「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス!」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(12)

2013年12月09日 | 過去の物語
クリスマス・イブ4日前の火曜日の午後1時頃。中王大学理学部数学科の野島ゼミには、女性向け雑誌「Joie」の記者、東堂アイリ(29)が顔を出していた。


「あ、野島先生、初めまして、雑誌「Joie」の記者をしております、東堂アイリと申します。電話での突然のオファー、受けて頂いてありがとうございました」

と、アイリは野島教授(52)と楽しそうに話している。

「いやあ、数学の法則を洋菓子のレシピに応用なんて、世界でも聞いたことがないからねー。彼女の目の付け所が、ちょっと新鮮で、どうしても世に広めたくてね」

と、野島教授は鷹揚に話している。

「わたし、洋菓子作るの大好きだったんで・・・それで、数学から何か応用出来無いか、ずーっと考えていて・・・それで・・・」

と、担当者である、田中美緒(22)も、嬉しそうに話している。

「それで、今日は生協さんに頼み込んで、場所も確保してもらったんで・・・東堂記者さんも、一緒に作ってみません?体験すると、楽しさもわかってもらえそうだし・・・」

と、美緒がヤル気であることを察したアイリも、

「それは、もちろん、喜んで・・・体験した方が記事も正確に書けるし、リアル感が出せますから・・・願ったり叶ったりです」

と、嬉しそうにするアイリだった。

「じゃ、こちらです・・・」

と、美緒がアイリを案内していく。

「あ、それから、美緒ちゃん・・・だっけ。東堂記者なんて言わないで・・・アイリさんでいいから」

と、アイリは美緒に呼び名の変更を申し出ていた。

「そうですか。じゃあ、アイリさんで・・・アイリさん、仕事できそうですよね・・・わたしもアイリさんみたいな、美人の素敵なお姉さんが欲しかったんです」

と、美緒は、笑顔で、賢いしゃべり方をする。

「美緒ちゃんも、相当口がうまいわあ・・・いつもこんな感じで、年上の人間を蕩かしてるの?」

と、笑うアイリ。

「えー、そんなことないですよー」

と、照れる美緒。

「美緒ちゃん、年上の男性キラーだったりするんじゃない?真面目でかわいいし、ハキハキしていて、それでいて、口も上手いし」

と、アイリは、美緒のいいところをさりげなく羅列。

「いやあ、アイリさんの方が全然口上手いじゃないですかー・・・おまけに美人だし・・・」

と、美緒が言うと、思わず二人して笑ってしまう。

「美緒ちゃん、私たち基本的に、同じ性格かもしれないわ・・・わかるでしょ、その感じ」

と、アイリが言うと、

「はい。わかります。だから、思わず、笑っちゃったんです。はい」

と、笑顔笑顔の二人だった。


二人は用意された生協のキッチンで、ひと通りロールケーキの製作に励んだのだった。


2時間後、二人は生協の喫茶スペースで、美緒のロールケーキ、「シルフィー」を暖かいレモンティーと共に、美味しく頂いていた。

「美味しいわぁー・・・普通のロールケーキとは何かひと味もふた味も違う感じ・・・これが「ライネルのねじれ理論」の力なのね・・・」

と、アイリは、とってつけたように、教えてもらった数学の法則の名前を言った。

「究極的に、菓子作りって、分量をどう決めるか、ですから・・・黄金比率さえ、わかってしまえば、美味しさが決まるんです」

と、美緒はそこは真面目に話していた。でも、ロールケーキを頬張ると、いい笑顔になり、ころころ笑った。

「美緒ちゃん・・・美緒ちゃん、すごく機嫌がいいけど・・・このクリスマス・シーズン、プライベートで、何かいいことあった?」

と、アイリは直感的に、美緒に言ってみる。

「え?」

という顔を美緒はするが・・・少しバツの悪そうな顔になって、

「バレちゃいました?」

と、笑顔になる。

「うん・・・いくら取材中とは言え・・・ころころ笑い過ぎるし、すごく上機嫌だから・・・」

と、アイリ。

「実はこの週末にイケメンな彼氏が出来ちゃって・・・それで毎日、上機嫌なんです」

と、ころころ笑いながら言う美緒。

「やっぱりーーーーー。そういうことだと思った!」

と、アイリもうれしそう。

「ズバリ年上でしょ?」

と、アイリが言うと。

「はい。大人な彼氏です。イケメンの」

と、美緒はデレデレ。

「ふーうーん。それはよかった・・・ごちそうさま。で、彼にはこのケーキ、もう、食べさせたの?」

と、アイリはサービスで聞いてあげる。

「まだ、です。今日もこの取材の話をしたら、思い切りサービスしてこいって、言われちゃって・・・」

と、美緒はのろけモード全開。

「はいはい。ごちそうさま・・・でも、その話のおかげで、だいぶ印象に残ったから・・・その彼の作戦は成功したわって、言っておいて」

