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今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を-日本共産党の志位和夫委員長が発表・その2-

2010-05-20 04:30:01 | 国内政治
 3、中小企業を支援する税制と社会保障のしくみをつくります

(1)中小企業を支援する税制・税務行政に転換します

 大企業優先の税制から中小企業・自営業者を支援する税制に転換します……消費税の増税に反対するとともに、消費税の延納措置を認め、免税点を引き上げます。所得税法56条を廃止し、事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費と認めます。法人税に累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については現行より税率を引き下げます。法人事業税の外形標準課税に反対します。事業用資産については、一定期間の事業承継を条件に、相続税の減免を認めるようにします。

 「納税者憲章」を制定し、納税者の権利をまもります……消費税納税にあたっての仕入れ税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など、国と地方の過酷な徴税・税務調査が横行しています。経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち23カ国で、「納税者憲章」が制定されています。日本でも、「事前通知や調査理由開示の義務付け」、「第三者の立会人及び調査内容の記録や録音」、「生存権的財産の差し押さえ禁止」など、納税者の権利を保障する「納税者憲章」を制定します。

(2)国保料をはじめとした中小企業の負担を軽減し、共済制度等への支援をつよめます

 国保料(税)を軽減し、人権無視の国保行政をあらためます……市町村国保の高すぎる保険料(税)が、業者のくらしを脅かしています。緊急に国の責任で国保料(税)を1人1万円値下げします。国保への国庫負担を復元して、誰もが払える国保料に引き下げます。滞納者への脅迫まがいの督促、情け容赦のない財産調査・差し押さえ、生活困窮者からの機械的な保険証とり上げなど、加入者の人権を無視した国保行政をやめさせます。出産や病気・ケガのときにも安心して休めるように、出産・傷病手当金の制度をつくります。

 国保組合の国庫補助をまもり、負担軽減のとりくみを応援します……不況による生活悪化と健康破壊が深刻化するなか、業者が自主的に運営し、負担軽減や健康づくりにとりくむ、国保組合の役割はますます重要です。ところが、この間、建設国保の入院費無料化などの努力を攻撃する不当なキャンペーンが展開され、政府が国庫補助の削減を検討する異常事態となっています。国保組合への国庫補助をまもり、負担軽減・健康保持のとりくみを応援します。

 社会保険料の猶予・軽減制度を整備し、公的支援が受けられるようにします……不況で経営難におちいった事業所が、社会保険料の事業主負担を払えず、その結果、滞納を理由に雇用調整助成金、信用保証、制度融資などの公的支援が受けられない事態も起こっています。経営困難な事業所の社会保険料を猶予・軽減する制度をつくり、企業の経営と従業員の社会保障を守るとともに、公的支援制度を利用できる環境をつくります。

 小規模共済制度・中小企業退職金共済制度などを改善します。自主共済は、保険業法の対象外とします……社会保障の相次ぐ改悪で将来不安が増しているいま、中小企業の各種共済制度を充実させることが必要です。小規模共済制度や中小企業退職金共済制度などの改善をすすめます。「助け合い」の精神でつくられている「自主共済」は、保険業法の対象外とします。

 中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくり、引き上げに際しては助成を行います……適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現などによって、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくります。最低賃金の引き上げに際しては、雇用保険財政などを活用して、中小企業への助成を行います。

4、「中小企業憲章」と「中小企業振興条例」を制定し、中小企業政策を総合的に見直します

 中小企業は、企業数の99%を占め、製造、建設、小売り、サービスなどあらゆる分野で大きな役割を果たしています。また、日本全体の雇用の7割、地方では8割超を支えるなど、雇用の最大の担い手です。さらに、(1)短期的な利益よりも雇用や社会貢献を重視する、(2)利益を地域に還元し、域内循環の中核を担っている、(3)高いモノづくり技術をもつ経済・文化資源である、(4)地域に根ざして社会的責任を果たし、生き生きとした地域社会をつくりだしているなど、多彩な役割を果たしています。

 中小企業・自営業者は、まさに日本経済の「根幹」というべき重要な存在であり、その素晴らしい値打ちが十分に発揮されてこそ、日本経済全体が豊かに発展できます。今こそ、破たんした従来の中小企業政策を転換するとともに、中小企業政策の基本理念を確立し、それに基づいて中小企業政策全体を見直すことが必要です。

(1)「中小企業憲章」を制定します。中小企業基本法などを見直し、中小企業の声が国政に反映されるしくみをつくります

 EUは、2000年6月に「ヨーロッパ小企業憲章」を制定しました。同「憲章」は、小企業が「ヨーロッパ経済の背骨」であるという基本理念を明確にし、産業政策のみならず、福祉や教育などEU政策の全分野で中小企業を政策の基本にすえています。

 「中小企業憲章」を制定し、中小企業基本法などを見直します……「中小企業憲章」の内容として、大企業に偏重した政策から中小企業を日本経済の根幹と位置づけ、本格的に支援する政策に転換すること、政府が公正な競争環境を確保すること、大企業が雇用、地域経済、環境等にたいする社会的責任を果たすこと、中小企業が地域経済と農林水産業の振興に役割を果たすことなどを明記します。「憲章」の基本理念に沿って、中小企業基本法など関連法制度の改正をすすめます。

