虚ろな十字架 (光文社文庫) | |
東野 圭吾 | |
光文社 |
11年前、娘を強盗に殺害された中原道正は、当時の担当刑事だった佐山の訪問を受け、今度は離婚した元妻の小夜子までも刺殺されてしまったことを知る。小夜子とは、娘殺害の犯人の蛭川が死刑になることだけを望んで、裁判をともに戦った過去があった。
「死刑」について、この作品ではなかなか突っ込んで書かれています。私はどちらかと言えば廃止派なのですが、この作品の被害者である小夜子は、自分の娘を殺されて、犯人に死刑判決が出ることを望みましたが、果たして死刑判決が出たあともまたもっと悩むこととなり、主人公の中原と離婚することになります。
そして彼女自身もまた人の手によって殺められることになるわけですが、どうして彼女が殺められたかは。。。要するにこの作品の真相はなかなか予想ができません。一つ言えることは娘を殺された小夜子はどんな事情があったとしても人を殺めたら死刑になるべきだという考えの持ち主でした。
母親の体内に宿った命は、「優生保護法」により母親が産み育てることができない場合には堕胎が認められているということですが、出産後育てることができなくて手をかけてしまった場合、「殺人」となります。もちろんどこかのラインで取り決めておかないといけないわけで、昔々の「間引き」の文化(?)がある日本ではもちろん罪は罪なのですが、出産したての我が子を手に掛けた場合、ある程度の猶予が与えられるのも事実ですが、小夜子はそれも許せませんでした。
東野圭吾の作品としては久々にいろいろと考えさせられる作品でした。
かなり重い内容だったことは
覚えていますが。
「死刑」についてのいろんな思いや意見が作者の手によって書かれていますが、これは本当に難しい問題です。
青木ヶ原の樹海の中に埋められているのは。。。(笑)