銅器」+「鍋島の小品」「納涼の茶」、夏らしい爽やかな作品が魅力的
  • 鬱蒼とした森の中の庭園のそよ風はいつの季節も心地よい


根津美術館は、古美術全般にコレクションの幅がとても広いことをしっかりと体感できる展覧会です。緑豊かな美術館の中で、真夏に数多の美しい仏様にお会いすると心が軽くなり、暑さも和らぎます。



今回の「優しいほとけ・怖いほとけ」は企画展と分類されていますが、館蔵品だけで構成されています。根津美術館の企画展の多くは館蔵品だけで回すことができます。それだけ質の高い作品が充分に揃っています。

仏画&仏像にスポットをあてた今回の企画展、「根津美術館のコレクションのイメージからはやや距離があるため、館内は空いているか?」と思っていましたが、いつもと変わりなく賑わっていました。私の”思い込み”を深く反省し、2Fラウンジにいらっしゃる根津嘉一郎翁の銅像に心の中で「ゴメンナサイ」とお詫びしました。

展覧会のタイトル「優しいほとけ・怖いほとけ」は、如来/菩薩/明王&天という仏様の役割による分類をネーミングしたもので、仏像の知識が少ない方にもとてもわかりやすくなっています。展示も如来/菩薩/明王/天の分類別に構成されており、それぞれに美仏が勢揃いしています。




【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

「おごそか」は如来です。仏画2点だけの出展ですが、釈迦三尊のきりりとした表情が印象的です。

「やさしい」は菩薩です。「阿弥陀三尊来迎図」は鎌倉時代の仏画で、使者を極楽へ誘う阿弥陀如来と観音/勢至菩薩の姿がとても優美に描かれています。お会いしているととても心が落ち着きます。

平安時代後期の仏像「菩薩立像」は観音菩薩であると考えられています。ぽっちゃり顔の中尊の阿弥陀如来の左に立っていたことになり、豊かな頬を持つ包容力のある表情が阿弥陀様と実によくマッチしていたであろうと想像できます。今回の展覧会では筆頭クラスの美仏です。

「きびしい」は天。「毘沙門天図像」は、平安時代に墨の線とわずかな着色だけで描かれた仏画です。いわばほぼモノクロの漫画のような描写のため、にらみを利かせる表情が、着色されているよりかえってリアルに感じられます。室内にお札のように貼られていると仮定すると、目が合うたびに「ボーっと生きてんじゃねぇよ」と叱られているような気になります。でも重要美術品です。

【根津美術館 公式サイトの画像】 愛染明王像
【根津美術館 公式サイトの画像】 大威徳明王像

「おそろしい」は明王。いずれも重要文化財の2点の仏画が目立っています。「愛染明王像」は鎌倉時代13-14c頃の作品で、幾何学的な円形の構図が明王の表現をさらに洗練しているように感じられます。重文「愛染明王像」は2点出展されていますが、ご説明したのは制作時期がやや遅い作品No.10003の方です。

「大威徳明王像」は、手足と顔が6つずつある明王の動きをダイナミックに表現しているところが魅力的です。斜め上からとらえた構図が、明王の動きをより分かりやすくしています。


1Fホールの常設展示

1Fホールは南面する庭園側が全面ガラス張りで、緑がとても美しい空間に常設展示の仏像が美しく映えています。ここは庇の長さの取り方が絶妙で、夏の日差しのきつさは全く気になりません。さすが隈研吾の設計です。

【根津美術館 公式サイトの画像】 弥勒菩薩立像
【根津美術館 公式サイトの画像】 地蔵菩薩立像

「弥勒菩薩立像」はガンダーラ仏の優品で、ヘレニズム的な表情がいつ見ても美しいと感じさせます。「地蔵菩薩立像」は平安後期の柔和な顔立ちが特徴で、彩色が奇跡的にのこっているところに目を引きます。


1Fホールから庭を眺めると六本木ヒルズが借景になる

いつものように庭に出てアップダウンしながら庭園を一周しました。東京都心の庭園は、高低差を活かした設計が多いため、遠景や園内の建物を見下ろすことができるのが魅力です。ほとんどが平面の庭園で、山の斜面や遠景を借景にすることが多い京都とは対照的です。

【根津美術館 公式サイトの画像】 双羊尊

2Fにあがると、根津美術館のロゴマークとチケットのデザインにも採用されている至宝の青銅器「双羊尊」が相変わらずのオーラを放っていました。今から3,000年以上前の作品で、何と言っても二匹の羊が背中合わせにくっついた造形が神秘的です。酒を入れていた器で、どんな味がするのかと創造が膨らみます。

2Fのテーマ展示として「鍋島の小品」「納涼の茶」が「優しいほとけ・怖いほとけ」と同じ会期で開催されています。小品が中心ですが、よくもこれだけ集めたと感心します。しかしながら美しさはさすが根津家の審美眼を通過してきたものと感じられます。上品さや洗練された趣はいずれも間違いありません。爽やかなデザインが心をきちんとクールダウンしてくれます。


玄関へ向かう竹の小径

美術館の玄関に向かう竹の径は外国人観光客にも知られているようで、記念写真を撮る姿をたくさん見かけました。この空間は真夏が最も似合うように感じます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



根津美術館新展示棟の設計者・隈研吾が自らの創作姿勢を語る
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<東京都港区>
根津美術館
企画展
優しいほとけ・怖いほとけ
【美術館による展覧会公式サイト】

会場:展示室1、2
会期:2019年7月25日(木)~8月25日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。



◆おすすめ交通機関◆

東京メトロ銀座線/半蔵門線/千代田線「表参道」駅下車、A5出口から徒歩8分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
東京駅→メトロ丸の内線→赤坂見附駅→メトロ銀座線→表参道駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には無料の駐車場があります。
※道路の狭さ/渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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