ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

GoogleのAI囲碁がプロ棋士に勝利のインパクト

2016-02-25 09:22:09 | 囲碁

Goopleが開発した囲碁のプログラムがプロ棋士に勝利した。5戦5勝だそうである。プロ棋士と言ってもヨーロッパのプロ棋士だから日本のプロ棋士に比べれば大分落ちるのだろうが、その棋譜を見て私自身「これは自分より強そうだ」と思った。数年前までは「強いと言ってもまだ人間に比べると大分劣る。自分なら勝てるだろう」と思っていたのとは大きな違いである。来月には世界的なトップ棋士である韓国のイ・セドル氏と戦うそうだから、これに勝てば日本の名人もかなわないとみて間違いない。

Googleの囲碁プログラムが強くなったのはディープ・ラーニングというAIの手法を用いてポリシーネットワークとバリューネットワークを開発したからだという。ポリシーネットワークとはある局面で可能な候補の手数をその時の石の配置を見て絞り込むもので、教師付き学習でプロ棋士同士の棋譜を入れるなどして学習させた。バリューネットワークとは形勢を判断するものでこれによって何手先まで読んで、読みを打ち切るかを決める。これにモンテカルロ法というシラミ潰し的に読みを入れる従来の手法を組み合わせる。

私自身囲碁のプログラムを作ってみたことがあるのだがその時の経験からすると、このバリューネットワークがとても作れそうにない、という感じだった。最後まで読み切って勝ちと分かればその手を選択すればよいのだがそれは現実的には不可能なのでどこかで読みを打ち切らなくてはならない。自分自身、ある程度で読みを打ち切っているのだが、それが1手先の時もあれば30手先の時もある。プロ棋士も同じだと思う。そこをどうして決めているのかを自分自身「言語化できそうにない」と感じたものである。

これには経験から来るルールが必要である。つまりある局面があって次の手を決めるのだが、その手に対して相手が応じないとひどいことになる「重要な次の手」がある場合には読みを継続しなくてはならない。そしてそういった継続的「重要な次の手」がなさそうな場合に「一段落」と判断してその時に優勢かどうかを判断する、というのが人間のやっていることで、「重要な次の手」がありそうかどうかを形で判断してありそうだと思えば時間をかけて読みを入れる。つまりプロ棋士は形から「重要な次の手」がありそうかということを石の配置から判断するルールとして持っているのだが、このルール形成を教師付き学習で実現したというのが今回のGoogleのプログラムの特徴になると思う。

これはあらゆる分野に応用できる。裁判官の判決を出す判断のベース、医師の検査データからの診断の判断、金融専門家の投資判断など現在高収入を得ている人たちの判断がコンピュータにかなわなくなる日も近いだろう。その中でも一流の人たちは独自のルールで判断しており他の人が着眼していない判断ルールを持っていてこのデータを学習させることはなかなか難しいと思うが、2流の人たちの判断はあっさりとAIに負けるようになると思う。

現在世界では中間層の没落が言われているが、これからは中間層の上位、富裕層の下位の没落が大きな問題となると思う。


IoTへの取り組みに見る経産省と総務省の力量の差

2016-02-24 18:49:48 | 社会

IoT(Internet of Things)はこれからの経済活動のあらゆる分野に影響を与えるとして、大きな注目を集めている。日本はIoTに出遅れていると以前から指摘されていたが、昨年の秋ごろから日本政府の取り組みも始まった。

総務省では「IoT政策委員会」が立ち上がり学識経験者を集めて議論が始まっている。経済産業省では「新産業構造部会」が立ち上がり、IoTによって将来の産業構造にどういう影響が出るか、産業構造がどう変わるかの検討を開始している。

どちらもまだ検討中で審議のさなかであるが、これまでのWebに掲載された資料を見る限り、総務省と経産省の力量に大きな差を感じる。経産省が上、総務省が下である。IoTへの取り組みを議論するときに情報通信分野は総務省の扱いなので直接的な「IoT政策」は総務省で審議し、もっと広い全体的な視点を経産省が受け持つことになったのだと想像しているが、総務省の視点が狭すぎて話にならないという印象である。

