平原綾香ちゃんの「jupiter」っていう歌が大好きなんです。
「わたしのこの両手で何が出来るの」っていうフレーズが良いですよね。
今日は誕生日だったりするので(笑)
大好きな音楽を聞きながら晴明様を置いておく(絵柄の内容はさておき、苦笑)
私は将之好きだが晴明も凄く好きだ。(笑)
「わたしのこの両手で何が出来るの」っていうフレーズが良いですよね。
今日は誕生日だったりするので(笑)
大好きな音楽を聞きながら晴明様を置いておく(絵柄の内容はさておき、苦笑)
私は将之好きだが晴明も凄く好きだ。(笑)
ハロウィンの続きのつもりが何故か魔女っ子?
箒乗って飛ぶ晴明様というのも結構いいかも。
さてさて、先生の新作出ていましたね!
とっても綺麗で丁寧に描かれていました。
お話もヒロインが一途でヒーローは凄くハンサム!
岩崎先生の描かれる男性は目が良いですね~vvと惚れ惚れとしました。
又次回作を期待しつつ新作をじっくり楽しませて頂こうと思います。
本当に嬉しかったです。(^^)
箒乗って飛ぶ晴明様というのも結構いいかも。
さてさて、先生の新作出ていましたね!
とっても綺麗で丁寧に描かれていました。
お話もヒロインが一途でヒーローは凄くハンサム!
岩崎先生の描かれる男性は目が良いですね~vvと惚れ惚れとしました。
又次回作を期待しつつ新作をじっくり楽しませて頂こうと思います。
本当に嬉しかったです。(^^)
「先生、すみません。
将之様に、左近衛府の方からお呼びが・・・」
御簾越しから晴明の弟子の籐哉が声を掛ける、何でも管轄内に夜盗が現れ暴れているとか何とかいうのだ、将之は晴明に一言云うとその場を去っていった。
その背を晴明と彼に助けられた男が眺める、男はぼそりと呟いた。
「将之殿も忙しいな」
「-!?将之を知っているのか?」
少し驚いたような晴明の問い掛けに男はああ、と頷き言葉を続ける。
自分は5年ほど前京に住んでいて内裏内にも出入りしその時今よりずっと若い将之を見掛け覚えているというのだ、彼は若いなりにも帝の女御、彩子同様右大臣が特に目を掛けていたので目立っていたのだ、男はずっとずっと昔の記憶を思い起こすかの様に懐かしそうに話した、晴明は少し不思議に思いながらその話を聞く。
「・・・内裏に入れたのならそれなりの身分があったのでは無いか?
何故、盗賊風情の事をしておる」
「・・・まあ、色々と事情があるんだ、陰陽師さま」
にやりと笑う男に晴明ははたと我に返る、元々自分は他人をいちい構う様な性分では無い、男の言い様が気に食わなくて晴明はその場を立つと後の事は弟子に任せて去っていった。
ここ最近晴明はずっと機嫌が悪い、やれと思いながら籐哉は男の側に腰を下ろした。
「お名前は?」
大きな眼で素直そうに聞いてくる、まだあどけなさが残る若者に聞かれ男は素直に応えた。
「・・・源 浩允(なみもとのこういん)と、申す。苗字はもう捨てたような様なものなので名だけ覚えてくれればよい」
「・・・・・・」
男の含む様な云い方は少し気になったが籐哉は特に追及することもなく粥だけ差し出して晴明から云われたように身体が動き次第立ち退いてくれる様に話した、それを聞いた男は薄く笑う。
男の微笑を籐哉は何も云わず見返した、・・・何処となく寂しい冷めた空気を感じる、もの言わぬ自分の大切な師匠もそうだ。
彼があきらかにしんどそうな元気のない時でも自分はそれが判ってもどう声を掛けていいのか分からない、彼の弟子になって以来ずっと燻り続けている悩みでもある。
―大人になると辛いことばかりなんだろうか?―
籐哉は男が粥を口元に運ぶのを眺めながらぼんやり思った。
将之たちが駆け付けた時にはもう狙われた館は火の海だった、先に駆け付けた衛府の者たちと野党、家の者たちが争いとなり結局誰かが火を放ち館は逃げそびれた者たち共々崩れ落ちたのだ。
