わたしたちの洋書の森

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亀井よし子先生の「翻訳の作法」(10月28日)

2017年11月05日 16時53分30秒 | 魔女のポーシャ

10月2度目の台風が心配される中、亀井よし子先生をお迎えしての3回目のセミナーが開かれました。2015年に初めて講義してくださったときからずっと、テーマは「原文に寄り添う」。翻訳学習者はもちろん、現役の翻訳者が常に心がけるべきこととして、お話ししてくださいましたが、その中で一番ハッとさせられたのは、「口調や文体は訳者が決めるのではなく、原文が決めてくれる」という言葉でした。

わたしたちはときに、日本語らしい訳文を書こうとして、「解釈訳」に頼り、大事な意味を持つ単語を見落とします。それをいさめる「原文が決めてくれる」という言葉は、昨年も一昨年も耳にして胸に刺さったはずですが、今回も見事に刺さりました。カズオ・イシグロの翻訳で有名な土屋政雄さんも似たようなことをおっしゃっているようです。原文に対して誠実に向き合って訳すことは、名翻訳家に共通する姿勢なんですね。

丁寧な課題解説に加えて、雑学も大事よ、と豆知識をいくつも披露してくださった亀井先生。特に翻訳学習者にはおすすめの講座でした。来年もまたぜひ、と思う受講生は多かったことでしょう。

セミナー後の恒例の懇親会は、亀井先生を囲んでさらに深く翻訳の話をしたり、初対面の人や久しぶりに会った人と交流したりして、いつもながらのなごやかな時間になりました。その光景を見て思いました。ここには広く多くの翻訳者が集まっている。出版翻訳者も実務翻訳者も、ベテランも学習者も、○○先生のお弟子さんというくくりも年齢も関係なく。ときにはコーディネーターの方も編集者も参加してくださる。さらに、それぞれの悩みや疑問をその場で共有して、先生も含めてみんなで解決法がないか考える時間になっている。これはすごいことではないか、と。

来年出版クラブが神保町に移転するのに伴い、洋書の森もそちらへ移ります。出版翻訳に関わる人たちが集う場としての役割を今後も果たしていけたらいいなあ、と心から願っています。

さてこの後、今月11月18日には河野万里子さんを囲んだボジョレーの会(まだお席あります!)、12月9日には原田勝さんを講師にお呼びしてのセミナー、そして恒例のクリスマス会、と続きます。また年が明けて2月は宮脇孝雄氏、4月はこだまともこ氏、6月は土屋政雄氏&山口晶氏(対談)と決定。それぞれのセミナー・イベントについては随時お知らせします。どうぞお楽しみに。

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