遊び環境における障害児と健常児が居合わす場面の考察
岩下将務
日本建築学会計画系論文集 第540号,119−124,2001年2月
1) 研究の背景
建築の分野から、学校など公共の場において、障害児と健常児が同じ空間の中で実際に向き合う場面、つまり質の問題は考慮されておらず、社会一般における人と人とが接触する一場面として、また、普遍的な建築的課題として取り上げる必要がある。
2) 調査の概要
調査員がマンツーマンで対象児を追跡し、その様子を記録する調査方法を用いた。調査の内容は、対象児の行動軌跡、時間、行動内容、他者との接触、構築環境への働きかけの様子である。
3) まとめ
1、交流保育の有効性 交流時には、ほとんどの対象児で遊びの頻度が増えている。しばしば、障害児の遊びが展開されないことが指摘されるが、このことは、新しい環境で多くの遊びが生まれ、園児たちが多様に居合わす場面がみられるという点で、交流保育の有効性を示している。
2、参加プロセスと離脱プロセス 対人的コミュニケーションを苦手とする障害児の場合、ある集まりに間接的に参加できる位置にいることには意味がある。つまり、ある遊び場所の周囲の場所づくりにも価値を見だすべきことが示唆される。
また、離脱プロセスを見ると、障害の様態によっては対人関係が極端に避けられる場合もある。遊び場の独占的使用を許す隠れ家的空間や固定遊具は、それらのみが場を構成する唯一の要素となる場合、居合わせることが困難になってしまうことが指摘される。こうした場所では、近くで遊べるように場所のネットワークが必要であり、場所の選択性が付与されるべきである。
3、質の違いから見る「視覚的参加」 「視覚的参加」には、順番待ちと、次の行動のための準備といった意味があった。順番待ちは社会性を身につけさせるための有効手段と考えられているが、交流からの離脱のきっかけにもなる。つまり、単に待つだけでなく、別の遊びをしながら待つための場所の選択性がここでも必要となる。
また、従来の「見るー見られる」で語る空間としてではなく、次の行動の準備という意味において「見えること」を考慮する必要がある。
4) 感想
遊びの頻度が高くなることで、交流保育の有効性を示していて合理的だと思いました。交流保育は、児童に良い刺激を与え、良い経験になるのだと思うと同時に、障害児・健常児が互いにストレスのない空間にすることは、これからの課題だと思いました。
黒巣光太郎
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