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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

2012年9月25日・北ア穂高連峰山行(4)

2012-11-10 23:49:20 | 山・旅行


         【2012年9月25日(火)】 山行第4日目



                     
                        【 第4日目の行程図-ほぼ予定通りのコースがとれたが『前穂頂上』と『北尾根3蜂』には行けず 】
          
                       6:45『穂高岳山荘』出発-8:00奥穂頂上着-9:55『ジャンダルム』頂上着-11:25再び『奥穂』頂上着-
                       13:50吊り尾根の『最低のコル』着-14:38『紀美子平』着-15:15頃『雷鳥広場』手前で忘れものに気づく-
                       15:54(3回目の)『紀美子平』(通過)-18:45『岳沢小屋』着
                   




 小屋の窓から外を見ると、今日こそ晴れ! 御来光こそ見られなかったが、やっと天気も微笑んでくれた。
 

                      
          
             【日の出前の『穂高岳山荘』からの眺め(常念岳方面)】 

 今日の予定は、まず『奥穂』に登り、そこにザックを置き身軽にして『ジャンダルム』までをピストンして、再び奥穂に戻ってから、『吊り尾根』を進み、最低のコルから直接『前穂』頂上を目指し、『北尾根』の三峰まで行けたらと思っている。宿泊は『岳沢小屋』でとるつもりである。
 過去3回、奥穂-西穂間の稜線を歩いているが、ジャンダルムの頂上に立ったのは1度きりである。是非今回は、もう一度その頂きに立ちたいと思っていた。


                         
                             【 天気はよし!さあ出発 】


 遅めの朝食を済ませ、午前6時45分『穂高岳山荘』を出発。

 前日の食欲不振から、Yさんは引き続き体調が良くなく、朝食もあまり進まないよいうで、「出発は遅らせゆっくりマイペースで後を追う。」という。下山するほどひどくはないようなので、ひと安心する。
 『奥穂』の頂上で待ち合わせることにし、ひと足先に出発して、早速はしごと鎖場の連続する登りに取りかかる。


                                         


 『穂高岳山荘』のテラスから見上げる壁は、いったいどこから登れるかと思うほど険しく見えるが、登ってみれば何のことは無い。しっかりした岩をつかみ一歩一歩上がり、鉄梯子を慎重に登る。あっという間に山荘の赤い屋根が下方に小さくなる。


                                    
                                                【 『前穂北尾根』も今朝はすっきり姿を見せる 】


 山に入り初めての好天で、見渡せる周囲の景色に興奮しては先を急ぐ気持ちがはやり、自然と足も早まり、その反動で息が切れる。

 昨日の夕方から見えていた『前穂北尾根』も『ジャンダルム』もさらに近づきすっきり見えて来る。何時ガスが覆い、その景色が隠れてしまうのではと危惧して思わずシャッターを切り続ける。


  
       【 奥穂への登りから姿を見せる『ジャンダルム』】


 一歩進んでは景色に見とれて、進行の足取りが送れる。振り返れば、昨日は全く姿を見せなかった『槍ヶ岳』がくっきりと見えるではないか。


                            
                              【 涸沢岳とその奥に槍ヶ岳 】


 『笠ガ岳』も『双六岳』方面の山も見渡せる。『奥穂』の頂上まで行けばもっと広く遠くまで見渡せるのは分かっているが、「今見える景色もしっかり見ておきたい」、「上ではもしかしたら天候が変わり見えないかもしれない」という気持ちが、先に進む事を拒ませる。

 50分で行けるはずの行程に1時間半も費やしてしまった。頂上では、さらに360度パノラマの景色が待っていた。ビデオを回す、同じ写真を撮りまくる。そうしている間に、Yさんも追いついて来てしまった。
 ザイテングラードから下山する様なことにもなれば、別行動という訳にはいかなかったが、幸いそこまでには至らず、奥穂までは行くということになったので、『ジャンダルム』の往復は、一人で行くつもりだったのが、こちらがゆっくりし過ぎて追いつかれてしまい、結局二人そろって『ジャンダルム』に行くことになった。


