建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

こども環境学会 優秀ポスター発表賞

2023-07-31 06:44:23 | 研究日誌

D1の米ケ田さんが,こども環境学会で優秀ポスター発表賞を受賞されました。

米ケ田さん,おめでとうございます!

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スイカ割り

2023-07-25 18:36:00 | 雑記
前期卒計お疲れさま!スイカ割り大会。
 
"養生から掃除まで" がスイカ割り。
しっかり養生をして,床が汚れないようにしますよ。

順番にスイカをポカリ(段ボールの棒で,安全に配慮)






おいしくいただきまいた🍉 夏が始まるよ!いやもうとっくに始まってるけど!!
 
夏休みはまだまだはじまらない。来週は大ゼミ! 論文と設計の方向を整理しましょう。
準備(構想)から掃除(論文執筆・発表)までが研究。
 
 
 
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「福祉起点型共生コミュニティ」の類型整理に基づく多様な事例の実態と課題

2023-07-20 17:13:07 | 書架(高齢者関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

・・以下検索用文字列…

「福祉起点型共生コミュニティ」の類型整理に基づく多様な事例の実態と課題 ORGANIZING SITUATION AND PLOBLEM OF VARIOUS CASES BY CLASSFYING AND ORGANIZING WELFARE ORIGINED SYMBIOTIC COMMUNITTY Keywords: Keywords : WELFARE ORIGINED SYMBIOTIC COMMUNITTY, Wel fare facility, Local migration, Co-occurrence network 福祉起点型共生コミュニティ,福祉施設,地方移住,共起ネットワーク 金子亜里砂地域内での自助・共助の仕組 みなどを活用しつつ,高齢者が適切な支援を受けなが ら地域で生活し続けられる仕組みの構築が目指されて いる。厚生労働省は地域包括ケアシステム,国土交通 省は自治体と連携して高齢者や障碍者,子育て世帯等 の住宅確保要配慮者への住宅や住宅斡旋の整備を行っ ている。他方,都市圏への人口集中と地方の過疎化と いう人口偏在も大きな社会問題であり,その解決方法 として,内閣府は地方や郊外など比較的人口密度の低 い地域へのセミリタイヤ〜リタイヤ世代の移住を促す 動きもある。同時に,就労世代の移住や二拠点居住な ども注目される。移住者によって地域に雇用や経済の 動きなどの活性化が期待されており,地方創生の一環 としてCCRC やスマートウェルネスシティ,セカンド ハウス促進など多様な取り組み例がある。これらはそ れぞれ異なる事業であるが,その背景にある課題は共 通していることから,地域性や居住者像に合わせた選 択肢として再整理することが可能だと考える。 1.2 本研究の位置づけと既往研究について  現在までに,高齢者等の住宅整備という観点では サービス付き高齢者向け住宅の検討会等が行われてお り,西川氏はこの検討会での報告書から“ サ高住に生 活する高齢者の生活全般を考える「街」という視点が 重要であり,単体としての高齢者向け住宅の整備だ けでは高齢者の生きる力にはならない” と述べ,サー ビス付き高齢者向け住宅に住む高齢者と地域コミュ ニティの関わりについて事例を用いて課題の整理を 行っている。同時にストック活用についての課題にも 触れており,活用の在り方を地域コミュニティの形成 の観点から人的な要素を加えた手法の整備が必要だと 述べている1)。また,地方創生について経済学から医 療・福祉まで複数の視点からの論では,松田氏が米国 CCRC を元に日本でのあり方をビジネスの視点を含め て論じたものや2),園田氏による東京圏や都市部での 地域包括ケアの在り方や高齢者住宅の整備における課 題等をまとめ,今後の高齢者支援の仕組みについて言 及したものがある3)。これらは政策単体の仕組みや建 築を整理しており,これに加えて政策から建築までを 結ぶまとめ資料はより有用な知見となると考えた。 1.3 研究の目的  本研究では,これらの行政から福祉施設までの多様 な取り組みを「福祉起点型共生コミュニティ(図1注1))」 と総称する。多様な取り組みの有り様を,地域に点在 する資源の活用方法と,福祉施設の支援状況の両面か ら活用できるよう取りまとめ,後続の取り組みに資する知見として整理することを本稿の目的とする。その ため,本研究では各行政の掲げる地方創生の政策や取 り組みのうち,「生涯活躍のまち」先行モデル事業時 期において取り組まれた,地域のコミュニティの維持 や持続可能な地域づくりの施策や施設を対象として整 理・分類を行う。これら先行事例はモデルとして紹介 され,その後に続く事例のひな形となったためである。 2.調査概要  調査対象は内閣府が主導する地方創生のうち,地域 のコミュニティ維持を目的とした「生涯活躍のまち構 想に関する手引き(以下,手引き)」とその先行自治体 となっている42 地域の総合戦略の他,内閣府,厚生 労働省,国土交通省が補助金対象や先行事例として紹 介する福祉・医療施設142 のうち,実際に訪問可能で あるなどの条件で50 件を選定した(表1)注2)。まず 調査1として,手引きと各総合戦略の内容,50 施設の 運営方法や理念等を把握する。次に調査2では,調査 1で使用した対象施設のテキストを使用し,「使用資源 →支援・整備目的」となるような共起ネットワークを 作成して共起関係を明らかにし,50 施設について整理・ 類型化を行う。最後に調査1で抽出したキーワードと 調査2で行った資源と支援・整備目的による類型,対 象施設へ運営様態や地域福祉の現状,今後の課題につ いてのヒアリング調査を行った(表1)。 3. KH_coder による単語の共起分析 3.1 調査対象と共起ネットワークの作成  調査1ではKH_coder による単語の共起分析を行う。 初めに調査準備として手引き,各地域の総合戦略の内 容,50 施設の運営方法や理念等を「基本的な考え方」, 「総合計画との関係」,「施策の目標と基本方針」の3 2/10 Table.1 Summary of study 各政策の内容を把握し,類型化の基準となるキーワードを作成する。

対象とする医療福祉施設50 施設について整理・類型化を行う。 「使用資源→支援・整備目的」となるような共起ネットワークを作成する。 各調査対象の政策内容や内閣府・厚生労働省・国土交通省が補助対象や 先行事例として紹介している施設の運営内容について把握し,政策や施設 のホームページの文章から類型化のための基本となるキーワードを KH_coder にて作成する。 調査1 で使用したテキストから,「使用資源→支援・整備目的」となる 文章を抽出し共起ネットワークを作成する。さらに,中心理念とサービス, 建築種別へのつながりを整理し,類型化を行う。 調査1,2の結果とヒアリング調査をもとに,事例を介して類型化を行う。福祉起点型共生コミュニティ」の概念図

その内,1 単語の固有名詞が複数の語と して抽出されている場合は正しく抽出されるよう指定 する。また,抽出の際は組織名や地名などの共起が抽 出されないようにあらかじめ設定した。これらのデー タをもとに,頻出語句上位75 語に対して施策につい ては共起回数100,施設に対しては60 として出力した。 3,2 キーワードの抽出とその特徴  作成した共起ネットワークからそれぞれの特徴を並 べると,いずれも地域という単語が中心となり他の単 語が出現している(図2)。手引きの共起ネットワー クの特徴をみると,地域という言葉の他に生活や医療・ 介護に関係する言葉が頻出した。この他にも「市町村」 の近くに「計画」や「作成」があり,各地方自治体が 事業を主体的に推進する文脈構成が伺える。またこれ らの対象として,手引き内には子供や高齢者について も言及があるが,最も共起が多く出現したのは中高年 で,これらの年齢層を対象に社会参加や健康的な生活 の整備を進める内容であると分かる。42 地域について も同様に特徴を見ると,地域という単語を中心に子育 て,医療,産業という3 つの大枠に分かれている。子 育てでは「結婚」「出産」「子供」,これと離れた医療関 連で「健康」が抽出され,高齢者を対象にこれら施策 が記述されている。最後に産業では「雇用の創出や観 光,企業への支援」といった共起が作られており,対 策として盛り込まれていることが分かる。50 施設でも, 前の2 事例と同様に地域について強い共起関係が読み 取れる。これは地域包括ケアシステム等の推進が行政 や施設の考え方の中心にあるためと考えられる。 4.活用する資源とその目的のネットワーク 4.1 活用する資源と目的のネットワークの全貌  調査2として,内閣府,厚生労働省,国土交通省等 の各行政庁が地方創生のモデルとして先行交付金対象 とした福祉施設や住宅施策の取り組み50 件について, ホームページ上のテキストから施設理念や事業内容を 取り出し,施設の整備目的とその支援方法の共起ネッ トワークを作成した(図3)。「住み慣れた地域で暮ら せる」「誰もが安心して暮らせる」「多様な交流を促す」 がネットワークの中心となり,自立支援や混在による 活動の機会がサブ的中心をなす。それらを医療・介護 の連携や助言・相談,食関係の支援,他世代住宅,福 祉の多機能化が資源として支える構造である。 4.2 特徴的な活用資源と支援の関わり    図3から,整備の目的と資源の共起回数が10 回以 3/10 図2 KH-coder による生涯活躍のまち構想等のテキスト分析

交流を促すための食の支援は活用資源や手法が多 岐にわたり,また身近であることから様々な地域で展 開しやすいのではないかと考えられる。一方で,子育 て世帯への支援は共起する資源の数や目的が少なく, 移住支援については総合戦略等で促進され様々な活動 が行われつつあるものの,移住者は簡単に増えず,な お支援すべき課題として取り上げられている。   取組の目的を達成するために,どのような資源の活 用や施設整備と対応しているかを図6に整理し,大き く6つの手法に分類した。子育て世帯への支援として, 多機能福祉機能施設,誰もが安心して暮らせるための 団地改修とサービス拠点併設,等である。なお,1つ の取り組み例が複数の類型に合致する場合がある。

訪問看護(14) リハビリ(10) 多世代住宅(13) 食による支援(13) ボランティア活動(11) 複数の福祉施設の併設(13) デイサービス(10) 食堂・喫茶店・レストラン(12) 農園(10) 医療・介護の連携(24) 相談,助言の場(22) 活用・整備する資源 日常生活の支援(17) 健康に過ごす(23) 地域で活動し,地域で暮らす(23) 住み慣れた地域で暮らし続ける(49) 誰もが安心して暮らせる(59) 子育て世帯への支援(23) みんなで楽しめる場(10) 高齢者・障碍者の就労(10) 多様な交流を促す(48) 自立して生活する(32) あらゆる人が集まり,活動できる場(25) 活用・整備する目的 図4 整備目的と資源の共起回数 共起回数 1 ~ 2 3 ~ 5 6 ~ 10 11 ~ 凡例 () 内の数字は,文章内の出現回数を表す 線の太さは共起の回数を示す 出現回数上位10 個による 5.取組の目的- 手法の類型による特徴的事例  4.2で整理した手法6類型について,特徴を表す 典型的な例であり,かつ複数の事例集で参照されモデ ル性が高いと考えられる該当例を1事例ピックアップ し,施設概要を表2〜4に示して以下に説明する。様々 な取り組みのいずれにも必ず地域住民が利用できる場 所があり,施設やサービスの利用者と地域住民の交流 や地域との関係づくりが企図されている。なお節タイ トルとした類型名に付した()内は該当事例数を示す。 5.1 複数の福祉施設の併設(12)_ 子育て世帯へ の支援を充実させた事例  複数の施設を併設して子育て事業で地域に貢献し, 子供から高齢者,障害者も共に地域で暮らすための幅 広い居場所づくりや住宅整備を行う事例である。  駅から徒歩15 分程度の距離にある築12 年のUR 団 地と隣接した複数の福祉施設が併設した事業所であ る。2,3階建てと低層の生活棟と福祉棟に分かれてお り,二つの棟をカフェと団地の公園が繋ぐ。道路向い には保育園と幼稚園があり,団地内の広場以外にもコ ミュニティセンターと公園が併設され,子供が安心し て遊べる。小学校も徒歩10 分圏内にある。  地域の暮らしを支える生活棟の2階には多様な活動 のための地域活動スペースとして,子供カフェや地域 交流教室,料理教室や講座,子育て相談等などの活動 図4 整備目的と資源の共起関係(抜き書き) 図5 共起ネットワークから見た特徴的な活用資源と支援の関わり − 183 − 6/10 を通して幅広い支援を行う。事業の一環として一時保 育事業や,日常生活や身近でこまごました支援まで相 談できる相談事業を併設し,様々な人が利用する。1 階部分には日用品や食材等の小売店のほか,配食サー ビスを兼ねた総菜・弁当屋,福祉用具を専門に扱う福 祉用具事業や,広場に面したカフェが入っている。  二棟をつなぐ広場では年4回のマルシェ(市場)や 子供の遊び場企画,夏至のキャンドルナイトイベント 理念

