過去5年で1番人気馬の優勝は、ピースオブワールド(2002年)の1勝のみ。スイープトウショウ(2003年5着)、ラインクラフト(2004年3着)と、のちのGI馬が不覚を取っている一方で、6番人気以下の馬が3勝を挙げている。コース改修で、スタート地点が1コーナーのポケットから向正面に移設され、直線距離473.6mの外回りコースを初めて使用して行われた昨年は、重賞初挑戦の1勝馬ウオッカが、重賞2連勝中のアストンマーチャンを見事に差し切った。この両馬は、ともに今年に入り、前者が日本ダービーを、後者がスプリンターズSを制する活躍を見せている。舞台設定が替わったとはいえ、まだまだ成長途上の2歳牝馬。実績の乏しい馬でも、GI級の素質がある馬なら、好走する可能性は十分にありそうだ。
前哨戦のファンタジーSを制したのは、オディール(牝2・橋口弘次郎)だった。非常に競馬センスの高い馬で、鞍上の指示通りに動けるのが強み。また、橋口調教師が「お母さんのキュンティア(1997年阪神3歳牝馬S2着)は、レースを覚えるにつれて、うるさい面を出すようになってしまった。だが、この馬は逆にレースにいってどっしりとしている。そこが頼もしいね」とセールスポイントにあげた、精神面の強さも魅力のひとつ。陣営は、距離延長・阪神の外回りコースへの対応にも自信を見せている。好勝負を期待してよさそうだ。
ファンタジーS2着のエイムアットビップ(牝2・矢作芳人)は、3コーナーで馬がハミを噛み、ゆっくりと下るはずの淀の坂で一気にペースを上げてしまった。不本意な内容にもかかわらず、勝ったオディールから0秒2差の2着に踏ん張ったことを考えれば、敗れはしたが、能力の高さを示したレースといえるだろう。幸いにして馬にダメージはなく、調教の過程も順調。矢作調教師は「マイルにも対応できるように調整したい」と、距離克服をポイントにあげている。
2戦2勝という成績で関西に乗り込んでくるラルケット(牝2・和田正道)が注目の存在。前走500万下のサフラン賞(東京・芝1400m)の内容が秀逸。ラスト2ハロンが11秒4-11秒5の速い流れを差し切った決め手は、JpnIのこのメンバーに入っても上位だろう。
1分34秒1の好タイムで新潟2歳Sを制したエフティマイア(牝2・矢野進)。休み明けだった前走の京王杯2歳Sは、13着と大敗を喫したが、良馬場でスピード+決め手を競う展開になれば、巻き返してくるはずだ。
シャランジュ(牝2・本間忍)は、初の関西遠征だった前走のデイリー杯2歳Sで5着に入り、牡馬相手の厳しい競馬も経験することが出来た。前々走の新潟2歳Sでは、16番人気ながら、上がり3ハロン33秒0(推定)の鋭い末脚を発揮して2着に好走しているように、いかにも直線の長い阪神の外回りコース向きの馬だ。チャンスは十分だろう。
前走、オープン特別のいちょうS(東京・芝1600m)を制したアロマキャンドル(牝2・河野通文)。そのレースで2着に負かしたスマイルジャックが、次走の東京スポーツ杯2歳Sで3着と活躍しており、重賞で上位争いが出来る牡馬相手に、価値ある勝利を挙げたと言えるだろう。重賞2勝馬プレシャスカフェの半妹と、血統背景がしっかりしているのも魅力だ。
抽選待ちの1勝馬にも多くの素質馬が揃っているのも今年の阪神ジュベナイルフィリーズの特徴だ。前走のファンタジーS3着で実力を示したエイシンパンサー(牝2・平田修)は、広い阪神の外回りコースがいかにも向きそうなタイプだ。フサイチホウオーの全妹、トールポピー(牝2・角居勝彦)は、前走500万下の黄菊賞(京都・芝1800m)で2着に入り、素質の高さをうかがわせた。
手応え以上にしぶとい伸びで新馬(京都・芝1600m)を勝ち上がったヴァリアントレディ(牝2・中尾正)に、スタートでの立ち遅れをものともせずに豪快な末脚で新馬(京都・芝1600m)勝ちを決めたレーヴダムール(牝2・松田博資)も能力は高い。どちらも一戦のキャリアだが、大仕事をしてもおかしくない素質の持ち主だ。
JRA引用