                                    
                                       【奥穂頂上にて】


 奥穂から見る『ジャンダルム』は、いかにも黒ずくめの鎧をつけた奥穂を守る《衛兵》のごとく威圧感があり迫力満点である。その《衛兵》に向かって大きな岩屑の道を下っていく。尾根道は細くなり『馬の背』の狭い岩場にかかる。両脇はスッパリと切れ落ち、緊張感が高まる。

 

      
         【 難関の『馬の背』を超えるYさん 】


 すぐそこに見え、小1時間もあれば行ってこれそうな距離に見えるが、更に『ロバの耳』の登行と大きくわれ落ちた崖を下り再び同じ高さまで上がってこなければならない。冷静に考えると、どうしても『奥穂』から往復3時間は見ておかねばならないが(計画時も確かにそう考えて計画を練ったのだが)行動しているうちに、その辺の計算が曖昧になってしまった。
 『前穂の北尾根』にも行くなら12時までには『奥穂』に戻らなければならない、と思いながら『ジャンダルム』の頂をめざす。


                                          
                                          【『馬の背』を超え、岩屑の稜線を『ロバの耳』のピークにむかう 】


 やはり十数キロの荷物を背中に背負っていないというのは楽である。最近、コースタイム通りで歩けなかった行程が、こんな難路でもそれ以下の時間で歩けるのであるから。振り返って、たどってきた道を見て「よく来たものだ!」と我ながら感心する。『奥穂』の頂上が遠くに見える。



      
         【『馬の背』方面を振り返る(奥に『奥穂の頂上』が見える 】


 『ジャンダルム』も見る角度によって全く違って見える。『奥穂』の頂上から見るのが(この記事の先頭の写真)一番迫力があるが、今ここから見る『ジャンダルム』は撮影のセットのように厚みが無く、平べったい。上高地からだと、どれが『ジャンダルム』であるかわからないほどだ。


                               
                                【 間近かに見る『ジャンダルム』-この角度からは平べったく見える 】


 ようやく『ジャンダルム』の基部に到着し反対側に回り込み、頂上に立つ。やっと今回の目標の一つを、初めて達成できた。

     

   【『ジャンダルム』の頂上の標識 】


 『奥穂』の頂上とは、また違った《格別》の360度の景色が広がる。


                                    
                                     【『ジャンダルム』頂上から見る槍ヶ岳と北穂 】

           
              【『ジャンダルム』から見る奥穂と『ロバの耳』(手前右)】



 景色に見とれているうちに、昼前は快晴に恵まれた天気も、次第に上高地側からガスが上がってきはじめた。西穂に至る稜線の上高地側の半分はすでにガスがかかり始めている。
 惜しいが、戻らねばならない。帰り道はYさんが先行する。時間がなければ途中で引き返そうと思っていたが、無事登頂を果たし、予定通りの時間で戻れそうである。

 『奥穂』の頂上に戻り、ザックを背負い直し、正午前に出発する。
 吊り尾根の下りからガスが大量に上がってきた。上高地側から上がるガスは稜線を堺に上高地側をすっぽり包んでしまう。前穂の頂上が見え隠れする。


                                    
                                      【『吊り尾根』から前穂を見る 】


 『最低のコル』までの道のりを、時間の計算と天候の具合の両方をにらみながら、どうしようか考えながら進む。やはり背中にザックを背負うと、ペースが落ちる。午後4時までに『岳沢小屋』に着こうと思ったら、『紀美子平』を2時には通過したい。そうすると、『最低のコル』から『前穂頂上』に直行して『第三峰』まで下って『前穂頂上』に戻り、そこから『紀美子平』に到達するのに2時間かかるとしたら、もう『最低のコル』に着いていないといけない。しかし、『最低のコル』はまだ先だった。小屋に入る時間を5時に延ばして、ぎりぎりだ。どうしようか迷う。
 後は天気次第だ。北尾根にもガスがかかっているようだったら、『第3峰』はあきらめよう。


