ゆきんこの萌え絵日記

「王都妖奇譚」の二次創作ブログです。
小説、漫画は最新記事が下がります、済みませんがスクロールお願いします(^^。。)

王都SS6「真綿の雪」6

2011-01-18 | 王都SS6「真綿の雪」
「果南、これ」

後、あれもこれも、・・・こっちの実もそうかなぁ・・・。

将之と果南は相変わらず薬蕩の材料探しに奔走していた。

非常に飲みにくい代物なので、効き目が無ければ止めてしまいたくなる日もあったがまだ鍛錬によって健康を得るほど丈夫な身体を持っていない幼少の将之には今はこの薬蕩が彼を健康に導く一番の道しるべであった。

将之はそれを分かっていたのか否か特に不平も云わず飲み干していた。
果南の方が残したいと思う時もあったが彼女もなまじ真面目な性格であって彼と一緒に飲み干した。
他の女房ではとてもつき合いきれない。

そんな環境もあってか将之と果南はどんどん親密になっていった。

二人きりになると普段の虚勢を張った横柄な態度は無く幼いながら将之は果南に優しかった。
果南も彼が大好きであった。




月に一度ほど高守が都から来る。

将之が少しずつ丈夫になる姿に彼は目を細めた。
後、数年すれば立派になった彼を右大臣の元へ届ける。
それは彼の大きな仕事でもあったのだ。


まだ丈夫で無い彼は同じく高雄に住む姉の彩子と接するときは殆ど無かった。
唯彼女の女房、将之の乳母等がそれぞれお互いの近況を互いに伝えあっていた。

将之は一人では無かった。
母は居なくなったが遠く都には血の繋がった父が居り、子供ながら美しいと誉れ高い姉が居り、高雄の別邸にもこうして彼を案じる女房や家人、人々が居たのだ。



