A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

守屋純子オーケストラの新作は「徳川家康公ジャズ組曲」・・・・

2015-10-27 | MY FAVORITE ALBUM
Play For Peace / Junko Moriya Orchestra

今年は徳川家康が亡くなって400年の節目だそうだ。アメリカが独立してまだ240年近く、その間戦争をしなかった期間は僅かだという。一方、徳川時代は開国をして明治になるまでの300年近く大きな争いが無い平和な時代であった。今であれば徳川家康のノーベル平和賞受賞は間違いないであろう。

この家康が礎を作った江戸時代は「世界史上稀な平和国家」であり、「究極の循環型社会」を創り上げ、「一部の特権階級だけでなく、武士や町人の世界でも成熟した文化」を生んだ。
確かに明治以降の近代化がもたらした現在の日本はあらゆる面で行き詰まりを迎えている。日本らしさが希薄になりつつある今こそ、その時代を再考し、その知恵を生かして今の時代の閉塞感を打ち破ることが必要なかもしれない。

この趣旨に沿って家康ゆかりの地、静岡・愛知の市町村が連携して、「徳川家康公顕彰400年記念事業」が行われている。その事業の一環として、徳川家康公ジャズジャズ組曲「厭離穢土、欣求浄土」が作られ、各市を結ぶ交流コンサートが開かれている。





この組曲を作ったのが守屋純子だ。

ビッグバンド界で活躍する女性作編曲家の代表格というと何といっても少し前までは秋吉敏子だったが、最近はあまり活動をしていないようだ。今はマリアシュナイダーかもしれないが、日本の女性作編曲家というとやはりこの守屋純子であろう。

秋吉敏子同様、ピアニストとしての活動がミュージシャンとしてのスタートだ。2人ともバドパウエルのコピーからスタートしたというのも共通点だ。アメリカ留学を機に活動の幅を作編曲の世界にも広げたのも同様だ。
彼女の最初アルバム"My Favorite Colors"もオクテットでの演奏で、アレンジを意識したものであった。元々ハイソ出身の彼女なので、ビッグバンド&作編曲も身近であったのだろう。毎年2月にビッグバンドのコンサートが開かれるが、毎回テーマを決めてなかなか聴き応えのあるものだ。

今回は、この組曲の完成に合わせてそのCDも制作された。
この「家康公組曲」は以前作られた「表家康公」「裏家康公」に加えて、今回の静岡の「久能山」、浜松の「三方ヶ原の戦い」、岡崎の「三河武士魂」を加えて纏め上げられた。
今回のアルバムは、この組曲をメインに据え、スタンダード曲や他のオリジナルも加え一枚のアルバムになっている。タイトルはPlay For Peace、ちょうど今の世情にぴったりかもしれない。

さらに、記念ライブも各地で行われている。
地元での組曲の披露コンサートに加え、東京ではこのCD制作に合わせて神田の東京TUCで行われた。それも、レコーディング前日と、今回のCD発売記念の2回開かれた。レコーディング前、レコーディング後の両方を聴けるという嗜好であったが、どちらも満員の盛況で根強いファンに支えられているのが分かる。

組曲を構成する5曲が別々に生まれた経緯もあり、今回5曲まとめて組曲仕立てしたようだが、コンサートによっては演奏する順番もプログラム構成上色々配慮が必要なようだ。どのような順番で聴いても特に違和感はないが、生まれた経緯は別にして、それぞれの曲の構想は、家康がおかれた情景から彼女がイメージしたもの。そのために、家康の伝記をいくつか読み込んだそうだ。宮嶋みぎわも自作の曲を説明する時、よく曲が生まれた経緯やその情景を説明するが、女性の作編曲家の方が感受性高く曲想を表現できるのかもしれない。

どんなに優れた表現力を持っていても、「家康公」という素材はなかなか一人ではチャレンジし難いものだ。という意味では、最初にテーマを与えた岡崎市、そして今回の各自治体の連携があったからこそ実現した作品だと思う。箱物行政に慣れ親しんだ自治体は、文化事業といってもなかなかアイディアが浮かばないようだが、このような事業で、記念に残る作品が誕生するというのは素晴らしい事だ。もてあましている箱物の利用も促進されるので一石二鳥だと思う。最近町ぐるみのジャズイベントも増えてきたようなので、ファンとしても今後このような取り組みが各地で行われることを願う。

アルバムには他のスタンダード曲も収められているが、単におまけというのではなく、聴き慣れた曲が入念にアレンジされ仕上げられている。
その素晴らしき世界はエリック宮城のフリューゲルホーンのソロをフィーチャー。組曲を受けて、アルバムタイトルの”Play For Peace”を訴えるにはピッタリの曲であり、演奏かも知れない。

バイバイブラックバードはレコーディングの直前に出来上がり、直前ライブが意披露目であった。リズムやテンポが輻輳し難しそうなアレンジだが、流石一流のメンバー揃い無難にこなしていた。それぞれ斬新なアレンジで、彼女の真骨頂であろう。
今回のライブのアンコールもお馴染みのエリントンナンバーキャラバンであったが、これも新アレンジという。オリジナルだけでなく、スタンダード曲の斬新なアレンジを聴かせてくれて、いつもスイング感を忘れないのも彼女のオーケストラの魅力だ。

アルバムの最後には、お馴染みのエリントンナンバーのピアノソロもフルコースで満腹の口直しに最高なデザートだ。

ジャズ界では最近女性陣の活躍が目立つが、この守屋純子や宮嶋みぎわの頑張りが際立つ。
2人とも自らのグループのアレンジや演奏だけでなく、他のグループにも積極的に参加し、後進の指導やプロモート、コンテストの審査員・・・と、時間がいくらあっても足り無さそうな活躍ぶりだ。それも国内だけでなく海外も含めて。自分のような怠け者には想像を絶する行動力だ。この馬力の原動力にいつも感心するが、どうやらこの源は音楽の世界に入る前のキャリアウーマンとしての経歴と負けず嫌いの性格が幸いしているような気がする。
今後の益々の活躍を期待したい。

徳川家康公ジャズ組曲「厭離穢土、欣求浄土」
1. 裏家康公 Another Side of The Winner
2. 久能山東照宮 Mt.Kuno
3. 表家康公 House of The Winner
4. 三河武士魂 Samurai Spirit of Mikawa Warrior
5. 三方原の戦い The Battle of Mikatagahara

6. What A Wonderful World
7. Bye Bye Blackbird
8. This Is For Stan
9. I Let A Song Go Our of My Heart

守屋 純子 (p,arr)
エリック 宮城 (tp,flh)
木幡 光邦 (tp)
マイケル ブックマン Michael Bookman (tp)
岡崎 好朗 (tp)
片岡 雄三 (tb)
佐藤 春樹 (tb)
東條 あづさ (tb)
山城 純子 (btb)
近藤 和彦 (as,ss,fl)
緑川 英徳 (as)
岡崎 正典 (ts,cl)
アンディー ウルフ Andy Wulf  (ts)
宮本 大路 (bs)
納 浩一 (b)
広瀬 潤次 (ds)
岡部 洋一 (per)


プレイ・フォー・ピース
クリエーター情報なし
Spice of Life

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