辺りの者たちが手分けして消火活動にあたっている、まだ息のあるものは救護し手当をしたが辺りは炎と闇で混乱し次々と人が倒れていく。
「放火は大罪だってのに・・・」
こうなっては誰が火をつけたのかさえ分からない、将之は他の衛府の者たちと野党とみられるものを追ったり怪我人を助けたり、消化も手伝った、明け方近く陽の光が薄ら山の向こうから差し出す頃火は静まり館は黒く焼けた煤の姿を晒した、将之の足元にも焼けた死体が転がりそれはもう貴族だか同僚だか盗賊か判別の仕様も無かった。
その頃晴明は陰陽寮に居て今後の事を忠行たちと相談していた、池に潜む妖魔は思ったより強大で手強く皆手を焼いていたのだ。
「晴明どのでもしんどいか?」
一人の陰陽寮生がからかう訳では無く真剣に聞いてくる、晴明は特に表情を変えず静かに話す。
「・・・そうですね、巨大で力も強い、真っ向から向かっても難しいでしょう・・・」
「あの奇獣、膿の様な毒を吐く、掛けられた狩衣の端がほれ、このように破けてしもうた」
違う者がそのささくれた装束を開けた、陰陽師といっても彼らは暦を読んだり祭事にも忙しい、晴明のように皆が総て鬼に精通している訳ではないのだ。
その破れた衣を見たものは一様に息を呑み押し黙った。
「他の部署の者にも手伝ってもらったらどうだ。遠くから弓を射れば毒もあたりまい」
「それもいいがそうすれば手柄は山分け、陰陽寮には少ししか恩賞も頂けないでは無いのか?」
「そ、それは・・・」
結局話は纏まらず忠行が一喝するとまず先に迫った職務をこなし追ってこの話を取り決めることとした、やれとさすがの忠行も頭を抱え卓にもたれ込む。
晴明はそんな皆の様子を何も云わず横目で眺めながら静かにその場を去った。
澄んだ涼しい秋の夕暮れの風が通り抜ける。
帰路につく晴明は奇獣の事さえなければ気持のよい日なのにと残念に思った、池の妖魔の事、将之に助けを請おうかとも思ったが怪我でもされたらと気が引ける、頼めばあの将之の事だからきっと心安く引き受けてくれる事だろう。
晴明は心の片隅で彼の笑顔を思い出しふっと気持ちが軽く、身体の芯が温かくなった。
大事も小事もなく無く唯流れに任せて生きていけたら楽だろう・・・とそんな常ならばあまり思い付かない様な事を考える程に彼は疲れていた。
晴明が戻ると男はまだ館に居座っていた、男はあれこれ不貞腐れた様子だったが結局食事にありつけるという事でそのまま居座っていたのだ。
晴明は少しからかう様にそれ以上居るなら金を取るぞと脅すと男は薄ら笑って応える。
「それは勘弁だ、陰陽師どの。俺は全く無一文だ」
男のはっきりした云い様が少し面白く晴明は何も云わず口元だけ笑って返すと男は何を思ったのか晴明に大きな声で告げた。
「金は払えんがその代り何かしよう、奇獣退治の手伝いでもいいぞ!」
「-!?」
晴明は少し驚いた顔をしてみせた。
続く
将之様に、左近衛府の方からお呼びが・・・」
御簾越しから晴明の弟子の籐哉が声を掛ける、何でも管轄内に夜盗が現れ暴れているとか何とかいうのだ、将之は晴明に一言云うとその場を去っていった。
その背を晴明と彼に助けられた男が眺める、男はぼそりと呟いた。
「将之殿も忙しいな」
「-!?将之を知っているのか?」
少し驚いたような晴明の問い掛けに男はああ、と頷き言葉を続ける。
自分は5年ほど前京に住んでいて内裏内にも出入りしその時今よりずっと若い将之を見掛け覚えているというのだ、彼は若いなりにも帝の女御、彩子同様右大臣が特に目を掛けていたので目立っていたのだ、男はずっとずっと昔の記憶を思い起こすかの様に懐かしそうに話した、晴明は少し不思議に思いながらその話を聞く。
「・・・内裏に入れたのならそれなりの身分があったのでは無いか?