総務省の「IoT政策委員会」の印象はNTTに取りまとめを頼んだような感じで通信オペレータからの視点ばかりが取り上げられている印象である。こんな委員会でIoTの政策を決められたら日本のIoTは大きく出遅れてしまうだろう。委員としてはオペレータばかりではなくそれなりに幅広い分野からのメンバーが入っているのだが他のメンバーは何をしているのか、という感じである。

一方、経産省の「新産業構造部会」のほうはしっかりしている。これまでは現状分析と課題の洗い出しが中心だが、世界の情勢、日本企業の現状などを的確にとらえてIoTの社会に与える影響や日本としての課題を見事に洗い出している。これから、対応策が出てくるのだろうが、対応策は私が期待しているようなものにはならない雰囲気であるが、かなりまともなものになりそうである。

経産省がすごいというよりも、総務省の認識の低さというか視野の狭さに呆れている。


薄気味悪いアメリカ大統領選挙の状況

2016-02-21 17:58:27 | 社会

アメリカでは現在、大統領選挙の前哨戦として共和党、民主党の候補者選びが進行している。共和党では大きな話題となっているトランプ氏が健闘している。同氏の問題発言は改めて取り上げるまでもなく数多く、まともに大統領の職責を果たせるとは思えない。良くてイタリアで以前首相をやったがその後逮捕されたベルルスコーニ氏のような感じだろうと思う。場合によってはそれより悪くなる可能性がある。まさかと思っていたが、これまで予備選挙の行なわれた3州の内で2州で勝っているのだから、このままいくかもしれない。

民主党はヒラリー・クリントン氏の楽勝かと思っていたらここへきてサンダース氏が善戦している。私にはこちらも、大統領職をこなせるように思えない。私にはトランプ氏は右寄りの、サンダース氏は左寄りのポピュリストに感じられている。この二人が大統領候補者になったらどちらが最終的に勝ったとしても世界にとって大きな問題となるように感じている。

アメリカに限らずヨーロッパでもポピュリスト政党が力を増やしている。ここで、ポピュリストとは何かということになるが、一般大衆に受けの良いことを言う政治家というのが一般的な定義のようだが、私は実現性を深く考えず(自らの政策の負の面を検討せず)、受けの良さそうなことを言う人、ということになる。「受けは良いのだが、、いざその政策を実行しようとすると、副作用が大きくかえってマイナスになるようなことを平気で言う人」というのが、私のポピュリストの定義である。その意味では鳩山、菅の二人の民主党の元総理はポピュリストであったと思っている。

アメリカ国民は良識を持っていると思っていたが、トランプ氏が実際にここまで得票を重ねるのを見ていると、アメリカ社会においても閉塞感を感じている人は相当に多いのだろうと思う。現在アメリカは景気が良くなっているといわれているが、景気が良くて将来にもあまり心配なければ、あのような極端な言動に賛成するとはとても思えない。アメリカの将来に対する不安を、「よそ者を排除」する形で実現するのは、アメリカにとっても決して得策になるとは思えないのだが、それだけ追い込まれている人が多いということなのかもしれない。民主党側でサンダース氏の人気が急に上がってきたのも同じような理由ではないだろうか。

ピケティの言う「格差の拡大」による心理的不安は私が想像するよりはるかに深刻なのかもしれない。もしそうだとすると、資本主義の見直しを急がないといけないのかもしれない、と思う。


日本のメディアの価値観

2016-02-14 08:59:22 | 生活

私は日曜日の朝は、「がっちりマンデー」から続いて「サンデーモーニング」とTBSを見ている。サンデーモーニングは一週間のニュースを整理してくれるので頭の整理に良い番組だと思っている。今週のサンデーモーニングは北朝鮮のミサイル発射、自民党の様々な発言、世界経済の変調と続いた。北朝鮮のミサイルの問題は大きな問題なのだがコメンテーターの大部分が「うまく対話をしてほしい」というような言い方をするのが気に入らない。対話ができない相手だから制裁などをやっていることは誰の目にも明らかであり、対話を望むなら「こうすれば対話ができるのではないか」という言い方をするべきだろうと思う。特に制裁に批判的な意見を言う場合にはその準備が必要だろうと思う。現時点で対話ができそうなのは中国だけであるが、中国に任せておいて良いのかが、大きな問題で私は制裁は必要だと思ている。

