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日本に真実はない②

日本社会に「真実」はない②

「表裏一体」

 日本の政治を担う支配層がひたすら『正しさ』を踏み外さない様に振る舞った今年、中島さんの目には、日本社会が抱えるより大きな問題があらわになったように映る。

『表現の自由は今あると言われているけれど、実際にはない。私は現代の日本社会の方が戦前よりもはるかに統制がきついと思う』これを理解するために、中島さんはドイツの哲学者ニーチェの思想を引き合いに出す。

 ニーチェは『人生は無意味である』と説き、人生の無意味さを受け入れられる『超人』以外はすべて弱者であり、平等や基本的人権、平和主義など、弱者のよりどころは全否定すべきであるという。

中島さんは『平等や基本的人権を主張する人の心の底に、利己的な気持ちが少しもない訳ではない。利己性は人間の性質の一つだが、誰もそれを認めず、きれいごとしか言えずに身動きできない状態に陥っている』と語る。つまり、表現の自由などないと言う訳だ。

 政治家も官僚も有権者のそうした心をよく知っており、政治家自身がいかに利己的であっても、個性的に振る舞い続ける。「だから安倍さんも菅官房長官も稲田朋美元防衛大臣も『一点の私利私欲もなく、国民の利益の為に判断した』という答弁に終始する。

政治家の答弁の歯がゆさは、実は市民の期待と表裏一体なのです」続く

 ◎中島義道:1946年生まれ。東京大学大学院で哲学専攻。修士課程修了。

83年ウィーン大哲学科終了。

09年電気通信大退官。

『哲学塾 カント』を主宰。

 

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