community.  「サポートセンター構想」のもとに,車いす生活に対 応できるバリアフリーの住環境と,24 時間連続する看 護・介護・入浴・食事サービスなどの入居施設と同様 のサービスを住み慣れた住まいや今までの暮らしの中 で受けられるシステムと,要介護者・介護支援者であ る家族を支える仕組みをつくっている。高齢者自身の 「出来る限り現在の生活を継続したい」というニーズに 応えるため,要支援高齢者と在宅介護者の双方を支え る仕組みとしてアメリカのPACA(高齢者包括的ケア プログラム)と類似したケアシステムをサポートセン ターとして提供する。「福祉サービスはいつも使う人た ちの目の前にあり,使ってよかったと思えるサービス であるべき」という考え方から,2中学校区に1ヵ所 の小規模で多機能なサービスを分散配置している。  点在する複数の施設のうち,補助金対象になった施 設について事例として紹介する。周辺は閑静な住宅街 で,用水路と川に挟まれた車通りの少ない道に面して いる。併設施設は地域密着型老人福祉施設(定員20 名) の他,小規模多機能型居宅介護(定員25 名),認知症 対応型共同生活介護(定員9名)と,市補助事業であ る在宅支援型住宅(10 室)等の入居施設からなる。在 宅を支援する小規模多機能型居宅介護や,地域に開放 されたキッズスペースや地域交流スペース,カフェテ ラスなどが併設されている。この内,在宅支援型住宅 は住居の提供・安否確認・相談援助のみで,基本的に 自立した居住者が対象である。在宅生活が難しい場合 は,隣接した小規模多機能型居宅介護を利用して地域 継続居住を支える。外来者の訪問に制約や条件はない。 小規模多機能型居宅介護と地域密着型老人福祉施設は 同一建物内にあり,それらをつなげる地域交流スペー スではコーヒーが無料で提供され,近隣住民や利用者 が自由に出入りする。近所の小学校の子供なども放課 後にキッズスペースを利用しており,多様な世代の住 民が集まる地域交流の拠点として機能している。 5.4 就労支援(6)_ 地域に開かれた障碍者就労事 業所の事例  児童デイサービスと児童居宅介護事業(ホームヘル プサービス)から始まった事業で,2006 年に旧保育 所の建物を改修して事業所を移転して障碍児の放課後 デイサービスを開始した。障碍者のサービスを中心に 障碍者の就労支援と年齢や障碍の有無を問わず福祉 サービスを提供する。就労の目的に,地域住民とふれ あいながら自分らしく成長し,地域での自立的な生活 を支援する場所というテーマを掲げている。活動拠点 となるレストラン(コミュニティカフェ)やボラン ティアセンターが併設された共生型地域オープンサロ 8/10 表4 支援と支援拠点の類型整理ごとの事例(3) − 186 − ン「ガーデン」は障碍者の就労活動の拠点,地域住民 のサロンである。ここでは障碍を持つ人が主体となっ て喫茶店と駄菓子屋を運営し,コーヒーや手作りのお 菓子等を提供し地域住民とも関わる。駄菓子屋は障碍 者就労と高齢者のボランティア活動の場で,子供に昔 ながらの遊びを教えるなど世代間交流を担う。コミュ ニティカフェでは就労支援と交流を兼ねて障碍者と地 域住民が朝食・昼食の注文取りから調理,配膳を行う ボランティア活動を行っている。これらは,福祉活動 に対する理解や協力体制を育て,趣味や交流の幅を広 げらる地域福祉の一助となっている。  また,地域住民が福祉の一端を担う有償ボランティ ア「パーソナルアシスタントサービス」では,大学生 から団塊世代までの地域住民が1時間500 円で公的な 福祉サービスでは提供できない通勤支援や犬の散歩, 買い物支援などを提供する。このボランティアを行う 際には,ボランティアと利用者の安全のため大学教員 や福祉関係者が講師を務める,ヘルパー3級程度のオ リジナルカリキュラムを受講することとなっている。 5.5 交流場所整備(35)_ 地域内外の多様な人々が 集う施設群の事例  町が入手したが人口減少や経済の衰退によって10 年以上放置されていた駅前の土地の再生に端を発する 事業。駅を挟んだ反対側は住宅街。町民は基本的に車 での移動で,電車は2時間に1本程度であり,交通の 便が良い場所ではない。従来の公共事業のように単純 に場所をつくっても地域の活性化につながらないこと が明らかであったので,地域での生活を基本に必要な 中身を考え,そこから空間を考えるアプローチを採っ た。また,不動産的価値を考え,税収や賃料等を決め るファイナンス思考に基づく事業性が注目された。類 似の整備事業には国からの補助金で建設費は賄えられ るが,その後の持続的な経営が続かないケースが多々 ある。本事業では民間主導で,補助金を前提とせず, それぞれが利益を上げて事業の継続的運営を可能にし ている。その他にも建物ごとに株式会社として独立さ せ,1ヵ所の施設経営難が連鎖しない仕組みとした。  小児科・保育室,発達相談支援,子育て支援センター, 高校受験を支援する塾,図書館,スタジオやキッチン, アトリエ,バレーボールができるアリーナ(体育館), 研修施設があり,町内外の利用を呼びこみ多様な人々 の交流拠点となっている。地域交流拠点として活用さ れる図書館では農業などの産業支援をはじめ,地域住 民の役に立つ情報を発信しているほか,地域に根差し た多様な企画展やイベント等が開催されている。さら に町役場が併設され有事の際には防災拠点として機能 する他,宿泊施設やエコハウスの機能を体験できるモ デルハウス,それらの設備を使った住宅群,日常的に 必要な店舗や飲食店などが敷地内併設されており,地 域でのものづくりを生み出す産業ではなく,「住むこと を楽しむ」ための機能をまとめた拠点になっている。  地域住民に必要な支援や設備を中心に,自然と人が 集まり活動,交流を通して地域継続居住を支援し地域 の持続に寄与する社会資源となる施設である。 5.6 多世代住宅やシェアハウスなど住宅整備(30) _ 互いに助け合うシェアハウスの事例  4路線が乗り入れるターミナル駅の駅前で市内でも 最も活気ある場所に立地し,周辺には生活利便施設が 多く立ち並ぶ。緩和ケアを中心とした有床診療所の運 営者が大家となり,隣接して立地する。運営者は,高 齢者の孤立化や入院期間の短縮化,核家族化で介護が 困難な社会環境になりつつあること,障碍者の社会参 加の場が少ないこと等を問題だと捉え,従来の福祉施 設にある入居対象を定めた住居ではなく多様な住人が お互いに助け合える住宅づくりを行った。1階部分に 児童発達支援事業所と,美容院,ネイルサロン,クリー ニング等のテナントが入り,2階にシェアハウス,3 階から6階に賃貸マンションが配置されている。シェ アハウスの共用キッチンでは住民の交流イベントが開 催されるほか,有志ボランティアが孤食や欠食の子供 を支援する子ども食堂が定期的に開催されている。  「互いに協力し,相互に助け合う」という理念が掲 げられ,学生から夫婦世帯,一人暮らしの社会人や高 齢者など幅広い世代,ライフスタイルの住人が集まっ て暮らせるように住戸が配置されている。住宅を管理 する事務局では日常的な困りごとの相談から,介護の 相談まで幅広く対応する他,大家が運営する診療所と 連携して介護が必要になってもケアを受けながら暮ら し続けられるよう連携している。ケアマネージャーと 連携し,介護保険サービスの手続きなど医療・介護の 両面からサポートを行う。入居している学生には,高 齢者の買い物やゴミ出し等の日常生活を手伝いとバー ターでの家賃補助など,それぞれが必要とする支援に 合わせた仕組みがある。地域との連携として,1階に − 187 − 9/10 10/10 併設されているカフェではイベントのほか,児童発達 支援事業所を利用する子供と,入居者の交流,NPO 団 体を介した地域の子供と入居高齢者の交流など多様な 関わりが生まれている。また,建物内の一角を利用し てアーティストの作品展示など地域との関わりを支援 するイベント等も積極的に行われている。  福祉だけでなく,日常的な関わりからお互いに関係 を築くことで人づくり・まちづくりを支援している。 また今後の展開として,里親が子供たちを育てる社会 的養護「小規模住居型児童養育事業」を予定している。 6.まとめと課題  現在までに様々な方法で地域の資源活用が行われ, 支援が行われていることが改めて明らかになった。こ れを,図3(キーワードの共起の関係)を元に表に整 理した全体像を表5 に示す。「カフェ・レストラン」や「施 設併設の交流スペース」での「交流(①:0.32,0.38)」 を含む「交流②」は最も多様な資源の活用との組み合 わせで記述される。同時に「施設併設の交流スペース ③」は多様な支援内容(目的)との関係で記述される。 居場所やイベントとの関係も特徴的である④。「訪問/ 通所/入所型福祉サービス」での「日常生活の支援(⑤: 0.28,0.22,0.30)」を含む「自立した生活⑥」も多 数のキーワードとともに記述され,現在の国の方針で ある在宅支援や社会保障費の削減に呼応した支援内容 への言及が含まれる。今後も地域特性に合わせた拠点 等の整備が必要であり,本稿で整理した,団地や空き 家等の資源活用や福祉事業の多機能化は大まかな方向 性として共通していると考えられる。また,6類型と その事例は取り組みモデルとして全貌理解へのガイド ラインとなる。今後は活用できる資源の確保やその管 理,整備までの過程,組織づくりについてのモデルと 併せた検討が必要だと考える。 注釈 注1)この図は,まち・ひと・しごと総合戦略,地域包括ケアシ ステム,住宅セーフティネットの理念に含まれるキーワードを 包括的に整理したもので,このように異なる政策も相互に関係 して地域やその住環境の維持に寄与することが期待される。 注2)厚生労働省地域共生拠点づくりの手引き(セーフティネッ ト支援対策等事業費補助金,H24),老人保健事業推進費等補 助金(H24),地域包括ケアシステム構築へ向けた取り組み事 例,国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業,小さな拠 点づくりガイドブック(H25,27),内閣府日本版CCRC 関連 の構想・取組を整理するに当たって参考とした事例,地方創生 交付金,地方創生先行型交付金,地方創生拠点整備交付金,地 方創生推進交付金,地方創生加速化交付金(H27 〜H29),「生 涯活躍のまち」に関する取組事例集,高齢者住宅経営者連絡協 議会リビングオブザイヤー(2014 〜2016),日本医療福祉建 築協会建築賞(2017 年4 月時点まで)を参照し,取り組み事 例等への掲載や補助金事業として複数回選定されている,図1 に整理した複合的モデルに合致した取り組み内容や建築とし ての特徴があること,を条件に訪問調査が可能な50 件を選定 参考文献 1)西川英治:サービス付き高齢者向け住宅の先端事例から見え てきた課題 −「単体」から「街」へ,特集「サービス付き高 齢者向け住宅の意義と課題−豊かな高齢者居住のために何がで きるか」,都市住宅学,2016SPRING,pp.58-63 2)松田智生:日本版CCRC の可能性〜地方創生を支える組合 せ型ビジネス,特集「地方創生」,日本不動産学会 第29 巻 第2 号・2015.9,pp.80-87 3)園田眞理子:超高齢化に直面する東京圏における住まい方と 医療・介護・福祉のあり方,特集「地方創生」,日本不動産学会, 第29 巻第2 号・住宅利便施設福祉事業医療 医療施設 福祉施設 公共施設 見守り 交流 ボランティア 相談・助言 悩みの共有 情報の共有 日常生活の支援 配食サービス 就労の場づくり 遊べる環境 社会貢献 居場所づくり イベントの場 観光資源 一時滞在施設 移住 住居の提供 支援者の負担 を軽減する 多世代交流 転用交流自立した生活生きがい地域の活性化 活用する資源 施設種別活用方法立地など 活用する資源(縦軸)と支援内容(横軸)の共起 支援内容 関係をシンプルに集計したもので,分析対象とし た50施設において,活用する資源と支援内容の 組み合わせが含まれる割合を示す。ゆえにすべて の項が1/50=0.02の倍数となる。 ① ② ③ ⑤ ④ ⑥ 表5 活用資源と,それに対する支援内容の関係

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事業者アンケートを通じた高齢者介護施設における 介護ロボット・機器・ICT の活用実態に関する研究

2023-07-20 16:57:08 | 書架(高齢者関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

 

 

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事例紹介Website「PROJECTS'CATA-LOG」の利便性向上のための利用実態・実証調査

2023-07-20 16:50:44 | 書架(その他)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

 

