宮部みゆき『長い長い殺人』

なんとも特殊な語り手の宮部作品です。


その殺人事件は、妻が夫を殺した保険金殺人なのか？
しかし渦中の妻には、完璧なアリバイがあった・・・
ある意味、人に一番近いところにあり、共に行動する存在＝財布。
登場する１０個の財布の話を聞いたとき、事件の真相が明らかになる！


ということで、語り手は、なんと財布です（＾＾；
chibaggioさんの記事で気になっていたところ、たまたま手に入ったので読みましたが、
これがもう、かなり面白くてどんどん引き込まれていきました。

まず１つめの財布の話を聞きますよね。
すると次のお話は、さらにそこから人間関係が広がっていき、
事件がどんどん展開していくので、絶妙に「先を読みたい」感が高まっていくのです。

さらに、各財布に個性がちゃんとあるのがすごいです。
人間も描けているけど、財布も描けている（笑）
まさにそんな作品で、読後は自分の財布を眺めてみたくなるはず！？

ところで。
語り手が「財布」だし、ちょっとコミカルでほのぼのとした感じかな？
というイメージを抱いた方がいるとしたら、それは間違いです。
これはかなりシビアで、情け容赦ない物語です。
心情的に、うわ～(>_<)と思う展開が多いかも。
こういう「冷たさ」というのは、宮部作品の特徴のひとつかもしれませんね。

謎解きはできない作品だけど、サスペンスに満ちたストーリーは、
まさにエンターテインメント！！
マスコミに対する痛烈な視点も入っていて、読み応えのある作品でした☆