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三重県立美術館は企画展・常設展ともに充実 ~川端康成愛蔵の国宝が登場

2018年12月12日 | 美術館・展覧会

三重県の津を訪れ、津駅から徒歩で行ける三重県立美術館で「川端康成と横光利一展」を見てきました。

  • 親友同士だった二人の文豪の交流や文筆活動の足跡を当時の手紙や雑誌から濃厚に紹介
  • 川端コレクションとして名高い大雅・蕪村・玉堂の国宝もお目見え
  • 近代洋画と西洋絵画のコレクションが充実、常設展も見逃せない


駅の西側の静かな高台にあり、緑にも囲まれています。行きやすく、行く価値のある美術館です。



川端康成は1899(明治32)年、横光利一(よこみつりいち)1898(明治31)年生まれとほぼ同い年です。学生時代に共通の師である菊池寛を介して知り合い、生涯にわたって深い交流を続けました。二人は大正後期から昭和初期にかけて一世風靡した「新感覚派」作家の中心となり、「蟹工船」の小林多喜二ら「プロレタリア文学派」と並んで、モダニズム文学の潮流を成していました。

横光は子供時代を三重県で過ごしており、生誕120年の節目でこの企画展が立案されたと思われます。戦前には「文学の神様」とも称されます。1931(昭和6)年に刊行された代表作「機械」は、主人公が機械のように淡々と語る調子で、モダニズム文学の最高傑作と位置付けられています。

横光は戦後間もない1947(昭和22)年に生涯を終えます。「伊豆の踊子」「雪国」などの代表作で作家として確固たる地位を築いていた川端康成は、無二の親友の死に深い悲しみに包まれます。

川端の美術品蒐集が本格的になったのは横光の死の後で、池大雅/与謝蕪村「十宜図」と浦上玉堂「凍雲篩雪図」は川端入手後に国宝に指定されています。川端の審美眼とコレクターとしての信用が、現在(公財)川端康成記念会にのこされている見事なコレクションを形成したのです。


美術館入口

【美術館公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

二人が新感覚派として作品を発表していた雑誌「文芸時代」の表紙デザインには、大正モダニズムの香りを濃厚に感じます。書店に山積みされていた時にはさぞかしまばゆいばかりの輝きを発していたことでしょう。

「伊豆の踊子」「機械」といった二人の著名作品が掲載された雑誌や単行本に加え、手紙や写真が数多く展示されています。文学ファンやモダニズムファンにとってもたまらない展示構成になっています。

【展覧会公式サイトの画像】 池大雅/与謝蕪村「十便十宜図」展示期間
【川端康成記念会公式サイトの画像】 浦上玉堂「凍雲篩雪図」

国宝の池大雅/与謝蕪村「十宜図」は大雅と蕪村がそれぞれ10面ずつを描いており、展覧会期間を通じて二人の作品を1面ずつ入れ替えながら展示されます。山村での隠遁生活をどこか洒脱にアニメのようなタッチで描いています。一方色使いは上品で、文人画としての気品の高さも見事に表現されています。やはり江戸時代の文人画の最高傑作です。

浦上玉堂の「凍雲篩雪図」は10/27-28と12/4-16のみ原本、その他期間は複製品が展示されます。私が訪問した日は本物を見ることができました。雪に閉ざされた山河の姿を、幾重にも塗り重ねた墨で雪の立体感までをも表現した浦上玉堂の最高傑作です。雪解けをじっと待つ大自然の雄大さが伝わってきます。

川端作品の単行本の装幀を手掛けたことで交流のあった東山魁夷の作品も見応えがあります。小林古径の装幀も実に美しい作品です。川端の交流の幅広さが伝わってきます。


ロビー空間

2Fの常設展示室でも名品に出会うことができます。

【美術館公式サイトの画像】 ルノワール「青い服を着た若い女」

ルノワール「青い服を着た若い女」は真正面から描いた肖像で、生活の糧のために上流階級からの注文で描いた作品です。とても静寂に表現していますが、どこか冷たくも感じます。”温かくない”ルノワール作品として、注目される名品です。

【美術館公式サイトの画像】 藤島武二「日の出(伊勢朝熊山よりの眺望)」

藤島武二「日の出(伊勢朝熊山よりの眺望)」は、藤島らしい濃厚なタッチで伊勢の聖なる光景を描いています。朝焼けする空の色使いがとても見事な作品です。この他、安井曾太郎や荻須高徳ら日本の近代洋画、モネやシャガールら19c以降の西洋絵画も名品が揃っている印象です。

三重県立美術館のコレクションは、イオングループの礎を築いた岡田卓也が運営する(公財)岡田文化財団からの寄贈品が中核をなしています。岡田文化財団が直接運営するパラミタミュージアムと共に、三重県で素晴らしい名品の鑑賞機会を提供してくれています。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



文豪同士の仲良しは、当然ですがたくさんいます

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三重県立美術館
横光利一生誕120年 川端康成コレクション
川端康成と横光利一展
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:三重県立美術館、中日新聞社、公益財団法人川端康成記念会
会期:2018年10月27日(土)~12月16日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30

※展示期間が限られている作品/場面があります。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄・JR「津」駅下車、西口から徒歩10分
津駅まで近鉄特急で 大阪難波から1時間20分、近鉄名古屋から50分
伊勢道「津」ICから車で15分

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には無料の駐車場があります。


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