・・以下検索用文字列…

1/10 事例紹介Website「PROJECTS'CATA-LOG」の利便性向上のための 利用実態・実証調査 Survey of usage and user verification to improve the usefulness of the case study website "PROJECTS’CATA-LOG" Keywords : Welfare origin type symbiotic community , Website , Hashtag , Case study website キーワード:福祉起点型共生コミュニティ,Website,ハッシュタグ,事例紹介Website While various efforts are being made to correct many social problems in Japan , a website "PROJECTS'CATA-LOG" that allows users to search for case studies across facility types has been launched, and based on the previous report, it has been developed and operated. The goal of this project is to create a website that is both convenient and professional, based on a survey of the actual situation and demonstration of use through questionnaires to users and analysis of website usage, and by extracting points of dissatisfaction from problems in maintenance and operation.  ○加藤瑞基*,山田あすか**,村川真紀*** Mizuki KATO and Asuka YAMADA and Maki MURAKAWA 1.研究背景 1.1 社会的背景  日本は現在,少子・超高齢化や貧困問題など様々な 社会問題を抱えており,これらの問題を解消するため に「生涯活躍のまち(旧日本版CCRC)1)」や「スマー トウェルネス住宅(国交省)2)」,その後継の「人生 100 年時代を支える住まい環境整備モデル(同)3)」 などの支援事業や取組が各省庁で行われている。これ らは加速する社会変化と共に多数同時並行的に展開さ れ,また短期間のうちに新たな取り組みに移り変わっ ていくというめまぐるしい状況にある。これらの取組 は相互に知見を援用可能と思われる事例も多く,個別 の事例ごとの既往研究がある。一方で,制度を超えた 事例や課題の整理は行われておらず,統一的視点での 総覧や検証が困難である。また,多様な機能と連携し た具体的な整備方法は十分に整理されていない。これ らより,今後,各地で興る新たな取組みや建築計画で は,多世代の利用者を想定した施設種別の横断・連携 や機能を複合化した施設・拠点の整備を重要視する場 面が増えると考えられる。 1.2 事例データベースのWebsite 公開の経緯  これらに関わる・興味を持つ・利用v する,研究者 や建築業関係者,建築初学者,施設運営者,自治体, 施設利用を考えている人(以下閲覧者と表記)に向け た,施設や拠点についての見学・ヒアリングレポート 記事や関連する情報サイトなどを集約した情報提供プ ラットフォームが有効と考え注1,医療・福祉・教育 等の施設/拠点の事例を紹介するWebsite「Projects’ CATA-Log(以下Website と表記)注2」を2021 年3 月に公開した(図1)。   このWebsite は,事例に関する見学・ヒアリング レポート注3などを共有できる,web によるオープン     * 東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻    ** 東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士( 工学)   *** 東京電機大学未来科学部建築学科 研究員・博士( 工学) * Graduate Student, Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. ** Prof., Dept.of Architecture, Faculty of School of Science and Technology for Future Life, Tokyo denki Univ., Dr.eng. *** Researcher, Dept.of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki University, Dr.Eng. 地域施設計画研究40 2022年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022 − 121 − 2/10 プラットフォームである。筆者らの研究グループに蓄 積された事例情報や事例見学レポートなどをオープン データベース化し,これに学会委員会などの協賛を得 て広く情報を収集・更新可能な仕組みとすることで, 従前は研究者などに個別に蓄積されていた見学・ヒア リングレポートなどの情報を共有可能なオープンプ ラットフォームを作り上げた。こうした,web による 各分野の事例収集・紹介・共有の仕組みには,アーキ 事例の収集 「福祉起点型共生コミュニティ」と その拠点施設を,潜在的な該当事 例を含めて広く収集する。 手法) ○各種モデル事業の文献調査 ○現地調査と資料収集,周辺調査 ○連携/ 関連する自治体へのヒア リング調査,文献・資料収集 データベースの作成 地域,機能,建築形態 など検索可能Website 形式のデータベースを 作成し、随時公開する。 自治体や事業者への情 報シェアとさらなる情 報集約と議論のプラッ トフォームとなること を期待する。 情報発信と社会実装 内容)地域特性や地 域・住民ニーズに応 じた検討材料さらな る情報集約と議論の 土壌としてWebsite をなどで広く公開す る。 プロジェクトの事前状況と準備プロジェクトの目的 収集している事例の例 サービス拠点, 共有施設サービス拠点 既存集合住宅 物販・入浴・飲食事業 コミュニティ の醸成 観光・ 移住 生活+介護施設 地域住民の利用 地域密着型 介護施設 生活関連 施設 医療施設 移動 通所・訪問 介護・生活支援事業 地方/ 郊外での 独立集落新築型 都市/ 郊外での 既存集合住宅改修型 郊外/ 地方/ 辺縁 での地域資源連携型 郊外/ 地方/ 辺縁 での福祉拠点設立型 図1 収集してきた事例とWebsite プロジェクトへのフロー ②ひとと活動事例先の対象者とその活動フレームを選択 ③ハッシュタグ 個々の事例の特徴,援用可能な要素を示す項目から選択 ①マップ地図内に表示される事例の種類で分けた事例のピンから選択 α:マップからさがすの実装及び凡例追加 地域を構成する公共の福祉10 分類から各事例の大枠 ④事例の種類 となる施設/ 取組みの種別を選択 ⑤具体的な機能事例先が取り組む活動やサービスの名称を選択 ⑥所在地 事例の所在地を都道府県単位で選択 ⑦キーワード 事例の名称等のテキストによるサイト内検索 サイトの利用実態調査 事例種別ではなく横断的 に類似する事例を紹介 事例の種類が類似する 取り組みの紹介 事例の詳細情報の紹介 援用可能な要素の紹介 検索ページ 事例閲覧ページ 検索時の指標 選択内容 事例閲覧ページへの掲載内容 ねらい website の構成 既出指標導入指標 γ:該当事例数表示 ②〜⑦を任意選択 ⑧条件から探す 所属, サイトを知った経緯, 興味のある分野やキーワード δ:モニターアンケート追加 ハッシュタグの組み合わせが類似する他事例の表示 C 類似する事例の紹介 事例の公式HP や国が公表する政策別の資料へのURL リンク B 関連サイトへのリンク β:表示位置やデザインの変更 事例先での利用者/ スタッフの様子や建築の使われ方について 記録した見学・ヒアリング時の情報からレポートを作成 A 事例見学レポート 表1 Website の構成概要 γ ⑦ ② ① ③ ⑧ ① ⑦ ⑥ ② ④ ⑤ ③ ① ⑧ ⑥ ④ ⑤ ③ A B C β α トップページ検索ページ:条件から探す 検索結果ページ 検索結果ページ事例詳細ページ 図2 構成したWebsite 画面と検索指標/ 掲載内容の具体的な箇所/ 追加・修正 テクチャフォート4)やソトノバ5),環境づくりのリゾー ムサイト6),7)などの事例があり,それぞれのテーマ に興味関心のある人々の情報拠有やネットワーク的な 関係構築に寄与している。  前報8)では,当Website の目的である,経験や知識 の差を超えて多様な事例にアプローチを可能とする横 断的な検索システム構築や,事例の分類などをはじめ とするWebsite の構築について述べた(表1)。また, 公開後に実施したモニターアンケートによる利用実態 調査から,Website の挙動やデザインの不満点を抽出 し,検索時の該当事例数の表示や選択項目の詳細な分 類などの改善案を整理した。 1.3 研究の目的  本稿では,前報の結果ならびにシンポジウム・学会 から得た意見などから,Website への事例の追加や利 便性・操作性向上のための整備・改修を行いつつ,事 例やハッシュタグの追加を行い,事例紹介サイトとし ての機能向上と内容の充実を図った。本研究では,2 章でWebsite の前報から追加・改善した内容を示し, 3章以降では,Website の利用者アンケート調査や Website 利用状況の抽出により,検索システムの利用 − 122 − 3/10 率やWebsite の検索システム自体の使いやすさの検証, Website 利用状況の抽出により利用実態を掴むことで, Website の整備・改善内容を検討し,今後の整備方針 を報告する。 2.Website の追加・改善内容と取り組み  2.1 追加した機能と改善内容  以下に,前報にて実施された2020 年12 月時点か らの2020 年度モニターアンケート(以下2020 年度 アンケートと表記)やシンポジウム・学会から得た意 見を元に,実装・修正したWebsite の改善点と追加機 能を示す(図2)。主に,α:「マップからさがす」機 能の追加/β:関連リンクの表示位置やデザインの変 更/γ:詳細検索時の該当事例数表示の3つの実装・ 修正によりWebsite の利便性の向上を目指した。以下 に詳細を記す。 α:「マップからさがす」機能の追加  地図情報(Google マップ)上に事例の所在地をピン で示し,地図上から直感的に事例を探せる「マップか らさがす」機能を実装した。マップピンは事例の種類 (10 種類)ごとに色分けし,階層(レイヤー)のチェッ クで事例の種類ごとに表示・非表示の設定ができる。 ピンの選択時には事例詳細情報(事例名称・事例ナン バー・事例の種類・参考URL など)を表示した。また, 前報から,「マップからさがす」利用時の事例の種類 とマップピンの色の対応がわかりづらいという指摘が あったため,同ページ内に常時参照できる凡例を追加 した。 β:関連リンクの表示位置やデザインの変更  関連リンク注4は,各事例のWebsite や各行政庁の事 例集へのリンクを掲載し,ハッシュタグが類似する取 り組みを紹介している。2020 年度アンケートでの結 果から,「レポートPDF で事例紹介ページが終わった と感じた」などの関連リンクの表記内容やデザインに ついての不満点が指摘された。そのため,関連リンク の表示位置を認識しやすくするため,表示名や表示範 囲,フォント,背景色を変更し,閲覧者が関連リンク を認識しやすいデザインに変更した。 γ:詳細検索時の該当事例数表示  前報での結果をもとに,詳細検索時に選択した条件 に該当する事例数を表示する機能を実装した。検索シ ステム「条件からさがす」において,検索実行ボタン の左側に選択に応じて,該当事例数を表示する。閲覧 者の絞り込み検索時の該当事例数を文字や閲覧ページ と検索ページの行き来で理解させるのではなく,「条件 からさがす」ページで完結させることで,絞り込みの ための理解度を高めると同時に安定した検索結果数を 反映し,事例閲覧・発見の機会の増加を狙う。 2.2 Website 運営に関する取り組み  Website の運営の取り組みとして,各施設の情報を まとめた事例データベース(以下DB と表記)の管理 やWebsite の認知拡大に向けた広報活動を行った。 1)事例情報のDB 管理  Website に掲載する事例情報の保守・追加・更新の ためのDB 管理では,過去の見学情報や論文,情報サ イトからWebsite に掲載する事例を取り上げ,過去の 見学レポートや文献調査から得られた情報を元に,DB へ事例の種類や所在地などの事例情報を追加・更新し た。また,筆者らの研究室が用意したテンプレートを 使用し,事例の詳細な情報を記した事例レポートを作 成した。その後,各事例に掲載許可願い/見学レポー トを送付,Website への掲載許可を取得し,Website 事例情報を反映,事例レポートを掲載した。  これらのDB 管理作業の中で,以下の課題がみられ た。 2)同時作業時可能なプラットフォームの準備  DB への事例情報の追加・更新作業やWebsite への 事例情報の反映作業時では,事例情報の多さから複数 人での作業が求められた。その際に,同時作業の際の 最新情報の共有ずれや更新作業の競合によるデータの 消失が問題として浮上した。そのため,同時作業が可 能なプラットフォームの準備が必要であると考えられ た。 3)掲載許可願い提出のタイミング  本Website は各施設が情勢や政策の中で,どのよう な施設が建てられてきたかという情報の保全・共有を 目的のひとつとし,各施設への掲載許可では過去の見 学資料から情報を得た施設に,現在の施設と異なった 情報が記載している見学レポートの掲載許可を出す場 合があった。その際,運営側スタッフの異動などで掲 載許可を得づらく,これ以降「そもそも公開/共有を 前提に」見学時点で掲載許可を願い出るような前提条 件の転換が必要であると考えられた。事例運営者側も, 情報公開についての考え方は従前と異なってきてお り,公共事業においてはその透明性が,民間事業にお いては情報発信による宣伝効果が重視されている。こ − 123 − 4/10 うした観点からは必ずしも同意を得られるわけではな く,また限定公開などの制限が必要な場合も想定され るにせよ,成果や知見は極力オープンに,シェアして いく姿勢が前提となっていく方向性が望ましい。 4)認知拡大に向けた広告活動  新規事例の情報提供先の拡大やWebsite の様々な利 用者への周知と普及のための広報活動では,建築学会 のシンポジウムや学会大会,大学のオープンキャンパ ス,施設訪問時の説明などで随時紹介を行い,また関 係者へのメールでの告知やSNS 上,QR コードを記載 した紙媒体のチラシの配布などを実施した。 3.調査概要  本研究では,Website の整備/運営と共に,前報と 同様,研究者や学生,建築従事者などを対象にした利 用実証調査とWebsite 利用者を対象にした利用実態調 査を行った。  調査開始時のWebsite の構成と状況を図3に示す。 総事例数は1216 件となり,各事例詳細ページに「A: 事例見学レポート」150 件,「B:事例のWebsite や 省庁の事例集のリンク」1107 件表示している。また, 総事例数のうち,各属性の付与事例数は,「②ひとと活 動」572 件,「③ハッシュタグ」615 件,「④事例の種類」 1216 件,「⑤具体的な機能」984 件であった。 3.1 利用実証調査の概要  改修後,2021 年冬時点のWebsite の利便性を検証 するため,建築を学ぶ学生・研究者や建築業従事者を 対象に利用実証調査を行った(表2)。調査方法は,モ ニターアンケート方式とし,前報で実施された2020 年度アンケートと同様に,回答者に検索する事例と検 索プロセスを指定し,実施後の利用感を質問した。ア ンケート内容は以下の通りである。 ・本Website で導入した「ひとと活動」,「ハッシュタ グ」,「マップ」の検索システムを利用した後に,選 択項目に記載する名称とその意味は直感的に理解で きたか。 ・検索時の項目選択から事例閲覧ページまでの流れは 直感的に理解できたか。 ・検索時の項目選択の条件に合った事例を見つけるこ とができたか。 ・事例詳細閲覧ページに掲載する情報は直感的に理解 できたか。 ・2020 年度アンケートへの参加経験の有無  これらの質問事項に対し,「5:とてもあてはまる /4:ややあてはまる/3:どちらともいえない/ 2:ややあてはまらない/1:全くあてはまらない」 の5 段階で評価を得た。さらに,1~3(全くあて はまらない~どちらともいえない)の選択時にはその 理由を自由記述方式で得た。また,Website 利用後の Website デザインや掲載内容の要望を自由記述欄を設 けて意見を収集した。期間は2020 年12 月10 日から 2021 年1 月15 日とした。アンケート対象者は筆者 らの大学の建築学科に在籍する学生と研究員,筆者ら と連携する他大学の研究員とその研究室の学生,一部 の実務者とした。本アンケートはメールで依頼し,回 答者は47 名となり,内訳は学部生(研究室配属前)2 人, 学部生(研究室配属済)19 人,大学院生(修士)14 人, 建築に携わる研究者2 人,建築の実務に携わる方8 人, 教職員2人であった。アンケート収集結果は2020 年 度アンケート(94 名)と比べて少なかった注5。 3.2 利用実態調査の概要  Website の利用状況を調査するために,以下の利用 実態調査を実施した。 1)アクセス解析サービスによる利用状況の抽出  Website から閲覧者の利用状況を抽出した。利用状 況にはWebsite 全体への訪問数や「条件からさがす」 で実行された検索履歴に加え,個別の事例ページへの アクセス数を抽出した。アクセス解析サービス(Google アナリティクス)により閲覧数や検索履歴を抽出し, Website の検索システムの利用実態やWebsite 運営伴 う広報活動などの閲覧数への影響を分析する(表3)。 ⑤ ④ ② B A ① 登録進捗状況 事例の種類別の登録数 150 1107 572 615 1216 984 0 200 400 600 800 1000 1200 凡例 宿泊施設・拠点 コミュニティ・まちづくり・集いの拠点 複合・共生・連携の拠点 交通・公園・商業・その他 こども・子育て支援 障がい児者の発達・暮らし・活動・就労支援 高齢者の活躍と生活支援 教育・文化 いろいろな住まい 医療・保健と健康 図3 アンケート開始時点のWebsite の登録状況 大学院生(修士) 学部生 (研究室配属済) 学部生 (研究室配属前) 教職員 建築に携わる 実務の方 建築に携わる研究者 調査手法 利用実証調査 アンケート 内容 回答者数 回答者属性 調査期間 14 19 2 2 8 2 事例検索の流れや検索事例を指定し,実際にサイトの使用感を検証しても らうモニターアンケート形式で依頼 2021 年12 月10 日~ 2022 年1 月8 日 ・各検索手法での流れ ・どの項目を選択して検索をしたか ・各検索項目の名称は理解できたか ・結果, 目的の事例を検索できたか ・利用後のサイト内改善要望について ・前回のアンケートに参加したか 47 人 表2 調査概要① − 124 − 5/10 2)ポップアップアンケートの実装  Website トップページと事例ページ上にポップアッ プアンケートを実装した(表4)。アンケート内容は以 下の通りである。 ・利用者の所属(大学生/大学院生/研究職/建築・ 建設業関係者/施設運営者・スタッフ/自治体関係 者/その他) ・Website「Projects’ CATA-Log」を知った経緯(SNS (twitter・facebook)/知人や友達からの紹介/検 索Website /その他) ・利用者の興味のある分野やキーワード(自由記述) ・Website への感想・意見(自由記述)  これらの質問事項とともに利用者にアンケート協力 願いをWebsite 上に表示し,Website の利用実態を調 査する。期間は2020 年12 月1 日から2021 年1 月 15 日とし,ポップアップアンケートに答えていない IP からWebsite に接続した閲覧者にアンケートを表示 した。 4.利用実証調査アンケートの結果と比較  4.1 Website の総合評価  利用実証調査の結果からWebsite の総合評価を集計 した。Website の総合評価では検索システム「ひとと 活動からさがす/マップからさがす/条件からさがす /キーワード検索」の4点について直感的に理解でき たかの19 設問を5段階で集計し,合計点を総合評価 とした。 1)全回答者の総合評価と属性の分布  図4に全回答者の総合点の偏差値による全体分布と 上中下位の回答者属性の内訳を2020 年度アンケート の結果とともに示す。「建築に携わる実務の方/建築 に携わる研究者・教職員」は2021 年度:上位5 人 (約31.3%)/下位4 人(約33.3%),2020 年度:上 位11 人( 約61.1%) / 下位4 人( 約22.2%)。「学 部生(研究室配属済)」は2021 年度:上位5人(約 29.3%)/下位5人(約29.3%),2020 年度:上位6 人(約20.7%)/下位10 人(約34.5%)。「大学院生(修 士)」2021 年度:上位6人(約42.9%)/下位5人(約 35.7%),2020 年度:上位6人(約25%)/下位10 人(約41.7%)。以上から,2020 年度の結果と比べ, 2021 年度の結果は回答者属性別に見ても上位と下位 に偏りが見られなかった。 2)全回答者の総合評価と属性の分布  「学部生(研究室配属済)/大学院生(修士)/建築 に携わる研究者・実務者」を例に,回答者属性別の19 設問のa ~ s の回答単純集計を図5に示す。評価点5, 4 点は「あてはまる」,3点を「どちらでもない」,1, 2点は「あてはまらない」として集計した。「あてはま る」の回答率は約90.2% であり,高評価が大半を占め た。  図5で「あてはまらない」に比較的多く分布してい るのは「学部生(研究室配属済)」ではb,f,j,「大学 院生(修士)」ではg,i,m,「建築に携わる研究者/ 実務者」ではf,g,q で比較的多く見られた。  次に,各設問の2021 年度アンケートと2020 年度 アンケートの結果を比較する。有意差は得られなかっ たため,実数/期待値から回答の偏りをみる。前報か らWebsite の改善点と追加機能を実装・改善した点を 含む設問n,p,q,s は2021 年度「とてもよい」に偏っ ており,前報での改善点は一定の効果があったと言え る。また,設問f,g,i,j の4設問では2021 年の評 価点1,2 点「あてはまらない」に偏りがあり,新た 調査手法 利用実態調査② 調査項目 回答者数 調査期間 website 内の検索エンジンから利用者の検索履歴を抽出 2021 年12 月1 日~ 2022 年1 月8 日 キーワード,所在地,ひとと活動,事例の種類,具体的な機能,ハッシュタグ 検索日時,検索時ヒット件数,使用デバイス 10482 件 表3 調査概要② 調査手法 利用実態調査① アンケート 内容 回答者数 調査期間 website 内にポップアップアンケートを設置し、website 利用者に協力依頼 2021 年12 月10 日~ 2022 年01 月08 日 回答者の所属について, このサイトを知った経緯について, 回答者の興味 のある分野やキーワードなどについて, サイトへの意見や要望について 27 人 表4 調査概要③ 属性別内訳 回答者属性 凡例 上中下位の回答者属性の変位 10 20 30 40 50 60 建築に携わる研究者建築に携わる実務の方 教職員学部生(配属済) 学部生(配属前) 大学院生(修士) 大学院生(博士) その他 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 Website 総合評価 各回答者の評価項目 19 問×5点=95 点 3 5 10 10 4 13 8 3 5 6 4 6 総合点:58~79 下位 中位 上位 1 3 5 10 10 1 2 1 4 13 8 1 1 2 1 1 5 5 3 1 9 3 1 3 1 5 6 8 10 6 13 10 6 6 3 8 5 9 5 3 11 5 4 3 4 3 3 5 4 6 6 1 1 2021 年度2020 年度 2021 年度2020 年度 建築に携わる実務の方/ 研究者/ 教職員 学部生( 研究室配属済み) 大学院生( 修士) 回答者割合(%) 2020 年度 2021 年度 下位中位上位 下位 16 人 中位16人 上位 15 人 下位中位上位 上位中位下位 79~86 86~93 図4 正規分布曲線による回答者のWebsite 総合評価 − 125 − 6/10 にユーザーから理解が得られていない点,満足度が低 い点が明らかになったと考えられる。  以上から,設問f,g,i,j を含む「ひとと活動から さがす」,「マップからさがす」については使いやすさ の向上を図る余地が検出されたと言える。 4.2 検索プロセスでの不満点の抽出  設問に対して評価点1,2,3の選択理由の自由記述 を基に,Website の検索システムで評価が低い傾向の ある箇所を検出し,今後のWebsite の改善に活かすた め,アンケートの自由記述部での全不満意見を,類似 した意見をまとめていく方法で整理した結果を示す。  Website 全体に対しては,「多言語化/事例数の少な さ/図面や写真の少なさ/所在地検索の詳細化」が言 及されていた。「ひとと活動からさがす」に対しては「項 目に似たものがある/検索結果が選択項目に該当して いるかわからない」が挙げられた。「ハッシュタグから さがす」には「専門用語と抽象的な言葉が混在/検索 結果が選択項目に該当しているかわからない」と言及 されており,「マップからさがす」には「検索マークが わかりづらい/レイヤー構造の説明が足りない/項目 が選択されていない状態からはじめたい」など,表示 方法に関する指摘があった。 4.3 検索・閲覧プロセスでの不満点の整理   アンケートによる利用実態調査から今後のWebsite の改善に活用するため,設問f,g,i,j を含む「マッ プからさがす」「ひとと活動からさがす」に着目する。 また,1 ~ 3 の評価を得た箇所の評価理由から同様の 理由が複数確認された内容を集計した(図6)。「ひと と活動からさがす」では「選択項目を含まない事例が 出てくる(3件)」/「検索結果の事例が選択項目に該 当しているかわからない(4件)」/「検索後に検索項 目を追加したい(2件)」,検索後の不満点が抽出され た。次に,「マップからさがす」では「(カテゴリ別の) レイヤーの選択を後からしたい(2件)」,「レイヤー構 あてはまる (+) どちらでもない (0) あてはまらない (-) 評価点:5・4 評価点:3 評価点:1・2 12 9 2 1 9 3 11 10 2 10 12 10 2 12 9 2 9 2 10 8 2 11 10 12 11 12 12 14 12 10 2 2 12 2 11 3 11 2 13 13 11 3 13 13 12 12 13 12 13 12 2 13 13 18 14 4 17 2 17 2 16 2 13 3 3 18 19 18 17 17 17 15 17 14 2 19 17 15 2 2 2021年度 2020年度 18 31 27 2 3 31 31 30 30 2 29 2 31 28 2 2 28 27 28 18 4 6 27 25 2 30 2 31 30 3 8 3 2 5 4 3 3 2 2 5 2 2 4 2 1 2 2 12 17 7 13 15 2 13 2 15 15 15 7 12 5 11 11 12 16 14 14 10 4 16 5 2 2 2 3 2 2 2 3 5 2 2 21 25 19 22 25 23 25 24 21 25 27 24 26 23 25 24 26 25 30 2 25 b. 事例先の情報,事例集へのリンクの発見 c. 類似する他事例の紹介の掲載場所の発見 e. 項目選択から事例の詳細の検索の流れ l. 項目選択から事例の詳細の検索の流れ s. 該当事例が見つけられたか r. 検索から事例の詳細をみる流れ q. 該当事例が見つけられたか p. 具体的な機能の選択項目の名称と意味 o. 事例の種類の選択項目の名称と意味 n. 項目選択から事例の詳細の検索の流れ m. 該当事例が見つけられたか k. ハッシュタグ選択項目の名称と意味 j. キーワード検索の使いやすさ i. キーワード検索の使い方の理解度 h. レイヤー検索の使いやすさ g. レイヤー検索の使い方の理解度 f. 該当事例が見つけられたか d. ひとと活動の選択項目の名称と意味 a. 事例見学レポートPDF の掲載場所の発見 事例詳細ページひとと活動検索 第二部(検索システム全体について) 第一部(各検索システムについて) マップエリア検索ハッシュタグ検索条件から探す検索KW 検索 凡例 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 学部生:研究室配属後大学院生:修士建築に携わる研究者/実務の方/教職員 0.93 1.15 1.13 0.75 1.05 0.9 0.95 1.11 1.5 0 0 0 0.85 1.3 1.09 0.82 1.3 0.41 0.93 1.13 1.5 0 1.07 0.86 0.95 1.1 1.5 0 0 3 0.93 1.13 1.5 0 1.07 0.86 0.99 1.02 1.29 0.43 0.94 1.13 1 1 0.75 1.5 1.07 0.86 0.96 1.07 1.5 0 1.07 0.86 1.02 0.96 0.75 1.5 0.81 1.39 1.03 0.94 0.75 1.5 0.81 1.39 0.99 1.02 1.05 0.9 1.125 0.750 1.03 0.94 0.9 1.2 0.75 1.5 1.01 0.98 1.04 0.92 0.9 1.2 0.99 1.03 1.13 0.75 1.5 0 0.98 1.05 1.29 0.43 1.5 0 1.01 0.98 0.75 1.5 1 1 0.98 1.03 1.13 0.75 1.09 0.82 1 1.01 1 1 1.13 0.75 実測値/ 期待値 P値 0.94 2021年度 2020年度 (0) 1 1 1.13 0.75 (-) 1 1.01 実測値/期待値 (+) 2021年度 2020年度 合計 合計 47 94 141 (0) 2.00 1.00 3 2.67 1.33 4 (-) 89.33 44.67 134 期待値 (+) 2021年度 2020年度 合計 合計 47 94 141 (0) 2 1 3 3 1 4 (-) 89 45 134 実測値 (+) 独立性検定( カイ2乗検定) 計算例:設問a ※ 有効回答票2021年度47票 , 2020年度94票/実数は該当回答者数 *:2020年度アンケートから改善・修正 ※ 該当回答者数未記入=該当回答者数(1) 各設問2021 年度アンケートと2020 年度アンケートでの 独立性検定をカイ二乗検定で行った。 有意水準は5%未満とし、全項目で有意差は見られなかった。 図5 回答者属性別の評価項目の単純集計 − 126 − 7/10 施設種別項目がある場所に違和感(2) o 条件からさがす ピンの色が分かりにくい/ 見づらい(2) j 検索マークがわかりづらい(5) i レイヤーを全て外す機能が欲しい(2) h レイヤー構造である説明が足りない(2) 検索マーク( 虫眼鏡) がわかりづらい(2) レイヤーの選択を後からしたい(2) g マップエリア検索 検索後に検索項目を追加したい(2) 検索結果の事例が選択項目に該当して いるか分かりらない(4) 選択項目を含まない事例が出てくる(3) f 似たようなものが多く感じる(2) d ひとと活動検索 マップからさがす 条件からさがす 具体的な指摘箇所 評価点 1~3の理由回答例 事例詳細ページ なにが「類似している」事例なのかが という点が分かりにくい(2) スクロールしないと分かりにくい(2) c 関連リンクという言葉だけでは、なに との関連か分かりにくい(2) b 事例詳細ページ 図6 評価点1~3 の理由回答集 造である説明が足りない(2件)」/「レイヤーを全て 外す機能が欲しい(2件)」とレイヤー構造に関する不 満点が抽出された。