 「中小企業政策会議」をつくり、中小企業の声を反映します……「縦割り」ではない横断的な中小企業政策をすすめるために、総理大臣のもとに中小企業・自営業者などの代表が参加する「中小企業政策会議」をつくります。同会議では、「憲章」実施の進ちょく状況等を検討するとともに、規制緩和など従来の政策が中小企業に与えた影響を調査し、施策に反映させます。現在の中小企業庁の職員は約200人であり、公安調査庁約1500人の7分の1、宮内庁約1000人の5分の1にすぎません。中小企業庁の人員を抜本的に増員します。

(2)地方自治体で「中小企業振興条例」を制定し、地域独自の活性化策をすすめます

 中小企業数は約420万社にのぼりますが、一つ一つが多彩な個性をもち、固有の歴史的・文化的特徴を備えています。したがって、国が「中小企業憲章」に基づいて基本政策を実施することとあわせて、地域の実情に応じて中小企業施策を展開することが重要です。

 「中小企業振興条例」を制定し、地域の実情に応じた施策をすすめます……2000年以降、50近い都県・市区町で「中小企業振興条例」(名称はさまざま。以下「振興条例」)が制定されており、中小企業振興に大きな力を発揮しています。各自治体で「中小企業振興条例」を制定し、その地域の中小企業施策の基本理念を定めます。

 大阪府八尾市では、2002年に地元の大工場が撤退しましたが、前年に制定されていた「振興条例」を根拠に、障害者の雇用を確保するなどの成果をかちとっています。「振興条例」には、大企業・大型店・フランチャイズ本部などの責務・役割を明記し、地域で「社会的責任」を果たすことを促します。

 全事業所実態調査を行い、施策に反映します……全国に先駆けて1979年に「振興条例」を制定した東京都墨田区では、制定の前年、係長級職員165人が、区内製造業9314社に自ら足を運んで実態調査(悉皆〈しっかい〉調査)を行いました。この調査で、「ひどい環境で、家族労働に支えられ、それでも税金を払っている。健康破壊や、長時間労働への対策・支援が急務」など、区長・職員の認識が一変しました。それまで中小企業対策は、商工部だけの「縦割り」行政でしたが、悉皆調査後は、福祉や教育を含む横断的事業として区政に位置付けられています。「全事業所実態調査」を行い、自治体が地域の中小企業の実態を把握し、得られた情報を施策に生かします。その際、商工施策だけでなく、福祉やまちづくりなど自治体の幅広い施策に反映させます。

 経営者・業者などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします……「振興条例」が単なる「飾り」ではなく、実際に役立つものになるためには、業者・金融機関・自治体職員などの当事者が「主役」となって実践をすすめることが不可欠です。北海道帯広市では、2007年に「中小企業振興基本条例」を制定した後、条例を具体化するために1年で74回に及ぶ議論を重ねました。その中で、経営者・業者自身が中小企業や地域の値打ちに「気づき」、工場誘致などの「呼び込み型」から「内発型」の地域振興に軸足を移すことが重要だという認識が広がっています。「振興条例」の推進体制として、経営者、金融機関、自治体職員などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします。

5、「日本の宝」―町工場を守るため、固定費補助などの緊急・直接支援をおこないます

 町工場は、金型・成形・切削・研磨・プレス・熱処理・メッキ・鍛造・鋳造など、基盤技術の集積を形成している日本独特の中小企業・自営業者のネットワークであり、創造と技術革新の「苗床」です。

 しかし、いま町工場は、かつてない経営危機に襲われており、「仕事が減り、家賃が払えない」「久しぶりに来た金型部品加工の注文は2割の単価引き下げ。採算割れだ」などの悲鳴があがっています。借り工場の家賃やリース料など固定費の重い負担のため、廃業する町工場も増えています。町工場の技術・熟練の技能は、いったん失われると二度と取り戻すことができません。「日本の宝」である優れた技術・技能が失われることは、大企業や日本経済全体にとっても大きな損失であり、何としても防がなければなりません。

 リース料の支払い猶予を広げます……中小業者は、この間、町工場の固定費の負担軽減を求めて運動を広げてきました。日本共産党も、国会論戦や党首会談などで繰り返し町工場への緊急支援を迫ってきました。鳩山内閣は、当初、消極的な姿勢でしたが、4月16日、中小企業の機械設備のリース代金の支払い猶予に応じるよう、リース会社に要請する通知を出しました。これは、中小業者の声が政治を一歩前に動かしたものです。

 今回の通知は、リース会社に対して、昨年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」の趣旨を踏まえた対応を求めるものです。既に、銀行の融資や住宅ローンについては、同法に基づいて、数多くの支払い猶予が実施されています。こうした例を参考にして、今回の措置が実効性あるものとなるように運動を強めます。

 借り工場の家賃補助など直接支援を実現します……町工場の経営努力は限界を超えており、「日本の宝」にふさわしい緊急・直接の経済支援を必要としています。そのために、支払い猶予にとどまらず、機械設備のリース料や借り工場の家賃に対する直接補助を実現します。

