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沖縄戦「集団自決」をめぐる訴訟の判決-「沖縄戦 集団自決に軍関与」を認定ー

2008-03-31 07:07:42 | 民事裁判
集団自決「軍、深い関与」
沖縄戦訴訟大阪地裁 大江さん側勝訴
検定意見の根拠崩れる

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 沖縄戦の「集団自決」での旧日本軍の命令を否定する元日本軍の守備隊長らが、軍関与を指摘した大江健三郎さん(73)の著書『沖縄ノート』などで名誉を傷つけられたとし、同氏と岩波書店を相手に出版差し止めと慰謝料などを求めた訴訟の判決が二十八日、大阪地裁(深見敏正裁判長)でありました。判決は「集団自決」には「日本軍が深くかかわったものと認められる」とし、名誉棄損は成立しないとして請求を棄却しました。

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 文部科学省は、この裁判での原告の主張を理由の一つとして日本史教科書の「集団自決」についての記述から「軍の強制」の言葉を削除させる検定意見をつけました。判決によってその根拠が崩れたことになります。

 深見裁判長は元守備隊長の命令自体は「伝達経路が判然としないため認定することには躊躇(ちゅうちょ)を禁じざるを得ない」としました。しかし、多くの体験者が日本軍兵士から手りゅう弾を渡されていたと語っていることなどを挙げ、軍の「深い関与」があったと認定。元隊長らが関与したことは「十分に推認できる」とし、学説状況や文献、大江さんらの取材状況を踏まえると『沖縄ノート』などの記述は「真実と信じるに足りる相当の理由があった」とのべました。

 同裁判は沖縄・座間味島の守備隊長だった梅澤裕氏(91)と渡嘉敷島守備隊長だった元大尉(故人)の弟、赤松秀一氏(75)が、『沖縄ノート』と歴史学者の故・家永三郎さんの著書『太平洋戦争』(いずれも岩波書店発行)で名誉を棄損されたとして起こしました。梅澤さんらは「隊長命令による『集団自決』説はねつ造されたもの」と主張していました。

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 沖縄戦「集団自決」 太平洋戦争末期の一九四五年三月下旬、米軍は沖縄県・慶良間諸島の座間味、渡嘉敷両島を攻撃。その後沖縄本島に上陸し、沖縄戦が始まりました。このなかで、旧日本軍守備隊から住民に渡された手りゅう弾を爆発させたり、肉親同士殺し合うなどして、多くの住民が集団的に死に追い込まれました。一九五〇年に地元新聞記者が執筆した『鉄の暴風』(沖縄タイムス社)で、渡嘉敷、座間味両島の「集団自決」は軍命令と記述されています。

主張
「集団自決」判決
軍強制否定のねらいは崩れた

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 大阪地裁(深見敏正裁判長)は二十八日、太平洋戦争末期の沖縄戦での「集団自決」に日本軍が「深く関与」したと認める判決を、言い渡しました。

 裁判は、旧日本軍が住民に「集団自決」を命じたとする岩波新書『沖縄ノート』などの記述で名誉が傷つけられたとして、当時の戦隊長らが著者の大江健三郎さんと出版元の岩波書店を訴えていたものです。

 判決によって、元戦隊長らの訴えを理由に、高校教科書から日本軍の「命令」「強制」を削除させた政府・文部科学省の教科書検定も、誤りがうきぼりにされたことになります。

軍が「深くかかわった」
 沖縄戦では、座間味島で百七十八人、渡嘉敷島で三百六十八人の住民が集団死しており、いわゆる「集団自決」(強制集団死)の数の多さではこれらの島々が突出しています。

 判決は座間味島、渡嘉敷島の元戦隊長が住民に「集団自決」を命令したかどうかについては、「伝達経路等が判然としない」ことを理由に「ただちに真実であると断定はできない」としましたが、「集団自決」そのものについては「日本軍が深くかかわったもの」と認め、元戦隊長が関与したことは「十分に推認できる」と認めました。

 判決がその理由として、両島守備隊にとって貴重な手榴弾(しゅりゅうだん)を住民に渡したこと、日本軍が駐屯したところでしか「集団自決」が発生していないことなどをあげているのは、当時の沖縄県民の証言などとも一致しています。

 沖縄戦末期、両島の守備隊は補給路を断たれ、短機関銃と拳銃、軍刀、手榴弾が最大の武器でした。手榴弾は守備隊にとって死活的に重要な武器であったはずです。にもかかわらず、判決も認めるように、住民は手榴弾を使って「集団自決」しています。手榴弾は、守備隊が渡さなければ絶対に住民が手に入れることのできないものです。

 軍隊は指揮官の命令で動きます。兵隊が勝手に渡したなどという言い訳は通用しません。これ一つをとってみても、「軍官民共生共死」の沖縄守備軍の方針にもとづいて、元戦隊長らが「集団自決」を強制したことはあきらかです。判決が逆に、住民が補償ほしさに軍命令を主張したなどという原告の主張を退けたのは、原告らの主張に道理がないことを証明したことになります。

