魚鳥木、申すか?申さぬか?

ぎょ・ちょう・もく、申すか?申さぬか?
申す!申す! 魚⇒ニシキゴイ。鳥⇒ニホンキジ。木⇒制定無し、花は桜と菊

百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「1」

2017年11月22日 | 百人一首
百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「1」

※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。

和歌番号001 
作者:天智天皇
author of waka:THE EMPEROR TENCHI(TENCHI TENNŌ)

原文
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
(あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ)

現代訳
秋の田の側につくった仮小屋に泊まってみると、屋根をふいた苫の目があらいので、その隙間から忍びこむ冷たい夜露が、私の着物の袖をすっかりと濡らしてしまっているなぁ。

英訳
OUT in the fields this autumn day
 They're busy reaping grain ;
I sought for shelter ’neath this roof,
 But fear I sought in vain,—
My sleeve is wet with rain.

The Emperor Tenchi reigned from A.D. 668 to 671, his capital was Otsu, not far from Kyōto, and he is chiefly remembered for his kindness and benevolence. It is related, that one day he was scaring birds away, while the harvesters were gathering in the crop, and, when a shower of rain came on, he took shelter in a neighbouring hut; it was, however, thatched only with coarse rushes, which did not afford him much protection, and this is the incident on which the verse is founded.

The picture shows the harvesters hard at work in the field, and the hut where the Emperor took shelter.


解説

 第三十八代の天皇、天智天皇(てんちてんのう・推古34年~天智10年/626~671年)は舒明天皇の第二皇子で、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と呼ばれた皇太子時代、中臣鎌足(なかとみのかまたり)とともに蘇我氏を減し、大化の新政を行われたことはよく知られています。
 その後、都を近江(今の滋賀県)の大津に移し、668年、天智天皇として即位されました。
 日本最古の全国的な戸籍「庚午年籍」を作成し、公地公民制が導入されるための基礎を築かれましたが、日本ではじめて水時計を作らせたことなどもよく知られています。
 また、 天智天皇は「万葉集」に四首の歌が伝わっていますが、「日本書紀」などにも歌が伝わっている、優れた歌人でもあられました。

 ある秋の日、天智天皇は草花が咲く御所の庭を歩かれていましたが、そこの草花にかかった夜露を見られて、「この夜露は農民たちも冷たく濡らしていることだろう…」とお思いになられ、この和歌を作られたと伝えられています。
 人々を思う優しい心が表れていて、百人一首の最初の和歌でもあり、よく知られている和歌のひとつです。
 結語の「つつ」は、いまだ尚袖が濡れていることを表していて、聞く人の心に余韻を残しています。

 ところで、この和歌の原型は、「万葉集」に収められている「秋田刈る 仮庵(かりいお)を作り 我が居れば 衣手寒く 露ぞおきにける」と言われています。
 「万葉集」では「読人知らず」になっていて、当時の農民たちが、民謡のように口ずさんだものだったと言われています。
 その後時代が下り、いつしか、民を思う理想的な指導者としての天智天皇の和歌として定着したのだとも言われています。




★おススメ本★  

A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu
Tuttle Pub


図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化)
河出書房新社


百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! )
歌林苑


本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/

厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。

そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。

※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!


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