麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

じゃが芋の

2017-04-30 15:48:14 | 短歌

 

じゃが芋の薄むらさきの花ひとつ夢の終わりにうふっと笑う

パプリカの密なる種をとり去りて水のゆうべの小舟となせり

とうがらし実る畑をゆく猫のそのなめらかなうごきがいいね

夕暮れはわたしの庭の芝を刈るがらりがらりと音を立てつつ

いにしえの森の記憶はあるならん小雨にしとる秋の古書肆に

コスモスをひざの高さに写すとき犬の世界にまぎれていたり

ぎっしりとねぎ生えているねぎ畑全部が全部ねぎのすごさよ

私たち猫の言葉をしゃべりだすとりとめもなき夜の終わりに

さらさらと塩しずみゆく網膜に朝のやさしいひかりはおよぶ

森林太郎をしんりんたろうと読み下し春の窓辺に一人笑いす


_/_/_/ 未来5月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ 笹公人 選歌欄 (未来広場)_/_/_/

 

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前振りの

2017-04-27 22:34:43 | 短歌

 

前振りの長き映画にまたひとり出でてゆくなり視聴覚室

九十年前のヴァイオリン演奏のユーモレスクにつかのま酔いき

一時間ありとあらゆる音楽を聴かされてのち始まりにけり

死に際に「けっして女を信じるな」なんて息子に言ってみたいぞ

しかれどもキザな台詞を遺すべき息子はいない 娘はふたり

色男ドン・ファンぞよし美女に会いわずか五秒でキス交したり

ぴちぴちのズボンを穿けるドン・ファンのあからさまなりそのシルエット

決闘に敗れてしまいし恋敵 名は忘れたがぶおとこなりき

馬に乗り自由の国へ逃げてゆくドン・ファン膝に美女を抱きつつ

おしまいに淀川長治あらわれて三度さよなら言いて消えたり


_/_/_/ 未来4月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ 笹公人 選歌欄 _/_/_/

 

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やがてオーロラ

2017-04-09 11:10:36 | 新いろは歌

 

2017年のいろは歌の日の詠草です。
#kiz48 2作品

 

やがてオーロラ見えぬ夜も
雪降る空へ誘う星
センチ娘に火をつけた
ハイネックの子あわれなり

やかておーろらみえぬよも
ゆきふるそらへさそうほし
せんちむすめにひをつけた
はいねっくのこあわれなり

#kiz48 #いろは歌の日 op.67 2017/4/8

 

姪っ子に地図持たせては
熱の止む我ふるさとへ
皆雪を除けカーリング
青空広し咆えぬ馬

めいっこにちすもたせては
ねつのやむわれふるさとへ
みなゆきをよけかーりんく
あおそらひろしほえぬうま

#kiz48 #いろは歌の日 op.68 2017/4/8

 

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