だがそれでも、それでも彼の根底にあった寂しさは拭えなかったのだが・・・。





年の瀬が迫ってくる、雪が降り始める。


又京へ戻って行った高守を見送った後寒い縁側で将之と果南は昼下がりを過ごした。

時折将之は果南と二人になると彼女の膝に甘えて擦り寄った。
本当はあまり好ましくは無いんだろうなと思いながらも布越しに感じる温かみに触れたかった。

母が抱きとめてくれていた様に何かに縋りたかった。





縁側からは中庭、中庭の奥には遠く京の山々が見える。

果南は将之を膝に寝かせたままぽつりと呟いた。



「・・・もうすぐ年が暮れ・・・、又新しい年が来ますね」
「・・・」

月日が経つのは早い、両親を失った冬が明け春先から寄せてもらっている果南は何を想うのかしんみりと話した。
思い出すかのように話す。



「・・・高守様、将之様を都へお連れになる日を楽しみにしておられます」
「・・・」


きっときっと将之は丈夫になる、若く、立派な若君になって彼は此処から都へと旅立つのだ。
果南はそんな日に想いを馳せた。


うっとりと語る果南に将之は告げた。


「都に行く時は果南も一緒だよ」
「え?」

思いもよらぬ事を何気なく話す将之に果南は一瞬驚いたがすぐ柔らかく微笑んだ。


「とんでも御座いません。私は都へは行けません」
「?何で?」

将之は果南の膝から頭を上げた、幼いながら彼女を真摯に見つめ返す。
果南は尚も笑って続ける。

「私には都へ行ける身分はありません、都へは行けません、此処から(高雄)将之様を見ております」

「・・・・・・」


果南の云い様を将之は憮然と受け止めた。
子供の彼は感情のまま云い放つ。


「そんなの嫌だ。果南が一緒じゃなきゃ・・・、だったら都へは行かないよ」
「将之様・・・」


いつの間にか立ち上がり果南を見下ろし真剣に告げる将之に果南は彼の手をぎゅっと握って笑った。

「駄目ですよ、そんなの。将之様も大人になれば分かります」
「・・・・・・」

子供とはいえ彼から向けられる純粋な好意を果南は嬉しく思った。




雪が舞う。


果南は将之を愛しく思った。


遠く、遠く灰色の空の向こう、遥か彼方は煌びやかであろう都。


「ずっと果南と一緒に居たい」



将之はそう云い残して後の果南の話は聞かず又も彼女の膝に潜り込んでしまった。
果南は笑った。



遠く、遠くの山を見据える。
膝の上の温かな将之。
優しい果南。



幸せな時―。



こうしていつまでもこんな日々が過ごせたら・・・


果南は願わずにいられなかった。



幸せの記憶、ゆったりと過ごす将之と果南の時間―

二人はいつまでもいつまでもこんな日々が続く事を願った。



――



そうして一層雪が深まる頃果南は夕餉の片づけの手伝いをしていた。
何だか気分が悪い、胸の辺りが妙で痞えて来る。
「・・つっ」

我慢し切れずだだだっと少しそこから離れるとごほごほっと咳と共に嘔吐した。
それを見ていた側の女房が話す。

「嫌ねぇ、風邪?将之様にうつさないでよ」
「あ、は、はい」

手桶に水を掬い口を濯ぐ。

それから水がくべられている大きな石の鉢に顔を映す。

風邪・・・?

鉢の中の水は大きな波紋を描く。

そこで果南は自分の身に起った変化に気づくのであった。



続く。


毎日寒いですね。







日記

2011-01-17 | 日記
もう一月も半ばですね、早いなあ@@

ちょっとなるほど、と思った話し。

私は仕事柄年配の方と接する事が多いのですが・・・その中でふむと思った話し。

90過ぎたお婆ちゃんがテレビ見ててそのテレビには中年のかっこいい俳優さんがゲストで出てまして・・・
番組内で質問コーナーをしてました。

司会者の方が質問を読む。

「00さん、もてる秘訣を教えて下さい~」

で俳優さんが答える前にお婆ちゃんは「もてる秘訣~?」とテレビに話し掛けている。

で、「そんなもん重い物持ったたらいいねん!」と。

え!?と思ったけど女の子がうんうんと重い物を持とうとするのにさっと荷物を持ってくれる男の子って良いよね。
さりげない優しさだよね。
顔が二枚目か三枚目かはさておき(二枚目だけが恋する訳じゃなし~)
荷物を持てるというのは健康な身体も証する訳だし健康な身体は仕事もあるわけだし・・・

シンプルな答えにふむふむと納得v
こういうシンプルさは良いよね。



忙しくて情報過多で目まぐるしくて嬉しい事も一杯あるんだけど何となく疲れてしまう事も多い現代。
昔知り合いの女の子の彼氏がつき合う女の子が少ないと損(彼女が始めての彼女だった、自分の人生においての彼女の数が沢山欲しいのだそう)という不思議な理由で結婚を目前に彼女を振っていた。
気持ちは何となく分からないでもない。
成せばなる、幸せを多く、多く望む、損を嫌う、常に焦りがある。
そんな子だった。
そういう子は今多い様な気がする。ちょっとしんどい?



頑張ることは凄く、凄く大事なんだけど何かこう「重い物持ったらもてる!?」
これ位のシンプルさが時には良いんじゃないかな?と思う午後でした。(^^)






日記

2011-01-12 | 日記
カテゴリーに日記追加。

面白くは無いかも知れないけど(苦笑)管理人の思うところ書いてみる~v


新年明けて今読んでいる漫画は(初っ端から漫画ネタ、笑)あずみ、とAZUMI。

云わずと知れた太もも顕わな美しい暗殺者のお話なんですが・・・!(ネタばれあります)


前からちょっと興味あってでも長いし暗そうだしで、読んでませんでした。
でもこの前レンタル店行ったらコミックもレンタルあったので借りてみた、AZUMIを。

何か思ったよりお話もあずみも明るい感じ?
家族愛が描かれている。
双子の身内も居るし(孤独なイメージがあった)舞台も幕末、あれ~?こんなだったかな?
もっと暗いイメージが・・・と思うとあずみと「AZUMI」は別作品。


本家はやはり戦国、徳川家康辺り、あずみも思ってたような性格でした、そしてとても孤独。

本作が終わって次は設定と舞台(次は幕末)を変えてのお話でした。
私は此方から読んで面白かったのであずみの本作も買って来た。
けど暗い、辛い、一巻三分の一位読んで嫌になってきて・・・(笑)
もう読むの辞めようかな~と思ったのだけど三十冊も纏めて買ってきたので(汗)
ゆっくり読んでいる。