何故、盗賊風情の事をしておる」
「・・・まあ、色々と事情があるんだ、陰陽師さま」
にやりと笑う男に晴明ははたと我に返る、元々自分は他人をいちい構う様な性分では無い、男の言い様が気に食わなくて晴明はその場を立つと後の事は弟子に任せて去っていった。
ここ最近晴明はずっと機嫌が悪い、やれと思いながら籐哉は男の側に腰を下ろした。
「お名前は?」
大きな眼で素直そうに聞いてくる、まだあどけなさが残る若者に聞かれ男は素直に応えた。
「・・・源 浩允(なみもとのこういん)と、申す。苗字はもう捨てたような様なものなので名だけ覚えてくれればよい」
「・・・・・・」
男の含む様な云い方は少し気になったが籐哉は特に追及することもなく粥だけ差し出して晴明から云われたように身体が動き次第立ち退いてくれる様に話した、それを聞いた男は薄く笑う。
男の微笑を籐哉は何も云わず見返した、・・・何処となく寂しい冷めた空気を感じる、もの言わぬ自分の大切な師匠もそうだ。
彼があきらかにしんどそうな元気のない時でも自分はそれが判ってもどう声を掛けていいのか分からない、彼の弟子になって以来ずっと燻り続けている悩みでもある。
―大人になると辛いことばかりなんだろうか?―
籐哉は男が粥を口元に運ぶのを眺めながらぼんやり思った。
将之たちが駆け付けた時にはもう狙われた館は火の海だった、先に駆け付けた衛府の者たちと野党、家の者たちが争いとなり結局誰かが火を放ち館は逃げそびれた者たち共々崩れ落ちたのだ。
辺りの者たちが手分けして消火活動にあたっている、まだ息のあるものは救護し手当をしたが辺りは炎と闇で混乱し次々と人が倒れていく。
「放火は大罪だってのに・・・」
こうなっては誰が火をつけたのかさえ分からない、将之は他の衛府の者たちと野党とみられるものを追ったり怪我人を助けたり、消化も手伝った、明け方近く陽の光が薄ら山の向こうから差し出す頃火は静まり館は黒く焼けた煤の姿を晒した、将之の足元にも焼けた死体が転がりそれはもう貴族だか同僚だか盗賊か判別の仕様も無かった。
その頃晴明は陰陽寮に居て今後の事を忠行たちと相談していた、池に潜む妖魔は思ったより強大で手強く皆手を焼いていたのだ。
「晴明どのでもしんどいか?」
一人の陰陽寮生がからかう訳では無く真剣に聞いてくる、晴明は特に表情を変えず静かに話す。
「・・・そうですね、巨大で力も強い、真っ向から向かっても難しいでしょう・・・」
「あの奇獣、膿の様な毒を吐く、掛けられた狩衣の端がほれ、このように破けてしもうた」
違う者がそのささくれた装束を開けた、陰陽師といっても彼らは暦を読んだり祭事にも忙しい、晴明のように皆が総て鬼に精通している訳ではないのだ。
その破れた衣を見たものは一様に息を呑み押し黙った。
「他の部署の者にも手伝ってもらったらどうだ。遠くから弓を射れば毒もあたりまい」
「それもいいがそうすれば手柄は山分け、陰陽寮には少ししか恩賞も頂けないでは無いのか?」
「そ、それは・・・」
結局話は纏まらず忠行が一喝するとまず先に迫った職務をこなし追ってこの話を取り決めることとした、やれとさすがの忠行も頭を抱え卓にもたれ込む。
晴明はそんな皆の様子を何も云わず横目で眺めながら静かにその場を去った。
澄んだ涼しい秋の夕暮れの風が通り抜ける。
帰路につく晴明は奇獣の事さえなければ気持のよい日なのにと残念に思った、池の妖魔の事、将之に助けを請おうかとも思ったが怪我でもされたらと気が引ける、頼めばあの将之の事だからきっと心安く引き受けてくれる事だろう。
晴明は心の片隅で彼の笑顔を思い出しふっと気持ちが軽く、身体の芯が温かくなった。
大事も小事もなく無く唯流れに任せて生きていけたら楽だろう・・・とそんな常ならばあまり思い付かない様な事を考える程に彼は疲れていた。
