OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

受給資格期間10年で特別支給の老齢厚生年金も受給可能に

2017-09-24 23:08:27 | 年金

8月から年金受給に必要とされていた25年の保険料納付期間等が10年に短縮されています。かなりの人が年金事務所の窓口に来られて大変なことになるのではと言われていましたが、それほど大きな混乱はなかったようです。この受給資格期間短縮については、保険料の納付期間等が足りないため年金を受け取ることができない「無年金者」を減らすことを目的に行われたものです。

対象者は保険料納付期間等が10年以上のすでに65歳以上で、今年2月から7月までの間に日本年金機構から「年金請求書(短縮用)」が届いているようです。厚生年金保険の加入期間が1年以上ある場合は、特別支給の老齢厚生年金の受給も可能になるため男性は62歳、女性は60歳以上65歳未満が対象です。

また、保険料納付済期間等が10年以上の者が原則として65歳以上になった場合も対象になりますが、受給年齢になると日本年金機構から「年金請求書」が手元に届く予定になっているそうです。

なお、受給できる額は、40年間保険料納付等することにより受給できる満額の基礎年金が月額約6万5千円であるのに対して、10年間保険料納付済の場合は満額の4分の1の約1万6千円です。

額としては非常に少ないのですが、年金額は以下の方法で増やすことなどが可能です。

①60歳から65歳までの5年間、任意加入をすることで国民年金保険料を納めれば、65歳から受け取る老齢基礎年金の額を増やすことができます。

②資格期間が10年に満たず受給資格がない場合は、最長で70歳まで国民年金に任意加入することで資格期間が増え年金を受け取れるようになる場合もあります。

③過去5年間については後納制度を利用して、時効になった期間についても保険料を納めることができ、年金を受け取れる又は年金額を増やすことができます。この後納制度は平成30年9月までの時限措置ですので注意が必要です。

リーフレット
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000151856.pdf

 かなり秋めいた空気となり気持ちが良い週末でした。夏物の服も今週限りかもしれないと衣替えのタイミングを図る感じになってきました。10月の育介法改正対応もさることながら、来春の無期転換に備えての就業規則の改定の作業もいくつかご依頼いただいて、取り組んでみたところだいぶポイントがわかってきました。OURSも最近スタッフが20名となり戦力が充実してきたため、この後の作業は準備してあるモデル規程を元にみんなに分担してもらい、少し楽させてもらう予定です。 


中小企業に対する割増賃金率の引上げについて

2017-09-18 23:21:02 | 労働法

中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引上げについて9月8日の労働政策審議会で施行日は他の法改正事項の施行3年後と示されました。以下日経新聞平成29年9月9日版より抜粋(一部修正)。

厚生労働省は8日、労働政策審議会に働き方改革の関連法案の要綱を諮った。施行日は原則2019年度としたものの、中小企業は同一労働同一賃金制度の適用に1年間の猶予を設ける。中小は労務管理の態勢が弱く、一斉導入は困難と判断した。労働条件分科会で、労働基準法や労働者派遣法など計8本の法律の改正案の要綱を示した。働いた時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度は連合の修正案を全て反映した。来週中にも法案要綱をまとめ、9月下旬にも召集する臨時国会に一括法案として提出する。

高度プロフェッショナル制度や特別条項の上限規制、同一労働同一賃金は、原則平成31年4月に施行予定です。 高度プロフェッショナル制度については、連合案を採用し年104日以上の休日確保の義務化」など新たな対応策が採られました。

9月15日付の 第141回労働政策審議会労働条件分科会の参考資料No3「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」と平成二十七年通常国会提出法案要綱の対照表が示されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei.html?tid=126969

その他の事項も興味深く、週44時間の特例対象事業場の所定労働時間縮小を図る方向で改めて審議することや過半数代表者の選出方法を徹底すること、管理監督者の範囲について引き続き既往通達等の徹底を図るとともに健康管理の観点から労働時時間の客観的な把握を徹底すること、労働条件の明示を電子メールの送信により明示することを認める方向で検討するとされています。

解散総選挙ということなので、労基法等8法一括法案の審議がどうなるのか今のところよく見えないのですが、枝葉末節の問題はさておき大事な事項をじっくり審議してもらいたいものです。

ここ10年間毎年応援に行っている東京都社労士会の支部対抗野球大会ですが、今年も無事渋谷支部が優勝しました。大宮の河川敷の広々としたグランドは気持ちが良く、台風が近づきつつある中で雨が降らなかったのが有難かったです。例年通りクラブハウスで打上をして気分の良い週末となりました。


雇用者と非雇用者の格差について

2017-09-10 21:56:06 | 雑感

最近勉強しなければならない理由があり、あれこれ本を読んで考えてという作業をしていて気になるようになったのが雇用者と非雇用者の社会保険の適用における格差についてです。社労士が取り上げるテーマで非常にここの所多いのが、「正規社員と非正規社員の格差問題」についてで、安倍首相も「長時間労働を是正する。同一労働同一賃金を実現し、非正規という言葉をこの国から一掃する」という方針を示しています。しかし正規と非正規については、基本的には雇用されているということが前提の格差ということになります。