また,「検索マーク(虫眼鏡)がわ かりづらい(7件)」とデザインに関する不満点も抽出 された。 5.利用実態調査結果 5.1 ポップアップアンケート回答率  利用実態調査のため,ポップアップアンケートを設 置し,期間は2020 年12 月1 日から2021 年1 月15 日とした。ポップアップアンケートの結果は表4の通 りである。期間中のWebsite 訪問者は1547 人,回答 者は27 名となった。内訳は,大学生7人,大学院生 6人,研究職6人,建築・建設業関係者5人,施設運 営者・スタッフ2人,その他1人となっている。施設 運営者・スタッフと自治体関係者の回答が特に少ない ことが見受けられる。「Website を知った経緯」の質問 では「知人や友達の紹介」が19 人(約70.3%)に対し,「検 索Website」や「SNS(twitter・facebook)」などの偶 然発見した経緯を持つ利用者は3人(約11.1%)であっ た。以上から,現在行っている広報活動とポップアッ プアンケートの相性に問題があると考えられ,利用実 態調査のための別のアプローチが必要であると考えら れる。 5.2 検索履歴による検索指標の活用度   Website から抽出した利用者の検索履歴を検索指標 別に集計,検索指標同士のクロス集計の結果を図7に 示す。検索履歴数は10482 件が得られ,検索指標単 体での履歴は検索キーワード(226 件)/所在地(54 件) 事例の種類(2257 件)/具体的な機能(1743 件)/ ひと(138 件)/活動(125 件)/ハッシュタグ(3718 件)であった。  新たに導入した指標のうち,最も活用されたのは ハッシュタグ検索(3718 件)であった。一方で,ひ とと活動での検索はひと(138 件),活動(125 件)と, 活用度が低い傾向がみられた。「ひとと活動」タグの活 用方法が利用者に伝わっていないと考えられる。ある いは,利用者や活動の視点で,施設種別によらず広く 事例を検索するという機能のコンセプト自体が共有さ キーワード ひとと活動 事例の種類 ハッシュタグ 具体的な機能 活動 ひと 0 10 8 11 4 4 0 17 14 24 26 17 21 3718 14 15 26 27 21 17 18 18 17 20 20 19 85 19 10 14 14 1743 8 2257 15 11 54 226 4 24 26 18 138 4 26 27 18 125 ひと 85 と 活動 ハッシュタグ 具体的な機能 事例の種類 所在地 キーワード ひと 所在地 活動 検索条件一覧 既出指標導入指標 検索条件一覧 既出指標導入指標 図7 検索指標クロス集計 2021.11 2021.10 2021.09 2021.08 2021.07 2021.06 2021.05 2021.04 2021.03 2021.02 2021.01 2020.12 2021.12 事例ページ閲覧数(回) サイト訪問数(人) 時系列イベント凡例 サイト訪問数及び閲覧数 サイト時系列イベント年月日 ②2020.12.28 2020年度利用実証調査 ①2021.12.28 Projectsʼ CATA-Log プレオープン ④2021.07.15 第 39回 地域施設計画研究シンポジウム ⑤2021.08 Projectsʼ CATA-Log 改善及び追加機能追加 ③2021.03.31 Projectsʼ CATA-Log 正式オープン ⑥2021.09.10 日本建築学会大会 研究協議会 ⑦2021.12.10 2021年度利用実証調査 & 利用実態調査 0 1200 951 982 810 793 512 693 435 140 640 57 38 527 354 300 400 500 600 700 800 900 200 400 600 800 1000 0 100 200 1000 サイト調査関連 サイトイベント関連 シンポジウム・学会関連 複合・共生・連携の拠点 宿泊施設・拠点 コミュニティ・まちづくり・集いの拠点 障がい児者の発達・暮らし・活動・就労支援 交通・公園・商業・その他 こども・子育て支援 高齢者の活躍と生活支援 教育・文化 医療・保健と健康 いろいろな住まい 凡例 図8 Projects'CATA-LOG 開設からの時系列イベントとWebsite 訪問者,閲覧数の月毎集計 − 127 − 8/10 れていない可能性がある。これは,永らくいわゆる「施 設類型」によって建築事例が分類整理され,教育され, 制度もまたそのように作られていることとの関係を推 察させる現象である注6。また,検索指標の組み合わせ は総じて履歴数が少なく,利用者の多くが検索指標を 単体で利用することが見受けられた。利用者の新たに 加えた検索指標であるひとと活動の利用方法や事例検 索時の結果への影響を具体的に説明する必要があると 考えられる。 5.3 広報活動などによる閲覧数への影響  アクセス解析サービス(Google アナリティクス)に よりWebsite 全体や各事例ページの月毎の訪問・閲覧 数を抽出し,図8に訪問・閲覧数とWebsite プレオー プン以降の調査や広報活動などのイベントを時系列で 整理した。全体として,訪問・閲覧数は増加傾向にあり, 訪問者増加のタイミングには多くの人の目に留まりや すいシンポジウムや学会大会の時期に行った広報活動 による影響があると考えられる。2021 年4 月の正式 オープンでの広報活動以降,2021 年5 月,6 月では 広報活動の契機となるイベントがなかったため,訪問・ 閲覧数が少なかったと考えられ,また,④「第39 回 地域施設計画研究シンポジウム」や⑤「日本建築学会 大会 研究協議会」どのイベントの前後で訪問・閲覧数 がそれ以前に比べて多く,その後は大きな減少はなく 推移している。訪問・閲覧数を維持していくためには, 多くの人の目に留まるイベントの機会を活かした恒常 的な広報活動が重要であるといえる。 6.今後のWebsite 整備/ 調整方針と改善案  図6の利用者の不満点をもとに,「①:検索後の該 当事例ステータスの追加/②・③:マップからさがす」 の利用方法の配置及びレイヤー初期状態の変更/④: 地図情報利用サイトの変更」を提案し、以下に詳細を 記す(図9)。 ①:検索後の該当事例ステータスの追加  「検索結果の事例が選択項目に該当しているかわか らない」という不満点から検索システムから条件を選 択した後に検索結果ページへ移動した際に,該当事例 のステータスにキャッチコピーやハッシュタグに加 え,「ひとと活動」のステータスを追加。「ひとと活動」 選択後の検索時に該当事例の妥当性が一目でわかるよ うにし,「ひとと活動」ステータスの検索指標利用率の 向上を期待する。 ②・③:「マップからさがす」利用方法の配置 ねらい 該当件数件 1 2 3 4 5 … 10 … ①:該当事例のひとと活動ステータスの表示 事例写真 事例写真 活動 施設名 #ハッシュタグB #ハッシュタグC 活動D ひとD 活動A 活動B 活動C ひとA ひとB ひとC #ハッシュタグA キャッチコピー No.0000 〇〇県 ひと 活動 施設名 #ハッシュタグB #ハッシュタグC 活動D ひとD 活動A 活動B 活動C ひとA ひとB ひとC #ハッシュタグA キャッチコピー No.0000 〇〇県 ひと SEARCH キーワード この条件で検索 所在地 すべて ひとと活動 活動D 活動C 活動B 活動 活動A ( 選択中) ひとC ひとC ひとB ひと ひとA ( 選択中) ① 検索結果ページ 今後のサイトデザインのイメージ改善のポイント マップからさがす ③:レイヤー項目選択時の状態変更 ②:「マップからさがす」利用方法の配置 利用方法 すべてアイテム 宿泊施設・拠点 ぷろログ PROJECTS'CATA-LOG マップ 医療・保健と健康 すべてアイテム コミュニティ・まち... すべてアイテム 子ども・子育て支援 すべてアイテム いろいろな住まい ❷ レイヤー項目(施設種別の選択) すべてアイテム 教育・文化 ぷろログ PROJECTS'CATA-LOG マップ すべてアイテム 医療・保健と健康 すべてアイテム コミュニティ・まち... すべてアイテム 子ども・子育て支援 すべてアイテム いろいろな住まい すべてアイテム 教育・文化 ぷろログ PROJECTS'CATA-LOG マップ すべてアイテム 医療・保健と健康 すべてアイテム コミュニティ・まち... すべてアイテム 子ども・子育て支援 すべてアイテム いろいろな住まい ❶ レイヤーの表示 ③ ② コミュニティ・まちづくり・集 いの拠点 交通・公園・商業・その他 医療・保健と健康 複合・共生・連携の拠点  検索後の該当事例表示時のステータス表記に 「ひとと活動」を配置し,検索時の選択に事例が 妥当かどうかを一目でわかるようにする。 検索後の「ひとと活動」をステータスを明確にし, 「ひとと活動」の検索指標の利用度の増加させる。  「マップをさがす」のレイヤー表示時に初期状 態を全選択から無選択に変更し,レイヤー項目の 選択の自由度を高め、閲覧者の能動的に利用させ る。  「マップをさがす」の利用方法図を配置する。 利用方法がわからない層へアプローチし,利用度 増加を狙う。 図9 今後のWebsite 整備/ 調整点 − 128 − 9/10 及びレイヤー初期状態の変更  「レイヤー構造である説明が足りない」や「レイヤー の選択を後からしたい」という不満点から,連動する マップを変更し注7,「マップからさがす」ページに利 用方法を示した図の配置,レイヤー項目選択の初期状 態を無選択に変更する。「マップからさがす」利用の敷 居を低くし,レイヤー項目選択時の視認性や自由度を 上げ,「マップからさがす」の利便性と利用率の向上を 狙う。 ④:地図情報利用サイトの変更  運営側の不満点で見受けられたDB 管理の課題(地 図情報入力の煩雑性)から,事例の位置情報を反映す るサイトをGoogle マップからオープンソースの地理 情報サイトへ変更し,DB 管理でのWebsite 反映時の 共同作業での更新された最新情報の共有の問題を解消 し,事例の位置情報管理の簡易化,と「マップからさ がす」の検索時の利便性の向上を図る。さらなる発展 としては,各事例ページに位置情報を反映させる,事 例を選択プールして見学ルートマップの作成ができる 機能を設けるなど,マップツールの変更に伴う機能追 加も検討できる。  またこれらに加え,基本的な方針として前述のよう に,そもそも見学等で得られた情報を公開・共有する 前提での調査研究や事例訪問の機会をもつという姿勢 が拡がるよう働きかけを行うことが必要であると認識 する。そのため,ひとつには各学協会での活動との連 携,また各事例の設計者によるオープンハウス資料の 共有などが想定しうる方法である。 7.まとめ  本研究では,医療・福祉・教育等の施設/拠点の事 例を紹介するWebsite「Projects’ CATA-Log(ぷろロ グ)」の調査を実施した。利用実証調査から,検索・閲 覧プロセスの利用において「検索結果が選択項目に該 当しているかわからない」,「レイヤー構造の説明不足」 などの意見をアンケートの回答から得られた。利用実 態調査から,新たに導入した指標のうち,ハッシュタ グでの検索に比べ,ひとと活動での検索の利用度は低 かった。また,広報活動と閲覧数の関係性から,恒常 的な広報活動が重要であると考えられた。  以上を踏まえ,事例結果ページや「マップからさが す」「ひとと活動からさがす」の整備を進め,Website 利用方法の認知を高め, ユーザビリティの高い Website を目指しつつ,専門性が高く事例DB として の意義を持ち,有意義な情報を提供できるWebsite を 保っていくことを目的とする。 謝辞   本研究にご協力いただきました皆様に,篤く御礼申し 上げます。なお,本研究は,科学研究費補助金(基盤B)『「利 用縁」がつなぐ福祉起点型共生コミュニティの拠点のあ り方に関する包括的研究(研究代表者:山田あすか)』, 及び日本建築学会 社会ニーズに対応した特別調査委員 会「多様な事例の横断的な整理による福祉起点型共生コ ミュニティの概念整理と新しい地域拠点計画のあり方の 検討」の一環として行われました。 [注釈] 注1)一般公開後,最も利用が多い属性は建築に関する研究者や 建築業関係者,建築初学者と想定している。これらの利用者 は,事例の運営上の特徴や内観・外観の様子,ヒアリングの 内容を把握できるレポート記事,また関連リンクなどの関連 情報の集約にニーズがあると考えられる。また,制度の転換 期前後でのレポートなどは研究蓄積としての価値があり,こ の点にもニーズがあると想定される。本Website では,これ までの施設種別のみでの事例提示だけでなく,機能の複合や 連携が多く行われている背景をふまえて「ある機能や空間, 取組みをもつ」事例を,施設種別を横断・俯瞰して情報を得 られる点にニーズが発生すると考え,実践に至った。 注2)本Website は最短でも10 年間の運用を想定し,Website の維持管理・運営は筆者らの研究室が事務局となって行う。 公開している情報や記事の追加・更新は,当運営事務局と, 建築学会委員会での研究活動(施設見学や調査,シンポジウ ム)と連携して行う。 注3)掲載する内観写真,外観写真はプライバシー,権利に配慮 し,モザイク処理を施した画像を使用している。 注4)掲載する事例のリンクには,事例先が公式に開設している ホームページ,現時点で行政庁が公開している施策の事例集 紹介ページ,当該事例先の計画/ 設計に携わった設計事務所 等が公開する設計事例詳細ページ,当該事例が掲載されてい る新建築,近代建築の冊子のバックナンバー紹介ページ,医 療福祉建築賞の紹介ページ,他大学が運用する事例紹介ペー ジなどを載せている。リンク掲載の基準としては,国や学術 機関,当該事例先が公開している,信憑性のあるWeb ペー ジを選定している。 注5)前報と比べ,2021 年度アンケートの回答数は学部生(研 究室配属前)が少なく,前報との回答数に大きな差が出た。 注6)「活動」については,例えば小嶋 一浩『アクティビティを 設計せよ! ―学校空間を軸にしたスタディ』,2000/6/1,な どが「活動」に着目して設計におけるそのプレゼンスを上げ た経緯がある。制度において施設種別が新たに作られ,また 再編統合されていく経緯に照らせば,利用者やそこでの活動 の観点での事例整理は,長じては必ずしも施設種別によらな い知見として広く援用可能な基盤となることが期待される。 注7)当初,Google マップを用いていたが,設定の自由度がよ り高いオープンストリートマップ(OpenStreetMap,無料 で利用でき,編集機能がある世界地図の共同作業プドジェク ト)に切り替えた。これによって,事例ごとの地理的情報の − 129 − 10/10 管理入力,タグ付けの編集自由度が高まった。 [参考文献] 1)まち・ひと・しごと創生本部,「生涯活躍のまち」構想最終 報告,http://www. kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/ ccrc/saisyu-houkoku.html,2020 年10 月参照 2)SWC首長研究会,スマートウェルネスシティとは,http:// www.swc.jp/about/,2020 年10 月参照 3) 人生100 年時代を支える住まい環境整備モデル事業, http://100nen-sw.jp,参照2022.0306 4)architecturephoto® , ホームページ,https:// architecturephoto.net/,2020 年10 月参照 5)一般社団法人ソトノバ,ホームページ,https://sotonoba. place/,2020 年10 月参照 6)東京電機大学 建築・環境計画研究室,環境づくりのリゾー ムサイト,ホームページ,http://rhizomesite.com/,2020 年10 月参照 7)千葉紗央里,山田あすか:“ 小児の療養環境評価項目の整理に よる環境づくりの普及サイト「環境づくりのリゾームサイト」 の制作とその検証” こども環境学会 こども環境学研究,Vol.10  No.3(C.N.28), 2014.12,p.70,2020 年10 月参照 8)榎村賢,山田あすか,村川真紀,加藤瑞基,峯健人 :“「福祉 起点型共生コミュニティ拠点」事例のオープンデータベース - サイトの構築と検証-” 地域施設計画研究シンポジウム発表論 文集 vol39 , 2021.07, pp.203-212, 2021 年10 月参照 − 130 −

