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大阪 国際美術館のオールスター展覧会+”抽象 ”8/4まで

2019年06月06日 | 美術館・展覧会

大阪・中之島・国立国際美術館で二つの展覧会が同時並行で行われています。ジャコメッティのブロンズ彫刻を中心に、国際美術館の主要コレクションを展開する「ジャコメッティとI」と、1980年代以降の欧米の抽象芸術にスポットをあてた「抽象世界」です。

  • 2018年に国際美術館のコレクションに加わったばかりのジャコメッティ彫刻「ヤナイハラI」が目玉
  • パスキンやフジタら、ジャコメッティが生きた時代に活躍したアーティストの所蔵品もかなりの見応え
  • 「抽象世界」では、人気復活の兆しのある”抽象”の近年の潮流を俯瞰できる


2つの展覧会で、20cアートの多様性を楽しめます。国際美術館ならではの企画です。


ジャコメッティの写真パネル(この展示室4のみ写真撮影OK)

アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)はイタリア系スイス人で、主にパリで創作を行いました。ジャコメッティを象徴する極端に細長く引き伸ばされた人物像の彫刻は、主に戦後に製作されています。

1956(昭和31)年~1961(昭和36)年の間に渡仏した日本人哲学者・矢内原伊作(やないはらいさく)と親交を結び、彼をモデルとした作品を多数制作しました。この展覧会の目玉作品「ヤナイハラI」はその一つで、首は細長いもののジャコメッティにしてはかなり写実的に彫像した胸像です。まっすぐに正面を見つめる顔の表情はとてもピュアに見えます。哲学者としてのまっすぐな信念を表現しているようです。

ジャコメッティと矢内原の交流と友情を物語る写真や手帖、矢内原をモデルにしたデッサン等の作品も、他館からの借用品も交えて多数展示されています。制作現場のジャコメッティの吐息が伝わってくるようです。



ジャコメッティが生きた時代に活躍したアーティストの所蔵品展示は、さながら国際美術館コレクションのオールスターです。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 佐伯祐三「バーの入口」

佐伯祐三「バーの入口」は1927年の作品で、ジャコメッティがパリで作品を発表し始めた頃の作品です。佐伯らしい荒々しいタッチでとても味のある店構えを表現しています。早世する佐伯が病に侵される直前の作品です。

【国立美術館所蔵作品総合目録検索システムの画像】 ジュール・パスキン「バラ色の下着の少女(青いブレスレットの少女)」

「バラ色の下着の少女(青いブレスレットの少女)」は、ジャコメッティがパリで創作を始めた頃、モンパルナスでパスキンが全盛期を迎えていた1924年の作品です。ゴヤの「着衣のマハ」のようなポーズで、少女がおぼろげにこちらを見つめています。その視線にはとても複雑な感情が宿っています。

フジタ「横たわる裸婦(夢)」の乳白色は変わらない輝きを見せており、同じ裸婦でもピカソ「肘かけ椅子に座る裸婦」との表現の個性の違いがとても興味深く感じられます。

ジャコモ・マンズー「枢機卿立像」は、ジャコメッティほどではないですが、かなり細長くデフォルメした彫刻です。マントで全身を覆っており、シンプルに見せることでより神格化された趣を感じさせます。

アンフォルメルの先駆者、ジャン・デュビュッフェ「愉快な夜」は、子供の落書きのように描かれており、デュビュッフェの個性が現れている典型的な作品です。国際美術館コレクションの目玉作品で、同じくアンフォルメルの先駆者、ジャン・フォートリエ「人質の頭部」も出展されています。



B3Fが「抽象世界」の会場です。展示作品は1980年代以降から現代まで、30年ほどの時間差があり、傾向の違いが見て取れます。1980年代に近い作品は、紋様のようにそもそも何を描いているのかがわからない表現が多いと感じます。アート作品としてはもちろんですが、服飾や雑貨製品のデザインに結構使えそうです。

一方現代に近い作品は、より視線が一点に集まりやすいよう意識しているのか、アイコンのようなオブジェクトを中心に作品を表現するようになっていると感じます。そのアイコンが、何を意味しているのかを観る者がより考えやすくなっています。「このピクトグラムは何を表しているのか?」という質問を投げかけられているようです。

こうしたおおまかに感じられる作風の変化に、アーティストの個性が加わってとてもアグレッシブに鑑賞することができます。現代アートは、古典アートと異なり、斬新な刺激を与えてくれる。私個人として現代アートに魅力を感じる最大の理由です。

【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

ダーン・ファン・ゴールデン「ヘーレンルックス1」Kröller-Müller Museum蔵は1993年の作品です。赤一色で植物の種子のようなオブジェを表現しており、女性のワンピースやランチョンマットにするととても映えます。

ラウル・デ・カイザー「お化け」個人蔵は2007年の作品です。白い背景に黒いシルエットが描かれており、タイトルからするとそれが”お化け”です。お化けに見えるかは生まれ育った国の文化によってかなり異なるでしょう。私はタイトルを見る前には「ゴジラ」に見えました。

スターリング・ルビー「ACTS/SPLITTTTTTING」は2018年の作品です。まばゆく輝くアルミニウムの箱をずらして積み重ねており、こちらも実に多種多様な見え方がすると思われます。タイトルからは全く推測不能です。とても存在感のある作品です。


国際美術館の北隣、大阪中之島美術館の建設工事が始まった

「ジャコメッティと I」が終了後まもなく「ジャコメッティと II」が8/27~12/8の期間で始まります。より現代に近い国際美術館の所蔵品が中心になります。

同期間のB3Fでは、現在東京・国立新美術館で開催中の「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」が巡回してきます。2019年秋の関西の西洋絵画の展覧会を代表するビッグネームです。

【主催メディアによる展覧会公式サイト】 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



国立美術館公式ガイドブックが刊行されました
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<大阪市北区>
国立国際美術館

コレクション特集展示
ジャコメッティと I
【美術館による展覧会公式サイト】 ジャコメッティと I
会場:B2F

抽象世界
【美術館による展覧会公式サイト】 抽象世界
会場:B3F

※「抽象世界」のチケットで「ジャコメッティと I」をあわせて鑑賞できます。

●両展覧会共通
主催:国立国際美術館
会期:2019年5月25日(土)~8月4日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30(金土曜~19:30)
※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※今後他会場への巡回はありません。

※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていますが、企画展開催時のみ鑑賞できます。



◆おすすめ交通機関◆

京阪中之島線「渡辺橋駅」下車徒歩5分、大阪メトロ四つ橋線「肥後橋」駅下車徒歩10分、
JR環状線・阪神本線「福島駅」・JR東西線「新福島駅」下車徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
JR大阪駅→大阪メトロ四つ橋線→肥後橋駅

【公式サイト】アクセス案内

※この施設に駐車場はありません。


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