Roots / Doug Watkins & Prestige All Stars
子供頃、周りから新たに学ぶこと経験することは何でも新鮮に感じ、無我夢中で吸収していったものだ。学生時代も似たようなものだ。社会人になり仕事をするようになると、必然的に前を向いて一定方向に行動する癖が付く。やれ目標だ、予算だと。大きな仕事をやるようになっても、目先はいいけど5年後は?というように。日頃ゆっくり過去を思い起こす余裕はなかった。現役を引退し、旧友たちと再会を愉しむ機会が増えたが、その時は反対に昔話に花が咲く。
前向きに仕事をしていた時に、いつも悩ましかったのはそれまでのやり方、仕来り、慣習を捨てて新たな世界に飛び込めるか、それとも過去の延長上でベストを尽くすか・・・。
IT化の大きな流れの初期もよく議論があった。IT化の狙いは現状の改善なのか改革なのかと。
自分は「現状否定の改革論者」、色々軋轢もあったし失敗もあった。
それから20年近くが経ち、思い返せばどちらにも正解があることが分かった。ITというテクノロジーに魂を入れられればどちらであっても成功する。反対に思想無きまま技術論だけで突き進んだ時は、どちらであっても失敗する。
しばらく前に特許庁のシステム開発の失敗が話題になっていた。20年前ならまだしも、今でも同じような事が起こっていることに驚いた。技術の進歩は目覚しいのに、魂を入れる役割の肝心な「人」が育っていないことに。
ジャズの世界では、ハードバップ全盛期が大きな変革の時代だった。この時、皆は何を考えていたのだろう。過去を否定して進化させることもひとつ。一方で、改めて過去を振り返りジャズの原点(Roots)を見つめ直すことも一つ。事実、モダンジャズの興隆とともに、トラディショナルジャズも復活し、埋もれていたジャズ創成期の生き証人たちが現役復帰を果たした。
色々な進化の道を残したモダンジャズの世界でも、改めてジャズのルーツを見据えるアプローチはいくつもあった。このアルバムもその一枚。一連のPrestige All Starsのシリーズだが、タイトル曲のその名の通りJazzの「Roots」を意識した演奏となっている。
ライナーノーツにIra Gitlerが書いている、音楽のジャンルでいえばBluesやSpiritual、を起源とし、別の言い方をすればDown homeやEarthy、Funkyといった雰囲気がジャズのルーツだと。
Bluesや Spiritualはあくまでも表現ツール。魂の入った演奏がEarthyやFunkyとなるような気がする。向井志門とSwingin’ Devilというオーケストラがある。彼のコンセプトは“Back To The Swing”。4ビートや8ビートにこだわらず、Swingにこだわるというのもジャズのルーツである「スイング」を重んじ、「魂」を入れる試みだと思う。
実は、このセッションにペッパーアダムスが参加している。57年の暮れも迫ったクリスマス商戦の真只中の12月6日の録音。この頃アダムスは、演奏活動の傍らMacy’s デパートや郵便局でアルバイトにも精を出していたようだ。
このアルバムのメイン、ダグワトキンスのオリジナルの“Roots”はまさに彼の感じるジャズのルーツであろう。
この曲は27分にも及ぶ長い演奏だが、その一番バッターとしてワトキンスの趣旨を理解した長いソロを吹いている。アダムスの図太いサウンドはピッタリだ。続く、スリーマンのトランペットも秀逸だ。トランペットというとハイノートの競い合いになりがちだが、ここではトランペットの低音の魅力を堪能できる。リハークのトロンボーンもいい感じだ。もうひとつ特筆すべきは、ピアノのビルエバンス。まだマイルスのグループに参加する前で、色々なセッションに顔をだしていた頃だが、エバンスのEarthyなブルースプレーというのも60年以降はなかなか聴くことができない。
プレーヤー一人ひとりが、自分の考えるブルースのルーツを披露したnice playだと思う。
ひたすら走り続けるのもいいが、たまには後ろを振り返るとまた新しい道が見つかるものだ。
1. Roots Doug Watkins 27:22
Idrees Sulieman (trumpet)
Frank Rehak (trombone)
Pepper Adams (baritone saxophone)
Bill Evans (piano)
Doug Watkins (bass)
Louis Hayes (drums)
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ, December 6, 1957
2. Sometimes I Feel Like A Motherless Child traditional 5:47
3. Down By The Riverside traditional 9:00
Idrees Sulieman (trumpet)
Jimmy Cleveland (trombone)
Cecil Payne (baritone saxophone)
Tommy Flanagan (piano)
Doug Watkins (bass)
Elvin Jones (drums)
Alonzo Levister (arranger)
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ, October 25, 1957