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まち・ひと・しごと創生総合戦略とそのモデル事業の類型化による 認識する課題と解決策パターンの分析

2023-07-20 12:00:00 | 書架(高齢者関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

 

・・以下検索用文字列…

まち・ひと・しごと創生総合戦略とそのモデル事業の類型化による 認識する課題と解決策パターンの分析 Analysis of issues and solution patterns based on the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and the typology of its model projects Keywords : Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities, Perceived Issues, Types of Solutions, Text Analysis,キーワード:まち・ひと・しごと創生総合戦略,認識する課題,解決策類型,テキスト分析 This paper analyzes the relationship between the geographical conditions of municipalities and cities, the issues they recognize, and the types of solutions (local resources and support methods) based on the texts of the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and its preceding model projects. The relationship between the geographical conditions of the municipality/city, the perceived issues, and the types of solutions (utilized local resources and support methods) is analyzed. In the formulation of the basic plan, the relationship between "geographical conditions and solutions" is more influential than "recognized problems and solutions," and the structure of the concept is easier to understand. On the other hand, it also suggests the need for guidelines in organizing perceived issues. ○山田あすか*,宮崎文夏** YAMADA Asuka and MIYAZAKI Fumika 1.研究の背景と目的  人口急減・超高齢化という大きな課題に直面する日 本では、高齢期のQOLならびに福祉の継続性の観点 から,地域内での自助・共助の仕組みなどを活用しつ つ,高齢者が適切な支援を受けながら地域で生活し続 けられる仕組みの構築が目指されている。これらは地 域包括ケアや共生型社会などのキーワードによって説 明され,それらの基本方針を踏まえて,政府は各自治 体が「まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下;総合 戦略)注1,2)1)」として、自治体の地域特性を活かした 自律的で持続的な社会の創生方針を立案することを求 めている。この総合戦略は各自治体によって検討時期・ 決定の時期が異なり,特に早い段階でその立案を行っ ていた自治体は地方創生についての必要性の認識が高 く積極的な取組を行っている自治体といえ,後進のモ デルとして参照もされている。  総合戦略とその記述内容については,その前提方針 1/10  * 東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) ** 東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻 修士課程(当時),修士 (工学)  * Professor, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., Dr.Eng. ** Former Student, Master Course, Dept. of Architecture, Graduated School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., M.Eng. と位置づけられるコンパクトシティ政策との関係がど のように盛り込まれているかの対応関係を調べて実質 的に70%ほどの自治体がコンパクトシティを明示ま たは関連計画と連携しているとした研究3)や,特に人 口減少社会における人口偏在のさらなる進行を緩和す る定住自立圏構想(ダム機能)としての地方都市の魅 力の顕在化といった価値を整理したレポートがある4)。 また,まち・ひと・しごと創生総合戦略のテキストを 分析し,その施策が大都市から市区町村単位の人口移 動,つまり人口偏在の解消に寄与しているかを分析し た研究5)では,テキストマイニングによって抽出され た単語「連携」が潜在因子として人口移動に効果があ ると示されている。  本研究では,本格的導入が検討されていた当時の「生 涯活躍のまち(旧・日本版CCRC)」を国内の先駆的モ デルとして,そのテキストや取組内容の分析によって これらの全体像を整理することを目的とする。その後 地域施設計画研究40 2022年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022 − 169 − 2/10 徴的な類型から,当該類型の典型事例となる自治体や 取組の例を示して,各総合戦略の概要を把握する。 3.総合戦略テキストの分析による解決策・課題・地 理的条件等の関係 3.1 認識する課題によるクラスタ   自治体が施策設定のために記述している,認識する 地域の課題のキーワードを,類似した内容をまとめて いく方法により表3のように整理した。このうち,「老 年人口の増加・高齢化」と「年少人口の減少」,つまり 少子高齢化は,すべての自治体に該当した。このため, 以下で説明するクラスター分析の際はこのキーワード は対象から除外する。これ以外では認識する課題の キーワードは大きくは[人口減少・雇用環境・生活環境] の3つに分類できる。  このキーワード整理を元に,各自治体の記述に各 キーワードが含まれているときに「1」,含まれていな いときに「0」とおいて階層型Ward 法クラスター分 析を行うと,キーワードの組み合わせによって8つに の策定事例においては,先行事例を参照して類似の計 画を設けたケースが一定数含まれるため,各自治体の 特性や課題に応じた模索時期の計画の概要を把握する ことがまず,基盤となるモデルとしての理解に対して 妥当であると考えたためである。  本稿の構成として,第3章では,各自治体の総合戦 略の説明テキストから,国内での地域性や各市町村の 創意工夫に応じた解決策の類型化を行う。また第4章 では自治体が認識する課題とそのための解決策,地理・ 人口条件の分析によって,総合戦略の組立傾向を分析 する。5 章では,類型ごとに実例を挙げて居住者の生 活や交流の様子,地域への波及効果の想定などを整理 し,今後の整備や制度利用における「選択」や,効果 的整備のための資料としてとりまとめる。 2.研究概要(表1)  2017 年当時に各都道府県・市区町村が掲げていた 総合戦略のうち,地方創生先行型交付金など政府から 補助金を受けている42 の自治体(図1・表2)を分 析対象とする。  対象自治体の地理・人口条件(表2)と,総合戦略 の内容から「自治体が認識している課題」「解決策」を キーワードとして拾いあげ,類似した語をまとめてい く手法で分類・整理する。各自治体の総合戦略がどの キーワードを擁するかによってクラスタ分析・ロジス ティック回帰分析を用い,自治体を類型化する。  さらに,整理した類型のうち,該当数が多い等の特 凡例:CCRC構想,ひと・まち・しごと創生本部事務局取り組み事例 :ワースト5を表す 高齢化 率[%] 人口/可住 面積[人/㎢] 人口増減率 (H22~27) 可住面積/ 面積[%] 所要時間 (東京) 所要時間 (指定市)  凡例  :東京  :対象自治体  :うち,政令指定都市 表1 研究概要 図1 対象自治体と政令指定自治体,東京の位置関係 研究① 研究② 目的 対象自治体 総合戦略のモデル事業の類型化 地方創生先行型補助金など政府から補助金を受けている自治体 研究方法地理・人口条件と,総合戦略の内容から認識している課題・解決策のキーワ ードによるクラスタ分析,ロジスティック回帰分析より,類型化を行う 目的 対象自治体 今後の整備や制度利用における選択と,効果的整備のための資料づくり 研究①より類型化した事例のうち,参考となる自治体 研究方法対象自治体の取組・構想事例を挙げ,その位置付けを整理する − 170 − 3/10 人手不足 消費の減少 雇用機会 の少なさ 就業者数 の減少 生産活動 の厳しさ 子育てと就 労の両立の 困難 事業所数の減少 雇用の場が必要 安定した雇用の確保 非正規労働者の増加 職業観の連携のなさ 女性の雇用機会の不足 観光業の縮小 観光者数の減少 宿泊施設の不足 税収減 税収減の可能性 生産活動の低下の懸念 介護を理由とした離職の増加 生産年齢人口の負担増の懸念 所得向上の必要性 商工業の小規模事業者の高齢化 ・後継者不足の加速化の懸念 企業の経営継続が難しい 総生産額の縮小 第1次産業の対従業者数 の産出量の低さ 仕事・子育ての環境 が整っていない 雇用の多様 性のなさ 子どもの預け先が足りない 保育ニーズの対応が困難 仕事と子育ての両立が難しい 求人と求職のミスマッチ 多様な働き方を求められている 子育て世代の所得の低下 保育の経済面の負担が大きい 人材不足 後継者不足 人手不足の可能性 就業状況にマイナスの影響 を及ぼす可能性 人材確保の難しさ 消費の縮小 町外での消費傾向 経済規模の縮小の懸念 地域内消費の減少の懸念 経済規模の縮小 行政 地域資源 生活の 不安 地域の 環境 生活利 便性 生活での経済面の負担が大きい 移住の際の経済面の負担が大きい 犯罪・身の回り・防災力の危険性 自主防衛組織の希薄化 共助機能の低下の懸念 エネルギーの安定確保 地域防災機能の低下 都市機能の分散 不法投棄がある のいぬ・のねこ 地域医療環境が不十分 交通利便性・福祉施設入所 による転入 産科医療機関がない 医療・介護需要が縮小する可能性 医療・介護需要が増大する可能性 高齢者福祉の課題 自然環境 雪 無居住地域発生による地域 の保全が困難になる可能性 中山間部の衰退 生活利便性の低下 集落ごとの生活利便性の差 生活利便性に課題が生じる可能性 都市部との生活環境の格差が残る 公共交通の維持管理の困難 公共施設・交通の維持の困難の可能性 買い物環境が悪い 交通整備 の不足 交通の便が悪い 公共交通の整備 役員のなり手不足・高齢化 行政ニーズの対応の困難 移住者が増えた 公営住宅の不足 福祉環境 教育の格差が残っている 教育や文化継承への影響の懸念 大学がない 小学校の統廃合 高校がない 教育環境 観光者数の減少 宿泊施設の不足 認知度が低い 地域の持っている資源 を活かしきれていない 空き家 観光業の縮小 生産年齢 人口減少 就職によ る転出 進学によ る転入 消滅の可 能性 進学によ る転出 生産年齢人口の減少 若い世代の転出 第1次産業就業者数の減少 第2次産業就業者数の減少 第3次産業就業者数の減少 就業率の減少 生産年齢人口の減少の懸念 総人口の減少 大卒者が定着しない 就職による転出 転職期の転出 結婚による転出 東京圏への一極集中 転出超過 若い世代の転出 転入超過 高等教育機関への進学による転入 人口減少の加速化 過疎化の進行 地域コミュニティの維持の困難 消滅可能性都市がある 空き家 空き店舗 空き地・耕作放棄地の増加 過疎化 人口減少の加速化の懸念 平均寿命が短い 社会増減数の減少 自然増減数の減少 高齢期の転出 退職による転出 流出超過 地域の持続性の低下の懸念 老年人口の増 加・高齢化 総人口の減少 地域別高齢化率が高い地域がある 年齢構成バランスの悪化 単身高齢者・要介護者の増加 老年人口の増加 少子高齢化 2020年をピークに老年人口の減少 2025年をピークに老年人口の減少 50歳以上の転入 第1次産業の高齢化 第2次産業の高齢化 要介護認定者率の増加 超高齢化の進行 女性の後期高齢者の増加 年少人口 の減少 総人口の減少 子どもを産む世代の女性の減少 未婚率の増加 初婚年齢の上昇 年少人口の増加 少子高齢化 合計特殊出生率の低下 出会いの機会が不足 若い世代の転出 保育所の過剰状態の懸念 年少人口の大幅減少の見込み 若年層の離別の増加 出生数の減少 初めて出産を迎える年齢の上昇 高校進学による転出 大学進学による転出 東京圏への一極集中 高校がない 大学の選択肢が少ない 1世帯当 たりの人 口減少 核家族化 世帯数の増加 1世帯当たりの人口減少 高齢者の孤立 大学がない 若い世代の転出 転出超過 人口減少雇用環境生活環境 :クラスタ分析をする際に用いる  整理されたキーワード 凡例 クラスタ分析対象外のキーワード(すべての自治体が該当) 表3 認識する課題のキーワードの整理 分類された(表4)。これらの各クラスター(CL)に 共通する項目(60%以上が該当)をグレーに塗り,そ の内容の組み合わせによって3つのグループにまとめ た。グループの内訳を表5に示す。 1)課題が複合的である[少子高齢化複合]:CL8 に一致。 [人口減少・雇用環境・生活環境]のすべてに一致し, さらに[生活環境]のうち,福祉環境についての記 述がある自治体が該当する。 2)雇用機会を重視する[雇用機会]:雇用機会を軸に, 人口減少・生活環境に言及するCL 4,5,7と,人 口減少に言及するCL 6が該当する。 3)人口減少に特化した[人口減少]:人口減少のみ記 述するCL 2と,人口減少・生活環境に言及するCL 1,3が該当する。  総じて,人口減少にはいずれも言及されておりそれ に関連する,人口減少との相互関係的な原因となるこ とがらまでの認識をどの程度整理されているか,すな わち地域の課題を深刻なものとして詳細に整理してい るかの差異と理解することができる。雇用機会に該当 する自治体が最も多く,該当数は合計22 である。地 − 171 − 4/10 域での生業を成り立たせることが人口減少への対策に もなるという関係での課題認識を推察できる。6自治 体が該当する,課題が複合的であるグループは最も認 識する課題を詳細に整理している自治体と言える。 3.2 解決策- 活用地域資源と支援方法によるクラス タとその組み合わせ  記述された解決策を,まず[活用地域資源]と[支 援方法]に分けてから,類似した内容をまとめていく 方法により分類する。 ■[活用地域資源]は,住宅/民間/公共施設の跡地, 福祉施設,教育・公共施設,公共・民間(公共交通や 生活利便施設),産業に分類される(表6)。  このキーワードが各自治体のテキストに含まれてい るかの状況に基づきWard 法クラスター分析を行い, 3つのクラスターを得た(表7,8)。それぞれに,以 下の特徴を持つグループとして整理する。 1)施設および住宅跡地活用:福祉,教育,公共・民 間施設と住宅跡地を活用する。第一次産業と第三次 産業についての記述がある。 2)施設活用:公共・民間施設,第一次産業,第三次 産業についての記述がある。第二次産業についての 記述はない。民間施設/産業寄りの地域資源活用に ついての記述に特徴のあるグループと言える。 行政 administraction 生活の不安 anxiety life 消費の減少 reducation in consumption 結婚・出産による転出 moving out of marriage and birth   生産年齢人口の減少 reducation in working ages population 進学による転出 moving out of admission 老年人口の増加・高齢化  increase in aging population クラスタ Cluster 対象自治体のNO. グループ Group 人口減少雇用機会課題が複合 年少人口の減少 reducation in youth population 消滅の可能性 possibility of annihilation 教育環境 educational environment 1世帯当たりの人口減少 depopulation per household 医療福祉施設 medical and welfare facilities 空き家 vacant house 地域資源 community resouces 地域の環境 environmental of community 生産活動の厳しさ difficult to production activities 雇用の多様性のなさ diversity of employment required 進学による転入 transferred to addmission 人手不足 shortages of man-power 子育てと就労の両立の困難 difficulty of combine work and child-rearing   生活利便性 convenience of life 雇用機会の少なさ less opportunities for employment 就業者数の減少 reducation in number of employed people 交通整備の不足 insufficiency of traffic improvement 人口減少 Depopulation 雇用環境 Employment environment 生活環境 Life environment 認識する課題 recognize problems − 172 − 施設 Facility 跡地 Subsequent land 産業 Industry 施設,住宅跡地活用グループGroup 施設活用少ない

