森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』

『ナ・バ・テア』に続くスカイ・クロラシリーズ。


「僕」は戦闘中、ちょっとした油断から反撃をくらい、病院に収容される。
首の後ろの傷自体は大したことがないようだったが、
上層部の考えによって、しばらく入院生活をおくることになる。
そんなとき、「僕」は記憶を失った少年と出会うが・・・


ということで、やはりここからはネタバレしますので、
スカイ・クロラシリーズを白紙で楽しみたい方は読まないで下さい。

周囲の思惑が入り乱れて、自由に空が飛べなくなっていく。
何となしに不自由になっていく、別のものを背負わされていく。
キルドレでありながら、草薙は「大人」であることを期待されるようになります。
体や命は永遠に子供でも、心だけは成長してしまうのでしょうね・・・
不安定な気持ちのまま、草薙がそれに順応していこうとするのが痛ましいな。

そして、都会のビル街でのティーチャとの一騎打ち。
草薙にとったら、一世一代の晴れの舞台。
死んでも、あるいは２度と飛べなくなっても悔いの無い戦い。
そう位置づけて臨む草薙は、それを子供からの卒業の儀式のように感じていたのかも。
だから、裏切られたときの草薙の気持ちを思いやると悲しくなります。

ただ怒りの心を胸に抱いて、それだけをエネルギーにして、
草薙は現実の世界にもう一度はまり込もうとします。
それが彼女にとって負担なのだろうな・・・と予想してみたり。

ティーチャ、ちょっといい奴かも、と認識を新たにしました。
そして、突如現れた「彼」の存在も謎だ～。
どうなるんでしょう！？
ますます、混沌としてくる世界観。
次の作品は『フラッタ・リンツ・ライフ』です。