OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

株式報酬の社会保険料の算定対象への該当性について

2024-04-14 20:05:21 | 社会保障

顧問先企業から「株式報酬」について、社会保険の算定基礎に算入するべきか否かというお問い合わせが来ることがあるのですが、判断の根拠になる情報がなかなか見つけられずにいたところ、遅ればせながら根拠を見つけることができました。ただし、非常に難しい内容ですので、資料の抜粋によるご紹介程度にとどめさせて頂こうと思います。

また、2023年3月時点として『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』が経産省より公表され、その中に従業員に自社株報酬を付与する場合のQ&Aの追加を中心として改訂が行われています。この手引きはここまで数回改定されているため、2020年7月12日のOURSブログ「株式報酬制度のかかる社会保険料」の内容に加えて、Q13において退職時に受ける株式報酬について追加されていることにご注意ください。

第5 従業員に対する株式報酬の付与に関するQ&Aが新設されています。

Q80 従業員に向けた株式報酬の支給は労働基準法における「賃金通貨払いの原則」には抵触しませんか。

従業員向けの株式報酬では、付与される自社株式が労働基準法(以下「労基法」という。)上の「賃金」(労基法第 11 条)に該当することにより、賃金を通貨で支払うことを原則とする「賃金の通貨払いの原則」労基法第 24 条)に抵触するか否かが問題となりますが、2022年 7 月の CGS ガイドラインの改訂で、一定の要件を満たす場合は、通常、「福利厚生施設」に該当するものと解することが考えられるとするなど、一定の整理がなされています。具体的には、上記の改訂後の CGS ガイドラインの「5.5 幹部候補人材の育成・エンゲージメント向上」では、「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」(平成 20 年 11 月 17日公表)と同様の整理がなされています。上記の平成 20 年の報告書において、企業が信託等のビークルを通じて一定の要件を満たす従業員に対して退職時に無償で自社株式を付与するスキームについての検討がなされました。この中では、実態等をみて総合的に判断されるべきではあるものの、一定の要件(以下の a.~c.の全て)を満たす場合には、労基法第 11条の「賃金」には該当せず、同法第 24 条の賃金の「通貨払いの原則」にも抵触しないものと整理できるとされています。
a. 通貨による賃金等(退職金などの支給が期待されている貨幣賃金を含む。以下同じ。)を減額することなく付加的に付与されるものであること。
b. 労働契約や就業規則において賃金等として支給されるものとされていないこと。
c. 通貨による賃金等の額を合算した水準と、スキーム導入時点の株価を比較して、労働の対償全体の中で、前者が労働者が受ける利益の主たるものであること。
なお、従来から金銭で支払っている給料の代替として付与することはできず、上乗せに伴う費用がかかる点には留意が必要です。

上記の平成 20 年の報告書は、企業がビークルを通じて退職時に自社株式を付与するものを前提としていましたが、この整理の際に検討された各要素(労働者の個人的利益に帰属するか否か等)は、ビークルの利用の有無や退職時の付与であるか否かとは無関係のものであるため、従業員に株式報酬を直接付与する場合及び在職中に付与する場合についても、同様の整理が当てはまるものと考えられます。つまり、企業が従業員に対して、直接又は信託のビークルを通じて在職中又は退職時に自社株式(譲渡制限付株式を含む)を付与するものについても、上記の a~c の要件を満たす場合には、通常、労基法第 11 条の「賃金」には該当せず、同法第 24 条の賃金の「通貨払いの原則」にも抵触しないものと整理できると考えられます。なお、ストックオプションから得られる利益については、賃金には該当しないと考えられています。

https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230331008/20230331008.pdf

上記a~cの一つでも該当する場合は賃金に該当するということになると考えられ、賃金に該当する場合もあることに注意が必要だと思います。なかなか難しい内容なので完全に未消化なのですが、今後お問い合わせがあった際はこの手引を見ながら行政に確認できるかと思います。

昨日は、女性社労士の勉強会である二土会で「ビジネスと人権」のお話をさせて頂きました。お休みの土曜日にもかかわらず、熱心に聴いて頂いて女性社労士の勉強熱心に感銘を受けました。その後事務所で次回夏のBBクラブの準備のための幹事会でしたが、コロナ禍を経て会費徴収も振込みになり、ネット等の活用によりさらなる効率化を検討することになりました。なかなか時代の変化についていっている感じで素晴らしいと思います。

また、今日はパンなどを持参して自宅近くの公園にお花見に行きました。既に桜は7割葉桜状態でしたが、気持ちの良いお天気でしたのでのんびり楽しむことができました。