何が嫌かって人を殺しまくり死にまくり・・・うーん。

元々小山ゆうさんは「お~い、竜馬」を読んで(ちなみにこの作品は義弟が置いて行った物です~。私は竜馬ファンではありませぬ。)このお話がとても面白かったのでそこからあずみにも興味があったのです。


初っ端から仲間内での殺し合い、里の襲撃やら何やらで読んでて鬱になって来た。
だが作者は殺しだけがテーマではないはずだ(当たり前、汗)・・・読み進めて行くとやっぱり色んな人々、戦乱、その後の武士が必要とされなくなった時代の色んな葛藤や苦悩、人々の苦しみ、大事なもの、家族愛、友情、等が描かれている。

が、何にしても作中、人が死にまくり、あずみは常に孤独だ・・・。
仲間も出来るんだけどすぐ死んじゃうからな~xx

凄腕の暗殺者なのにあずみ自身は菩薩の様に美しく優しい。
非常に矛盾がある。
矛盾という言葉で表現して良いか分からないけど・・・


ただ彼女の辛さ、孤独、苦悩が彼女の美しさと相俟って何ともいえない読後感がある。

まだちょっとしか読んでないけどあずみにこの先救いがあるのか、それが気になって読み進めている~。


「AZUMI」は無論こちらも辛い部分はあるのだけど(あずみは辛いのばっかり不幸のデパートみたい)身内が一人居るのと幕末からか本作より現代に近く主人公の性格も明るめ。
(普通に読めば幕末も辛いよね。私武市半平太辺りのお話苦手だ~、辛くてさ)


で、この「AZUMI」の方のダブルキャスト(?)あずみの双子の駿介が非常に可愛い。

背が高くちょっとのんびりしてるが優しく家族想いで姉想い。
あずみとの遣り取りも(叩かれたり蹴られたり)非常に可愛い!
顔も可愛いvvv


もう久々のクリティカルヒット!(笑)



でも同人ないみたい。(小声)
しかも嵌るカプは駿介、あずみだから、兄弟、ってより双子・・・。
砂漠過ぎる・・・。涙。(笑)



王都SS6「真綿の雪」5

2011-01-07 | 王都SS6「真綿の雪」
冬の初め、粉雪が舞う中を高守達の一行は都へ帰って行った。

「はぁ、いつ見ても素敵ね、高守様。是非お嫁様になりたいわぁ」

芹菜の云い様を周りの者は苦笑して聞いた。

この京から離れた邸からでは無理だろう、高守様にはきっと都で御簾内の姫様がいらっしゃるに違いない。
無理無理、身分が違う、諦めないとね、人々は好き勝手に云う。
うるさいわね、そんな事分かっているわよ!と芹菜が頬を膨らませて唇をとがらかすのに又辺りの者は笑う。

そこに一人の女房が口を挟んだ。

「後ね、高守様の親御様、養父らしいのだけどとても厳しいらしいわよ。高守様も相当我慢なさっていると都からの使者が一度零していたわ」

へえぇ、始めて聞いた、そうは見えないなぁ、そんなご苦労をなさっているとは知らなかった。
高守はいつもにこやかに高雄の別邸の者と接する、とてもそんな風に見えなかったと、それが彼の気遣い、彼らしさだと知ると皆は感心しため息を漏らした。さすがねえと女房がうっとりするのに家人の男が口を出す。


「高守どのにきつく当たるなんて許せんな!」
一人の老男の云い様に先程の感嘆のため息の雰囲気とは打って変わって今度は皆、怒りの感情を表し出した。
「そうそう、全くだわ!」
周りも思わず同調し出す、やんや、やんやと話が広がる。
わっと賑やかに家人たちが話すのを少し離れた所から果南は聞いていた。

そこへ奥から年のいった女房が来てぱんぱんと手を打ち鳴らす。


「さあ、無駄口叩いていないで!仕事は山ほどあるのよ!」

は、はいー!!と皆は蜘蛛の子を散らすかのように方々へ逃げた。
果南がまごまごとしている。

「果南、お前も!お前はとろい!」
「は、はい!」

ぱたぱたっと果南は走り出す。

里育ちである果南には女房務めは辛い時も多々あった。
だが一人子で寒い冬に病で両親を失った果南には行く所が無い、それを遠い縁の恩情で拾って貰ったのだ。
果南は邸の持ち主の右大臣にも家の者達にも感謝していた。