子供頃、周りから新たに学ぶこと経験することは何でも新鮮に感じ、無我夢中で吸収していったものだ。学生時代も似たようなものだ。社会人になり仕事をするようになると、必然的に前を向いて一定方向に行動する癖が付く。やれ目標だ、予算だと。大きな仕事をやるようになっても、目先はいいけど5年後は?というように。日頃ゆっくり過去を思い起こす余裕はなかった。現役を引退し、旧友たちと再会を愉しむ機会が増えたが、その時は反対に昔話に花が咲く。
前向きに仕事をしていた時に、いつも悩ましかったのはそれまでのやり方、仕来り、慣習を捨てて新たな世界に飛び込めるか、それとも過去の延長上でベストを尽くすか・・・。
IT化の大きな流れの初期もよく議論があった。IT化の狙いは現状の改善なのか改革なのかと。
自分は「現状否定の改革論者」、色々軋轢もあったし失敗もあった。
それから20年近くが経ち、思い返せばどちらにも正解があることが分かった。ITというテクノロジーに魂を入れられればどちらであっても成功する。反対に思想無きまま技術論だけで突き進んだ時は、どちらであっても失敗する。
しばらく前に特許庁のシステム開発の失敗が話題になっていた。20年前ならまだしも、今でも同じような事が起こっていることに驚いた。技術の進歩は目覚しいのに、魂を入れる役割の肝心な「人」が育っていないことに。
ジャズの世界では、ハードバップ全盛期が大きな変革の時代だった。この時、皆は何を考えていたのだろう。過去を否定して進化させることもひとつ。一方で、改めて過去を振り返りジャズの原点(Roots)を見つめ直すことも一つ。事実、モダンジャズの興隆とともに、トラディショナルジャズも復活し、埋もれていたジャズ創成期の生き証人たちが現役復帰を果たした。
色々な進化の道を残したモダンジャズの世界でも、改めてジャズのルーツを見据えるアプローチはいくつもあった。このアルバムもその一枚。一連のPrestige All Starsのシリーズだが、タイトル曲のその名の通りJazzの「Roots」を意識した演奏となっている。
ライナーノーツにIra Gitlerが書いている、音楽のジャンルでいえばBluesやSpiritual、を起源とし、別の言い方をすればDown homeやEarthy、Funkyといった雰囲気がジャズのルーツだと。
Bluesや Spiritualはあくまでも表現ツール。魂の入った演奏がEarthyやFunkyとなるような気がする。向井志門とSwingin’ Devilというオーケストラがある。彼のコンセプトは“Back To The Swing”。4ビートや8ビートにこだわらず、Swingにこだわるというのもジャズのルーツである「スイング」を重んじ、「魂」を入れる試みだと思う。
実は、このセッションにペッパーアダムスが参加している。57年の暮れも迫ったクリスマス商戦の真只中の12月6日の録音。この頃アダムスは、演奏活動の傍らMacy’s デパートや郵便局でアルバイトにも精を出していたようだ。
このアルバムのメイン、ダグワトキンスのオリジナルの“Roots”はまさに彼の感じるジャズのルーツであろう。
この曲は27分にも及ぶ長い演奏だが、その一番バッターとしてワトキンスの趣旨を理解した長いソロを吹いている。アダムスの図太いサウンドはピッタリだ。続く、スリーマンのトランペットも秀逸だ。トランペットというとハイノートの競い合いになりがちだが、ここではトランペットの低音の魅力を堪能できる。リハークのトロンボーンもいい感じだ。もうひとつ特筆すべきは、ピアノのビルエバンス。まだマイルスのグループに参加する前で、色々なセッションに顔をだしていた頃だが、エバンスのEarthyなブルースプレーというのも60年以降はなかなか聴くことができない。
プレーヤー一人ひとりが、自分の考えるブルースのルーツを披露したnice playだと思う。
ひたすら走り続けるのもいいが、たまには後ろを振り返るとまた新しい道が見つかるものだ。
1. Roots Doug Watkins 27:22
Idrees Sulieman (trumpet)
Frank Rehak (trombone)
Pepper Adams (baritone saxophone)
Bill Evans (piano)
Doug Watkins (bass)
Louis Hayes (drums)
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ, December 6, 1957
2. Sometimes I Feel Like A Motherless Child traditional 5:47
3. Down By The Riverside traditional 9:00
Idrees Sulieman (trumpet)
Jimmy Cleveland (trombone)
Cecil Payne (baritone saxophone)
Tommy Flanagan (piano)
Doug Watkins (bass)
Elvin Jones (drums)
Alonzo Levister (arranger)
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ, October 25, 1957
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