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道州制、易姓革命、外国人参政権には反対です。伝王仁墓に百済門を作るのは場違いであり、反対です。

連続放火(5名死亡)、強姦40件でも、更生の可能性がないとは言えない

2007年02月21日 | 行政・事案・司法
放火2百件・強姦40件供述の被告に無期懲役 大阪地裁(朝日新聞) - goo ニュース
尾上力被告(38)の判決が19日、大阪地裁であった。中川博之裁判長(中略)女児への連続強姦事件で04年9月に懲役20年を求刑された後、過去の事件について供述。
供述では、放火約200件、強姦約40件、強制わいせつ約200件。
判決では、7~13歳の女児に対する強姦致傷・未遂15件、住宅や物置などへの放火13件、放火で5人死亡、財産的被害は3億円近く。

ところが、
尾上被告が多数の放火事件を自発的に認めたことが自首にあたると認定し、「闇の中にあった事案の真相解明のきっかけを作った。被害者らに謝罪する言葉を述べており、多大の困難を伴うとしても更生の可能性がないとは言えない」と判断した。
求刑からして無期なのだ。判決も無期。不審なのは、供述と裁判が一致しないこと。供述の大部分は認定されなかったようだ。虚言癖もあるんだろうか(仮に虚言だとすると、死刑願望が考えられる)。これで死刑求刑にならないのは、不思議だ。終身刑なら分からんでもないが、今はその選択肢はない。

求刑のやり直しだから、最初の懲役20年求刑分は含まれていよう。しかし無期では、懲役20年とあまり変わらない。死刑制度や量刑はともかく、「更生の可能性がないとは言えない」が一番引っかかる。信用するも何も、いまさら、何の意味があるのだろう。普通、反省や謝罪は、罪を認識したことを意味し、責任能力を意味するのではないか。死刑の場合、そういうのは大事だ。罪を認識していない人を死刑にする方が、(こちらが)とがめる。

また、「自首」は事件が発覚する前に申し出た場合のはずだ※。大阪地裁の判決は理解に苦しむ。
訂正※自首は、事件が発覚していても、容疑者が不明な場合にも成立する。

追記:
尾上被告が強姦事件の被害児童宅に電話をかけてわいせつな言葉を告げるなどの嫌がらせをしたり、放火現場の消火活動を眺めて満足感を味わったりしていたと指摘。「被告にとっての強姦と放火は日常的な一種の気晴らしで、ゲーム感覚での連続的犯行だった。(ソース同上
被害者宅に電話をかける粘質な部分も、この犯罪の特徴なんですね。実にうんざりする輩(やから)です。

放火では、見物することの満足感が動機づけの大きな部分を占めるでしょう。さすがに放火で死者が出ただけでは、私も「求刑が死刑でない」ことを不思議には思いません。でも、放火は13回認定されていますが、死者はどの時に何人でたんでしょう。最後の時に5人ならまだしもと思いますが(被害の大きさから、そこで止める気になったのなら)、複数回の放火で合計5人だったらどうでしょう。はじめに死者が出た時に、放火が人の死につながる事の因果関係を思い知ったはず。でも繰り返したのだとすれば...

調べてみますと...
少なくとも、1999年5月大阪府高槻市のアパート放火で当時62歳の女性が死亡。2001年9月東京都墨田区のアパート放火で男性が飛び降り死亡。2002年2月墨田区の空き家放火で隣家の女性が焼死。2003年にも高槻市のアパート放火で当時74歳の女性が焼死ですね。これでも、更生の可能性があり、死刑は相応しくないのでしょうか? この事件は、放火の最高刑が課される、レアケースになるべきだったのでは。

本人の発言
放火は黙っているつもりだったが、収監中の大阪拘置所で他の被告にいじめられるのが耐えられなくなり、自供すれば拘置所を離れられる...
関連:
にしてんま傍聴日記:「死刑と思ってた」と空前絶後の強姦魔

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12 コメント

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同感 (kaze)
2007-02-20 11:33:58
この判決が正しいとなってしまうと、余罪の追及時の自白は自首扱いってことになりかねない気がします。

