ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

改憲議論をすることには賛成だが、改憲は受け入れられないと思う。

2016-07-15 11:22:18 | 社会

参議院選挙の結果、改憲勢力が2/3に達し、国会で憲法改正を発議できる状況になった。これから改憲の議論が始まることだと思う。私は国会で会見の議論をすることに関しては大いにやるべきだと思っている。自民党が言うように現在の日本国憲法は日本国民が賛成して作ったわけではなく、上から与えられたものなのでそれで良いのかを見直すことには大いに意義があると思う。その一方で国民投票にかけられた場合に賛成多数となる可能性は極めて低いという感触を私は持っている。

そもそも、国民投票はどんな形になるのだろうか?

2択だと思われるので、A案は現行憲法のまま、B案は新しい憲法素案ということになるのだろう。自民党は自主憲法を制定すべきとして自民党案をホームページに掲載している。私はちょっと見たのだが自主憲法なので101条ある現在の憲法の全てに手を入れるような形になっている。最初のほうを見ただけで熟読したとは言えないのだが私には到底受け入れられないと感じた。私の印象では天皇を敬い、親を敬い、地域で仲良くするという戦前の精神をベースとして、現代社会に合わせて調整した、という感じである。天皇制にしても天皇の地位を象徴から元首と強化するような感じになるし、国旗や国歌も国を表すものとして敬うべき、という感じになっている。元々私は君が代の歌詞には違和感を持っている。民主主義国の精神を表すのに適当ではないと思っているが、君が代の地位を高めたいというのが自民党案になっている。

丁度、天皇が生前退位の意向を示された、と大きく報道されている。私は、自民党よりも天皇本人のほうが、自分の立場をよく理解していて、私心なく国民の幸せを願っているように思う。自民党側にはむしろ下心を感じる。平成天皇も、昭和天皇も人格者であり、「ノブレスオブリージュ」とはこういうことか、と感じさせてくれる。生前退位については真剣に考えたほうが良いと思うが、地位を強化する必要は無いと思う。

こういう気に入らない部分があると、中心的な話題になっている9条の改正には賛成だったとしても全体として反対に回ってしまう。安倍総理も自民党案をそのまま押す気はないようだが、原形をとどめないくらいに簡素化しないと国民に受け入れられる案にはならないと思う。

それでも、憲法全体について国会で議論することには大きな意義があると思う。皆が憲法の内容を改めて知り、自分たちの価値観はどこにあるのかを見直すきっかけになるだろう。今回は改正するにしてもごく一部の実情に合わない部分にとどめ、20年後くらいを想定して、自主憲法案を考えるのが良いと思う。このブログに何度か書いたように、技術のあまりに早い進歩により自由・民主主義・競争・資本主義というパッケージの社会理念がほころび始めている。競争主義では敗者が多く出すぎてしまう。しかし、国内で競争を抑圧すると体力が落ちて、国の間で競争しているグローバル経済で負け組になってしまう。この矛盾した問題を解くような社会理念が必要で、しかもそれを他国に押し付けることはできない。

20年後くらいを目指して何度も改訂を繰り返して新憲法草案を作り、現行憲法か、新憲法かの国民投票を目指すのが良いのではないだろうか。

20年もあれば現在の社会システムの問題点は一層顕著になってきていると思う。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『ラ・マルセイエーズ』… (UCS-301)
2016-07-15 20:33:28
改憲についてはウィトラ様と全く同意見です。変更が複雑になりすぎると理解されないまま国民投票が実施されるように思います。安保法案が良い例なのですが、仮に国民投票を行った場合、賛成が過半数を超えていたとは思えません。しかも国民投票が半々に割れた場合、どちらに転んでも、英国のEU離脱どころではない混乱が生じるものと予想されますので、国民投票によって過半数で決まるというのはかなり危険のように思います。安倍首相も改憲には慎重になっているはずです。

本論とは離れますが、『君が代』については少し異なる印象を持っています。日本は民主主義の側面も持っていますが立憲君主制の側面も持っていると考えるためです。さらに、日本国憲法にもある通り「天皇は、日本国の象徴」であるとするならば、『君が代』は必ずしも一個人を讃える歌にはならないとの認識です。比較するのもどうかと思いますが、フランス国家の『ラ・マルセイエーズ』には「王党派ブイエ将軍一味を皆殺しにしろ」という意味の物騒な歌詞を含みますので、これに比べたら『君が代』は随分と上品です。自民草案を擁護するわけではありませんが、小学校で『君が代』を教えないなど、国歌も含めて日本の国家観が蔑ろにされ過ぎだと思います。(ただ、憲法に書くのは行き過ぎというか、「そこまでしないと国家観を保てないのか?」という意味で、むしろ恥ずかしいのですが…。)