 自治体独自の集積地支援を強めます……東京都大田区では、中小企業への緊急・直接支援策として5500万円の予算を組み、100社を対象に助成を行う「ものづくり経営革新緊急支援事業制度」を実現しています。こうした例を参考にして、各地の自治体で、町工場などの産業集積地支援を強めます。

(出所:日本共産党HP )
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今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を-日本共産党の志位和夫委員長が発表・その1-

2010-05-20 04:26:31 | 国内政治
日本経済の「根幹」にふさわしく
中小企業を本格的に支援する政治をすすめます
今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を
2010年4月22日 日本共産党

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 日本共産党の志位和夫委員長が、22日に発表した政策「日本経済の『根幹』にふさわしく中小企業を本格的に支援する政治をすすめます―今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を」は次のとおりです。

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 中小企業・自営業者の状況はきわめて深刻です。内需の冷え込みに加えて、「単価たたき」など大企業による不公正な取引、大型店の身勝手な出店・撤退、銀行の貸し渋り・貸しはがしなどによって、二重三重の苦しみを強いられています。大企業と中小企業の賃金格差は、この10年間で拡大していますが、これは大企業の労働者の賃金が増えたためではなく、中小企業の労働者の賃金が減ったために起きた現象です。いま起きているのは、一時的な景気後退ではなく、日本経済全体の長期にわたる地盤沈下というかつて経験したことのない危機的事態であり、そのもとで日本経済の「根幹」である中小企業が、最も悪影響を受けているのです。

 もしこのまま従来通りの中小企業政策を継続し、その深刻な状況を放置するならば、単に中小企業の問題にとどまらず、日本経済全体がとりかえしのつかない衰退への道を歩むことになります。今こそ、中小企業政策の根本的な転換が必要です。

破たんした従来の中小企業政策

 これまでの経済・産業政策は、「大企業が成長すれば日本経済がよくなり、いずれ中小企業もよくなる」というかけ声で行われてきました。大企業の「国際競争力」の強化と利益確保が最優先され、中小企業はそれを補完するものとしか位置付けられませんでした。国や自治体の予算でも、振興策でも、中小企業は軽視され、本腰を入れて中小企業を応援する政治は行われてこなかったといえます。それどころか、「単価たたき」などの不公正取引や貸し渋り・貸しはがしが野放しにされ、中小企業は大企業の過酷な搾り上げの対象となっています。

 とくにこの10年は、「構造改革」の名のもとに、国をあげて「強いものを育てよ」、「市場で勝ったものが残れば日本はいい経済になる」という風潮が強められました。日本共産党以外のすべての政党が賛成した1999年の中小企業基本法改悪によって、“建前”としては存在していた「格差の是正」が投げ捨てられ、もともと貧弱だった中小企業政策は、ベンチャーなど一部の企業だけを対象とするものに変質させられました。多くの中小企業が支援の外に置かれただけでなく、大企業の横暴はいっそう野放しにされ、懸命にがんばっている中小企業が「不良」債権呼ばわりされるなど、整理・淘汰(とうた)の対象とされています。

中小企業を苦しめる経済システムの転換が必要

 1997年から2007年までの10年間で、日本をのぞくG7諸国は、国内総生産(GDP)も、雇用者報酬も1・2倍から1・7倍に伸ばしていますが、日本だけは、雇用者報酬が5・2%減り、GDPも0・4%しか増えていないなど、「国民が貧しくなった」「成長が止まった」状態です。この状態が10年間続いたところに、アメリカ発の世界経済危機が襲いかかり、日本経済は世界でもとくに深刻な打撃を受けています。

 この背景には、非正規雇用への置き換えや中小企業いじめによって大企業が手にした利益が、企業数の99%、雇用の7割を占める中小企業や、GDPの6割を支える家計に還元されず、日本経済全体の好循環が生み出されないという異常な経済システムの存在があります。このシステムを改革することなしに、日本経済が本当の意味で世界経済危機から抜け出すことはできません。大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくることは、単に大企業の横暴から中小企業を「守る」という意味だけでなく、中小企業へのまともな還元を通じて、日本経済全体の健全な成長に道をひらくものです。この転換は、大企業の持続的な発展にとっても不可欠の課題です。

 日本共産党は、以下の五つを柱に、中小企業政策の根本的な転換を求めるとともに、中小企業の活性化という一致点で幅広い共同を呼びかけるものです。

1、大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくります

(1)下請け取引を適正化し、「単価たたき」など不公正な取引をやめさせます

 「主導的に検査に入る」しくみをつくるなど下請け検査を改善します……最近5年間で、公正取引委員会が、下請代金法に基づいて親企業による「買いたたき」に対して是正勧告したのはわずか1件、「一方的な発注打ち切り」の是正勧告はゼロです。“申告待ち”“書面調査頼み”という現在の下請け検査のやり方を転換し、抜き打ち検査など主導的に検査に入るシステムをつくります。そのために「下請けGメン」の設置など、検査官の拡充を行います。

