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書評B

2018-11-05 20:48:43 | 課題書評
書評B
山本寛〔2018〕『なぜ、御社は若手が辞めるのか』日本経済新聞出版社。

1.「年収500万円の社員だとしたら、年間で465万~1000万円の損失が企業にもたらされ  
  ているということになります。」(p.31)
 ⇒抜けた人員の穴埋めのための採用コスト、またその新人の教育コスト、抜けた人が持っ
  ていた能力を考えると想像より多くかかっていることがわかった。
2.「理由のどれか1つによって辞職を決意するということは珍しく、いろいろな理由が複合
  的に重なり合って『やめよう』という決断を下すことが多い」(p.55)
⇒何か今の仕事に一つ不満があっても、給与面や仕事の魅力などで相殺できていること
  が多い。このため複数の不満が予想される場合、すべてに手を出すのではなく、優先
  順位を決め、1つずつ改善していくことが有効だと考えた。
3.「『業績は必ずしも高くないけれども、部署内のコミュニケーションの中心となり雰囲気
  を和らげる、皆をやる気にさせるような社員』もリテンションの対象となり得ます₁」(p.110)。₁…リテンション(引き留め)
 ⇒ムードメーカーが会社にとって有益な影響をもたらしていることを意味しており、  このような人材を見出すには職場の現状をしっかりと把握していることが重要だと感じた。
4.「『ベテラン層は充実しているんですけど、そこが抜けたあとの次の世代、30代・40代
  の中堅社員がやや薄い。やっと育ってきた層が抜けてきているので、そこを守っていく
  必要がある。』」(p.114)
⇒より多くの理由で退職者が増えている現代では、若年層だけでなく様々な年代へのフォローが必要だと感じた。また、中堅への待遇を整えることで若年層の将来への不安を
  和らげ、勤続しやすくなると思った。
5.「退職理由の聞き取り、転職先の紹介など退職時に企業がどんなフォローをするかも重要
  なポイントです。(p.185)⇒これからのリテンションの参考や、きめ細かい対応が企業の口コミや社内に知られることで、従業員に  良い影響をもたらすと感じた。
6.「働きがいとは、『働いた結果に意味が見出せること』で、働いている時間だけ、に感じるものではありません」(pp.214~216)
 ⇒今の日本では、残業時間を減らすように徹底されているが、仕事を続けるなかである程度の従業員に時間設定を委ねた残業時間とい  うものは必要ではないかと思った。

〈まとめ・感想〉
 本書はタイトル通り若手に焦点をあてているが、大部分は1つの退職が次々と他の従業員の退職を引き起こす「連鎖退職」から始まり、その対策法として挙げられているリテンションと退職の原因、そして企業は何をするべきかという内容になっている。本書はまだあまり知られていないリテンションという内容だが、中立の立場で書かれているため、リテンションについてよく知らない者でもリテンションが効果的に働く場合、働かない場合がわかるようになっていると感じた。
 この本を読むまで、自分の中で退職とは働いているなかで最後に訪れる出来事だと思っていたが、読み終わった後、退職は決して悲しいものだけではなくもっと良い環境をもとめるために必要な行為でもあると知った。そしてその退職の中で引き留めが可能である退職がリテンションの対象だとわかった。退職して新しい職場についた人、今現在退職しようか悩んでいる人、そして会社を辞める人が少なくなるように行動する立場の上司の人といった様々なコメントからリテンション・マネジメントが分析されていることから、人手不足でありながら、常にノルマ達成や優秀な人材が求められている日本で、労働側には退職をポジティブな行動であると広く理解してもらうこと、企業側には、どの方面に力を注ぐことで会社員が辞めるのを躊躇うような良好な企業になるのか、競合企業と差別化し人材を確保できるのかという課題に役立つ本であると考えている。



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