大阪・中之島の東洋陶磁美術館で「高麗青磁」展が始まっています。東洋のやきものコレクションでは世界的に名高い東洋陶磁美術館所蔵品に国内の代表作を加え、ヒスイのようなどこまでも奥深い緑に包まれた高麗(コリョ)王朝時代の青磁(せいじ)が一堂に会します。
東洋陶磁美術館ならではの垂涎の展覧会です。
高麗は918年~1392年、日本の平安時代から室町時代にかけて朝鮮半島の大部分を支配していた王朝です。高麗時代に造られた高麗青磁は朝鮮半島を代表するやきものとして現在ではよく知られていますが、その存在は長い間忘れられていました。19c末に墳墓で露出していた青磁が日本人の間で徐々に評判となり、20c初頭には欧米のコレクターにも絶大な人気を博すようになりました。
高麗青磁は10c半ばに中国の青磁の影響を受けて制作が始まったと考えられています。貴族社会で流行した喫茶の器に始まり、酒器や文房具・香炉・花瓶など様々な用途で造られていきます。最盛期は12cで、中国の宋の宮廷でも「秘色(ひそく)」と呼んで多くの高麗青磁が用いられていました。
「秘色」とは元は中国で造られた青磁のことを意味していましたが、次第に高麗青磁の代名詞となっていきます。それだけ中国で高麗青磁の評価が高かったのです。日本語の漢字の意味からイメージすると、「秘密の色」というネーミングは青磁が醸し出す妖艶で奥深い緑色を絶妙に表現しています。
高麗王朝では「秘色」ではなく「翡色」と表記していました。日本語の漢字の意味では「ヒスイ色」となります。これまた絶妙なネーミングです。
【公式サイト】 展覧会予告動画
プロローグとして、”再発見”後に韓国人や日本人によってこぞって”再現”された高麗青磁が展示されています。宮内庁三の丸尚蔵館にも所蔵されており、12cに造られた直後ような上質な輝きを見せています。
【公式サイトの画像】 青磁彫刻 童女形水滴
小さい人形のような置物に見えますが、水滴(すいてき)と呼ばれる硯に水をそそぐ入れ物です。つぶらな瞳の女の子が抱える瓶の先端が注ぎ口です。少女が主の書斎の脇に本当に控えているように思わせる銘品です。
【大阪産業創造館 Bplatz】 弁当のあの「魚」が誕生し、全国に広まった理由とは?!
この作品を見て、弁当に添えられている醤油差しを、ふと思い浮かべました。東アジア文化圏では、少量の液体を入れる容器にも遊び心を求める共通のカルチャーがあるのでしょう。
【公式サイトの画像】 青磁象嵌 竹鶴文 梅瓶
上半身が大きい瓶の中でも肩が強く張ったボディラインが美しい銘品です。竹鶴のシンプルな文様がヒスイ色の肌に実によくマッチしています。白線に焼き上げられた幾何学的な文様が、イスラム的にも見えエキゾチックです。
【根津美術館公式サイトの画像】 青磁蓮唐草文水瓶
展覧会では「青磁陽刻蓮唐草文浄瓶」と表記される重要文化財は、仏前に添える浄水を入れる瓶です。美しい肩の曲線の表面に蓮と唐草の文様が、ヒスイ色の陰影で清浄感を醸し出しています。きわめて清らかな逸品です。
ご紹介できるのはほんの一部です。250点もの銘品が揃っています。時間に余裕をもってお出かけください。時間を忘れて見とれてしまいます。
東洋陶磁美術館では特別展の後に平常展(常設展)もお忘れなく。
平常展を見ないと後悔します。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
安宅コレクション蒐集の立役者による韓国陶磁の集大成
大阪市立東洋陶磁美術館
特別展「高麗青磁-ヒスイのきらめき」
【美術館による展覧会サイト】http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=481
主催:大阪市立東洋陶磁美術館、NHK大阪放送局、NHKプラネット近畿、毎日新聞社
会期:年9月1日(土)~11月25日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
おすすめ交通機関:
大阪メトロ御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」駅下車、1番出口から徒歩6分
大阪メトロ堺筋線・京阪本線「北浜」駅下車、26番出口から徒歩6分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
JR大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→淀屋橋駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。
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