朝日新聞 2024年5月24日付記事
「物価上昇、賃金に回らず 昨年度GDP分析、大半は企業収益に」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15941672.html?iref=pc_ss_date_article
2023年度に相次いだ値上げによる物価上昇は、多くが企業収益となり、
賃上げにはほとんど回っていないことがわかった。
国内総生産(GDP)の物価動向を示す「GDPデフレーター」などから、朝日新聞社が算出した。
昨年の春闘で賃上げ率は30年ぶりの高水準となったが、
専門家は「結果的には、もっと賃上げができた」と指摘する。
「GDPデフレーター」は、消費者物価指数とは違い、原油など輸入コストの上昇分は含まれず、
国内に起因する物価の値上がり分のみを算出できる。
2023年度のデフレーターは前年度比4・1%上昇し、
伸び率は比較可能な1981年度以降、最大となった。
値上がりした分が賃金にどう回ったのかをGDPデフレーターから計算したところ、
2023年度の上昇分(4・1%)のうち、賃上げ要因は0・3%分にとどまった。
割合では1割に満たない。
残りには企業収益や固定資産の減少分、間接税が含まれるが、
「大半は企業収益と考えられる」(エコノミスト)。
実際、2024年3月期決算で、上場企業の純利益の総額は3年連続で過去最高となり、
値上げが利益を押し上げた企業も多かった。
背景には原油価格が下落するなど輸入物価が落ち着くなかでも、
企業が過去のコスト上昇分を転嫁するなど商品の値上がりは続いたことがある。
一方、高い賃上げが実現した年でもあった。
労働組合の中央組織・連合のまとめでは平均3・58%と30年ぶりの水準に。
ただ、物価変動を考慮した実質賃金は今年3月まで24カ月連続のマイナスで家計の苦しさが続く。
みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は
「昨春は企業も先行きに恐怖感があり、賃上げを抑えたのだろう。
その後、輸入物価が落ち着いたこともあって企業はとてももうかっている。
賃上げが今後も必要だ」と話す。
欧米では日本より先に、コロナ禍からの回復によって高インフレに見舞われた。
企業がコストの増加分以上に値上げしたことがインフレの背景にあるとして、
「グリードフレーション(強欲インフレ)」といった批判が出た。
(文章執筆:北川慧一 氏)
「物価上昇、賃金に回らず 昨年度GDP分析、大半は企業収益に」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15941672.html?iref=pc_ss_date_article
2023年度に相次いだ値上げによる物価上昇は、多くが企業収益となり、
賃上げにはほとんど回っていないことがわかった。
国内総生産(GDP)の物価動向を示す「GDPデフレーター」などから、朝日新聞社が算出した。
昨年の春闘で賃上げ率は30年ぶりの高水準となったが、
専門家は「結果的には、もっと賃上げができた」と指摘する。
「GDPデフレーター」は、消費者物価指数とは違い、原油など輸入コストの上昇分は含まれず、
国内に起因する物価の値上がり分のみを算出できる。
2023年度のデフレーターは前年度比4・1%上昇し、
伸び率は比較可能な1981年度以降、最大となった。
値上がりした分が賃金にどう回ったのかをGDPデフレーターから計算したところ、
2023年度の上昇分(4・1%)のうち、賃上げ要因は0・3%分にとどまった。
割合では1割に満たない。
残りには企業収益や固定資産の減少分、間接税が含まれるが、
「大半は企業収益と考えられる」(エコノミスト)。
実際、2024年3月期決算で、上場企業の純利益の総額は3年連続で過去最高となり、
値上げが利益を押し上げた企業も多かった。
背景には原油価格が下落するなど輸入物価が落ち着くなかでも、
企業が過去のコスト上昇分を転嫁するなど商品の値上がりは続いたことがある。
一方、高い賃上げが実現した年でもあった。
労働組合の中央組織・連合のまとめでは平均3・58%と30年ぶりの水準に。
ただ、物価変動を考慮した実質賃金は今年3月まで24カ月連続のマイナスで家計の苦しさが続く。
みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は
「昨春は企業も先行きに恐怖感があり、賃上げを抑えたのだろう。
その後、輸入物価が落ち着いたこともあって企業はとてももうかっている。
賃上げが今後も必要だ」と話す。
欧米では日本より先に、コロナ禍からの回復によって高インフレに見舞われた。
企業がコストの増加分以上に値上げしたことがインフレの背景にあるとして、
「グリードフレーション(強欲インフレ)」といった批判が出た。
(文章執筆:北川慧一 氏)