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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

労使合意に基づく申出による短時間労働者の適用について

2017-08-06 20:40:35 | 社会保険

平成29年4月1日から、厚生年金保険の被保険者数が常時500人以下の企業に勤務する短時間労働者についても、「労使合意に基づき申出」をすることにより、短時間労働者として被保険者の資格取得をすることができるようになっています。

そもそも、平成28年10月からの健保・厚年の適用拡大の対象は、被保険者数が常時500人以下の事業所に勤務する、①週所定労働時間が20時間以上であり、②雇用期間が1年以上見込まれ、③賃金の月額が8.8万円以上である、④学生ではないものとされました。

今回500人以下にも適用できるという適用拡大を申し出る企業はどのような企業かというと、例えば500人以下のグループ企業にも適用することによりグループ内全ての企業に社会保険に適用できれば、グループ内の転籍があったとしても社会保険の適用に差がない扱いができる、などのケースがあります。

それにしても、今回の適用拡大でも対象にはならなかった所定労働時間が20時間未満のパート・アルバイトについては、今後も健保・厚年の適用はないのかという点ですが、これについては検討の余地があり、厚生労働省も考えているのではないかと思います。20時間という線引きの根拠が希薄であることと、やはり保険料は収入があれば負担すべきではないかという保険原理の観点からそのような気がしています。

健保・厚年の被保険者の範囲に入らない人たちについては、国民健康保険と国民年金でカバーされる層と健康保険の被扶養者であり第3号被保険者であるという層の2種類の層が存在します。健康保険の被扶養者で第3号被保険者である人たちは、一般的にはサラリーマンの夫がいる妻ということになり、保険料は納付しません。サラリーマンの夫がいる妻が社会保険の適用事業で20時間未満働きながら国民健康保険と国民年金の第1号被保険者になることは想定が難しく、一般的には第3号被保険者になるであろうということになります。

かたや国民健康保険と国民年金の第1号被保険者である人たちは、自営業で働く場合か、夫が自営業である場合ということになるかと思います。働いていようがいまいが国民年金の保険料16,490円(平成29年度)を納めます。この額を毎月支払いながら第3号被保険者と同じ給付しか受けられないということは公平性に欠けるということは以前から言われています。

また、20時間以上働いている適用拡大で短時間労働者として被保険者になった人の厚生年金保険料は、一番低い標準報酬額93,000円未満(88,000)の保険料は16000.16円で被保険者負担分は8000.6円です。自営業の国民年金保険料の16,490円に比較して半分の額の保険料で給付は上乗せがあるということになりますので、こちらも公平性に欠けるということになります。

第3号被保険者だけではなく適用拡大で被保険者になった場合も、サラリーマン世帯は自営業世帯に比べると有利であると感じます。

暑い毎日でいよいよ夏本番といった感じですね。最近勉強気分旺盛なのですが、タイミングよく法律勉強会に声をかけて頂きました。大学の先生や企業の人事担当者、若手ホープの社労士と労働基準監督官の経歴を持っている社労士と多彩な参加者が集まり、勉強会が終わっても主催していただいた社労士の先生の事務所のビルの1階にあるお店のテラス席でおいしいものを頂きながらいろいろな情報交換をして非常に楽しかったです。そういう機会は本当に大切だと思いました。実務家の社労士は法律的なものの見方を示されるととても新鮮に感じます。幅広い人材との意見交換の場を自分でも作れるとよいなあと思います。

来週は事務所が夏休みを頂きますので旅行に行ってきますのでブログも夏休みとさせて頂きます。皆様も、良い夏休みをお過ごしください。

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