 罰金を引き上げ、親会社の挙証責任を強化します……アメリカには、不公正取引による損害額の3倍を賠償請求できる仕組みがあります(クレイトン法4条)。日本でもこうした制度を検討するとともに、下請代金法の罰金額を大幅に引き上げ、不公正取引が「割に合わない」状態をつくります。契約書の作成や単価決定の交渉記録の保存を親企業に義務付けるなど、下請代金法違反ではないことを立証する親企業側の責任を強化します。資本金規模によって適用範囲を限定する現行制度を見直し、発注元企業や元請け企業までさかのぼって不公正取引の調査等ができるようにするなど、下請け2法の改正・強化をすすめます。

 適正な単価を保障するため、「振興基準」を実質化します……下請振興法は、下請け単価は、「下請中小企業の適正な利益」を含み、「労働条件の改善」が可能となるよう、親企業と下請け企業が「協議」して決定しなければならないと定めています(同法第3条「振興基準」)。「振興基準」に照らして取引の実態を総合的に調査し、それをもとに「振興基準」を実質化するとりくみをすすめます。

(2)「優越的地位の濫用」をなくすため、独占禁止法を強化します

 下請け取引以外でも、大規模小売業者と納入業者との取引や、荷主と物流事業者との取引など不公正な取引は数多く存在しています。

 下請代金法は独占禁止法の特別法であり、下請代金法の適用がなくても、「親法」である独占禁止法に戻って不公正な取引を取り締まることが可能です。独占禁止法の厳格な運用や課徴金の引き上げなどの改正・強化によって、中小企業にかかわるすべての取引について、大企業による「優越的地位の濫用」をなくしていきます。

 「買いたたき」などの不公正な取引で、親企業が下請け企業を締め上げるようなやり方が横行しているのは世界でも日本だけです。日本にしか見られない下請け取引の異常をなくすことをめざします。

(3)大型店の身勝手をゆるさないルールをつくり、商店街・小売店を活性化します

 「大店・まちづくりアセス」を義務付けるなど、まちづくりのルールをつくります……大型店の身勝手な出店・撤退は、地域の商店街・小売店を衰退させ、各地で「買い物難民」を生むなど、地域の存亡にかかわる問題を引き起こしています。欧米では、自治体が大型店を規制するルールが各国で具体化されています。大型店の出店・撤退等による生活環境や地域経済への影響評価と調整・規制を行う「大店・まちづくりアセスメント」などのルールをつくります。規制対象となる大型店の床面積を現行の1万平方メートル超から3000平方メートル超にするなど、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。

 「フランチャイズ適正化法」を制定し、加盟店の経営安定をはかります……フランチャイズ加盟店と本部との公正な取引を保障するため、「値引き販売の禁止」などの優越的地位の濫用をやめさせます。加盟店に本部との交渉権を保障し、契約内容やロイヤルティーの適正化などを盛り込んだ「フランチャイズ適正化法」を制定します。

(4)実体経済に貢献する金融に転換し、中小企業の経営を支えるルールをつくります

 「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します……短期のもうけを最優先するアメリカ型の金融自由化路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。メガバンクをはじめとした貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。「地域金融活性化法」を制定し、金融機関の地域への貸し出し状況を公表させるなど、資金供給を円滑化するルールをつくります。「自己資本比率」一辺倒による金融機関の評価を改め、中小企業や地域への貢献度などを評価します。短期的な経営指標に基づく債務者区分を改め、「不良」債権、「要注意」債権などの不当な呼び方をやめさせます。

 信用保証などのあり方を見直し、政策金融本来の役割を果たさせます……すべての中小企業が使える「一般保証」制度に導入された「部分保証」を廃止し、全額保証に戻します。「景気対応緊急保証」制度については、代位弁済時に保証協会に財政損失が出ないように全額国庫負担とするなどの改善をすすめます。日本政策金融公庫などによる貸し渋りをやめさせるとともに、業務や組織形態など、政策金融全体のあり方を見直します。

2、本格的な中小企業振興策をすすめます

(1)中小企業予算を1兆円に増額し、経営支援を抜本的に強化します

 中小企業予算を1兆円に増額します……国の中小企業対策費(当初)は、1967年に一般歳出比でピークの0・88%を記録して以来減少傾向にあり、最近は0・4%前後の低水準にとどまっています。中小企業に冷たい予算のあり方を転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円程度に増額し、日本経済の「根幹」にふさわしい本格的な施策をすすめます。

 縦割り・細切れの支援を改善し、「中小企業センター」の機能を強化します……中小企業の支援策は、省庁ごとの縦割り、単発・細切れで使い勝手が悪くなっています。申請手続きの煩雑さも大きな負担です。現行の支援策を改善し、経営者が使いやすい制度に改善します。

 区市町村に「中小企業センター」をつくり、国の補助をつよめます。中小企業が必要なときに必要な情報や相談を受けられるように、中小企業の身近な場所に設置し、夜間開放など使いやすい運営をはかります。製品開発や販路開拓などを専門家が支援します。個々の企業では持ちえない最新設備を整備し、検査、測定、試作、技能訓練などが行えるようにします。中小企業からの「相談待ち」ではなく、市の職員や「センター」の相談員などが、直接中小企業や業者を訪問して要望を聞き、相談にのる体制をととのえます。

