下手の横好き日記

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麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』

2007-03-27 23:59:59 | 
最後のページを読み終わった後、何ともいえない据わりの悪さに何度もページを繰り直しました。
そして「これは『問題作』だもんな~」と、ぐしゃぐしゃな気分のやり場もなく。

20年前、日本海に浮かぶ絶海の孤島、通称・和音(かずね)島に住んでいた若者たち。
彼らは一本の映画に出ただけの女優・真宮和音と、その熱狂的信奉者たちでした。
しかしその生活は1年後和音の死と共に終わりを告げ、彼らは解散してそれぞれの道を歩み始めます。
それから20年。彼らは和音追悼のために再び真夏の和音島に渡ることになります。
雑誌の記者・如月烏有は、助手の女子高生・舞奈桐璃と共に取材のため同行。
そして真夏の島が雪で覆われた朝、足跡一つ無い中庭のテラスに首無し死体が・・・

物語は幾つかの流れ(謎)が複雑に絡むことで展開していきます。
まず、20年前の和音島の共同生活はどういうものだったのか。
そして、20年後の今、島で何が起ころうとしているのか。
さらに、如月烏有と舞奈桐璃は無事にこの事件(島)から逃れられるのか。
究極には・・・「和音」とはどういう存在なのか。

そして、その全てに大きく関わってくるのがキュビスムの世界。
この場合は鑑賞というより理念の問題なのですが、ちょっと難しかったですね。
ある程度は烏有の立場で噛み砕いて説明してあるので、大丈夫でしたけど。
こういう理論を物語の核に持ってくるとは、麻耶氏の独特な手法ですね。

さて、途中までは和音島の過去と現在の謎に引き込まれて非常にわくわくと読みました。
犯人は誰?とか、和音って何?とか、色々興味をそそられる思考が可能だったからです。
結果として、20年前の和音島で何がなされていたのかは、途中で分かりましたね。
しかしその後の怒涛の展開は・・・何と言っていいか分かりません。
ネタバレにもなるので多くは語れないんですけど、もやもやです(迷)
そして、そのもやもやに辛うじて折り合いをつけようと思ったところに現れたメルカトル鮎。
銘探偵はその折り合いすら許さない言葉を置いていってしまったのでした・・・
表層的にとらえたら「そうか」で終わる物語は、考えれば考えるほど悪意の奥深さに迷い込みます。
どこからどこまでが悪意なのか、それを規定できないから気持ち悪いのですね、きっと。

世界を作るのが「作者」です。その意味で、作者には「神」の視座が与えられている。
どのようにも世界は作れるということを、実践しようとしているのが麻耶氏なのでしょうか。
例えば真夏に雪が降って積もっても。いいタイミングで地震が起きても。
どんなことが起きても、起きたことがその世界では真実なのだと?
作る側は読者の許容範囲を念頭に世界を作ると思うけど、麻耶氏には関係ないのかな??
あるいは許容範囲というものの存在自体を崩壊させるという試みなのでしょうか?

私は、この物語をある登場人物(烏有じゃないですよ)の視点に立って読んだら、耐えられない。
哀しすぎる・・・信じられなかっただろうな・・・(涙)

自分の常識観念を破壊されたい、と思う人は、ぜひ・・・


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2 コメント

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お疲れ様でした。。。 (あかね)
2007-03-28 15:36:09
本当に
曇り空~って感じがレビューから伝わってきます!
問題作。。。怒涛の展開かぁ~。。。
読んでちゃんと理解できるかなぁ???すごく不安です。
心に余裕がある時にチャレンジしてみようかな☆
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人それぞれ (viviandpiano)
2007-03-28 21:06:13
感じ方も違うから、何とも言えませんけど、
私は、あんまり好きなお話じゃなかったです。
理論的に捉えると、本格か否かというような議論になるかもしれないけど、
で、伏線なんかはあったりするんですけど、
それ以前に恐ろしい話・・・な気がします。

でも、怖いもの見たさで、ぜひどうぞ~(笑)
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