 極悪非道な行いを行った者が、このような処分では大勢の被害者の方が気の毒でなりません・・・。
Unknown (名無し)
2007-02-21 00:33:08
「なぜ死刑ではないのか?」
それは、結論から言えば、検察が殺意(確定的殺意も未必的殺意も)を立証することができなかったからです。
仮に、殺意を立証できていれば、検察は間違いなく死刑を求刑していたでしょうし、判決でも死刑になったでしょう。
現住建造物放火罪の法定刑は「死刑又は無期又は5年以上の懲役」であり、放火は一般的に重罪なのですが、最高刑に死刑を規定している点については、単なる建前です。
条文上は、殺意がなくても、もっと言えば、死者やケガ人すら出ていなくても死刑を科すことができますが、事実、少なくともここ30年で、殺意なく放火して人を死亡させた被告人に、死刑判決が出た例は1件もありませんし、死刑を求刑された例もありません。※戦後の混乱期には死者8名の保険金目的の放火で死刑判決が出た例が1件だけありますが、それも1審では無期懲役でした。

放火であれ、強盗致死であれ、殺意がない致死犯罪の場合、条文上はともかく、事実上は死刑になることはまずないのです。

その例をいくつか挙げておきます。
◆新聞販売店に放火し、5人を死亡させた被告人(現住建造物放火等)に求刑通り無期懲役の判決(平成11年12月17日大阪地裁判決)
◆憂さ晴らしで民家に放火し3人を死亡させた被告人(現住建造物放火等)に求刑通り無期懲役の判決(平成13年2月28日静岡地裁判決)
◆消防士ら3人を飲酒させた上睡眠薬を飲ませて死亡させ現金を強取した被告人(強盗致死)に求刑通り無期懲役の判決(平成11年7月8日水戸地裁判決)

このほか、今年1月27日には、ドンキホーテ放火事件の渡辺ノリ子被告にも、無期懲役が求刑されています。 http://mfeed.asahi.com/national/update/0119/TKY200701190321.html

放火で死刑になるのは、殺意があった場合、つまり、殺人や強盗殺人との観念的競合事案のみです。
そのような事案(たとえば宇都宮宝石店放火事件のようなケース)であれば、放火の法定刑にかかわらず、最高刑は死刑となりますから、現住建造物放火罪が最高刑に死刑を規定しているのは、建前に過ぎません。

http://school6.2ch.net/test/read.cgi/shikaku/1170860839/187
http://school6.2ch.net/test/read.cgi/shikaku/1170860839/192
もご覧下さい。
Unknown (名無し)
2007-02-21 00:33:33
白鴎大学法科大学院 土本武司教授 のコメント
「人がいる家に火をつければ死ぬかもしれない、という未必の殺意が立証できれば
殺人罪に問うことも可能だが、被告は放火自体を目的にしているため、
殺意の立証が難しいと判断したのでは。」
Unknown (名無し)
2007-02-21 00:33:50
なお、無期懲役について誤解されているようですので、少し説明しておきます。
無期懲役について誤解されている方が多いので、説明しておきます。

「無期懲役刑は期限を決めない懲役刑であって終身刑とは違う」という解釈をよく見かけますが、厳密にはそうではありません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%87%B2%E5%BD%B9(wikipedia:懲役)
http://lucius.exblog.jp/5881587/

無期懲役は、満期が存在しない刑罰であり、一生続く刑罰です。
しかし、刑務所に一生いなければならないのでは厳しすぎて反省する意欲も薄れるので、仮出獄制度(仮釈放)というものがあり、法律上、最短10年(20歳未満のときに無期刑の言い渡しを受けた者(少年法51条1項の規定により無期刑に緩和された者を除く)については最短7年)を経過すれば仮釈放の可能性が出てきます。
ただし、無期懲役は、一生続く刑罰ですから、刑の終了自体はなく、仮釈放が許されても、恩赦などがない限り死ぬまで「仮」釈放のままであり、終生保護観察に付されるため、決められた決まりを守らなかったり、微罪でも起こしたりすれば、刑務所に戻されることになります。

★このような刑罰のことを外国では一般的に「終身刑」と呼びますが、終身刑には仮釈放の可能性がある「相対的終身刑」と仮釈放の可能性がない「絶対的終身刑」の2つがあり、日本人は、後者にあたる刑のみを「終身刑」と呼んでいます。なお、日本の無期懲役刑はもちろん前者(=相対的終身刑)にあたります。