次にできてた話題が、自民党議員の不倫問題や、「歯舞」を読めなかった大臣の話、総務大臣の電波停止の可能性の話である。これらは実に小さな問題であり、こういう問題が国会で大きく取り上げられていること自体が、日本の国会のレベルの低さを示していると思う。総務大臣の「電波停止発言」はテレビ局にとっては大問題だが発言内容を聞いてみるとそんな意思は感じられず、むしろ野党の上げ足取りだと感じた。

TBSはこのような細かい自民党の発言が世界株安よりも重要だと考えているらしい。問題の大きさでいうと円高、株安のほうが比較にならないくらい大きな問題であるのに、経済問題を軽んじている感じがしている。株価は思惑で動くものだが、円高は深刻だと思う。為替が1ドル110円あたりで定着するようなら、日本景気はまた不景気に落ち込むだろうと私は思っている。

他にアメリカの大統領選挙や、ヨーロッパの難民問題、台湾の地震、重力波の観測など世界的には大きな問題があるが、これらが後に回されたのは理解できる。難民の議論はテレビでもいろいろ取り上げられているのだが、日本に来ているわけではないので、殆どが第3者的に話している。日本だったら受け入れるか、という視点でもっと議論をするべきだろうと思う。今は直接難民が日本に向かっているわけではないのでまだ冷静に議論ができる。この段階で自分たちのところに難民を受け入れられるか、受け入れるための条件は何か、を議論しておくことが重要だと思う。


グーグルの時価総額

2016-02-11 16:48:12 | 経済

今月の初めころ、グーグルの持ち株会社AlphabetがAppleを抜いて世界の時価総額ランキングで1位になったというニュースが流れた。今はAppleが抜き返してApple1位、Google2位ということになっているがいずれにせよ私にとっては大きな驚きだった。この現象はAppleの減産が報じられて株価が下がったことと、原油安でオイルメジャーのExxonの株価も下がっていることが大きく影響していることは間違いないのだが、Googleのビジネスモデルからして時価総額世界1位になるような会社ではないと私は考えていたのである。

良く知られているようにGoogleの収入源は広告収入である。一般消費者はGoogleのサービスを利用はしていてもお金は払っていない。Googleは企業からお金をもらうB2Bのビジネスモデルなのだが、どの会社でも広告費は予算の中ではごくわずかであり、それを世界中からかき集めたとしても世界1の会社になれるとは思えなかったのである。実際利益額ではAppleのほうがかなり多く、Appleの利益は四半期で1兆円を超えるのに対して、Googleはその7割程度である。しかし、殆どが広告収入でここまで利益を出すのは驚きである。Googleは様々な研究開発を行っており、囲碁のプロに勝った(ヨーロッパ人)という話も出ているのでその分プレミアムがついているのだろう。

元々大きな産業ではない広告業界でこのような巨人が現れて他の広告業界は困っているのだろうか? Googleはそれまでなら広告を出せなかったような中小企業も広告を出せるように業界をむしろ活性化しているのだろうか? このあたりのGoogleの影響力についても一度調べてみたいと思っている。

一般消費者でGoogleにお金を払っている人はごくわずかだと思うが、私は今年からGoogleの有料サービスを利用することにした。その気持ちの背景には「これだけGoogleのサービスを日々使っているのだから少しくらい払っても良い」という気分はあったことは否めない。無料でもそこそこのサービスを受けられるのだが有料なら信頼性が上がるのではないかと思ってのである。しかし現在、こういったGoogleの有料サービスのユーザーはどれくらいいるのだろうか? ごくわずかではないかという気がしている。

家にインターネット回線を引くとポータルサービスというのに加入しなくてはならない。これはNTTコムとかBiglobeとかいう日本のプロバイダーから選ぶことになっているのだが、この選択肢の中にGoogleが入っていれば私は間違いなくGoogleを選ぶと思う。そもそもプロバイダーが何かしてくれているという実感がないので、契約をしないといけないということに違和感を持っている。Googleがプロバーダー事業をやらないのには何か理由があるのだろうか? これもGoogleに関する疑問である。私の感性が古いからかGoogleには分からないことが多く、ミステリアスな企業というイメージを持っている。


