YS_KOZY_BLOG

History, Strategy, Ideology, and Nations

日本版CIAの模索?

2011年02月23日 | INTELLIGENCE

 オーストラリアで発行されている新聞『シドニー・モーニング・ヘラルド(Sidney Morning Herald)』によると、
 中国や北朝鮮を対象とし、CIAやMI6をモデルとした情報機関の設立を目指す動きが、
 麻生・福田両政権下で進められていた事実について、
 内部告発ウェブサイト「Wikileaks」が入手した米外交公電から明らかにされたとのことである。

 Philip Dorling
 "WikiLeaks unveils Japanese spy agency"
 Sydney Morning Herald, February 21, 2011
 http://www.smh.com.au/technology/technology-news/wikileaks-unveils-japanese-spy-agency-20110220-1b17a.html

 基本的には、内閣情報調査室を中心として、主にHumint(人的情報)能力の強化を図るものだが、
 情報活動の経験や知識が必ずしも十分、蓄積されているわけではないという認識から、
 情報体制の構築を徐々に進めていくことが米国と合意され、
 人材育成や要員訓練などのプログラムも実施される予定だったとされている。

 吉田茂が1952年に「日本版CIA」を設立するために、
 内閣調査室を設立したことはよく知られている。
 実際には、当時、官房長官だった緒方竹虎が担当となって、
 米国からの支援や指導を仰ぎながら進めていったのだが、
 野党や世論の反発だけでなく、外務省の強力な抵抗にも遭遇したことで、
 米国型の情報体制を構築することは叶わず、
 結果的に、内閣官房の一部局としての立場を超えることはできなかったのである。

 すでにいくつかの一次史料から明らかにされているように、
 このとき、緒方竹虎はCIA局員から様々なブリーフィングを受けており、
 中国やソ連といった国々から帰還した日本人への尋問調査などで、
 米国側から日本側に対して協力を要請されていたことが分かっている。
 
 今回の記事は、ウィキ・リークスの暴露から報じられたものだが、
 安倍政権で「日本版NSC」構想が提起された後、
 日本でも情報機関の設立を目指す動きがあったことは、特に秘密にされていたわけではなく、
 各種メディアの報道などにおいても指摘されていた。
 また、小泉政権において、小泉元首相と安倍元首相(当時、官房長官)の両名が、
 ホワイトハウスで行なわれている国家安全保障会議(NSC)に出席しており、
 小さくない関心を寄せていたことは広く知られたところである。 
 したがって、記事の内容自体に驚くべきところは少ない。
 ウィキ・リークスの暴露は、それを改めて確認することが出来たということである。
 
 問題は、こうした動きが政権交代によってどうなったかということであろう。
 菅首相は、「日本版NSC」設立には前向きな姿勢を示しており、
 先のビデオ流出事件の影響もあって、
 基本的には、政府の情報管理を一元化することにも積極的だと言われている。
 ただし、それが情報機関の設立にまで結び付くかというと、
 やはり政治的に微妙と言わざるを得ないだろう。

 その一方で、情報機関の設立において、外部からの浸透を事前に排除しておくことが必要だが、
 その前提として、「スパイ防止法」を成立させておかなければならない。
 機密保持が担保されなければ、情報機関としての能力は著しく損なわれるし、
 国家間の情報協力も制約を受けざるを得ない。
 個人的には、情報機関の設立よりも先に「スパイ防止法」の成立が望ましいと思われるが、
 そちらの方はまだ、政治日程に組み込まれる雰囲気はなさそうである。

 なお、思うところあって、このブログは今月をもって、一旦、中断させることにします。
 いつか近いうちに再開させる予定ですが、
 その時はまた別の場所でお目にかかることになろうかと思います。
 新しくブログを開設しても、記事内容を大きく変えるつもりはないので、
 今のブログを継続するという選択肢もありましたが、
 自分の中で心機一転を図りたいという気持ちもあって、
 こうした形を採ることにしました。
 ここでの記事に関しては、いずれ削除しようと思っています。
 特に役立つ情報があるというわけではないので。
 
 それでは、残りわずかではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。