社会保険は社会保障という大きな枠組みの中の一つの分野であり、社会保険以外に社会保障の枠組みに含まれるのは、公的扶助、社会福祉、社会サービス(社会保障制度審議会の50年勧告では、社会保険、国家扶助、公衆衛生・医療、社会福祉)となります。勉強してみて気が付いたのは社会保険労士の仕事は社会保障の中では社会保険という一つの分野にある程度絞られているということです。しかし社労士が生活保護を受けている人が年金を受給できないか調査する調査員の仕事をしている場合や、成年後見人として仕事をする場合は公的扶助や社会福祉の分野の仕事まで広がっているといえます。今後は社労士の中から、占有業務である「労働社会保険諸法令に関する手続き・相談業務」だけではなく、広く社会保障に関する分野に関する専門家が生まれてくるようになると思います。

そうなってくると、これまではいわゆる雇用関係がある「労働者」についてのことを主に考えてきたわけですが、広く「国民」という視点を持つことも必要になるかと思います。そう考えてみると、雇用者と非雇用者への年金、労災・雇用などの補償はかなり差があると感じます。

年金は、自営業者が中心の国民年金第1号被保険者は16,490円(平成29年度)の年金保険料を毎月40年間納めて、65歳から受給できる年金額は毎月6万円強であり、これがサラリーマンの被扶養配偶者である第3号被保険者については、毎月の保険料の納付がなく第1号被保険者の場合と同額の年金が受給できますし、10月に適用拡大された短時間被保険者は一番低い等級の賃金の場合事業主と折半であるため約8,000円の保険料を納付して、第1号被保険者の場合の年金額に厚生年金の年金が乗るわけです。

また仕事中のけがについての労災の補償、仕事がなくなった際の雇用保険の補償については原則としては非雇用者である自営業者にはないですし、健康保険の給付でも自営業の加入する国民健康保険では受給できないものがあります。日本の国民として憲法第25条の「健康で文化的な生活を営む権利がある」ことを考えると公平の観点に問題があると感じます。補償は給付と負担のバランスですから事業主が負担している分どうしても労働者は保護が厚いわけですが、日本の自営業を守るのであればこの格差は課題であり、今の社会保障制度及び社会保険制度はかなり枠組みから検討をしていく必要があると感じています。

先週やっと懸案であった10月改正の育児介護休業法の就業規則改定案を顧問先にお送りして、少しホッとしました。

いつも愛用しているお鍋にストーブ鍋があるのですが、週末一つ案件も片付き落ち着いたので新たに小さなストーブ鍋を購入しました。高価な鍋なのですが副会長の退任時に商品券を頂いたのでそれを使って記念に購入しました。大きなストーブ鍋はかなり重くて洗うのも一仕事でちょっと疲れてしまうのですが、この小さな鍋ならちょこちょこっと使えそうなので楽しみです。これで色々と刻んで入れたオムレツを作るのもの美味しいそうです。食べ物がおいしい秋ですしね。


「東京都正規雇用転換促進助成金」申請受付終了について

2017-09-03 21:40:19 | 労働法

「東京都正規雇用転換促進助成金」については、平成29年度予算を超える見込みとなったため、平成29年9月29日付で申請受付が終了することになりました。以前から予算を消化したら終了といわれていたのですがいきなりなのでちょっと驚きました。4月に正社員化したケースは多いと思われ、そのケースについては「転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月分の賃金を支給した事業主」という申請要件をぎりぎり満たさないということになるのかと思います。 
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/koyo/hiseiki/290901_seikitenkan_chirashi.pdf

そもそも東京都正規雇用転換促進助成金は、厚生労働省のキャリアアップ助成金に上乗せして支給されており、額がほぼ倍になるため非常に企業にとってはありがたいものでした。

平成29年度のキャリアアップ助成金は、正規雇用労働者に「多様な正社員(勤務地・職務限定・短時間正社員)」を含めることとされ、正社員へ転換した場合の助成額が増額されました。東京都の上乗せはなくなりますが、来春の無期転換権の発生に先だって、多様な正社員制度導入も検討しつつ助成金を利用して正社員転換を実施するのは検討の余地があります。
助成額は以下の通りです。< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額です。
【平成29年度】
有期→正規:1人当たり57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
無期→正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)

詳しい条件については良く調べて申請をお願いします。

今週の土曜日は毎年楽しみにしている東京会の野球大会だったのですが雨で中止でした。午後から代々木オリンピックセンターに会長と渋谷支部長と先日東京会にヒアリングに来られた学生団体GEILの最終発表を見学に行きました。GEILは、「学生のための政策立案コンテスト 」を行っている学生団体で、すでに20年近く続いているそうです。7泊8日で国立オリンピック記念青少年総合センターにて合宿をして各チームが政策を立案して発表し、最終日は4チームに絞られ最優秀チームを4名の審査員が審査し決めるというものです。発表を見ることができた東京会にヒアリングに来てくれたチームは優秀賞を受賞したので嬉しかったこともありますが、特別基調講演の内容も非常に興味深く、また審査員の講評が切れ味鋭くとても勉強になりました。