    
         【『吊り尾根』からの涸沢カール(その底に『涸沢ヒュッテ』が小さく見える 】


 『最低のコル』に到着したのは午後1時50分だった。『前穂頂上』への直登の道はガスがかかっている。見通しも悪いし、時間的にもきついのであきらめる。
 小休止した後、気を改めて『紀美子平』への巻き道をゆく。


                            
                                【ガスの中の『最低のコル』】


 『紀美子平』に午後2時35分到着。仮に天気が回復して『ガスが晴れていたら』とも思ったが、頂上の方向はガスって見えない。残念だが、そのまま下るしかなかった。


               
                     【ガスに巻かれる『紀美子平』】


 これで、とうとう4つめの目標も達成できずに下山することになる。『紀美子平』のすぐ下の鎖場を力なく下る。

 『雷鳥広場』の手前の緩やかな道を下っているとき、腰の辺りが《寂しい》のを感じた。【貴重品を入れたウェスト・ポーチがない】のに気づいた。どこに忘れたか? 最後に荷物を降ろしたのは『紀美子平』だ。もう20分以上も下ってきてしまった。でも、戻るしかない。ザックを放り出し、下ってきた道を上り返す。後から下りてきたYさんにその旨を告げ、通り抜け、上に急ぐ。鎖場を必死によじ登る。そこを通過したら『紀美子平』はもうすぐだ。もう一人上から下りてきた。『ポーチ』のようなものを見なかったか訪ねたが、分からなかったという。下から上がっていった人はいないから、置き忘れていたら『紀美子平』に必ずあるはずだ。
 『紀美子平』まできて、荷を降ろした辺りを見渡すが、無い。まさか、その前にザックを降ろし、用をたした『最低のコル』に忘れたのだろうか。《まさかそんなことはあるまい》とおもいつつ、《でもそれしか考えられない》とも思いながら、『最低のコル』に急ぐ。『最低のコル』に忘れたとしたら、行き違いに数人の登山者と出会ったかもしれない。それなら、そのうちの誰かが、《落とし物》に気づき、善意の人なら《山小屋に届けるなり》、中をみて自分宛に送ってくれるかもしれない、とか勝手な想像をしながら進む。
 ようやく、『最低のコル』にたどり着く。辺りを見渡す。『無い!』。2、3歩移動して他を観た後、もう一度見る。さっき無かったはずの場所に『あった!』。良かった。どっと、安堵の胸をなで下ろすと共に、疲れを感じる。
 時計を見る。15時35分を回っていた。考えてみれば、30分ほどで『雷鳥広場』辺りからここまで戻ってきたことになる。《火事場の馬鹿力》的なエネルギーである。


                                                   



 すっかり気持ちが楽になって、三たび『紀美子平』に向かう。空を見ると青空である。さっきまでのガスはどこに行ってしまったのだろう。15時54分、3度目の『紀美子平』を通過。あとは日没までに、コースタイムで2時間はある『岳沢小屋』までたどり着けるかである。日没は6時前のはずだから、急いでも微妙である。こんなことだったら、前穂頂上から『北尾根第3峰』まで行けたんではないだろうか、と思う。でもそれは欲張りの考えであろう。ポーチが戻っただけでも良しとしようと、自分を慰める。


           
              
                 【日没間近い、奥穂から西穂の稜線(『ロバの耳』と『ジャンダルム』か】


 途中、『かもしかの立場』を通過し、最後のはしごを下った辺りで、とうとう日が落ちて、そのうち暗闇に包まれてしまった。ヘッドランプはあるし、道に迷うこともないと思ったから、疲れた足をかばいながらマイペースで下りてきたが、やはり真っ暗な登山道は歩きにくい。
 いよいよ小屋近くまで下り、テント場の明かりが真っ黒な木立の間から見え隠れするのを見て、『ああ着いた』と安心する。河原の向こうからのYさんの声に導かれて大きな石伝いに沢を渡り、『岳沢小屋』に18時45分到着する。Yさんの到着も食事時間には間に合わず、その晩は代用食で済ます。

 疲れた。


                                        【 つづく 】



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      2012年9月25日・北ア穂高連峰山行(4)
      




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