かさかさ、ぺり、ぱきっ。

かさかさ、ぺりぺりっ。ぱきっ。


高雄の別邸は都の寝殿造りの邸とは少し趣が違って割りと簡素に作られていた。
だが、紅葉が美しい自然の中に良く映えるよい邸であった。
木で建てられた本邸、別邸、母屋、それぞれが使用する間や竈、炊事の間、中庭、厩、立派な門前、門前はいつも綺麗に掃き清められている。
将之がいつも使っている母屋には縁側があってそこから中庭に降りられた、中庭の向こうには低い柵の向こう、遠く京の山々が見えた。

体調が良くて天候も良い日、将之はこの縁側で過ごす事がよくあった。
母屋に背を預けて足を伸ばし膝の上には大きな篭、篭には薬草の実が入っている。

薬草の実は茶色の堅い殻で覆われている、薬蕩に使えるのはこの殻の中の赤い芯(実)の部分だけだ。
将之は日向ぼっこを兼ねながら薬草の仕分け作業をしていた。
小さな手で摘まんでは爪先で殻を割り赤い芯(実)を取りだす。


かさかさ、ぺりぺり。

うとうと。

かさかさ、ぺり。

うと・・・。




「将之様・・・!」

将之の姿が見えず探していた果南が見つけたのは縁側で篭を手にうたた寝する将之であった。
果南は思わず口を塞ぐ、大きな声を出して起こしてしまうのも気が引けた、だがこのままここで眠って居ても身体にはよくない。

果南は少し逡巡すると将之の側に屈んだ。





ちらちら、紅葉が舞う。

―ほら、若君、貴方の手の様よ―


ちらちら紅葉は舞い落ち切った。

母は亡くなった。



かさかさ、紅葉は大地に降り積もる。

足音はしない。

ちらちら雪が降る。

足音はやはりしない。




「―――!!」


はっと目が覚め将之は飛び起きた。

がつんと果南の顔に自分の頭をあて痛さに驚く。

「「つっ~~~」」
二人して痛さに暫し呻く。果南は打たれて赤くなった鼻を手で覆いながら将之に謝った。


「す、済みません、将之様」
「あ・・・」

将之は痛さに驚いた後、自分の姿にも驚いた、何と果南が膝の上に自分の上半身を抱いているのだ。
だから飛び起きたと同時に果南と頭を打ち付けたのだ。

状況が分かった将之はすぐさま果南から離れた、そして怒りか羞恥か少し頬を染めながら此方を睨み返して来る。


「済みません、お身体が冷えるかと思って・・・」
「・・・」

将之は何も云い返さない、唯赤い顔のままむっつりと此方を見ている。

むつーと微動だにしない将之に果南は少し可笑しくなって来た。
微笑ましいが彼をこれ以上怒らせない様にやんわりと話し出す。


「・・・将之様。」
「ん」

果南は辺りをきょろきょろと見渡した後、誰も居ないから大丈夫と笑った。
そういう問題じゃ・・・という将之ににこりと返す。

「大人でも誰も見ていない所で甘えているのです」
「え?」

大人の殿方もこっそり誰も見ていなければ女に甘えているのです。
だから大丈夫。
子供の将之様なら尚・・・
そんなに意固地にならなくてもよい・・・

果南の云い様は子供の将之にはよく分からなかったが唯、大人でもそんな事をするのなら自分もそんな風にしても良いのかと思えた。
何しろ膝枕をされたのは母が亡くなって以来だ、欲しくて、欲しくて仕方ない温もりが手を伸ばせばすぐに届く。


果南はすっと両の手を広げた。
一応宥めてみたがだが将之はやはり来ないかも知れないとも思う。

だが彼はすっと身の内に入って膝に頭を乗せて来た。
彼は実のところ素直なのだ。

果南は内心小さく驚いた。




将之は何も云わない。
唯、膝の上俯いた横顔、少し赤くなった頬が愛らしい。


果南も又何も云わず彼のその横顔をずっと眺めていた。



続く。