ふわぁぁあ。
将之は大きく欠伸をした。
庭の柿の木には柿が生っている。
朝早い出仕も終わり彩子の所にも顔を出した帰りである。
「あれ?晴明?」
場所は昭陽舎である。
意外な所で出会った晴明に将之は声を掛けた。
何、帝と忠行(師匠)絡みでちょっと用事があったのだと彼は告げた。
ふうんと将之は特に気も無く返す、そこへ廂の奥の方から一匹の猫が迷い込んで来た。
―猫?
晴明は軽く其方に視線を遣った。
「あ、待って!・・・あ、将之様!?」
猫を追い掛けて複数の女房達がしずしずとしながらも慌てて駆けて来た。
将之は自分の足元に蟠った猫を腰を下ろして抱き抱え上げた。
将之の胸元に抱えられた猫を見遣る。
毛並みの良い綺麗な猫だ。
「姉上の猫だ」
「-!?」
猫は将之を知っているのか否か将之の腕の中でにゃあにゃあ鳴いている。
「助かりましたわ、将之様」
女房達は嬉しそうに賑やかに話す。
晴明も何だ、そんな事か・・・と思った頃、行く手を妨げられた哀しさからか猫は更ににゃあ、にゃあと激しく鳴き出した。
「ああ、よしよし、悪かったよ」
と、将之は猫に口付けた。
「「―----!!」」
側の女房も晴明も彼と猫を凝視した。
女房達は将之から猫を受け取りながら笑顔を見せつつも内心、(女には口づけしないのに・・・)と心中複雑であった。
「晴明、帰るぞ」
「あ、ああ・・・」
帰り晴明は言葉少なくあった。
「?」
「・・・」
思わずあの猫の立場になりたいと思ってしまった晴明は頬を赤らめ俯いて帰るより他無かったのである。
終わり(笑)
もてもて将之君~v
たまには良いよねv