(2)経済循環の核である中小企業を支援し、雇用の増加、くらしの改善をはかります

 農商工連携のとりくみを支援し、地元産物の利用をすすめます……地元の農林水産物などを活用し、その生産・加工・販売・流通など各段階で地域に仕事と雇用を生み出します。「農・商・工」連携のとりくみへの支援を拡充し、地元農水産物の給食材への活用、地元木材の公共事業などへの活用をすすめます。消費者と結んだ直売所・産直センターなどへの支援をつよめます。

 「空き店舗」対策など、商店街・小売店の振興をすすめます……商店街・小売店を「地域の共有財産」と位置づけ、商店街振興対策予算を拡充します。「空き店舗」の借り上げ、改装費などへの補助を拡充します。お年寄り、障害者、子ども等の生活圏(ライフ・エリア。例えば小学校区など)を単位に、生鮮3品を買える店舗、商店街、学校、医療機関、保育施設や官公署、公共交通などを整備します。朝市、ポイントカード、共同配達など、自ら努力している商店街を支援します。

 地場・伝統産業の産地・集積地への支援をつよめます……地域の雇用や文化の土台を担っている地場産業・伝統産業への支援をつよめます。ネットワークの強みこそ産地の競争力の源であり、それを生かすために、産地・集積地全体を「面」として支援する自治体ごとの振興計画をつくります。新製品・デザイン開発や他産業とのコラボレーションを支援し、常設展示施設の整備、インターネットの活用など販売支援をつよめます。

 環境・福祉など、社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓を支援します……温暖化対策のカギとなる再生可能エネルギーは、地域固有のエネルギー源(太陽光・熱、地熱、小水力、小規模風力、畜産や林業などのバイオマス・エネルギー)を活用するものです。そのための小型発電機やストーブの製造、木質ペレットの生成、太陽光パネル設置のための住宅改修などにとりくむ中小企業を支援します。また、再生可能エネルギーから得られる電気やガスを販売することによって、地域に新たな収入を生み出します。

 高齢者人口が増加するもとで、一人ひとりにあったオーダーメードの車いすなどの福祉器具・機械への需要が高まっています。北欧諸国の経験に照らしても、オーダーメードの福祉器具・機械の開発・製造とアフターケアには、中小企業の技術力や地域での連携が不可欠です。こうした社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓を支援します。

(3)生活密着型公共事業への転換をすすめ、「公契約法・条例」で人間らしい労働条件を保障します

 保育所・特養の建設、学校・道路などの維持補修をすすめます……各地で実施されている住宅リフォーム助成制度は、助成額を大幅に超える波及効果を生んでいます。こうした波及効果の高いとりくみへの支援を抜本的に拡充します。

 生活密着型公共事業への転換をすすめ、保育所・特別養護老人ホームの建設、学校・福祉施設の耐震補強、道路・橋梁(きょうりょう)の維持補修、個人宅の耐震補修・リフォームなどを支援し、中小企業の仕事と雇用の増加につなげます。

 官公需を増やし、ダンピング競争をなくします……国と自治体の中小企業向け官公需発注比率を引き上げます。中小企業への発注率を高めるために、分離・分割発注をすすめ、「小規模工事希望者登録制度」の活用、ランク制の厳格実施などをすすめます。ダンピング競争をなくすため、独禁法など現行のルールを厳正に執行するとともに、最低制限価格制度を導入して適正化をはかります。建設業法が定める元請け責任を厳格に守らせ、工事代金の不払いなどをなくします。

 生活できる賃金などを保障する「公契約法・条例」を制定します……千葉県野田市では、今年4月から全国初の「公契約条例」が施行され、市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等は、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられています。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約法」「公契約条例」の制定をすすめます。

(4)創業・開業を応援し、中小企業の財産である人材育成を支援します

 積極的な創業・開業を応援し、研究機関等との連携をすすめます……ドイツ、イギリス、イタリア、アメリカ、韓国などでは、自営商工業者が大幅に増えているのに対して、日本では1980年比で3分の2に減っています。新規開業者が利用できる起業支援制度を拡充し、低利で返済猶予期間を備えた開業資金融資制度を創設します。大学、高等専門学校、専修学校、研究機関等との連携を促進します。

 中小企業の財産である人材育成を支援します。経営者・団体間の交流を支援します……中小企業にとって、最大の財産はそこで働く人々です。若者や後継者が、実際に仕事を覚えるまでには時間がかかります。雇用を継続する経営者の努力への支援をつよめます。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承します。経営者同士が交流できる場、各地の商店街や市場が交流できる場をつくります。同業種間、異業種間の交流を応援します。教育関係者等との連携を強め、中小企業の値打ち・役割が社会の共通認識になる環境をつくります。

(出所:日本共産党HP )
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どうみる、どうする、大企業の内部留保問題-日本共産党の志位和夫委員長が語る-

