MEL LEWIS AND FRIENDS
あまりストレートなジャズのアルバムらしからぬジャケットのデザインだ。
ある休日の昼下がり、メルルイスが水辺に腰を下ろしてリラックスしている。
そして、あたかも友人たちに「少し息抜きをしたいね」と語りかけるような雰囲気だ。
ビッグバンドを継続的に維持していくのは大変なことだと思う。
リハーサルは必要だし、そもそも20人近い個性ある人間を集め、ひとつの方向に束ねていくだけでも大変だ。もちろん経済的にも面倒をみなければならないし。
この辺りの苦労はクインシーの自叙伝に詳しい。
サドジョーンズとメルルイスのオーケストラも、最初は週一度集まるリハーサルオーケストラからスタートしている。これだと、とりあえずは音楽的にやりたいことだけに専念できる。リーダーとしての苦労も大分軽減できるだろう。
しかし、リーダーの意志に沿って音楽的にひとつの方向に収束されたとしても、そもそもオーケストラの場合は色々と制約が多い。もちろんそれがバンドカラーや編曲の特徴の表現方法に繋がるので、すべてを否定するわけにはいかないが。
本来ジャズの持つ自由度と即興性を、メンバーそれぞれに対してどのように機会と場を提供していくかがリーダーの手腕に問われる。
サド・メルの場合、最初はアレンジもメンバーからタイプの違う編曲を集めた。曲によってソリストを特定せず誰がソロをとるのかという楽しみもあった。アドリブが嵩じると時間の制約を外して延々ソロをとらせたりもした。特にホームグラウンドのライブの特性を生かして自由度の高い演奏を心がけていた。メンバー的にもベテラン、新人が組み合わされ、白人と黒人のバランスも適度に保たれるという理想的なバンドであった。
そもそも、2人のリーダー自体がケントンオーケストラ出身のウェスト派で育ったメルと、ベイシーの所に長く在籍し、デトロイト出身でどちらかというとイースト派のサドのコンビも良かったのかもしれない。
そんな自由度の高いバンドでも、いつのまにかレギュラーバンドになってしまうと、オーケストラという型にはまった演奏を窮屈に感じるのかもしれない。
リーダー達も時々オーケストラを離れてコンボでの自由な演奏を楽しんでいる。
今回は、メルが中堅フレディーハバードやマイケルブレッカーに、べテランのハンクジョーンズやロンカーターを加えたセッションだ。
久々に、メルのドラムが主流派のアグレッシブな演奏のバックを努めることになった。もう一方のリーダーのサドも、今回はフレディーハバードがいたせいか、自分はプレーに参加せず、応援役に廻っている。
そんなスタジオに、サドメルのオーケストラの若手の2人が遊びにきた。たまらずこのセッションに彼らも参加することになった。
というのがこのアルバムの生まれた経緯だ。
曲は、サドジョーンズの曲を中心に、パーカーの曲やカーターの曲も。リズムも4ビートからボサノバまで。ホーンセクションは新たな世代の主流派が思う存分ソロを繰り広げる。
サドの曲では一番スタンダードになった曲、”Child is born” では、フレディーのフリューゲルホーンが冴える。いつものバラードプレーを極めるサドとは違って、途中でボサノバ風にアップテンポのワルツに転じる。違った解釈で新鮮だ。
メルにとっては、久々に伸び伸びとしたセッションだったのだろう。
いつもはオーケストラの影に隠れて控えめなメルのドラムのスティック捌きやブラッシュワークが前面に浮き出てくる。
久々に、50年代のウェストコーストで小気味よいドラムを叩いていたメルを思い出す。
アルバムのタイトルが実にシンプルだが、内容はタイトルどおり仲間内の気楽だが熱のこもったセッション。このジャケットイメージどおりすがすがしい演奏だ。
友人とは大切なものだ。
AIN’T NOTHIN’ NU
A CHILD IS BORN
MOOSE THE MOOCHE
DE SANBA
WINDFLOWER
SHO’ NUFF DID
MEL LEWIS-RHYTHM
<Personnel>
Freddie Hubbard (tp,flh)
Mike Brecker (ts)
Gregory Herbert (ts,as)
Cecil Bridgewater (tp)
Hank Jones(p)
Ron Carter (b)
Mel Lewis (ds)
Produced by John Snyder
Recorded on June 8&9 , 1976 , NYC