表8 解決策-活用地域資源のクラスタ分析結果 表7 解決策-活用地域資源の該当項目 第1次 Primary 第2次 Secondary 第3次 Tertiary 住宅 House 民間 Private 公共 Public 福祉 Welfare クラスタ Cluster NO. 公共・民間 Public・ private 教育 Educational 活用地域資源 Conjugate local resources 2, 3, 17, 20, 27, 34, 35, 36, 37, 40 22, 41, 42 該当する自治体のナンバー 29 10 3 凡 例 住:住宅跡地活用  施:施設活用  少:少ない 活用地域資源 住+施施少0 3)活用資源が少ない:活用資源についての記述が見 られない,または他の自治体に比較して少ない自治 体。産業に関する記述はない。  総じて,活用地域資源として事業等の核となる「施 設」をどの程度巻き込んで想定しているかにおいて差 異のあるグループと言える。最も該当が多いのは施設 および住宅跡地活用のグループで,29 自治体が該当す る。これらは,活用できる地域資源についてそれぞれ の自治体の実態に即して記述がなされた群である。 ■[支援方法]は,該当が最も多い定住・移住のほか, 雇用・就労や子育て支援などに分類される(表9)。該 当内容の種類が多いのは生活支援と子育て支援で,そ れぞれの自治体の考え方やケアニーズ等により,選択 的に記述されていると推察される。  このキーワードを元にクラスター分析を行い,3つ のクラスターを得た(表10,11)。それぞれに,以下 の特徴を持つグループとして整理する。 1)移住・福祉・住宅・生活支援:各支援方法が包括 的に記述された群。雇用・就労と多世代交流,住宅 の全てに記述がある。多世代をターゲットにした包 括的支援策が打ち出されている。地域包括ケアシス テムについては記述がある場合とない場合がある。 跡地 生活施設 住宅跡地 民間跡地 文字:クラスタ分析に用いたキーワード 公共跡地 福祉施設 教育・公共 公共・民間 産業 活用地域資源 空き家 空き店舗 公共施設跡地 廃校 住宅跡地 第1次産業(農・林・水産) 第2次産業(建設・製造) 第3次産業(小売り・運送・教育・医療・観光業) 医療・福祉施設 サービス付き高齢者住宅 学校施設(大学・専門学校・高校) 生活利便施設(商店等) 交流施設 公共交通・施設 活用しようと構想している地域資源 表6 解決策-活用地域資源のキーワード整理 住宅 雇用・就労 防災 移住・定住 子育て支援 医療施設 地域包括ケアシステム 支援 企業誘致 高:入所介護 障:入所介護 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 賃貸住宅 共同生活援助(グループホーム) サービス付き高齢者住宅 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム) 店舗(ショップ・売店) 飲食(食堂・カフェ・酒場) ギャラリー 温浴施設 運動場・スポーツセンター 地域包括支援センター 多目的ホール 町内会館 地域交流施設・センター 生活利便 施設 地域交流 施設 保育所 幼稚園 小規模保育事業 事業所内保育事業 認定こども園 放課後児童クラブ 届出保育施設 病児・病後児保育 一時預かり 障碍児通所施設 子育て支援 母子家庭等家庭 協力員派遣事業 障碍児相談支援 子:支援 子:通所 施設入所支援 就労移行支援 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ 短期入所生活介護(ショートステイ) 小規模多機能型居宅介護 障:支援 高:通所 訪問介護 訪問看護 高:訪問 居宅介護支援 サービス付き高齢者住宅 配食 診療所 小児初期急病診療所 薬局 高:居宅支援 障:訪問 居宅介護(ホームヘルプ) 障:通所 短期入所(ショートステイ) 障:生活介護 行動援護 多世代 交流 生活 支援 支援方法 表9 解決策-支援方法のキーワードの整理 文字:クラスタ分析に 用いたキーワード − 173 − 6/10 移住・福祉・住宅・生活支援移住・福祉・住宅移住・福祉移住グループ地域包括ケア システム community based integrated caresystems 住宅 house 生活支援 livelihood support 多世代交流 interaction of many generations 医療福祉施設 medical/ welfare facilities 防災 disaster prevention 移住・定住 local migration/ settle クラスタ Cluster NO. 子育て支援 to support rasing a child 雇用・就労 employment/ work 支援方法 support method 凡例 1:該当  0:該当しない   :60% 以上が該当   :50% 以上が該当 表10 解決策-支援方法の該当項目 該当する自治体のナンバー 移:移住   福:福祉  住:住宅  生:生活支援 支援方法,40 移・福・住・生 移・福・住 移・福 移 凡例 表11 解決策-支援方法のクラスタ分析結果 2)移住・福祉・住宅:地域包括ケアシステム,生活 支援に関する記述がなく,子育て支援について記述 がある点が特徴。子育て世代〜生産年齢層に特化し た支援方法が記述された群と言える。 3)移住・福祉:住宅と生活支援についての記述がなく, 子育て支援,雇用・就労,地域包括ケアシステムに 記述がある。子育て世代〜要介護年齢層に至る前の リタイヤメント前後の世代に対応した支援方法が記 述された群と言える。 4)移住:移住・定住と雇用・就労が多くの場合で当 てはまる(5/7 自治体,71.4%)が,他の支援方法 についての該当が他の自治体に比べて少ない。  総じて,移住と雇用・就労を軸として,ターゲット とする年齢層によって支援方法の組み合わせに特徴が あるクラスタ,グループが導かれている。該当自治体 が多いのは移住・福祉・住宅・生活支援(14 自治体) と移住・福祉・住宅(15 自治体)である。 ■解決策における[活用地域資源]と[支援方法]の クロス集計を,表12 に整理した。両者の組み合わせ をA 〜G の7 分類とし,その内容に照らして表13 お よび以下のように解決策の分類を4 分類に整理した。 ①多機能ネットワーク型:A「既存の住宅( 空き家)と 福祉・文教施設(事業終了後,事業継続のいずれも 含む)を複数活用して,移住・福祉・住宅・生活の 包括的支援を行う」が該当する。既往文献5)におけ るテキストマイニングによる抽出単語「連携」は, この類型において最も関連深いと想定される。 ②ネットワーク型:B「既存の住宅と施設を複数活用 して,移住・福祉・住宅の支援を行う」とC「既存 の住宅と施設を複数活用して,移住・福祉の支援を 行う。特に地域包括ケアシステムに言及」が該当す る。生活支援を伴わないことから,子育て世代〜リ タイヤメント前後の世代が対象だと想定される。 ③拠点型:D「特に民間施設を利用して,移住・福祉・ 住宅・生活の包括的支援を行う」とE「特に民間施 設を利用して,移住・福祉・住宅の支援を行う」が 該当する。利用される既存施設の組み合わせが多様 であり,既存住宅の活用によらず,住宅支援を行う ことが特徴的である。 ④拡充期型:F「既存住宅と施設を活用して移住促進」 とG「移住と福祉を支援方法とするが活用地域資源 についての記述が少ない」が該当する。他の自治体 に比べて具体的な解決策の記述が少ない自治体であ り,解決策自体が拡充時期にあると言える。 活用地域資源 多機能ネットワーク型5,8,10,12,13,14,16,23,24,25,28,30 多機能集中型3,17 施設型2,20,27,34,36,40 住宅+施設1,4,9,11,18,19,29,31,32 地域包括ケア推進型6,7,15,21,26 移住型目的先行型22,41,42 ③拠点型 ②ネットワーク型 解決策(4分類) 解決策(7分類) 内訳 ④拡充期型 ①多機能ネットワーク型 住宅+施設施設少ない 移・福・住 移・福 移 凡例 3,17 表12 活用地域資源と支援方法による解決策の分類 表13 解決策の分類 支援方法 ① ③ ② ④ − 174 − 7/10 4.地理・人口条件と認識する課題,解決策の関係 4.1 地理・人口によるクラスタ   各自治体の状況の客観的数値である,表2の人口, 高齢化率,人口/可住面積,可住面積/面積,人口増 減率,指定市からの時間の数値データをもとに各自治 体の地理・人口の状況について,4までと同様のクラ スタ分析を行った。この結果,各自治体はⅠ高齢化・ 過疎化が進行している地域,Ⅱ平均的な地域,Ⅲ人口 密度が高い地域,の3つに分類された。 4.2 地理・人口条件と認識している課題の関係  自治体の地理・人口条件は,自治体が認識している 課題と対応する関係があることが想定される。表14 に,両者の関係を整理した。また,両者の組み合わせ による該当事例の偏りを確認するため,実測値/期待 値を示した。地理・人口Ⅰ(高齢化・過疎)と認識す る課題が複合的である組み合わせでは期待値よりも実 測値が多く(実測値/期待値の比は1.94),同様にⅢ(人 口密度が高い)では認識する課題が人口減少のみであ る組み合わせでも実測値は期待値を上回る(同1.33)。  また,図2に,地理・人口条件のうち人口増減率, 人口密度)人口/可住地面積),高齢化率と認識して いる課題の3類型(少子高齢化,雇用機会,人口減少) との関係をロジスティック回帰分析により示した。な お,これらは地理・人口条件との関係のうち,相関が 見られた組み合わせを抜粋して示したものである。図 から,人口減少率が高く,人口密度が低く,高齢化率 が高い場合に[少子高齢化複合]の割合が高いことが 読み取れる。課題が複合的に認識されるかどうかにつ いて,これらの地理・人口条件との対応関係が明らか である。また[人口減少]の該当割合は人口増減率と, 人口密度による影響が大きく現れるが高齢化率との関 係は明らかには見られない。つまり高齢化率そのもの は人口減少との相関は弱い。これに対して,[雇用機会] の該当割合は,人口増減率と高齢化率による影響を受 けるが,人口密度による影響はそれに比較すると不明 瞭である。雇用機会を課題として認識するかは,生産 年齢人口の減少との関係が影響すると理解できる。 4.3 地理・人口クラスタと解決策の関係  分類の結果と,解決策の分類①〜④の関係をクロス 集計して表15 に示す。  表15 より,Ⅰ高齢化・過疎地域(18 自治体)のうち, ①多機能ネットワーク型が7事例(38.8%)と最も多 く次に②ネットワーク型が5事例(27.7%)である。 また,Ⅱ平均的な地域(15 自治体)のうち②ネットワー ク型が6事例(40.0%),③拠点型が5 事例(33.3%) を占める。Ⅲ人口密度が高い地域(9自治体)では④ 拡充期型が5事例(55.6%)である。その偏り(実測 値/期待値)はⅠ - ①,Ⅱ - ③,Ⅲ - ④において顕著に 見られる。総じて,地理・人口クラスタにおいて高齢化・ 過疎化が進む地域と多くの活用地域資源と支援方法を 記述するネットワーク型の割合が高く,人口密度が高 い自治体では多くの支援策には触れられていない。  地理・人口の数値と解決策①〜④の分類によるロジ スティック回帰分析を行った(図3)。人口減少率が大 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複 実測値 …1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 高齢化率[%] 凡例 認識している課題の3類型 R²:0.0505 p値(Prob>ChiSq):0.1276 R²:0.0799 p値(Prob>ChiSq):0.0385 R²:0.0355 p値(Prob>ChiSq):0.2349 認識している 課題の3類型 :課題が複合 :雇用機会 :人口減少 図2 地理・人口条件と認識している課題のロジスティック回帰分析 − 175 − 8/10 きく,人口密度が低く,高齢化率が高い場合に,①多 機能ネットワーク型の該当割合が高い。これと④拡充 期型の該当割合の傾向は真逆で,人口減少率が小さく, 人口密度が高く,高齢化率が低い場合に④拡充期型の 割合が高い。比較的課題が深刻でなく,予防的な措置 に留まる段階であると理解できる。②ネットワーク型 と③拠点型は①と④の間にあって,その合計の割合が 一定である特徴を読み取れる。②ネットワーク型は人 口減少率が大きく,高齢化率が高い場合に該当割合が 高い。子育て世代〜リタイヤメント前後の世代を対象 に呼び込みや引き留めを図り,人口バランスのさらな る偏倚を防ごうとする意図を推察できる。そのとき, 人口密度は決定要因とはならない。③拠点型は,人口 減少率が小さく,人口密度が低く,高齢化率が低い場 合に該当割合が高い。人口減少は緩やかだが人口密度 が低く高齢化率が高い地域において,公共交通や商店 等の生活利便性を担う民間施設の活用を主に多様な施 設を拠点とした支援策を展開し,既存住宅の利用によ らない居住支援を行う自治体の取組と説明できる。 4.4 認識する課題と解決策の関係  認識する課題と解決策の類型(表16)には,線形相 関に類する関連性はみられない。[雇用機会]と②ネッ トワーク型,[人口減少]と④拡充期型には期待値より も実測値が多く,後者は上述の傾向とも一致する。つ まり,人口減少が主たる課題である地域では,分析対 象時点では支援策の記述は比較的少なく,いわば予防 的段階と捉えられる。一方,課題が複合的である[少 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 4,5,19,33,36  地理ク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 図3 地理・人口条件と解決策のロジスティック回帰分析 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 人口増減率(H22~27 人口/可住面積[100人/k㎡] 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 ① ① :課題が複合 :雇用 :人口減少 ② ② ③ ④ ③ ④ ② ④ 高齢化率[%] 凡例 課題の分類 ① ② ③ ④ ① 解決策による分類 R²:0.0930 p値(Prob>ChiSq):0.0143 R²:0.0628 p値(Prob>ChiSq):0.0678 R²:0.0831 p値(Prob>ChiSq):0.0239 解決策に よる分類 :多機能ネット ワーク型 :ネットワーク 型 :拠点型 :拡充期型 ③ 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 地理・人口 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 表16 認識している課題と解決策の関係 ①:多機能ネットワーク型 ②ネットワーク型 ③拠点型 ④拡充期型 実測値 51 計 18 15 895 5 6 22 14 42 54 9 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 期待値 0.85 1.15 1.06 0.83 1.00 1.33 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 期待値 実測値 期待値 期待値雇用機会 人口減少 課題 実測値 複合 2202  解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 741 計 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 5.14 4.29 2.57 9 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口9 解 決 策 ① ③ ② ④ 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 解 決 策 ① ③ ② ④ 1.17 1.11 1.64 0.43 0.95 0.75 1.07 0.42 1.67 1.17 0 1.56 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,21,31 22,35,38,41, 42 9,11,15,26, 29,32 8,16,23,28 10 表15 地理・人口クラスタと解決策の関係 ②ネットワーク型 2,27 3,17,20,34, 40 ①多機能 ③拠点型 ④拡充期型 ネットワーク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ  認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 ■実数で表記 ■地理・人口条件と認識している課題の組み合わせに対する解決策類型の該当割合 20.0% 50.0% 12.5% 40.0% 25.0% 12.5% 20.0% 22.2% 33.3% 20.0% 44.4% 20.0% 20.0% 20.0% 40.0% 100.0% 100.0% 60.0% 40.0% 40.0% 60.0% 図4 地理・人口条件と認識している課題,解決策の関係 − 176 − 9/10 子高齢化複合]の自治体は①,②,④に該当し,課題 が整理されていても解決策が必ずしも多機能で相互連 携に意欲的とは限らない実態は,解決策の具体化や実 践における課題が現れたものと理解できる。  これら地理・人口条件と認識している課題の組み合 わせに対して,解決策が対応しているかを図4で確認 すると,同様にⅠ高齢化・過疎地域で認識している課 題の類型が分散しており(複合,雇用機会,人口減少 に広く分布する),客観的指標では課題が多いと推察さ れる地域でも,認識している課題やその解決策の複合 化において差異があることが読み取れる。 5.類型ごとの参考事例   表15 で組み合わせが多く,地理・人口条件と解決 策の典型的事例の概要を図5と以下に説明する。 ①多機能ネットワーク型:南魚沼市(A,雇用機会)「グ ローバル・コミュニティ」の形成:市内にある国際大 学を核とし,グローバルな異文化交流と,地域資源の 活用・福祉の整備・移住促進による多世代交流の場づ くりを行う。また,福祉・住宅を整備し,若者に対す る雇用の創出を目指している。 ②ネットワーク型:南伊豆町(A,少子高齢化)「アク ティブシニアお試し移住プロジェクト」:杉並区と連携 し都市部と地方の互いの強みや魅力を活かし課題を補 完しあい,地域の持続性を図る。お試し移住では移住 コンシェルジュによる住まい・仕事・子育て支援の紹 介を行い,短期だけではなく本格移住の促進を図る。 ③拠点型の事例:姶良市(B,雇用機会)「医療・福祉・ 都市機能誘導地域 居住誘導地域 市街化区域等 歩いて暮らせるまちづくりとして,公共交通 を軸に都市機能を誘導しまとめることで,コ ンパクトシティの形成を図る。厚生年金福祉 施設サンピアあいらの跡地を利用し,病院の 建て替えを行う。それに伴い,介護,予防, 教育,住まい,交流スペースなど機能を一体 的に整備したJOYタウン構想では,住み慣 れた地域で多職種・多世代,住民同士が互い に支え合いながらその人らしく暮らせる環境 「ヒューマンライフライン」の構築を目指す。 「社会保険」「民間事業」「ボランティア」といっ た制度の垣根を超え,「ひとがひとを支える 仕組み」を「ひとつ」につなぐワンストップ 窓口をつくり,わかりやすく親しみやすい生 活サポートを実現。 「世代を超えたつながり」「多様な人・団体の つながり」「地域や産業を超えたつながり」 に着目し垣根を超えた取り組みを進め,「自 分らしいライフスタイルを選択し,自己実現 できるまち」を目指す。 千葉県 新潟県 静岡県 鹿児島県 「福祉の街」として子育て支援から高齢者福 祉まで「未来の見える街づくり」を目指す。 学童とグループホームの幼老複合施設や,ダ イバーショナルセラピーといった多世代交流 の場も設置している。 NO.13 南魚沼市NO.19 南伊豆町 NO.40 姶良市 姶良市のコンパクトシティ化ヒューマンライフラインの構築新たな交流や価値を生み出す取組福祉の街 グローバル・コミュニティ アクティブシニアお試し移住プロジェクト NO.41 佐倉市 地理・人口:B平均的な地域 解決策:③拠点型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:医療法人玉昌会 基本理念:病院の建て替えと併せた一体的な整備によるC CRCの実現可能性の検討と,地域包括ケアシ ステムを基盤とした「コンパクトシティ姶良」 の構築をし,災害時の対応も想定した拠点づく りを目指す。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:①多機能ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:南魚沼市,国際大学,知多座と大学保健衛生専 門学院,市内外企業,金融機関,市内関係者等 基本理念:国際大学との連携を核とした国際文化あふれる 「グローバル・コミュニティ」の形成を目指す。 また,移住希望の高齢者への住み替え支援によ り,地方移住の促進を目指す。 地理・人口:C地方都市 解決策:④拡充期型 認識する課題:人口減少 推進主体:山万株式会社 基本理念:ユーカリが丘の開発を手掛けている山万株式会社 が主体となり,文化の発信,安心・安全の街づく り,少子高齢化対策,環境共生への取組,高度通 信技術の導入という5つのコンセプトに沿って街 づくりを推進する。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:②ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会,福祉環境 推進主体:南伊豆町,杉並区 基本理念:自治体連携により,アクティブシニアお試し移 住プロジェクトの実施とともに,都市部と地方 が互いに強みや魅力を活かし課題を補完しあう ことで,地域の持続性を高め,将来的に安定な 人口構造の維持を目指す。 基本情報基本情報 基本情報基本情報 ヒューマン ライフライン 家事 保育 若者 高齢者 子ども 子育て 世代 市民 ゆかりの 来訪者 著名人 転出者農業 商業・サー 工業 ビス業 観光 業等 医療 JOY タウン 教育 介護学び 観光 予防 教育 介護 医療 住まい 災害時 対応 見守り習い事 ボラン ティア ランニング フィット ネス こども お年 寄り 公共 交通 サー クル 温浴 岩盤浴 子育て 仲間ができる      様々な過ごし方      時間ができる        様々な支え合い 多世代 →新たな発想 多様な人・団体 →新たな交流 多様な産業 →新たな価値や循環 旧来から佐倉に根付く 歴史・自然・文化 新たなモノ・イベント ライフスタイルの創造 首都圏・都市部 移住交流総合窓口 ふるさと回帰 センター 移住・交流情 報センター 生涯活躍のまち移 住促進センター 杉並区役所 移住コンシェルジュが住 まいや仕事,子育て環境 等について支援・紹介 東京での窓口として移 住・お試し移住を紹介 ・空き家バンク事業 ・リフォーム等助成事業 ・不用品,リユース事業 ・移住促進住宅の検討 住まいの紹介 仕事の 支援 子育て環境 の紹介 シーズンステイ (1 週間から数か月) 物産展,アンテナショップ による魅力の発信 ワープステイ (最長5 年) 本格移住 高齢者向けの仕事や活躍の場を設け,生涯健康で元気に暮らせる地域社会を創出することで, 後期高齢者の転出を抑える。同時に,若者世代の雇用機会の創出につながる。 国際大学を核とし,グローバルコミュニティの形成を目指す。地域資源である自然や文化, また多国籍の文化の交流を通じて多世代,異文化交流の場づくりを行う。また,住宅と福祉 の整備を行うことで移住促進につなげ,若者の魅力ある雇用の創出を目指す。 ・雪を楽しむ ・登山,トレッキング ・まつり ・地酒,山菜,漬物など ・留学生家族寮 ・英語サロン ・公開講座 ・英語保育園 ・多国籍レストラン・移住者向け住宅 ・シニア向け住宅 ・お試し居住 地域資源の活用グローバルコミュニティ ・特別養護老人ホーム ・ケアハウス ・グループホーム ・介護老人保健施設 ナーシングケア ・子育て支援センター ・認可保育所 ・駅前保育所 子育て環境 ・リタイアメント ハウス ・有料老人ホーム リタイアメント ・ゴルフコース ・テニスコート ・ショッピング マーケット ・アスレチック コース アクティブ ・在宅支援センター ・デイサービス ・高齢者福祉生活センター ・図書館 ・園芸セラピー インキュベーションセンター 若者の魅力ある雇用の創出 移住促進 ・介護施設,診療所の整備 ・健康,活動マイレージの導入 ケア 図5 参考取り組み・構想事例 +障碍者福祉  学童 − 177 − 10/10 教育・住まい・災害時の対応を想定した拠点づくり」: 拠点をつくり,公共交通を核としたコンパクトシティ の形成を目指す。また制度の垣根を超えてひととひと が支えあうヒューマンライフラインを構築し,住み慣 れた地域でその人らしく暮らせる環境をつくる。 ④拡充期型ー佐倉市(C,人口減少):ニュータウンと 福祉の街の形成による,自分らしいライフスタイルを 選択し,自己実現できるまちを目指している。 6.まとめ   総合戦略を最初期に掲げ先行的なモデルとなった都 市・自治体の計画を対象にテキスト分析によって認識 している課題と解決策(活用地域資源,支援方法)と 自治体の地理・人口条件を整理した。  いずれの自治体も人口減少を課題と認識し,かつ雇 用機会を課題と認識する群に該当する自治体が最も多 く,地域での生業が人口減少への対策にもなるという 関係での課題認識を推察できた。解決策における[活 用地域資源]と[支援方法]の組み合わせ整理では, 最も包括的な策が言及された①多機能ネットワーク型 から,現役世代までにフォーカスする②ネットワーク 型,民間生活利便施設を活用する③拠点型,具体的な 支援策の記述が比較的少ない④拡充期型に分類した。  各自治体の地理的条件と認識している課題と解決策 の関係では,地理・人口Ⅰ高齢化・過疎化と課題が複 合的である[少子高齢化],Ⅲ人口密度が高いと[人口 減少]には対応関係がある。人口減少率が高く,人口 密度が低く,高齢化率が高い場合に課題認識が最も複 層的で具体的な[少子高齢化複合]の割合が高い。地理・ 人口条件による課題と解決策には関連性があり,高齢 化・過疎化が進行した自治体では①多機能ネットワー ク型,人口密度が高い自治体では④拡充期型,③拠点 型は人口密度の低い地域で該当割合が高い。人口減少 が主たる課題である地域では予防的段階の計画と言え る。一方[少子高齢化複合]には,解決策にバラツキ があり,課題が整理されていても必ずしも解決策が複 合的に立案されていない。地理・人口条件と認識して いる課題の組み合わせに対して,解決策が対応してい るかを確認すると,Ⅰ高齢化・過疎地域で認識してい る課題および解決策の類型が分散しており,客観的指 標では課題が多いと推察される地域でも認識している 課題やその解決策の複合化に差異がある。  解決策のパッケージがどの地理的条件の自治体でも 適応される関係にはなく,また自治体が置かれた状況 が類似していると思われる場合でも,各自治体におい て選択的に計画が組み立てられている。言い換えれば, どこにでも応用可能な解決策パッケージのような構想 とはなっていない。モデル化においては,「認識してい る課題と解決策」ではなく,「地理的条件と解決策」の 関係に基づくとより構想しやすいと想定できる。逆に, 課題認識の整理ガイドラインの必要性も示唆される。 謝辞  本稿は,第二著者・宮崎文夏氏の修士論文としてまと められた研究成果に,第一著者が大幅な加筆修正を 行って発表するものです。なお本研究は,科学研究費 補助金(基盤B)「「利用縁」がつなぐ福祉起点型共生 コミュニティの拠点のあり方に関する包括的研究(研 究代表者:山田あすか)」の一環として行われました。 注釈 注1)「まち・ひと・しごと総合戦略」は,平成26(2014)年7月18 日閣僚懇談会 での総理による「まち・ひと・しごと創生本部」設置指示を受けて平成26 年9月 3日に本部が設置(閣議決定)され,審議を経て,平成27(2015) 年度中に、地 方自治体において、中長期を見通した「地方人口ビジョン」と5か年の「地方版総 合戦略」を策定することとなったもの。第一期として,成果指標を2020 年とする 総合戦略(2015 〜2019 年度の5か年)が立案された。 注2)まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」では,以下 の理念を掲げている。 人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となっ て取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生 することを目指す。人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、「活力 ある日本社会」を維持するための政策として,以下6つの目標を置く。 [基本目標]  *【】は筆者による要約キーワード  1)【就労/経済】稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする  2)【関係人口・交流人口】地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流 れをつくる」  3)【少子化】結婚・出産・子育ての希望をかなえる  4)【地域継続居住】ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域を つくる」  [横断的な目標]  5)【人材活用(生産年齢人口減への対応)】多様な人材の活躍を推進する  6)【社会の変化への対応】新しい時代の流れを力にする