世間には無期懲役について過小評価している者が非常に多いですが、 『長くても20年』『だいたい15年』なんてデータに基づかない全くの『デタラメ』です。

「矯正統計年報」によれば、平成17年度の無期刑仮釈放者の平均在所年数は27年2ヶ月(※注)ですし、最近3年間に仮釈放を許された無期囚25名のうち、在所20年以下で仮釈放が許された者は1人もません。
つまり、近時では、“最低でも”20年以上服役しなければ仮釈放は認められない運用がされているのです。
また、無期囚の中には、在所40年を超える者も普通にいますし、なんと在所50年を超える者も複数います。 仮釈放を認められないまま刑務所で死を迎える者もいます。→http://lucius.exblog.jp/6098381/
そもそも、最近では、仮釈放を許される者の数自体減少しています(仮釈放者による再犯事件が相次いだため)。

注:※有期刑の上限が引き上げられたことにより無期刑仮釈放者の平均在所年数は今後さらに長くなるという見方もあります。

また、死刑の求刑に対し無期になった者については、相当長く服役しなければ仮釈放が認められない傾向にありますし、検察官が「マル特通達」を行った者や判決において「仮釈放は慎重に」との処遇勧告を付された者については、仮釈放は極めて難しいようです。身元引受人のいない場合も仮釈放は難しいです。
http://www.jca.apc.org/cpr/2002/kensatu.html(悪質事件の無期懲役囚、検察が仮釈放制限)

入所10年後から現在に至るまでの35年間ずっと継続的に「昼夜厳正独居」にされている無期囚(在所通算45年)や在所4年後から37年間「昼夜厳正独居」にされている無期囚(在所通算41年)も存在します。
※通常の独居ならともかく、35年間も「昼夜厳正独居」というのはもはや残虐な刑罰にあたるのではないかという指摘もあります。→http://www.jca.apc.org/cpr/nl28/oyama.html
Unknown (名無し)
2007-02-21 00:34:08
法制上は、無期刑に処せられた者は最短10年経過後(少年のとき無期刑の言い渡しを受けた者は最短7年経過後)から仮釈放を申請できる規定になっているため(刑法28条)、このことなどを根拠に「10年で仮釈放し得る無期懲役は刑として軽すぎる」と批判されることがありますが、このような批判は実態にそぐわないといわざるを得ません。
特にマスコミなどがこの点を強調して報道しているため、誤解されている方が多いですが、無期懲役はそんなに甘い刑罰ではありません。

なお、ヨーロッパの終身刑にも仮釈放があります。
ヨーロッパの終身刑は、日本の無期刑と同様、仮釈放のある「相対的終身刑」です。

http://www.janjan.jp/media/0702/0702119851/1.php(要人連続テロ殺人の終身刑囚 仮釈放へ)
http://www.japanjournals.com/dailynews/060614/news060614_4.html
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1161734264/ http://www.nikkanews.com/Visitor/news.php?id=200 http://www.janjan.jp/world/0702/0702049395/1.php
このほか、イタリアの終身刑は10年経過後から、オーストリアの終身刑は15年経過後から、フィンランドの終身刑は12年経過後から仮釈放の可能性があります。

近時の無期懲役の運用に鑑みると、尾上被告は刑務所で死ぬことになる可能性のほうが高いでしょう。 身元引受人もいないでしょうし。
仮釈放されるとしても、結果が重大であること、犯罪傾向が強固であること等の事情を考えれば35~40年以上の服役は必至です。
昼夜間独居拘禁制度にびっくり (worldNote)
2007-02-21 02:58:01
名無し様(コテハン付けてくださいな)

参考になるコメントありがとうございます。
ただ、平成12年末時点では(無期受刑者の)出所者の在所期間は21年6ヶ月でした。在所12~20年で出てくる場合も結構あったのは事実ですし、そういうイメージが残っているのは仕方ないでしょう。平均在所期間27年2ヶ月という数字は、平成17年度です。つまり、最近は仮出所がすごく厳しくなりつつある。当然、政策的なものでしょう(国会審議を経てません)。と思ったら、いつのまにか、懲役の最高刑は30年になってるですか。その辺との整合性を考えたのかもしれませんね。

ところで、尾上被告の供述は「自首」にあたるというのは、妥当と考えていいのですか?