晴明が戻ると男はまだ館に居座っていた、男はあれこれ不貞腐れた様子だったが結局食事にありつけるという事でそのまま居座っていたのだ。
晴明は少しからかう様にそれ以上居るなら金を取るぞと脅すと男は薄ら笑って応える。
「それは勘弁だ、陰陽師どの。俺は全く無一文だ」
男のはっきりした云い様が少し面白く晴明は何も云わず口元だけ笑って返すと男は何を思ったのか晴明に大きな声で告げた。
「金は払えんがその代り何かしよう、奇獣退治の手伝いでもいいぞ!」
「-!?」
晴明は少し驚いた顔をしてみせた。
続く
ハロウィンの衣装を着せてみました。
たまには色も塗ってみました。
アップしてから気がついたのですが
晴明のかぼちゃの衣装の顔、アルっぽい?v
ところで、ところで、この10月は岩崎先生の新作が拝めますねvv
原作は別ですがラブストーリーだそうでとても楽しみですvv
岩崎先生はよくラブは描くの少し苦手と仰っていましたが
右を見ても左を見ても美形揃いの男性がいらっしゃる岩崎先生の作品。
その先生のロマンス作品というのは又女性読者にとって夢舞台じゃないのかな~?と思ったりしますvv
晴明様に(さらさら長髪の魔術師、スレンダーなスタイル、少し冷めたような物腰、あんまり喋らないので返って気になる存在!?)将之君(こっちも長身スタイル良しに人懐こい笑顔、超優しい)良源様(外見が常軌を逸した美形、肩とか触られたら気絶しそう)一ちゃん(髪さらさら、男前、凄い真面目)沖田さん(凄いハンサム、剣も一流、ちょっと怖そうだけどかっこいい!)隼人さん(男前、何かオーラが出ている、弟も可愛いときている、お金持ち、友人も異常に美人)篠原さん(これでもかってほどに美形、きっと色も白く、後ろに大輪の花が咲くのだろう)那珂川君(髪さらさら、見た目と違って腕にも力あり、後家事とか何でもこなしそう、物腰も柔らか、可愛い)羽佐間さん(朝起きるとベットにモーニングを運んで来てくれそう、お金持ち、優しい、ハンサム)と軽くあげても美形揃いです、他もまだまだいらっしゃるし、凄いですよね~vv。
今回のお話は又別なのでしょうけどヒロインにもヒーローにもどんな感じか考えたりして、わくわくしてます(予告では眼鏡の女性に黒髪の男性でしたv)
とても楽しみです!
たまには色も塗ってみました。
アップしてから気がついたのですが
晴明のかぼちゃの衣装の顔、アルっぽい?v
ところで、ところで、この10月は岩崎先生の新作が拝めますねvv
原作は別ですがラブストーリーだそうでとても楽しみですvv
岩崎先生はよくラブは描くの少し苦手と仰っていましたが
右を見ても左を見ても美形揃いの男性がいらっしゃる岩崎先生の作品。
その先生のロマンス作品というのは又女性読者にとって夢舞台じゃないのかな~?と思ったりしますvv
晴明様に(さらさら長髪の魔術師、スレンダーなスタイル、少し冷めたような物腰、あんまり喋らないので返って気になる存在!?)将之君(こっちも長身スタイル良しに人懐こい笑顔、超優しい)良源様(外見が常軌を逸した美形、肩とか触られたら気絶しそう)一ちゃん(髪さらさら、男前、凄い真面目)沖田さん(凄いハンサム、剣も一流、ちょっと怖そうだけどかっこいい!)隼人さん(男前、何かオーラが出ている、弟も可愛いときている、お金持ち、友人も異常に美人)篠原さん(これでもかってほどに美形、きっと色も白く、後ろに大輪の花が咲くのだろう)那珂川君(髪さらさら、見た目と違って腕にも力あり、後家事とか何でもこなしそう、物腰も柔らか、可愛い)羽佐間さん(朝起きるとベットにモーニングを運んで来てくれそう、お金持ち、優しい、ハンサム)と軽くあげても美形揃いです、他もまだまだいらっしゃるし、凄いですよね~vv。
今回のお話は又別なのでしょうけどヒロインにもヒーローにもどんな感じか考えたりして、わくわくしてます(予告では眼鏡の女性に黒髪の男性でしたv)
とても楽しみです!
