A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

商業主義に毒されたレコード業界で、メインストリームなアルバムを作るのは今も昔も大変・・・

2012-04-04 | MY FAVORITE ALBUM
Clark Terry’s Big Bad Band in Concert-Live

クインシージョーンズのオーケストラのヨーロッパ遠征に加わったメンバーは皆実力者揃い。そして皆ビッグバンドを愛する者であったと。特に、クラークテリー、フィルウッズ、ジェロームリチャードソンは、色々と苦労はあったと思うが帰国後のクインシーのオーケストラの演奏にもいつも馳せ参じていた。
クインシーのオーケストラが解散した後は、スタジオワークをベースにそれぞれの道を歩むが、リチャードソンはサドメルのオーケストラに、ウッズはソリストとしてヨーロッパでヨーロピアンリズムマシーンを立ち上げる。

そしてクラークテリーはNBCの音楽監督に納まり、ニューヨーク時代の”Tonight Show”のバンドメンバーに加わる。一方で、ボブブルックマイヤーとの双頭でグループ活動も続け、ジャズへの情熱は消えることはなかった。そのクラークテリーもエリントンオーケストラの出身であり、ビッグバンド好きであることは皆と変らず、時に自分のビッグバンドを編成することに。
そのような中、「いつも演奏している狭いクラブではなく大きなスペースでのコンサートを」と常連のファンから提案された。話はとんとん拍子に進み、プロモートも集客も大変だったが、熱心なファンが集ってまずは無事にコンサートを終えた。1970年2月15日のことであった。

その模様は、予定通り収録されたのだが、それをレコードにしようという段階で問題が生じた。コンサートの結果の評判はまずまずであったが、いざそれをレコードで出すとすると、プロデューサーやA&Rマン達は皆揃ったように「今時ジャズなんかやっているのは誰もいないんだよ。ボーカルもソウルも無いアルバムなんて誰が買うの?」と。皆、2枚舌を使って、本心でこのビッグバンドの演奏をレコードにしようという業界人は誰もいなかった。70年代に入ったばかりのメインストリームジャズの置かれた状況はそのような状況だったということだ。

テリーが諦めかけた時、相談に行ったのはビルエバンスのプロデューサーであった、あのヘレンキーン女史であった。彼女も色々動いてくれたが、「結論は自分で出すこと」が最善との結果となる。当時はスタンケントン、アニタオデイ、ジョージシアリング、ライオネルハンプトンなど、往年の大スターが皆同じような境遇であったようだ。

細々と通販で、といっても今のようなインターネットも無い時代に、やっと陽の目を見たのがこのアルバム。後にビッグバンドに多少日が当たるようになってこのクラークテリーの”Big bad Band”は何枚かのライブアルバムが作られたが、これがお披露目であった。

アレンジは、クラークテリーのビッグバンドでは片腕の存在のアーニーウィルキンスに加えて、フランクウェスとフィルウッズ。昔の仲間のウッズはその時ヨーロッパなので参加できなかったが、ウッズの名曲Hymn for Kimを加えている。
テリーのプレーも自分のビッグバンドをバックに溌剌としているが、他のメンバーのソロもたっぷりと聴ける。ウッズの曲はアルトではなく、その後BSTに加わったトローンボーンのDave Bargeronが聴ける。

8ビートやフュージョン系のビッグバンドが登場した頃、エリントン、ベイシー、クインシーに続くメインストリームのビッグバンドもそこで活躍したテリーによってちゃんと生き残っていた証左だ。これから何年かして、ビッグバンドがまた桧舞台に上るようになるが、何の世界でも不遇な時に頑張ればこそ明日があり、頑張るにはよき友が必要だ。何事でも駄目な時に踏ん張っていられるのが本物だが、ヘレンキーンもエバンスだけでけでなく、良いジャズを残すために頑張っていた本物かも。

1. Shell Game             
2. Here’s That Rainy Day       
3. Rock Skipping at Blue Note
4. Big Bad Band
5. Dirty Old Man
6. On The Trail
7. Fading Fleur
8. Hymn For Kim
9. Take The “A” Train

Vigil Jones (tp)
Lou Soloff (tp)
Lloyd Michaels (tp)
Ray Copeland (tp)
Sonny Costanza (tb)
Jack Jeffers (tb)
Dave Bargeron (tb)
John Gardon (tb)
Frank Wess (as)
Chris Woods (as)
Ernie Wilkins (ts)
George Coleman (ts)
Joe Temparley (bs)
Don Friedman (p)
Victor Sproles (b)
Mousey Alexander (ds)

Arr.
 : Phil Woods : 2,8
 : Frank Wess : 1,5,7
 ; Ernie Wilkins : 4,6,9
 : Billy Strayhorn : 3

Produced by Helen Keane
Engineer : Bob Schwartz

Recorded live at Big Barn on 57st St. next to the Russian Team Room, New York on Feb.15, 1970


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