#「昼夜間独居拘禁」制度はひどいですね。これは止めさせないと(死刑制度うんぬん以前の問題)。
http://www.jca.apc.org/cpr/2002/kaido-muki.html
Unknown (k@名無し)
2007-02-21 05:17:09
おっしゃる通り、27年2ヶ月というのは平成17年のデータであり、平成12年の無期刑仮釈放者の平均在所年数は21年2ヶ月です。
ただ、仮釈放者による再犯が相次いだことや刑法改正の影響などもあって、無期刑の仮釈放は一貫して厳しくなっており、長期化傾向は今後も続くと見られています。
以前のイメージが残っているのも、仕方ないと言えば仕方ないですね。

なお、最近5年間の無期刑仮釈放者の状況は以下のようになっています。
平成13年 22年8月  ※仮釈放者13 うち在所20年未満2
平成14年 23年5月  ※仮釈放者6  うち在所20年未満1
平成15年 23年4月  ※仮釈放者14 うち在所20年未満0
平成16年 25年10月 ※仮釈放者1  うち在所20年未満0
平成17年 27年2月  ※仮釈放者10 うち在所20年未満0
(矯正統計年報による)

[参考]
平成11年 21年4月 ※仮釈放者9 うち在所20年未満4
平成12年 21年2月 ※仮釈放者7 うち在所20年未満0
(矯正統計年報による)

なお、ここ10年で、12年で出た例は1件もないです。
在所13年以上14年未満が3件、在所14年以上15年未満が1件、在所17年以上18年未満が2件、在所18年以上19年未満が9件、在所19年以上20年未満が8件ありますが。

有期懲役は刑法改正(平成17年1月1日施行)により、単独の上限は15年から20年に、併合罪(および死刑・無期を減軽した場合)の上限は20年から30年に引き上げられています。

尾上被告の供述は、自首にあたります。
ただ、裁判所は自首を有利な事情の一つとはしていますが、自首減軽を施したわけではないです。
自首減軽は必要的減軽事由ではなく任意的減軽事由ですし、このような重大事件では通常自首減軽はまず施されません(オウムの林受刑者のケースは例外として)。
前例から考えると、自首がなくても死刑にはまずできないでしょうが、裁判官は、事案の重大性に鑑み、「死刑選択余地もある」と一応言った上で、自首や反省を有利な事情として挙げたのだと思います。

#なお、検察は「空前絶後の放火魔、矯正可能性は絶無」として無期懲役を求刑。
弁護側は最終弁論で「減軽は求めないが、被告の反省を判決文で評価してあげてほしい」と訴えた。
有利な事情や更生の可能性への言及はこれに応えたものではないでしょうか。
http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/79724
Unknown (k@名無し)
2007-02-21 05:38:40
なお、自首の成立条件ですが、自首は「犯罪事実そのものが捜査機関に発覚する前」または「犯罪事実そのものは発覚しているが、犯人が誰であるか全く明らかでない場合」に捜査機関に犯行を告白した場合に成立します(最判昭24.5.14)。
http://www.kensatsu.go.jp/oshirase/00111200607281/hourituyougonomametishiki.htm

ただし、自首は任意的減軽事由でしかなく、余程の場合でないと自首減軽は施されません(ただ、自首減軽が施されなくとも、自首した事実は量刑上有利な事情の一つにはなりますが)。また、検察官が自首減軽を施した求刑を行うことも重大事件では実務上ほぼ全くありません。
Unknown (k@名無し)
2007-02-21 05:56:23
私も個人的感情では、尾上被告の罪は万死に値し、死をもって償うのもやむを得ないかもしれないと思いますが、個人的感情を抜きにして語ると、やはり、いくら結果が重大とはいえ、殺意のない致死犯罪で死をもって償わせるほどの刑事責任を問うというのは、罪刑の均衡の見地から考えても問題があると思います。
Unknown (skel)
2007-02-21 11:16:26
法学部で法律学んでる学生として、本文・コメントともに興味深く読ませていただきました。
私は、今巷に漂っている「日本の司法は腐ってる」というムードに漠然と危機感を持っています。
確かに感情的に見て首を傾げたくなる判決も出ることはありますが、それはほんの一部でしかも地裁だったりすることが多いですよね。
裁判員制度が、大衆の感情を鵜呑みにするのではなくて、一般の人に対して裁判官はこんな論理で考えているんだと逆に伝えられる場になれば良いなと思っています。
制度的に機会も人数もかなり限られますが…

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