一先ず休息を取った晴明は京の館に戻っていた、忠行に助けられ外傷は思いのほか軽かったが、その場に居合わせた男は一向に意識が戻らず寝たままの状態だった。
秋の茜色の夕暮れ前、将之が訪れる、彼は別宅から京に戻って始めて晴明達、陰陽寮の様子を知った。晴明がけがをしたと聞いて急いで駆け付けて来たのだ。
「晴明」
ああ、将之か、と籐哉から母屋まで通された将之はいつもどうりきちんと座っている晴明の様子を見知って安堵のため息をついた、案外元気そうだなと云うと彼は大したことはないと特に表情を変えること無く告げた、そんな晴明の横顔を将之は見つめた。
かなかなと鳥の声が遠くに聞こえる、晴明は水差しから水を小さな器に注ぐと彼に差し出した、将之は何も云わずそれを手に取ると同時晴明は少しからかう様に話す。
「酒の方が良かったか?」
「ああ、いや・・・」
そういうと晴明はにこりと笑って静かに立ち上がると何か用事の段取りを始めた、晴明の職務は自分とはまるで違っていたので彼が何らかの準備を整えていても将之にはそれが何を指すのかは一向に判らなかった、それが故忙しい彼を手伝う事も出来ず唯黙って眺めていた、言葉が過ぎるようでいて否大切な事は抜け落ちているような一面もある晴明を見てると将之は何だか歯痒い様な切ない様な不思議な気持ちになるのだった。
かたっと奥の方から音がしたので二人ははたと振り向いた、晴明がその室内の方へ足を向けたので将之も追って来る。
すぐ隣の間には几帳の奥に床を作ってありそこに一人の男が座り込んでいた。
「-!?」
「気がついたか?」
驚く様子の将之を余所に晴明はその男の側に座ると彼の容態を確かめた。
大木に頭を打ち付けた割に顔色は悪くない、痩せこけたにしては丈夫そうな男に晴明は薄く笑った。
男は自分の居場所も分からず怪訝な顔をして見せた、ついで将之が問う。
「この男は・・・」
「ああ、市での男だ、性懲り無く池に居たから奇獣の襲撃に巻き込まれて今までずっと気絶していた」
「・・・それを助けたって訳か?」
「・・・、・・・」
そのままほっておくのは何となく忍び難くてな・・・、と晴明は小さく言い捨てた、ふうん、と将之は男をまじまじと見返す、若いのに髭も生え、色黒く痩せこけた男は確かに見るにしのびない。
同情の色を見せた訳では無かったが矜持の高そうな男には二人の様子が気に入らなかったのか救護されたにも関わらず礼をいう素振りも無かった、その上・・・。
「助けてくれと頼んでなどおらん!」
男の云い様に将之と晴明は目を丸くした、元々素直に有難がるような男には見えなかったので二人は特に何も云い返さなかったが折角親友が助けた人間がその様な態度では将之からすれば面白くはない。
「ちぇ、変な奴・・・」
将之の云い様を側で聞いていた晴明は小さく笑った、むすっと拗ねくれたような男を晴明は何も云わず見返した。
何者にも頼らない、頼れない、そんな男に晴明は特に嫌悪は感じなかった、少しすると将之が晴明に自分がこの男を預かるよと言い出した。
「え?」
「俺が預かるよ、お前忙しいだろ、俺の邸は人も多いし手が足りる」
将之の云い様を晴明はふむっと聞いた後、ちらっと男の顔を見やった後将之の顔を見てからやんわり断った。
「いや、いいよ、将之。動けるようになれば適当に追い出すさ、お前の館の者に手を借りるのは些か気が引ける」
「・・・そうはいってもお前・・・」
「大丈夫、猫の仔を拾ったようなもんだ」
「猫って・・・」
猫にしては身体は大きく立派な大人の男である者を前に将之はさすがに不安になった。
夕暮れはとうに過ぎ刻々と宵闇が近づいて来る。
池の奇獣もごぼっ、ごぼっと、今は身を潜めていた。
続く
秋の茜色の夕暮れ前、将之が訪れる、彼は別宅から京に戻って始めて晴明達、陰陽寮の様子を知った。晴明がけがをしたと聞いて急いで駆け付けて来たのだ。
「晴明」
ああ、将之か、と籐哉から母屋まで通された将之はいつもどうりきちんと座っている晴明の様子を見知って安堵のため息をついた、案外元気そうだなと云うと彼は大したことはないと特に表情を変えること無く告げた、そんな晴明の横顔を将之は見つめた。
