遊去のブログ

ギター&朗読の活動紹介でしたが、現在休止中。今は徒然草化しています。

イチゴの日

2016-05-23 07:01:26 | 畑の話
 4月30日、ついにイチゴを取って食べました。と言っても、たったの2個です。小さいけれど甘く、確かにイチゴの味がしました。『なるほど』と思いました。イチゴは人気のあるはずです。
 これまでずっとイチゴには抵抗がありました。それは、一つには「少女趣味」的なイメージがあること、二つには「商品化」され過ぎていること、三つ目は栽培時の管理が極まっていること、などです。私は、どちらかというと自然に近い放任栽培的なものが好きなので、それは一般的なイチゴ栽培の対極に当たります。とはいえ、イチゴのあの可愛らしさが気にならないはずはありませんでした。
 昨年の秋、イチゴとの関わりができました。LEDを使ってイチゴを周年栽培する植物工場を始める計画があり、その相談役をしてほしいというのです。これこそまさに私の対極中の対極、しかもイチゴです。当然断るべきところですが、断れない事情がありました。一応、問題が発生したときや、専門的、技術的なことでわからないところが出てきた場合の相談相手に、ということなのです。自分はその方面のことは知らないといっても農学部の出身なら調べればわかるだろうといって聞いてくれません。仕方なく「わかる範囲で」と返事をしたのですが、1週間くらいして「大変なことになった」と気付きました。プロジェクトが動き出してから「知らない」では済みません。春から打診があったのでその方面の資料には目を通していたのですが、現場で発生する問題をそんな付け焼刃で解決できるわけがないという思いがひしひしと迫ってきました。
 図書館に行くとかなりの専門書がありました。それを借りて毎日、早朝2時間の勉強です。LED、植物工場、光の特性と光合成、植物の生理学、水耕栽培、イチゴの栽培技術、等々、つまり、範囲は工学、理学、農学に亘ります。ノートを取りながら、学生時代にこれだけ勉強していればなあと思いました。3カ月くらいすると現在の最先端技術の全容がほぼ見えてきました。そのあたりから吸収した知識をもとに考えることができるようになりました。半年を過ぎるころには自然のしくみが見えだしました。それまで自分は「気持ち」を中心に考えていたなと思いました。
 秋にホームセンターでイチゴの苗を買いました。買いに行ったのではなく、たまたま行ったら売っていたのです。5本買って庭に1本、畑に4本植えました。これが10月25日です。育つのかなあと思いましたが、枯れたようになりながらも中心から小さな葉を覗かせたときには『なかなかやるなあ』という印象で、その後は霜が降りても雪が降ってもマイペースという様子を見ていると何となく力強ささえ感じるようになりました。多年生植物だというし、もしかするとかなり野性的な力をもっているかもしれないという気がしました。
 このイチゴに実がなるとは思っていませんでした。きちんと管理をすれば実もなるでしょうが、無肥料では期待する方が野暮です。それでも春先になり、葉の成長に勢いがついてくると『もしかすると』という気持ちにもなります。そんなとき花房が出て蕾がつきました。1月25日です。ところが2月4日の日誌には「蕾と思ったものは蕾ではないようだ」とあり、2月8日には「イチゴ、やはり花だった」となっています。これが「不時出蕾」か、と思いました。まだ虫もいないから実りはしないだろうが、花の咲くことは確認できました。
 咲いた花に実がつきだしたことに気付いたのは4月14日でした。薄緑色をした小さな小さな実で、これが本当に大きくなるのだろうかという感じです。何しろ無肥料ですから期待はしていませんでしたが、これは実りそうだと思いました。少し大きくなって赤みが差し始めると一日で色づきます。もう少し様子を見ようとそのままにしておいたら先の方をナメクジに食べられてしまいました。実を取って洗い、ナメクジに食べられたところを取り除くと甘い香りがします。かじってみると確かにイチゴの味でした。
 今回のことで赤くなったら夕方には取らないとナメクジにやられてしまうことがわかりました。つまり、熟すと来るわけで、ナメクジは匂いか何かでそれが分かるのでしょう。そして、4月30日、ついにまともなイチゴが2個、取れました。一つはすぐ食べました。甘く、爽やかで、香りもよく、ふくよかな気分になりました。もう一つはスケッチブックに絵を描いて色鉛筆で彩色しましたが、あの赤色はとても描き表せません。いくつもいくつも描いたのですが、不思議なことにどうもイチゴらしくないのです。こんな単純な形なのにどうして描けないのだろうと思いました。イチゴを見るとイチゴです。絵を見ると、形はそのままなのですが、イチゴではないのです。何だろう、これは。そんなことをしているうちにイチゴの美しい赤色が少しくすんで艶が落ちているのに気付きました。これはいかんと思い、すぐに食べたのですが、味は少し落ちていました。なるほど。それからはさっと描いて、すぐ食べるようにしています。
コメント
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