2010-05-20 04:23:16 | 国内政治
 どうみる、どうする、大企業の内部留保問題
BSイレブン 志位委員長が語る

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 日本共産党の志位和夫委員長は、2月28日放送のBSイレブンの政治番組「篠原文也の直撃! 日本」に出演し、約50分間にわたって、大企業の内部留保問題、鳩山政権の評価、「政治とカネ」の問題、夏の参議院選挙への戦略などについて、政治解説者の篠原氏のインタビューに答えました。そのなかから、いま政治の焦点の一つとなりつつある大企業の内部留保問題について質問に答えてのべた部分を紹介します。

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党首会談――過剰な内部留保の還元という提起を否定できなくなった

 篠原 共産党の綱領を読ましていただいたら、大企業について、横暴な経済支配を抑えると、こういうようなことが入っていますね。この間、話題になりましたけれど、鳩山(首相)さんとお会いになりましたよね。そのときに大企業の内部留保を吐き出させろと。どうも(内部留保に)課税をするという話で伝わってきまして。僕は実は、共産党は時々良いこと言うなって感心していたんですよ。ところがこれはいただけないなと。何を考えているんだろうと思って、今日はぜひそれをお聞きしたいと思ったんですよ。

 志位 これは、実は、私が(2月17日の鳩山首相との会談で)提起したのは、いまの日本経済を良くしていくうえで、大企業に過剰な内部留保が蓄積するというシステムができてしまっている。とくにこの間、労働者についていえば正規雇用から非正規雇用、派遣とかパートなどに置き換える。賃下げ、リストラをやる。中小企業を搾り上げる。こういうことで国民から搾ったお金で、過剰な内部留保が形成される。そして生きた経済、日本経済にお金が回らない。この仕組みを変える必要があるということを提起したのです。

 この(内部留保の)過剰な部分を雇用や中小企業に還元する。そしてそういうものが過剰にたまっていかないようなルールをつくっていく必要がある。たとえば雇用だったら、「人間らしい労働」を保障するルール、「正社員が当たり前」の社会をつくる。あるいは中小企業と大企業の取引を公正なものにして、下請けいじめなどをやめさせる。そういうことをしっかりやる必要があるというのが私の問題提起だったんです。

 篠原 それじゃ、(内部留保に)課税をしようというんじゃないのですか。

 志位 (わが党の提起に対して)鳩山首相が、「内部留保を還元させる具体的な方法を検討してみたい」とおっしゃった。そこで私は、いま言ったように、雇用と中小企業でまともな(暮らしと営業を守る)ルールをつくることで(内部留保を)還元する、そしておのずとそういうところに過剰にお金がたまらないような仕組みをつくる必要があるという提起をしました。そうしたところ、鳩山首相の側から「(留保金への)課税という手段もある」というようなことをおっしゃった。

 篠原 (鳩山首相が)自分のほうから課税という言葉を使われた。

 志位 ええ。私たちは課税ということでいえば、大企業へのたとえば研究開発減税とか、優遇税制をなくして、利益にきちんと課税するということを考えていますが、内部留保への課税ということは私から提起したのではないのです。

 ただ、私が大事だと思ったのは、私が(大企業の)内部留保があまりに過剰だと。この過剰な内部留保を社会に還元して、とくに国内経済に回るようにして、内需を活発にしていく、そういうものとして活用していく必要があるという問題提起に対して、先方が、その問題提起を否定しないで、検討しなければならないとなってきたのは、一つの変化だと思います。

国民から吸い上げたお金を、もっぱら海外に回す――ここに問題がある

 篠原 まあ鳩山さんの言葉っていうのは、結構そのときの思いつきで出てくるから、課税といったから本当に課税を考えているというわけでもないと思いますが、ただ内部留保っていうのは、現ナマが全部積みあがっているわけじゃないし、資産もあるし、しかも1回課税されている部分もあるわけで、また課税するとなるとこれは二重課税という問題もある。それよりも大きいのは所得税の最高税率の引き上げも言われていますけども、これだってそうなんですが、企業とか富裕層の人たちをそういうふうにぐんぐん締めていきますと、やっぱりその租税というものが、海外逃避する恐れっていうのがあると思うんですよ。そうすると今の日本経済っていうのは一番のポイントは、土台になる日本経済そのもののパイをどうやって大きくしていくんだというのが一方できちんとないと、今の限られた小さなパイだけの取り合いの話だけだと、一時的な増収策にしかならないと思うんですよ。

 志位 二つほど言いたいんですけど、一つは、(大企業への)課税という点で言いますと、私たちは内部留保というよりも、利益に適正な課税をすべきだということを言っているのですが、それを考えるさいに、日本の大企業の負担と欧州の大企業の負担とどっちが重いか。これは政府のデータがあるのですが、負担を考えるさいには、税の負担と社会保険料の負担と合わせた負担が当然カウントされなければならないんですけども、たとえば日本の製造業大企業(自動車産業)の場合は、だいたいフランスの7割、ドイツの8割しか負担していないんですよ。日本の方が実は軽いんですよ。とくに社会保険料(負担)が少ないですから。

