A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

アメリカとキューバの音楽の友好関係を復活させたのは・・・・

2014-01-24 | PEPPER ADAMS
Havana New York / David Amram

先日、Arturo Sandovalが来日して素晴らしいステージを体験させてくれた。
バックのオーケストラに参加した吉田治がサンドヴァルと共演した感想を、「超絶テクニックだが一つ一つの音に意味がある」、「あの絶妙な口の動きがボーカルを含めてあのフレーズを生んでいる」といったようなコメントをしていたが、プロのミュージシャンの耳でも別格のプレーだったようだ。

キューバ出身のサンドヴァルは、結果的にアメリカに亡命して今の彼があるのだが、いつどのようにしてアメリカとの接点が生じたかというと答えはこのアルバムにある。

実は、このアルバムの主役、David Amramという人物を自分は良く知らなかった。

このアムラムは色々な楽器を演奏するマルチプレーヤー、そして演奏だけでなく、作編曲にも秀でたミュージシャン。ジャズだけでなく、クラシックも、そして世界の音楽にも造詣が深い。
本当の意味のマルチタレント。ジャンルに囚われないとんでもないスーパー音楽家ということだろう。

以前どこかの記事で書いたが、ニューヨークに出てきて間もないペッパーアダムスをスタンケントンオーケストラに紹介したのはオスカーペティフォードであった。
そして、アダムスがケントンオーケストラを経て西海岸に居た頃、ペティフォードは自己のアルバム”Oscar Pettiford in HiFi”というアルバムを作っていた。少し大きめの編成にハープとかフレンチホルンなどを加えて厚い響きを聴かせてくれるアルバムだ。
そのフレンチホルンにパートに馴染みのあるジュリアスワトキンスと、もう一人加わっていたのがデビッド・アムラムだ。
そのような無名なプレーヤーは知らなかったし、フレンチホルンなどは所詮おまけのようなもの。その後も気に留めることもなかった。

最初はフレンチホルンがAmramとジャズとの接点であり、ジャズミュージシャンと親交を深めたきっかけのようだが、だんだんと他の楽器に、そして作編曲の世界へと。その後も彼と交流のあったミュージシャンは多いようだ。

ケネディー大統領が在任中の有名なキューバ危機以来国交が断絶していた両国であったが、政治的に対立する国が国交を回復するきっかけはいつの時代にも文化交流からだ。ベニーグッドマンの冷戦時代のモスクワツアーも有名だが、このキューバも同じ。
キューバにアメリカのジャズグループが訪問したのが1977年5月のことであった
。ディジーガレスピー、スタンゲッツ、そしてアールハインなどのグループに、このデビット・アムラムも加わっていた。

さてこのアルバムだが、このグループの演奏とは別に、ステージ上でアムラムがドラムのビリーハートと一緒にキューバのミュージシャン達と共演した演奏が収められている。
この時キューバ側を代表して参加しているのが、また無名のサンドヴァルとアルトのパキートデリベラだ。サンドヴァルはまだこの時28歳。まだまだ発展途上であるが得意のハイノートを聴かせてくれる。

アムラムも、ホルンやピアノだけでなく、フルート、各種パーカッション総動員で本場の彼らに負けずにリズムを刻んでいる。
ラテンミュージックの元祖発祥の地ともいえるキューバとは17年間断絶していたが、こうしてキューバの音楽とアメリカのジャズ界との交流が再開した。この歴史的な場をAmramが作ったともいえるが、1977年5月8日のことであった。

そして、翌月6月には今度はニューヨークに戻って、キューバからリズム隊を招いてHavanaとNew Yorkの友好復活に貢献したガレスピーを称えたライブが行われた。そして、演奏の一部は路上でも行われその模様も収録されている。
その時、ホーンセクションに参加したのがサドジョーンズ以下ジェリーダジオンやペッパーアダムスなどアムラムとは以前から交流があったミュージシャン達でであった。

このAmramは、ペッパーアダムスのアルバムを辿っていくとまた何度となく登場するので少し気にかけておこうと思う。

このアルバムは、否、David Amram自身の活動そのものが、イデオロギーや民族を超えて色々な人の繋がりが集約された国際交流の象徴のように思う。

ペッパーアダムスのソロも聴ける Para Los Papines



1. Havana / New York (For Dizzy Gillespie)
2. Para Los Papines (For the Paoines)
3. Broadway Reunion
4. En Memoria de Chano Pozo

<1~3>
Thad jones (tp,flh)
Pepper Adams (bs)
Jerry Dodgion (as)
Billy Mitchell (ts)
George Barrow (bs)
Alfredo de la Fe (elviolin)
Eddie Gomez (b)
Candido (conga)
Ray Mantilla (per)
Johnny Rodrigez Jr. (bongo)
Nicky Morrero (timbales)
David Amram (Spanish g,p,flute,whistle,French horn,claves,etc,)
Los papines (conga)

Recorded in New York , June 1977

<4>
Arturo Sandoval (tp)
Paquito de Rivera (as)
Oscar Valdes (conga)
Los Papines (conga)
Ray Mantilla (conga)
John Ore (b)
Billy Hart (ds)
David Amram (Spanish g,p,flute,whistle,French horn,claves,etc,)

Recorded live in Havana, Cuba, on May 18 1977


Havana & New York
David Amram
Flying Fish Records

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2 コメント

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よろしくお願いいたします (hime)
2014-01-24 21:32:03
 はじめまして
himeと申します。

読者登録いただき有難うございます。
JAZZに深い見識をお持ちですね。
私のような若輩者にはとても勉強になります。

これからも色々ご教示下さい。

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コメントありがとうございます (YAN)
2014-01-24 23:22:34
himeさん

はじめまして、YANです。

自分のブログのタイトルと同じ記事が目に留まり登録させて頂きました。

昔から聴いているJAZZですが、ながら聴きが多くちっとも頭に中に入らないので、ボケ防止を兼ねて捨てず持っていたレコードやCDの棚卸を兼ねて記事にしています。

自分の好きなミュージシャンやジャンルだと段々力が入ってきてしまうのでは、凝り性なので仕方がないとあきらめています。

若い方(特に女性)のジャズファンが増えるのは嬉しい限りですので、何か参考になれば幸いです。

最近はレコードやCDでは飽き足らず、ライブ通いが多くなっています。今日もビッグバンドにしびれてきました。

ジャズだけでなく、スウィーツも大好物です。

今後もよろしくお願いします。



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