かなかなと鳥の声が遠くに聞こえる、晴明は水差しから水を小さな器に注ぐと彼に差し出した、将之は何も云わずそれを手に取ると同時晴明は少しからかう様に話す。
「酒の方が良かったか?」
「ああ、いや・・・」
そういうと晴明はにこりと笑って静かに立ち上がると何か用事の段取りを始めた、晴明の職務は自分とはまるで違っていたので彼が何らかの準備を整えていても将之にはそれが何を指すのかは一向に判らなかった、それが故忙しい彼を手伝う事も出来ず唯黙って眺めていた、言葉が過ぎるようでいて否大切な事は抜け落ちているような一面もある晴明を見てると将之は何だか歯痒い様な切ない様な不思議な気持ちになるのだった。
かたっと奥の方から音がしたので二人ははたと振り向いた、晴明がその室内の方へ足を向けたので将之も追って来る。
すぐ隣の間には几帳の奥に床を作ってありそこに一人の男が座り込んでいた。
「-!?」
「気がついたか?」
驚く様子の将之を余所に晴明はその男の側に座ると彼の容態を確かめた。
大木に頭を打ち付けた割に顔色は悪くない、痩せこけたにしては丈夫そうな男に晴明は薄く笑った。
男は自分の居場所も分からず怪訝な顔をして見せた、ついで将之が問う。
「この男は・・・」
「ああ、市での男だ、性懲り無く池に居たから奇獣の襲撃に巻き込まれて今までずっと気絶していた」
「・・・それを助けたって訳か?」
「・・・、・・・」
そのままほっておくのは何となく忍び難くてな・・・、と晴明は小さく言い捨てた、ふうん、と将之は男をまじまじと見返す、若いのに髭も生え、色黒く痩せこけた男は確かに見るにしのびない。
同情の色を見せた訳では無かったが矜持の高そうな男には二人の様子が気に入らなかったのか救護されたにも関わらず礼をいう素振りも無かった、その上・・・。
「助けてくれと頼んでなどおらん!」
男の云い様に将之と晴明は目を丸くした、元々素直に有難がるような男には見えなかったので二人は特に何も云い返さなかったが折角親友が助けた人間がその様な態度では将之からすれば面白くはない。
「ちぇ、変な奴・・・」
将之の云い様を側で聞いていた晴明は小さく笑った、むすっと拗ねくれたような男を晴明は何も云わず見返した。
何者にも頼らない、頼れない、そんな男に晴明は特に嫌悪は感じなかった、少しすると将之が晴明に自分がこの男を預かるよと言い出した。
「え?」
「俺が預かるよ、お前忙しいだろ、俺の邸は人も多いし手が足りる」
将之の云い様を晴明はふむっと聞いた後、ちらっと男の顔を見やった後将之の顔を見てからやんわり断った。
「いや、いいよ、将之。動けるようになれば適当に追い出すさ、お前の館の者に手を借りるのは些か気が引ける」
「・・・そうはいってもお前・・・」
「大丈夫、猫の仔を拾ったようなもんだ」
「猫って・・・」
猫にしては身体は大きく立派な大人の男である者を前に将之はさすがに不安になった。
夕暮れはとうに過ぎ刻々と宵闇が近づいて来る。
池の奇獣もごぼっ、ごぼっと、今は身を潜めていた。
続く
妖魔が出るという泉に深夜訪れた晴明の目の前に見覚えのある男が映った。
男は長身にやせ細った体つきをしていて乱れた黒髪を後ろで一つに束ねている、闇夜の中、男は泉のほとりから身を寄せ静かに潜もって行った、その様子を晴明は見えぬ漆黒の間、目で追う。
「・・・」
見知らぬ男は宝を探すと云っていた男である、晴明は男の消えた水の先を目をこらして見つめ返す、程なくして男は木の枝だかなんだかを抱え上げ浮き上がって来た、細い小枝には珠の様な数珠が引っ掛かっている、晴明はそれを目にして男の側までやって来た、男は晴明に驚くようなそうでない様な顔をして見せた。
「・・・、よお、この間の陰陽師どの」
「・・・・・・、貴殿何をしている」
晴明が問うより先に男は今までに拾い上げた少しの銀なり、珠を見せた。
闇の中それははっきりと見えたものでは無いが命懸けで探し出すには少し分が悪い。
晴明はいつ奇異、怪異な魍魎が現れるともしれない池でろくでもない事をしている男に心底苛立った。
「早くここから去れ、死んでも知らんぞ」