 篠原 法人税率は非常に高い、40%。

 志位 法人税率はそんなに違いがありません。法人税率はだいたいそろっている。でも社会保険料(負担)がたいへんに低いんですよ。これを合わせたらヨーロッパに比べると実際の負担は低いという問題がある。これは事実の問題として言っておきたいですね。すぐ財界筋からは税負担のことを言いますと、海外に逃げて行っちゃうと言いますけれども、ヨーロッパではちゃんとそうやって負担をしながら世界の舞台で商売しているわけですから、これは理屈にならないではないかというのが一つなんですね。

 それから内部留保という問題について言いますと、内部留保がどういう形で現存しているかと言いますと、大企業の内部留保は、だいたい10年間(1997年から2007年)で、百数十兆円から約200兆円を超えて急増したんですけれども、国内でのいわゆる固定資産――工場とか機械とか土地とか(「有形固定資産」)は、ほとんど増えていないのですよ。どこが増えているかというと、海外の子会社などに対する直接投資の部分(関係会社株式の保有額)がうんと増えているわけです。

 つまり、国内で労働者や中小企業から吸い上げたお金を、(設備)投資にせよ、あるいは(家計の)所得にせよ、国内経済にきちんと回して、内需を良くしていくというところに使わないで、外国に投資してそこでもうければいいという。外国頼みの経済にしちゃっている。ここが私は、一番の問題だと思います。

 篠原 だけどそれは、これだけ経済がグローバル化しますと、しかもアジアの内需を取り込むなんて時代で、日本だけで全部完了しろっていうのは無理でしょう。そりゃ、グローバルに考えて企業というのは動きますよ。

 志位 外国頼みのバランスが、あまりにひどすぎる(ことを問題にしています)。(08年秋の)リーマン・ショックにさいして、世界の経済のなかでも、日本が一番落ち込みがひどいですよね。ヨーロッパよりひどい。アメリカよりひどい。世界で一番落ち込みがひどいというのは、あまりに外国頼みの経済だったからです。私は、外国に投資するのは全部だめだとか言うつもりは、まったくありません。それは当然グローバル化した経済のなかでありうるんだけど、あまりに外国頼みで、もっぱらそちらのほうにのみお金を回して、そして国内にはお金が回らないと。これがいまの内部留保問題の非常に大きな問題だと思います。

「強い企業を応援すれば、家計に回り、経済が成長する」――この路線は失敗した

 篠原 僕は、志位さんたちが言っている、経常利益がこの10年間で企業全体で2倍に増えていると。しかし勤労者所得(報酬)というのは減っているんだと。そういう指摘はたしかにその通りだと。だからそういうことのもう少しバランスを考えていかなきゃならんというのはその通りだと思うんですけど、ただ一番僕が今、共産党の主張のなかで欠けていると思うのは、このパイを外国であろうと国内であろうと全部含めて、日本経済のパイをどうやって大きくするかっていうところに、もう少しビシッと重点がないとですね。

 志位 だからそれを、私は提案しているんですよ。つまり、逆に言いますと、この10年間がどうだったか。リーマン・ショックの前の10年間というのは、日本のGDP(国内総生産)はまったく伸びていないんですよ。10年間の単位で見ますと横ばいなんです。そして、勤労者の雇用者報酬は落ちているわけですよ。つまり、よく自民党の人たちは、「成長戦略」が必要だといいますけれども、「成長」をしてないんですよ、10年間も。(この間)巨大企業は利益を伸ばしたわけです。空前の利益を伸ばしたけれど、GDPは成長していないんです。なぜそうなっちゃったかというと、さっき言ったようにあまりにひどい外国頼みの経済になってしまって、国内に、内需に、お金が回らない仕組みになってしまった。それを転換しなくちゃいけない。内需の中で中心は家計ですから。家計と所得にお金が回らなければいけない。それをしっかりと、土台からたて直していくということをやりませんと、日本の経済の発展はありませんよと言っているんです。

 篠原 海外に行ったということだけで日本の成長が止まっているということではないと思う。成長そのものの戦略、政策が、やっぱ不十分だったということが一方であると思うんです。

 志位 いや、(これまで)「成長戦略」といって、強い企業を応援する、そうすればいずれは家計に回ってくる、経済は成長するということを言ってきたけども、回らなかったわけですね。それはさっき言ったような海外頼み、そして外需依存、こういうやり方をずっとやってきた。このやり方が失敗したということです。

小泉・竹中「サプライ(供給)サイド」路線で、日本経済の「パイ」は大きくならなかった

 篠原 本当に企業を強くしてないんですよ。実際強くしていないから、そこの問題をもういっぺん、どうやったら強くできるのと、パイをどうやって大きくするんだと。パイさえ大きくなれば……。

 志位 中長期にみれば、そういうやり方が企業をだめにしているとも、私は言えると思います。

 篠原 そうですかね。

 志位 たとえば、トヨタのリコール問題一つ考えても、もちろんいろいろな要因がありますよ。いろいろな要因があるけど、トヨタが正社員を期間工や派遣に置き換えていく、あるいは「乾いたタオルを絞る」というやり方で中小企業を絞り上げる。こういうやり方をずっとやってきて、その結果、製品の劣化という問題が起こってきている。私は、前に(08年12月)、この問題はそういうことになりますよと、トヨタにも直接言ったことがあります。こういうやり方していったら、ほんとうの意味で、企業にとっても将来がなくなる道だっていうことを、私は言いたいですね。