新しい生活パターン

2016-02-04 09:31:05 | 生活

今年に入って一ヶ月が経過し、新しい生活パターンに私自身が大分馴染んできた。

大学に行かなくても良くなるのでかなり時間の余裕ができるだろうと想像していたのだが、実際は顧問の仕事の関係が結構あり、思ったよりも忙しく過ごしている。今月は色々な人に挨拶などをしていたので忙しかったという面もあるが、私自身が興味を持っている業界の会合が結構あり、2月に入れば仕事が減るということにはならないと思う。

大学の仕事もまだ残っており、1月中は木曜日は大学ということにしていた面もある。大学は今日、私が指導していた修士の学生の発表があり、それが終わると部屋を片付けて鍵を返却して大学の仕事は基本的に終わりとなる。大岡山に来ることも少なくなると思うので今日は大岡山周辺を散策してみようと思っている。大学の仕事が終わってもそれを埋める仕事は十分に入ってきそうである。

この一ヶ月でかなりの数の新たに知った人ができた。一度会って、後はいつ合うかわからないという感じではなく、今後も継続的に付き合いを続けそうな人達が多く、新しいコミュニティに入った感じである。自分としては過去の蓄積が生きる分野で、比較的スムーズに新しいコミュニティに入れたという感触を持っており今後しばらくは充実した生活をして行けそうに感じている。

今年は時間をかけようと思っていた囲碁に関しては、詰碁の本を読んで実際に問題を解くことで少しずつ錆が取れてきている感じがしている。三ヶ月くらいすれば結果が出てくるのではないかと思っている。


マイナス金利をどう見るか?

2016-02-01 09:10:23 | 経済

金曜日の1月29日、日銀がマイナス金利を発表した。最近の円高、株安に対しての対策として打ち出したものである。この日、株価は一旦上がって、その後大幅に下がり、その後またかなり上がって、最終的には日経平均が400円以上上がって引けた。この方針は日銀の中でも意見が割れており5対4の際どい決定だった。

マイナス金利と言っても我々の預金がマイナスになるわけではない。銀行が日銀に預けている預金のうちの一部をマイナス金利にするというものである。具体的には日銀への預金を基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高の3段階に分け基礎残高は+0.1%の金利、マクロ加算残高は0%の金利、政策金利残高は-0.1%の金利にするとしている。基礎残高とはこれまでにすでに預けていたもの、マクロ加算残高は日銀が判断して必要と認めるもの、政策金利残高はマクロ加算残高を超えた預金、ということになっており、実際の影響はそれほど大きくはない。むしろ「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」という表現のほうが影響が大きそうである。

この日銀の決定に対する経済界の評判はあまり良くない。「これで実体経済が良くなるとは思えない」とか「日銀は打つ手が無くなってついにマイナス金利を始めた、と思われる」とか、「一週間前には『やらない』といっていたことを始めるのでは信用されなくなる」とかいった否定的な意見がテレビでは多く語られている。前回、2014年10月末に発表した「国債買い入れなどによる通貨供給を増やす」、と言ったときには好意的反応が多かったのとは対照的である。

私の印象は「黒田さん、考えたな」という感じで好意的に受け止めている。今回のマイナス金利は「日銀に預けないでください」というメッセージであり、銀行にとって好ましくない内容なので銀行の影響を大きく受けているエコノミストから否定的な反応を受けているのだと理解している。先日、「これ以上の金融緩和は効果がないのではないか」と書いたばかりだが、今回は通貨供給量を増やす金融緩和ではなく銀行に運用を強いるものなので好意的に受け止めている。

この影響はどう出るかというと日本国内での運用に行き詰った資金が海外に流出するので円安に振れるだろうということである。今年に入ってから円高傾向が見えてきているが、このまま円高が進行すると、日本経済は不況になるので、円安に向かうように手を打ったというのは必要なことだろうと思う。一週間前に「やらない」と言っていたことをやったのは甘利大臣の辞任が影響しているだろうという見方があった。先に日銀が発表してから甘利大臣が辞任したのでは効果は吹っ飛んでしまうが、大臣辞任直後にマイナス金利を発表すれば大臣辞任のマイナス効果を打ち消せるという観測である。これは当たっているのではないかと思っている。

株価は今後どうなるかは分からないが、円安は進むだろうし、実際に進んでいる。アメリカの大統領選挙と絡んで「通貨安競争は止めるべきだ」というアメリカ世論が高まってくるかどうかが今年の日本経済を占う焦点だと私は思っている。