15分の休憩を挟んだ作品の上映時間『2時間57分☆』が、あっと言う間に思えた!!
嘘と裏切りを重ねて王になる男の、栄光と破滅の物語「朧(おぼろ)の森に棲む鬼」
(何でわざわざメデタイ(笑)誕生日に、こういう作品を選んだんでしょう?)
始まってすぐに(うわぁ~っ!これは舞台で観たら絶対に面白かっただろうなぁ~!)って思った。
いつの時代とも、どこの島ともわからぬいにしえの神々が住む森の中。
ライ(市川染五郎)の前に3人の魔物(オボロ)が姿を現し、こう誘いかける。
『王になる望みを叶えてやろう、おまえの命と引き換えに』
・・・え?!
これって「マクベス」(シェークスピア)???
(座付作家さんがこの作品について「シェークスピアを基本にした骨太な人間ドラマを感じさせるもの」と書いてらっしゃるのを見つけました。・・・ナルホド)
でも、マクベスとこの物語の主人公・ライでは決定的に違いが・・・。
どちらも栄光を掴んだ後に待つ結末は「破滅」なんだけれど、マクベスは己の策略で命を奪った者達の亡霊に怯え、己がやったと同じに策に嵌められ地位も権力も命さえも奪われることを恐れて「破滅」というよりも「自滅」してゆくんだけれど、ライは違う。
最後のその瞬間まで、そして死して屍となってなお立ち尽くす姿を見ると、マクベスが「普通の男」に見えてしまう程に凄まじい。
王にしてやるという誘いに乗ったライに、一本の剣を手渡しながらオボロが言う。
「その舌先が動くように、その剣は動く」
「今からここに現れる男を殺しなさい」
「それが、あんたが王になる最初の一歩」
「この先出会う、我らに似た三人の女がお前の運命の分れ道」
最初はその剣に振り回されるような立ち回りだったライが、徐々にのし上がってゆく過程で自在に剣を使い、やがて剣などに頼らずともその舌と策略で小悪党から悪党へ、そして人から鬼へと変貌してゆく様は、恐ろしいのに見ていたい・・と、まるで魔術にかけられたかのよう。
瞬時にどんな嘘をも仕立て上げるその「口先」で世を渡ってきたライを「兄貴」と慕う弟分・キンタ(阿部サダヲ)は、頭は悪いが腕っぷしは強い。
「心を許せるのはお前だけだ」というライの言葉がキンタにとっての宝物。
そんなキンタをも利用し、「道具」と言い放つ場面はボロボロ泣いてしまった・・。
座席位置から、上映前に(あ~・・、もう少し前の座席を選べば良かったかも)と思ったはずなのに、視界にあったはずの手すり部分のことなんか、すっかりブッ飛んでましたね~。
ナマの舞台ならではの臨場感にはかなわない分、ナマの舞台観劇では絶対に見られない映像がとっても魅力的でした。
例えば中央での演者の姿に、別の演者の動きをスロー画像の二重映しで見せるって手法。
実際に舞台を観る時に、同じ板の上とは言え全く違う位置で演じる者を同時に観る時は、どちらか一方により集中してしまうけれど、こういう映像で見るとより状況が立体的に見えて面白い♪
それ以外にも、客席からは見えない細かな部分や高い位置からの映像、花道の奥に走り去る後姿などなど・・・。
衣装の裾が綺麗に舞うのもスローで見ると、また違った美しさを堪能出来ます~。
それにしても市川染五郎さんって・・・所作が美しい。
2005年に観た映画「蝉しぐれ」の時も思ったけれど、一流の歌舞伎役者さんなんだなぁ~・・・って改めて見惚れてしまいました。
それから、ライの壮絶な最後の表情。
あれって、歌舞伎役者の染五郎さんだからで出来た表情なんじゃないかしらん?
他の出演者さん達も魅力溢れる方々がいっぱい!!
(あまりの凄さに、主要キャストでありながらセリフにも歌にも無理を感じてしまい、ちょっと同情してしまった女優さんがいますが・・・。
まぁ、まだまだお若い♪ これから楽しみな女優さんでもあります
)
1本の作品(舞台)を観る為だけに、新幹線を使って日帰りで東京まで行ってた頃の高揚感&満足感を思い出してしまいました。
・・・また「演劇熱」に火がついちゃったら、ど~しましょ。(笑)
ゲキ×シネ-朧の森に棲む鬼 予告編