と、アイリも案外上機嫌だ。

「はい、喜んで!」

と、美緒は笑顔いっぱいだ。

「でも、そういうアイリさんだって、彼氏いるでしょー」

と、今度は美緒が逆襲だ。

「そーねー。私婚約しているの。フィアンセがいるのよー」

と、アイリもうれしそうに話している。

「どんな彼なんですか?アイリさんの彼氏って・・・」

と、美緒も興味津々。

「うーん、一言で言うと、大人の男かな。女性の気持ちがわかっていて、先回り先回りして、笑顔にさせる、そんな男」

と、アイリも真面目に話してしまう。

「うわー、アイリさん、メロメロ~」

と、美緒がツッコむと、

「美緒ちゃんもメロメロの癖にー」

と、アイリもツッコむ。


二人の彼氏合戦は、けっこう続いたのだった。


少し時間が経った後、アイリは、

「じゃあ、ありがとうございました。いい記事が書けそうです。記事書けたら、雑誌、ゼミの方に送りますから・・・じゃ、美緒ちゃん、またね」

と、アイリは帰っていく。

「こちらこそ、ありがとうございました!」

と、全開の笑顔の美緒は、アイリの後ろ姿をいつまでも、見送っていた。


クリスマス・イブ4日前の火曜日、同じ3時頃、アミは、年下の男性に、とある場所に呼び出されていた。


出版社の、とある会議室・・・そこはがらんとしていた。

男性は、隣の編集部の三上隆(26)だった。何度も飲んだことのある飲み仲間でもあった。

「で、隆くん、わたしに何の用事なのかな?」

と、アミは笑顔で聞いてあげた。三上隆は、幾分緊張しているように見えたからだ。

もちろん、アミには、三上がイブに誘いをかけようとしているのは、1000%わかっていた・・・わかっていたが、このシチュエーションを楽しむ余裕さえ、あった。

「いや、えーと・・・アミさん、この間の飲み会で、確か、「わたし、今、フリーだから」って、宣言してましたよねー」

と、三上は、緊張気味に話す。

「うん。そうだけど?」

と、アミは上機嫌に反応してあげる。

「だから、そのー、僕・・・アミさんのイブの夜を、僕にくれないでしょうか?」

と、三上は、ずばりと言ってきた。

「へー、この子、なかなかやるわねー」

と、ある意味、度胸のある三上の誘い方に、良い点数をあげたくなった、アミだった。

「うーん、そうねー」

と、三上を思わず、上から下まで見てしまうアミだった。もちろん、腕を組んで。

「だめすか?俺なんかじゃー・・・」

と、三上は上ずりながら、言葉にする。

「ふーん、じゃあ、ダメな理由を3つ言ってみて?」

と、アミはすかさず、問題を出す。

「え?いやあ、そのー・・・俺、おもしろいことも言えないし・・・緊張しいだし・・・デートとか、慣れてないし・・・」

と、なんとか、3つ言えた三上だった。

「そうなの?隆くんは、デートしたことないの?」

と、アミがやさしく聞いてあげると、

「あまり、積極的には・・・なんか、女性と2人でいると、恥ずかしくなっちゃうタイプなんですよ。根が古風っていうか・・・」

と、三上は言う。

「隆くんは、結婚したら、奥さんにどんな風でいてほしい?どんなことを奥さんにしてあげたいと思っている?」

と、アミは真面目に三上に聞いてみる。

「それは・・・奥さんは美味しい料理を作ってくれて、子育てしてくれれば・・・僕はもちろん、仕事で稼いで・・・マンションが買えれば、それでいいかな、と」

と、三上は真面目に答えた。

「そーかー・・・」

と、三上を見ていたアミは、視線を落として少し考えると、ニコニコしながら、三上の目に視線を合わす。

三上は、そのアミの表情に安堵するが、

「ごめん、三上、わたし、あなたじゃ、満足出来ないみたい。最初のデートから、それじゃあ、よろしくないでしょ。このことは、なかったことにしておいて」

と、笑顔のアミは、それだけ言うと、

「三上くん、誘ってくれて、ありがとう!」

と、超ニコニコ顔で言った、アミは、部屋から消えた。


と、自席に戻ったアミの席に、隣の隣の編集部の徳重勝(32)が顔を出してくる。

「な、アミちゃん、イブ、暇だったら、俺とデートしない?」

と、アミとは酒飲み仲間の徳重が言ってくる。

「あれー。徳重さんには、美留ちゃん(26)っていう、れっきとした彼女がいたんじゃありませんでした?」

と、アミが指摘すると、

「いやー、先月別れちゃってさ、俺、今フリーでさ・・・アミちゃんくらいかわいい女の子が俺の理想だから」

と、徳重も、そこは、誘うのがうまかった。

「じゃあ、なんで別れたんですか?美留ちゃん・・・あんなにデレデレだったのに・・・」

と、アミが質問すると、

「ん、それが・・・ま、ありていに言えば、浮気だ。それがバレちゃってね・・・」

と、徳重は頭を掻きながら、話す。

