sumire日記

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mother

2020-08-29 18:18:12 | 日記
お母さんを好きなこともだめなんですか?
何がだめだったんですかね・・・生まれたときからだめですよ・・・

丸坊主になった少年の目線の先には何も映っていなかった。
空虚な瞳だった。
ただ、母親を好きだと告げた時の彼には、はっきりと、彼の意志があった。

2014年に17歳の少年が祖父母を殺害した事件から着想し、今作は制作された。


特異でありながらその様子をものともさせない雰囲気を放つのは、長澤まさみ演じる母親の秋子だった。
秋子は子供の周平が義務教育期間であるにも関わらず学校へは通わせず、かたくなにそばに置いた。
ただし育児は放棄し、自身の妖艶な魅力で男を連れ込んでは働かずに借金を繰り返す生活を送っていた。
ある日、友人と喧嘩し傷をつくってきた周平に、秋子はその傷をなめて見せた。それが秋子の愛情だった。そして幼い周平には、それが母の最大限の愛だった。

義務教育期間が終了し、周平には小さい妹ができていた。そのころ
児童相談所の亜矢が周平を学校へ誘い出す。広い世界を見て、学ぶ楽しさを感じ、安心を与えてくれた亜矢に対し恩を感じ、母と離れる道が見えるが、周平が広い世界に出ていくことを拒絶する母の一言には敵わなかった。
周平の心にはもう長いこと、「母」が居座り取り巻いていた。

そして借金取りに追われ、それまで生活を共にしていた事実上の義理の父は姿を消し、また母と子になってしまった。
秋子は周平の心に叫んだ。「もう周平しかいないんだからね」

お金はそこをつき、妹は死んでしまいそうなほど衰弱し、
秋子は「できるの?できないの?」と周平に詰め寄った。

周平には「できない」と声を上げることは許されなかった。




母がすべてだった。

お母さんを好きなこともだめなんですか?
何がだめだったんですかね・・・生まれたときからだめですよ・・・




刑務所に入った周平との面会が終わった亜矢は、秋子に会いに行った。
罪を犯してもまだ、周平は母のことを好きだと言ったと告げた。
秋子は言った。
「あの子は私の子だよ」


奥平さん演じる周平のやりきれない、光の見えない表情を直視できませんでした。それほどまでに、救うことのできない周平を見事に演じきっていました。
そして安息は束の間で、周平もこんな息遣いで生きているのだろうかと、ふと考えてしまいました。同時に、秋子はこんな時やあんな時、どんな思いなのだろう。ただひとこと「あの子は私の子だよ」と何食わぬ顔で言ってしまいそうで、その瞳に身震いがしました。