晴明の言いようを男は不思議そうなものを見る目つきで見返した、伸ばされた晴明の手も取らず唯彼の顔を見つめ返す、雲の間から月が顔を出すと晴明の神々しいばかりに美しい容姿も照らし出される、それでも男は黙ってそれを眺め続けた。
「!?」
男の様子を怪訝に思う間も無く泉の奥から轟音が轟いた、それは大きな大きな白竜の形を帯びた恐ろしい奇獣の現れであり奇獣は男の盗みを鬼のように怒り、責めたてるかの様に大きく吠えると泉の向こうから恐ろしい速さで此方に向かって来る。
「いかん!」
晴明は急いで障壁の陣を作り出したが魔獣の勢いはそれを蹴破り二人は辺りに投げ飛ばされた、泉の周りは木々や小さな岩場、大地があり晴明は砂煙りに撒かれながら地に平伏し男は大木にしこたま背を打ち付けるとそのまま下へ崩れ落ちた。
「・・・!」
あちこちを打ちつけながらそれでも晴明は体勢を整え直すと今度は攻撃的な呪を白竜に向かって放った、それはちゃんと的を得たにも係わらず奇獣にたいした負傷を負わせず竜は更にいきり立ち緑色の毒を吐いた。
「―!!」
間一髪晴明は瘴気の毒液を避けると男の倒れた方へなだれ込んだ、装束の裾に少し瘴液が掛かりそこからはぶすぶすっと少し布の焼けた臭いがした。
あまりに大きな鬼獣を相手にさすがの晴明も息をのむ。
傍らの男が目を覚まし晴明にゆっくり振り返った、晴明の背後から竜は大きく雄叫びを鳴らしながら飛び掛って来た。
身構える隙も無く襲い掛かった奇獣に二人は成す術も無い時頭上に真っ白い閃光が走る。
「-!?」
ぎゃああああああああああああああああぁぁぁ!!!と竜は獰猛な咆哮を上げるとずぶっ、ずぶっとその身を我が生息地である池の中にゆっくり身を潜め始めた。
~おのれぇ
~おのれぇ 許さん 許さん
~呪い殺してくれようぞぉぉぉぉぉ ~
奇獣は怨み言を唱えながら姿を消し去った、後にはぷくん、と緑色の泡が数泡浮いている。
晴明は一瞬の眩い光で余計見えにくくなった闇の中目を凝らした、辺りにはよく見知った師匠や陰陽寮の者たちの声が聞こえた。
「師匠」
「大丈夫じゃったか?晴明」
晴明は元より今回の退魔には大勢の者が関わっていた、下見に行った晴明の異変に逸早く気がついた忠行が指折りの陰陽師を数揃え彼を助けるべく自分も加わった上で大きな呪を放ったのだ。
晴明を支えた忠行の横に居る保憲は彼の視線が後方の方へ向いているのを不思議に思った、その先を見返すと一人の男が木の根に蹲っている。
「彼は?」
晴明は何とも云えぬ表情をした後、知りません、と小さく呟きそして彼を保護してもらえる様に頼んだのだった。
ぼろぼろの枝っきれの様に細く汚い男は宝が欲しいと言って以前笑い
小さな珠の欠片を見つけ、自分の救いの手を不思議そうに見つめ、そしてそれを
手に取ることは無かった。
男の行動を晴明は理解出来なかった。
一方、遠く離れた京の野山の麓にある別宅に将之はすみれを招いていた、晴明が云う様に素直に一度外で会ってみようと思ったのだ。
本当なら昼間に邸近くで覗いて見たり逢瀬をしてもよいのだが事が更に公になるのを将之は嫌いすみれとはこそこそっと数回逢った、相手に恋愛感情が無く逢うのは面倒だが断るのは何となく気まずいな・・・、もっと面倒だという一見摩訶不思議な状態に将之は陥っていた。
「将之様」
先程までの鬱蒼とした雲はさーっと流れ真白い月が煌く。月光の輝きは御簾の向こうからも差し込んで来た、さすがに夜道を歩くのは気が引けたので母屋の方ですみれと逢った、彼女は将之の意図を知らず別宅に呼びつけたのは粋な逢瀬の計らいだと喜んだ。
朗らかで美丈夫な姫が微笑むと将之も少し嬉しい気がした。
月は生まれ変わる様に真白く真新しい光を放っている。
続く
男は長身にやせ細った体つきをしていて乱れた黒髪を後ろで一つに束ねている、闇夜の中、男は泉のほとりから身を寄せ静かに潜もって行った、その様子を晴明は見えぬ漆黒の間、目で追う。
「・・・」
見知らぬ男は宝を探すと云っていた男である、晴明は男の消えた水の先を目をこらして見つめ返す、程なくして男は木の枝だかなんだかを抱え上げ浮き上がって来た、細い小枝には珠の様な数珠が引っ掛かっている、晴明はそれを目にして男の側までやって来た、男は晴明に驚くようなそうでない様な顔をして見せた。