「ま、でも・・・美留の場合、束縛がひどかったから、その反動が出ちゃったんだよ・・・」

と、徳重。

「でも、ほら、アミちゃんは、大人だから、そんな俺を束縛するような女性じゃないし・・・案外、俺達、いいカップルになれると思うんだけどな」

と、徳重は押す。

「うーん、徳重さんはイケメンでスポーツマンで、俺についてこいタイプの素晴らしい男性ですけど・・・」

と、アミは真面目に話す。

「そこにあぐらかいちゃっている感じですよねー。わたしは、そういう男性は、ちょっと・・・」

と、アミは真面目に否定。

「そうなの?うーん、アミちゃんとなら、俺、楽しく出来ると思ったんだけどなー」

と、言いながら、アミの断定が覆りそうにないのを見て取ると、

「時間とらせたね。また、酒飲もうや!」

と、言いながら、消える徳重。


「今日は、これで3人目・・・この季節は、こういう季節なんだけど、今年のわたしは、何かすぐに駄目だしが入っちゃう感じねー」

と、記事を整理しながら、アミは自分を見つめている。

「やっぱり・・・素敵なひとをひとり、知ってしまったから・・・比較が簡単に出来ちゃうから・・・相手の欠点がすぐに目につくようになっちゃったのね・・・」

と、ため息をつくアミだった。

「人は比較する生き物・・・か・・・」

と、ため息をつくアミだった。


クリスマス・イブ4日前の火曜日の午後5時頃。マキは、社の近くにあるカフェ「アルチザン」で、「Soccer Next」編集部の市沢(31)と、コーヒーを飲んでいた。


「単刀直入に言うんですけど、マキさん、イブなんですけど、デートしてくれませんか。僕と」

と、市沢は、ズバリと言ってきた。二人は顔見知りだったが、それ程、親しい間柄では、なかった。

「あのー、それ本気ですか?」

と、マキ。明らかに動揺している。

「いやあ、仕事を一緒にした感じだと、すごく真面目そうな雰囲気だったし、姉御肌のマキさんが、僕には、いいかなあと思って・・・」

と、市沢は、続けてくる。

「いや、どうせ、すぐわかっちゃうから、言っちゃいますけど、俺、女性に甘えたいタイプなんですよ。だから、姉御肌のマキさんは、僕に、ちょうどいいのかなあ、と」

と、市沢が言ってくる。

「どうですかね?」

と、市沢に言われたマキは・・・正直、怖気に襲われていた。

「いや・・・あのー・・・仕事の話だから、ということで、今日は来たので・・・仕事の話じゃないのなら・・・わたし帰ります・・・」

と、マキは、伝票をかっさらうようにして、カフェを出ていった。

「うーん、ダメだったか・・・姉御肌の彼女が相手なら・・・いい感じになれると思ったんだけど・・・」

と、市沢は冷静にしゃべっていた。


と、マキは携帯電話で社に電話をかけ、アミにつないでいた。

「ねえ、アミ、ちょっとくさくさしちゃったから、飲まない?焼き鳥に焼酎な感じで!」

と、マキはかなりキテいるみたい。

「あらー、何があったの?よし、出来た妹が聞いてあげるから・・・焼き鳥「十郎太」にでも、行こうか。6時待ち合わせで!」

と、アミは笑顔になりながら、マキに話していた。

「ああ、アイリは、今日はショウコさんから予約入っているんだって。「グラッチェグラッチェ」に行くみたいだから、そこは避けないと・・・」

と、笑顔のアミは、上機嫌でマキの電話を切った。

「正直、大人の女性は、この時期、大変なのよねー。新しい人生が始まっちゃう機会でもあるし、そうなりたくない、場合もあるし」

と、笑顔のアミは、退社すべく準備にとりかかるのだった。


クリスマス・イブ4日前の火曜日の夕方。午後6時頃。ショウコは時間より早く「グラッチェグラッチェ」に来ていた。


ウェイティング・バーで、ギムレットを飲むショウコは、美しい女王様のようだった。

黒のブリーツスカートは、Aラインの黒ジャケットを合わせて、下の白シャツが大人の女性の気品をプレゼンしていた。

靴は、ゴールド系のヒールを合わせて、これは、明らかに社を出る時に履き替えたモノだった。

「お美しい。おひとりですか?もし、よかったら、ご一緒しませんか?」

と、背の高いイケメンが誘ってきた。

「ごめんなさい。待ち合わせなの」

と、ショウコが笑顔で言うと、ハートを射抜かれた感じのイケメンは、少しよろけながら、

「そうでしたか。それでは、失礼」

と、笑顔になりながら、去っていった。

「ふ。雰囲気を変えただけで・・・男性はビビットに反応するのね」

と、笑顔になるショウコだった。


「お待たせ、ショウコさん」

と、ベージュ色のカシミヤのテーラードコートを着てアイリが入ってくる。

「ふふ。おかげで、ギムレット、2杯も飲んじゃった」

と、笑顔のショウコは、アイリを伴って、奥のレストランに消えていった。


つづく

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