これも本筋ではないのですが、「国の間で競争しているグローバル経済…」と仰られている点についてです。グローバル経済は”国の間”の競争というより国を超えたところに問題点があるように思います。極端な例を示しますと、金持ち(グローバリスト、グローバル企業)は課税逃れ目的でた易く国籍を替えるということです。そして金儲けのためには国の縛りが邪魔とする人たちがグローバリストだと思っています。現代では”国家vs.国家”の側面より”国家vs.超国家”の側面が強いのではないでしょうか。

個人的には、憲法改正は少なくともTV地上波及び新聞の影響(つまり、敗戦による既得権益者の影響)が今よりだいぶ少なくなってからでないと無理だし、危険だと思っています。少なくとも、自民草案の「前文」に”先の大戦”という文言が入っているようではダメな気がします(戦後レジームから脱し切れていないという意味で)。自民草案で良いと思う点は、古くからの歴史を勘案しているという意味で、”全102条”(17の倍数)としたところくらいでしょうか…。

※「生前退位」の報道のされ方は本当に酷いと思います。(NHKを筆頭に)勘違いしたマスコミの暴走というほかありません。民進党の有田芳生氏がNHKの発表前にフライングしてツイートしているのも不思議です。もし陛下の意向が本当の話(おそらく本当だと思いますが)でもリークして良い話ではありません。そしてリークタイミングはわざと都知事選の告示直前です。「◯◯関係者」というのもマスコミのいつもの手口ですし、「生前退位」という造語もどうかと思います。
返信する
改憲するには… (UCS-301)
2016-07-16 15:13:34
これは自民党目線(安倍総理目線?)かも知れませんが、改憲するには自民党以外の政党でも納得するような条項(つまり9条以外)から改正してみるのが良いかと思っています。あえて与党に不利、野党に有利な条項でも良いと思います。

自民党は「改憲」と「9条」という2つの大きなハードルを一度に越えようとしていますが、「9条」のハードルはマスコミの影響力もあり、今の所かなり困難です。

先ずは現実的に「改憲」可能なことを示す方が、ハードルは低いと思いますし、参院選挙によって改憲の意識が高まっている今がチャンスだと思います(各党争点にはしていなかったのにマスコミが勝手に盛り上げました)。

最悪でも米国が基地撤退する前までに「9条」に踏み込めれば、なんとかなるのではないかと思います。(その前にチャイナは収縮しているかも知れませんが…。)
返信する
「退位」に関する共同通信の記事… (UCS-301)
2016-07-17 16:50:10
共同通信が7/16付けで『天皇陛下、早期退位想定せず 公務「このペースで臨む」』と伝えていますが、NHKの時とは反対に、主要メディアは殆ど取り上げていません。(あまりに大騒ぎしたので、すぐに真逆の報道はできないのでしょう。)

こちらのソース提供も例によって政府「関係者」ということです。(政府が沈静化を図ったとも言えます。)

「陛下は憲法や皇室典範を遵守される方なので、ご自分の意見を示されることはない」と分かっていれば、今回のような報道にはならないはずです。

陛下のお気持ちを慮ることこそが偽りになるということだと思います。(そういう私自身も慮っているのですが…。)
返信する
グローバル経済で気になるのは国家 (ウィトラ)
2016-07-17 17:14:15
USC-301 さんのコメントにほぼ同意できると思っていますが、グローバル化については違う見方をしています。
経済のグローバル化に関して大きな国では中国とロシアが明らかに他の国とは違う動き方をしています。具体的には国家としての利益を前面に押し出してきている点です。
こういう国のないG7の世界のような中では話し合いで大金持ちの脱税を取り締まれば良く、それは大きな問題にはならないと思っています。実際にG7の中ではそのような方向に動き始めています。
しかし、中国は明らかに異なった価値観で動いており、民間で貿易を進める一方、自国の富をなりふり構わず拡大しようとしています。こういう国が富を集めて世界第1位になると、大きな問題になると思っています。
仮に今の中国が経済的に破たんしたとしても、このような国家主義の国は簡単には無くならないので、異なる考え方をする国がいる中で、グローバル化を進めていくのが難しい点だと思っています。

鎖国をすれば経済競争に負けて国が衰えていくのは間違いないと思います。
返信する

コメントを投稿