在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Fuocoammare イタリア映画 海の炎 日本でも公開!

2016-04-14 15:18:23 | 何故か突然イタリア映画
Fuocoammare 海の炎
監督 ジャンフランコ・ロージ

待望と言っても過言ではない、期待の作品。
イタリアは南の端、ランペドゥーサ島でのアフリカ難民の生と死を描いた名ドキュメンタリー



ついこの前、2016年ベルリン映画祭で「金のクマ賞」(日本語にすると名前が可愛い。森のくまさん~)を取っている。
イタリアでは2月半ばから映画館で上映されているので、映画館に観に行けばいいだけの話なのだが、やはり監督の生のインタヴューが聞ける、それもかなりプライヴェートな状態で、は、やめられない。
(いつもいつもご招待いただき、ありがとうございます~!感謝感激です)

さて、今回の上映は、映画に先立ち、イタリアの海上警備隊の方の出席、挨拶と、5分程度のプロモーションフィルムの紹介があった。

挨拶は、海上警備隊の宣伝部の部長の方。
365日、24時間活動をしている。活動は多岐にわたり、もちろん移民の救出だけではない。
挨拶後、早速質問が飛び交う。

所属は警察組織ではなく海軍。
大型の船は2槽だが、40メートル級のものはたくさんあって、絶対に転覆しない船とのこと。つまり転覆しても起き上がる船なのだそうだ。へぇ~
かなりの難民が大きな火傷をしている。それは、重油と水が混ざると化学反応を起こし、濡れた洋服でかなりひどい火傷を起こすのだそう。え~!

プロモーションフィルムもよくできていた。
5分程度だが、活動内容がよく分かるものだった。

海の消防士。陸の消防士もだが、本当の勇気を持った人たちだと思う。

さて、映画はすでに64カ国での上映が決まっていて、日本も含まれているとのこと。(日本でも上映ですよ~見てくださいね~!)

なお、今日、まさに今日、舞台になったランペドゥーサで初上映している。(天候の関係で若干予定が遅れたそう)

映画は、本当のドキュメンタリー。ドキュメンタリー風に作ったとかドキュメンタリーに若干の場面を加えたとかではなく、本当のドキュメンタリー映画。



一匹オオカミ的な監督なのだと思う。
2014年から1年にわたり、一人で島に乗り込んで(なお、それ以前はランペドゥーサ島に行ったことはなかったとのこと)撮影。
撮影したフィルムは80時間にも及び、台本があるわけでもなく、本当にそのままを撮った、本当のドキュメンタリー映画。
それも、最初の4ヶ月(!)は、カメラも持たず、人(俳優ではない)を探し、アイデアを練るためにだけ出かけたとのこと。
主役の少年、サムエルは、しばらくして見つけたそうだが、見つけた時すぐに、彼だ!と思ったそう。

今は難民問題というとオーストリアなどが問題になっているが、2014年時点では、アフリカから海上を渡っての難民問題(そして若干トルコ)が取り上げられていた時代なので、ランペドゥーサへのアフリカ難民を焦点にあてたとのこと。

映画は、少年サムエルの日常と成長、漁師、DJもやっている島の放送局、難民に関わっているドクター、海上警備隊の活動、難民たちのインタヴューなど多くの角度から取り上げられている。
その間に関連があるわけではなく、何かストーリーがあるのではないが、モザイクのように映し出され、だんだんと最も大きく、基本的な問題が見えてくる。

  「難民」。海を越えて逃げてくる。希望を持って。しかし、それは死と隣り合わせの冒険。

映画中に語られることもあるが、語られないこともある。
インタヴュー中に監督が、同じような問題を持つパキスタンの記者が熱っぽく語る。

アフリカからの航海は1週間、船は2段か3段構造、甲板は1500ドル、甲板下は1000ドル、船底は800ドルだそうだ。
悲惨なのは当然船底で、モーターから排出されるガスが入ってきて、ガス室並みだそう。
そして、先に述べた重油と水が混ざり、入ってくると洋服に沁みて火傷になる。
船底に押し込められる時、そうとは知らなかったのだろう、拒否すると暴力で押し込められる。
女性は暴行される。
映画中で、難民の女性のエコグラフィーが映るが、父親は誰かわからない。
船の操縦は、3日程度訓練を受けた程度の人が行い、グルではなく、たぶん安く乗せてもらっているだけの同じ難民。
150人乗っていれば、助かるのは100人。50人は生きて陸には上がれない。

もっと刺激的な場面も多くあったそうだが、カットして、100分に収めている。

少年サムエルの、演技ではない表情が素晴らしい。
タイトルの「海の炎」は歌のタイトルからとっている。
流れる懐かしのメロディーも画面を引き立てている。

必見。

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