A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

‘59年QUINCYがやっと自分のレギュラーBANDを立ち上げる、その前に・・・

2007-05-05 | MY FAVORITE ALBUM
THE BIRTH OF A BAND / QUINCY JONES

QUINCYにとっても、大きな転機となる一枚。
自分にとっても、BIG BAND好きになったきっかけになった一枚だ。
このアルバムをはじめて聴いたのは、このタイトル曲が、確か「イソノてるお」がやっていたラジオのJazz番組のテーマソングだったのがきっかけだった。

たぶん、後にサドメルを作った、サドジョーンズにとっても同じ気持ちだったのではないかと勝手に想像する。新しい時代の流れをうまく取り込み、シンプルで、きれいなアレンジ、木管やミュートのモダンな使い方が新しいBIG BANDの誕生を感じさせる。
ソロを大事にしたアレンジ、アンサンブルからソロが自然に湧き出るような全体の組み立て方が素晴らしい。
クインシーのこの作風が、サドジョーンズのアレンジにも引き継がれているような気がする。

有名なアルバムなので内容の紹介はさておき、自分の頭の中の整理を兼ねてQuincyの当時の状況を思い起こしてみると。

1958年19ヶ月にわたるヨーロッパから帰国した、QUINYはいよいよ自分のBANDを立ち上げることを決心する。しかし、レギュラーバンド、それもフルバンド編成を立ち上げるのはそう生易しいことではない。素人ながらに想像はつく。
その辺りのクインシー自身の心境を語った当時の雑誌記事が紹介されている。
一端を引用してみよう。

「バンドを結成したいと考えた主な理由のひとつは、優れたミュージシャンがレコーディングで集まるたびに、繰り返し味わされる残念な思いと欲求不満であった。こんなにいいメンバーが、そこにみんな揃っているのに。もしたった一ヶ月でも一緒に演奏できたらどんな素晴らしいことが起こるか目に見えているのに、その場限りで終わってしまうことなのである。」
これは、プレヤーのみならず、我々聴く側のJazzファンにとっても同じ思いである。

「よい、ミュージシャンを集めるには、最低2,3ヶ月の仕事があること、それがなければ声もかけられない、家を離れた長いツアーは家族の理解も必要だし。そもそもビッグバンド自体が多く存在しなくなっている中で、ビッグバンドでの演奏経験を持つミュージシャンを探すことすら難しい。」
当時の、ビッグバンド事情は、やはりそうであったのか。

「さらに重要なことは、ミュージシャンとしてのクリエーティビティーだけでなく、人間としても一人前である必要がある。この2つは不思議と両立しないことが多いが、自分のバンドのメンバーには協調性や社会性も心構えとして持ってほしい・・。麻薬をやっているなどは問題外。」
 BIG BANDはチームワークが重要。個性派が幅を利かすJazzの世界でも、BIG BANDは例外だろう。というよりは、誰にも愛されるクインシーは、自分と音楽を一緒にやるメンバーを自分も大事にして同じ価値観でプレーしたかったのだろう。

それに、実際にツアーが始まれば、レパートリーの充実、アレンジのバリエーション、仕事のブッキング、そして、給与の支払い・・・・と毎日の実務が。
バンドリーダーの苦労は並大抵ではないことがよく分かる。

Quincyは、このような自分の理想のBANDを編成する準備を進めながら、このアルバムを作った。
そのタイトルも「バンドの誕生」。
そのものズバリである。

最初のセッションは。年の明けた2月のタキシードジャンクション。
これは、小手調べといったところだろう。日本では、あのムードテナーで有名なサムテーラーがソロで参加している。

どのセッションを見ても、まさにオールスターメンバー。
ベイシーをはじめとして、色々なバンドで活躍してきた百戦錬磨の面々である。
レギュラーメンバー選びのオーディションと言う訳ではないと思うが、このセッションに参加したジェロームリチャードソンや、フィルウッズ、クラークテリーはそのまま中核となって翌年のあのヨーロッパツアーへ参加することになった。

このような経緯の中でのアルバム。「QUINCYのバンドの誕生」となった記念すべき一枚だ。

ちなみに、このアルバムのライナーノーツは、カウントベイシー。
皆が、新しいBANDが生まれるのを楽しみにしていた様子がよく分かる。
最後に、ベイシーが「このバンドのピアノの席が空いていたら、自分が参加したいとも」
まんざらお世辞とも思えない、Newバンド誕生への賛辞である。

この年の秋、Woody Hermanのオールスターバンドがモンタレーに出演していた頃、Quincyはバンドのメンバーの人選も最終段階を迎え、翌年のヨーロッパツアーに向けてのリハーサルに励んでいた。

●Tuxedo Junction

Harry "Sweets" Edison, Ernie Royal, Clark Terry, Joe Wilder (tp)
Billy Byers, Jimmy Cleveland, Urbie Green, Tom Mitchell (tb)
Jerome Richardson (fl, as, ts) Phil Woods (as) Budd Johnson, Sam "The Man" Taylor (ts)
Danny Bank (bars)
Moe Wechsler (p) Kenny Burrell (g)
Milt Hinton (b)
Osie Johnson (d)

Quincy Jones (arr, cond)
Fine Recording, NYC, February 9 & 10, 1959

●Moanin'
●Happy Faces

Harry "Sweets" Edison, Ernie Royal, Clark Terry, Joe Wilder (tp)
Jimmy Cleveland, Urbie Green, Quentin Jackson, Melba Liston (tb)
Julius Watkins (frh) Frank Wess, Phil Woods (as) Benny Golson, Jerome Richardson (ts)
Danny Bank (bars)
Patti Bown (p)
Kenny Burrell (g)
Milt Hinton (b)
Charlie Persip (d)
Quincy Jones (arr, cond)

Fine Recording, NYC, May 26, 1959

●Along Came Betty
●I Remember Clifford
●Whisper Not
●The Gypsy
●Tickle-Toe

Joe Newman (tp) Zoot Sims (ts) Sahib Shihab (bars) Sam Woodyard (d) replaces Edison, Richardson, Bank, Persip

Fine Recording, NYC, May 27 & 28, 1959

●A Change Of Pace
●The Birth Of A Band

Harry "Sweets" Edison (tp) Jerome Richardson (ts) Les Spann (g) Don Lamond (d) replaces Terry, Golson, Burrell, Woodyard

Fine Recording, NYC, June 16, 1959

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