あまりストレートなジャズのアルバムらしからぬジャケットのデザインだ。
ある休日の昼下がり、メルルイスが水辺に腰を下ろしてリラックスしている。
そして、あたかも友人たちに「少し息抜きをしたいね」と語りかけるような雰囲気だ。
ビッグバンドを継続的に維持していくのは大変なことだと思う。
リハーサルは必要だし、そもそも20人近い個性ある人間を集め、ひとつの方向に束ねていくだけでも大変だ。もちろん経済的にも面倒をみなければならないし。
この辺りの苦労はクインシーの自叙伝に詳しい。
サドジョーンズとメルルイスのオーケストラも、最初は週一度集まるリハーサルオーケストラからスタートしている。これだと、とりあえずは音楽的にやりたいことだけに専念できる。リーダーとしての苦労も大分軽減できるだろう。
しかし、リーダーの意志に沿って音楽的にひとつの方向に収束されたとしても、そもそもオーケストラの場合は色々と制約が多い。もちろんそれがバンドカラーや編曲の特徴の表現方法に繋がるので、すべてを否定するわけにはいかないが。
本来ジャズの持つ自由度と即興性を、メンバーそれぞれに対してどのように機会と場を提供していくかがリーダーの手腕に問われる。
サド・メルの場合、最初はアレンジもメンバーからタイプの違う編曲を集めた。曲によってソリストを特定せず誰がソロをとるのかという楽しみもあった。アドリブが嵩じると時間の制約を外して延々ソロをとらせたりもした。特にホームグラウンドのライブの特性を生かして自由度の高い演奏を心がけていた。メンバー的にもベテラン、新人が組み合わされ、白人と黒人のバランスも適度に保たれるという理想的なバンドであった。
そもそも、2人のリーダー自体がケントンオーケストラ出身のウェスト派で育ったメルと、ベイシーの所に長く在籍し、デトロイト出身でどちらかというとイースト派のサドのコンビも良かったのかもしれない。
そんな自由度の高いバンドでも、いつのまにかレギュラーバンドになってしまうと、オーケストラという型にはまった演奏を窮屈に感じるのかもしれない。
リーダー達も時々オーケストラを離れてコンボでの自由な演奏を楽しんでいる。
今回は、メルが中堅フレディーハバードやマイケルブレッカーに、べテランのハンクジョーンズやロンカーターを加えたセッションだ。
久々に、メルのドラムが主流派のアグレッシブな演奏のバックを努めることになった。もう一方のリーダーのサドも、今回はフレディーハバードがいたせいか、自分はプレーに参加せず、応援役に廻っている。
そんなスタジオに、サドメルのオーケストラの若手の2人が遊びにきた。たまらずこのセッションに彼らも参加することになった。
というのがこのアルバムの生まれた経緯だ。
曲は、サドジョーンズの曲を中心に、パーカーの曲やカーターの曲も。リズムも4ビートからボサノバまで。ホーンセクションは新たな世代の主流派が思う存分ソロを繰り広げる。
サドの曲では一番スタンダードになった曲、”Child is born” では、フレディーのフリューゲルホーンが冴える。いつものバラードプレーを極めるサドとは違って、途中でボサノバ風にアップテンポのワルツに転じる。違った解釈で新鮮だ。
メルにとっては、久々に伸び伸びとしたセッションだったのだろう。
いつもはオーケストラの影に隠れて控えめなメルのドラムのスティック捌きやブラッシュワークが前面に浮き出てくる。
久々に、50年代のウェストコーストで小気味よいドラムを叩いていたメルを思い出す。
アルバムのタイトルが実にシンプルだが、内容はタイトルどおり仲間内の気楽だが熱のこもったセッション。このジャケットイメージどおりすがすがしい演奏だ。
友人とは大切なものだ。
AIN’T NOTHIN’ NU
A CHILD IS BORN
MOOSE THE MOOCHE
DE SANBA
WINDFLOWER
SHO’ NUFF DID
MEL LEWIS-RHYTHM
<Personnel>
Freddie Hubbard (tp,flh)
Mike Brecker (ts)
Gregory Herbert (ts,as)
Cecil Bridgewater (tp)
Hank Jones(p)
Ron Carter (b)
Mel Lewis (ds)
Produced by John Snyder
Recorded on June 8&9 , 1976 , NYC