「・・・、よお、この間の陰陽師どの」
「・・・・・・、貴殿何をしている」
晴明が問うより先に男は今までに拾い上げた少しの銀なり、珠を見せた。
闇の中それははっきりと見えたものでは無いが命懸けで探し出すには少し分が悪い。
晴明はいつ奇異、怪異な魍魎が現れるともしれない池でろくでもない事をしている男に心底苛立った。
「早くここから去れ、死んでも知らんぞ」
晴明の言いようを男は不思議そうなものを見る目つきで見返した、伸ばされた晴明の手も取らず唯彼の顔を見つめ返す、雲の間から月が顔を出すと晴明の神々しいばかりに美しい容姿も照らし出される、それでも男は黙ってそれを眺め続けた。
「!?」
男の様子を怪訝に思う間も無く泉の奥から轟音が轟いた、それは大きな大きな白竜の形を帯びた恐ろしい奇獣の現れであり奇獣は男の盗みを鬼のように怒り、責めたてるかの様に大きく吠えると泉の向こうから恐ろしい速さで此方に向かって来る。
「いかん!」
晴明は急いで障壁の陣を作り出したが魔獣の勢いはそれを蹴破り二人は辺りに投げ飛ばされた、泉の周りは木々や小さな岩場、大地があり晴明は砂煙りに撒かれながら地に平伏し男は大木にしこたま背を打ち付けるとそのまま下へ崩れ落ちた。
「・・・!」
あちこちを打ちつけながらそれでも晴明は体勢を整え直すと今度は攻撃的な呪を白竜に向かって放った、それはちゃんと的を得たにも係わらず奇獣にたいした負傷を負わせず竜は更にいきり立ち緑色の毒を吐いた。
「―!!」
間一髪晴明は瘴気の毒液を避けると男の倒れた方へなだれ込んだ、装束の裾に少し瘴液が掛かりそこからはぶすぶすっと少し布の焼けた臭いがした。
あまりに大きな鬼獣を相手にさすがの晴明も息をのむ。
傍らの男が目を覚まし晴明にゆっくり振り返った、晴明の背後から竜は大きく雄叫びを鳴らしながら飛び掛って来た。
身構える隙も無く襲い掛かった奇獣に二人は成す術も無い時頭上に真っ白い閃光が走る。
「-!?」
ぎゃああああああああああああああああぁぁぁ!!!と竜は獰猛な咆哮を上げるとずぶっ、ずぶっとその身を我が生息地である池の中にゆっくり身を潜め始めた。
~おのれぇ
~おのれぇ 許さん 許さん
~呪い殺してくれようぞぉぉぉぉぉ ~
奇獣は怨み言を唱えながら姿を消し去った、後にはぷくん、と緑色の泡が数泡浮いている。
晴明は一瞬の眩い光で余計見えにくくなった闇の中目を凝らした、辺りにはよく見知った師匠や陰陽寮の者たちの声が聞こえた。
「師匠」
「大丈夫じゃったか?晴明」
晴明は元より今回の退魔には大勢の者が関わっていた、下見に行った晴明の異変に逸早く気がついた忠行が指折りの陰陽師を数揃え彼を助けるべく自分も加わった上で大きな呪を放ったのだ。
晴明を支えた忠行の横に居る保憲は彼の視線が後方の方へ向いているのを不思議に思った、その先を見返すと一人の男が木の根に蹲っている。
「彼は?」
晴明は何とも云えぬ表情をした後、知りません、と小さく呟きそして彼を保護してもらえる様に頼んだのだった。
ぼろぼろの枝っきれの様に細く汚い男は宝が欲しいと言って以前笑い
小さな珠の欠片を見つけ、自分の救いの手を不思議そうに見つめ、そしてそれを
手に取ることは無かった。
男の行動を晴明は理解出来なかった。
一方、遠く離れた京の野山の麓にある別宅に将之はすみれを招いていた、晴明が云う様に素直に一度外で会ってみようと思ったのだ。
本当なら昼間に邸近くで覗いて見たり逢瀬をしてもよいのだが事が更に公になるのを将之は嫌いすみれとはこそこそっと数回逢った、相手に恋愛感情が無く逢うのは面倒だが断るのは何となく気まずいな・・・、もっと面倒だという一見摩訶不思議な状態に将之は陥っていた。
「将之様」
先程までの鬱蒼とした雲はさーっと流れ真白い月が煌く。月光の輝きは御簾の向こうからも差し込んで来た、さすがに夜道を歩くのは気が引けたので母屋の方ですみれと逢った、彼女は将之の意図を知らず別宅に呼びつけたのは粋な逢瀬の計らいだと喜んだ。
朗らかで美丈夫な姫が微笑むと将之も少し嬉しい気がした。
月は生まれ変わる様に真白く真新しい光を放っている。
続く