 元戦隊長らがおこしたこの裁判のねらいは、原告がつけた「沖縄集団自決冤罪(えんざい)訴訟」というタイトルでわかるように、日本軍の命令・強制を否定することにあります。南京事件では「大虐殺はなかった」、「従軍慰安婦」問題では「日本軍が強制した証拠はない」などといった、侵略戦争と日本軍の蛮行を正当化する動きと軌を一にしています。

 かつての誤りを再来させないためにも、歴史的事実の改ざんを許すわけにはいきません。

政府は誤りを認めよ
 原告敗訴の判決によって、改めて問われるのは政府・文部科学省の教科書検定です。

 文部科学省は昨年、この裁判をおこした原告の主張を理由にして、高校教科書から、日本軍が「集団自決」を命令・強制したとの文言を削除しました。

 原告の一方的な主張で築いた教科書検定に道理がなく、誤りであったことは明白です。政府は、日本軍による命令・強制を削除した高校教科書検定の誤りを認め、検定意見を撤回し、是正措置をとるべきです。

「沖縄戦 集団自決に軍関与」判決
侵略美化勢力の狙い砕く

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 二十八日、大阪地裁であった沖縄戦「集団自決」をめぐる訴訟の判決は、被告の大江健三郎さんと岩波書店側の主張をほぼ全面的に認め、元日本軍の守備隊長らの請求を棄却しました。文科省の検定意見の根拠は大きく崩れたことになります。

 この訴訟はもともと日本の侵略戦争を美化する勢力に支えられたものでした。

 裁判で原告側を支援してきたのは「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長が主宰する「自由主義史観研究会」や靖国訴訟で被告とされた靖国神社を擁護するために結成された「靖国応援団」など、日本の侵略戦争を正当化する「靖国」派の人たちです。弁護団には自民党の稲田朋美衆院議員も名を連ねています。

 裁判の本人尋問では、元守備隊長が『沖縄ノート』を読んだのは提訴した後であることが明らかになりました。訴訟が個人的なものではなく、侵略戦争美化勢力の政治的な狙いによって起こされたことはあきらかです。

 文科省は昨年度の教科書検定で、元守備隊長の陳述書を根拠の一つに、「軍の命令はなかったという説が出ている」として日本史教科書から「軍による強制」との記述を削除させました。その意味で訴訟は真実を否定し、ゆがめる役割を果たしたといえます。

 しかし判決は、「集団自決」にかんする生存者の証言などをていねいにたどりながら、米軍に捕まりそうになった際の自決用として日本軍が手りゅう弾を配っていたと多くの体験者が語っていること、渡嘉敷島では身重の妻を気づかって部隊を離れた防衛隊員がスパイ扱いをされて処刑されたこと、投降を勧告にきた伊江島の住民六人が処刑されたことを事実として認定。さらに日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では「集団自決」が起こっていないことなどを挙げ、「集団自決には日本軍が深くかかわっていたものと認められる」と明確に述べました。

 さらに判決は、文科省が検定意見の根拠とした元守備隊長の陳述書について「信用性に問題がある」と判断。「集団自決」に二人の元隊長が関与したことは「十分に推認できる」としました。

 そもそも係争中の裁判の一方の主張を根拠に検定意見をつけること自体不当ですが、その根拠さえ司法から「信用できない」とされたのです。(高間史人)

沖縄戦訴訟
支援者ら報告集会

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 「当然の勝利です。真実を広めよう」―「大江・岩波裁判」判決報告集会が二十八日、大阪市内で開かれました。沖縄や東京からの支援者も含め二百五十人が参加、熱気に包まれました。

 主催は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」、「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」、「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会」。

 沖縄戦研究者の安仁屋政昭・沖縄国際大学名誉教授が、沖縄戦は「国体護持」を第一義とし、「皇軍」の強制と誘導による親族殺し合いの事態が「集団自決」だったと指摘。「裁判所が明快に理解してくれた」とし、全国に取り組みを広げようと呼びかけました。

 岩波書店の岡本厚・『世界』編集長は原告側の意図について「『命どぅ宝』の沖縄の生死観、平和憲法の六十年間を否定しようというものではないか」と指摘。「『軍が深く関与している』との判決を受け、文部科学省はどう対処するのか。教科書の記述を変えてしまった責任は重い」と話しました。

 検定意見の撤回、教科書の記述回復を求め、運動をいっそう広げることが提起されました。

 名古屋市から友人と参加した大学生(20)は「歴史の事実が知りたいと思いました。命の大切さを訴え、人間の尊厳のためにこんなに多くの方がたたかっているのを知り、勇気をもらいました。これからもっと勉強したい」と話しました。

(出所:日本共産党HP 2008年3月29日(土)「しんぶん赤旗」)
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