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□研究・設計業績 目次(2023.07.14時点)→研究業績は書き切れないので外部へ飛びます

2023-07-14 10:30:52 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

審査付き論文,Proceedings,学会口頭発表,紀要・査読無し論文,解説・論説,Award,外部委員歴等は

最新の状況を researchmapのportal にてご覧いただけます。

(データベースへの入力から公開までは若干時間がかかることがあるようです)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

以下は,個別アップできていた頃までの情報です。

1.審査付き論文

2.Proceedings

3.学会口頭発表論文

4.紀要,査読なし論文

5.解説・論説・講演 等

6.研究報告

7.計画・設計

8.著書

10.賞罰

11.社会活動等

 

以下は,個別に整理できていたころまでの情報です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.公刊論文(特記なければ査読付)

  一覧(発表年順)

  テーマ別(論文によっては,複数のテーマに該当することがあります。各カテゴリから,2016ごろまでの個別の論文の一覧をご覧いただけます。その後は発表年順一覧でご確認ください)

  【環境行動】

  【こどもの施設,成長・発達環境】

  【高齢者の生活環境】

  【障碍のある人の生活環境,支援施設】

  【医療施設の空間,環境】

  【住まい,住環境】

  【都市空間,まちづくり】

 

2.学会発表

 

3.卒業論文・卒業設計・修士論文・博士論文

  東京電機大学時代)2010〜2014年度 ,2015〜2019年度 

  立命館大学時代 )2006〜2009年度

 *査読論文誌への掲載実績とリンク。

  いくつかの論文は,査読誌への投稿中(■)や投稿準備中(□)のため,未公開。

 

4.計画・設計(実施&コンペ)

コンペ,実作等のリストです(下のサムネイルはイメージで,直接リンクではありません)

 

5.著書

ひとは,なぜ,そこにいるのか −「固有の居場所」の環境行動学認知症ケア環境事典テキスト建築計画空き家・空きビルの福祉転用こどもの環境づくり事典建築計画のサプリメント,建築設計テキスト 保育施設,建築設計テキスト 高齢者施設福祉転用による建築・地域のリノベーション ……

 

6.研究(研究助成金による研究成果の概要)

 
 
 
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七夕の笹を片付けました(願いが叶いますように)

2023-07-11 13:02:59 | 雑記

次のイベントはスイカ割りです

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進行中の研究や計画 ver.2023.0714

2023-07-07 09:55:00 | 進行中の研究や計画

* 研究室でのプロジェクト,研究課題の一覧 * 整理中です

公的研究費については,日本の研究.com や KAKEN を参照してください。

 

■ 研究助成金,研究奨励寄付金による研究課題

 

■ 設計・計画等プロジェクト

環境づくりのリゾームサイト

 (こどもの保育,療養の場の環境づくりの工夫や意義をご紹介しています)

東京医科歯科大学小児科病棟 環境改善(空間デザイン)(2015〜)

レイモンド花畑保育園 環境改善(空間デザイン)(2016〜)

・【計画・設計】戦後復興期の民家 DIY改修(2019〜),論文での途中経過報告はこちら

・【計画・設計】保育学生のためのコミュニティスペース ぴたカフェ(2019〜),論文での途中経過報告はこちら

   note  Instagram  YouTubeチャンネル

 

■ 現在の研究課題は, 研究室について で,紹介しています。

 

 

 

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【業務連絡】研究室配属面接の日程はWebclassにアップしました

2023-07-04 13:32:47 | ☆研究室について

情報が必要な方,志望をお考えの方はWebclass(ログイン必要)から,ご確認ください。

面接は個別で実施しますので,ご都合のよい時間帯を,記載のフォームに入力ください。

https://els.sa.dendai.ac.jp/webclass/course.php/3d649e4b17dd8f9cc0af0814861c087c/manage/?acs_=0328cbed

 

 

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