 やはり働く人、そしてサプライヤー(部品供給企業=下請け中小企業)、中小企業を大事にして、そしてその所得が増えてですね、家計があったかくなって、内需が良くなっていかなかったら、日本経済の発展はありません。

 篠原 トヨタの問題はいろいろあったけども、やっぱりサプライヤーを大きくしなければだめなんですよ。サプライサイドを。それを大企業抜きで、志位さんはいつもこう大企業は別で、中小企業のサプライをっていうのじゃ、それじゃね、日本経済よくならないですよ。

 志位 事実の問題として、今おっしゃったサプライサイドの経済学、サプライサイド(供給サイド)を大きくする、とくに強い企業をより強くすれば、必ず「パイ」が膨らむんだということをやってきたわけですよ。小泉・竹中路線で。しかしやったけど、10年間、結局「パイ」は膨らまなかったわけですよ。この事実をしっかりと見なくてはいけない。

 ですから、たとえばイギリスの「フィナンシャル・タイムズ」がですね、日本の経済はあまりに異常だと。あまりにこの内部留保は過剰だと。この過剰な部分は削減していくという方法をとらなければ内需は良くならないと。過剰な内部留保を削減して、もっと内需主導のものにしていく必要があるということを言っている。イギリスの経済紙からも、日本の(大企業の)あり方はあまりに異常ですよということが言われているんですね。

 篠原 いや、小泉「構造改革」の最大の失敗は、そっちの路線ばっかりに行って、出てきたいろんなひずみがありますよね。しわよせが。そっちの方の手当てが足りなかった、おこたったっていうことで、社会の全体がいびつな感じになったんであって、この最初にまずこれをやるってこと自体が、僕はそんなに間違っていなかったと思う。

 志位 私は、その(経済政策の)大本が間違えたからこういう結果になったと思います。

「大企業=敵」ではない。社会的責任を果たすことを求めている

 篠原 大企業を悪者にしているかのことをやると、大企業のサラリーマンが離れていくのでは。

 志位 私たちは、大企業は悪者だと、敵だといっているのではありません。大企業があまりに社会に対する責任を果たさないで、自分の目先のもうけだけに熱中して、そしてここから先が大切ですけれど、自分の企業の労働者を大事にしていないじゃないですかと。働く人たちを。大企業の労働者だって、いま今度の春闘の状況をみても、(経営者側は)ベースアップはおろか、定期昇給すらしていないでしょう。むしろこういうときこそ、内需を良くするうえで、労働者に利益を還元する英断が必要なんですよ。

 ところがいま多くの企業がやっているのは、株主への配当は内部留保を崩してまでやっていますよ。たとえば、ブリヂストンは、(09年度決算で)10億円しか利益が出ていないのに、125億円もの株主への配当をやっているんです。12・5倍です。そういうやり方でなく、大企業で働く人をもっと大事にするべきだというのが私たちの主張であって、大企業は敵でもなければ、ましてや大企業で働いている人は、私たちは一番大事にしなければならない仲間だと思っています。

(出所:日本共産党HP )
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日本共産党の志位和夫委員長が全米法律家協会ワシントン支部でおこなった講演-日米関係のあるべき未来-

2010-05-20 03:32:47 | 国際政治
21世紀の日米関係のあるべき未来
全米法律家協会ワシントン支部 志位委員長の講演

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 日本共産党の志位和夫委員長が7日、全米法律家協会ワシントン支部でおこなった講演の内容は次の通りです。

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 米国の法律家のみなさんを前に、こうした機会をあたえていただいたことは光栄です。心から感謝いたします。私は、日米両国間の真の友好を願う立場から、「21世紀の日米関係のあるべき未来」と題してお話をさせていただきます。

「この条約が無期限の未来まで続くと考えることはできない」

 まず、1952年に発効し、1960年に改定された日米安保条約の現状をどうとらえるか。

 50年前の日米安保条約改定のさい、ドワイト・アイゼンハワー大統領は、日米関係は「完全に平等なパートナー」となったとのべましたが、実態はどうでしょうか。

 私は、4月15日に、米上院外交委員会での公聴会で、ジョージ・パッカード米日財団理事長がおこなった発言を、興味深く読みました。パッカード氏は、「この条約が無期限の未来まで続くと考えることはできない」として、つぎの五つの理由をあげています。

 ――第一に、「1952年のオリジナルな条約は、戦勝国と被占領国との間の交渉で結ばれたものであって、二つの主権国家の間で結ばれたものではなかった」。

 ――第二に、「日本は、歴史を通じて一度も外国軍を自国に受け入れざるを得ない経験を持たなかったが、戦争終結から65年たった今日なお、10万人近い米軍、軍属、その家族の無期限の駐留を、カリフォルニア州より小さな国の中の85カ所の基地に受け入れざるを得ない状況におかれてきた。米軍の75%は琉球列島の一部の小さな島、沖縄本島に駐留している」。

 ――第三に、「米軍のこのような大きな駐留の継続は、環境破壊、市街地や歓楽街での犯罪、事故、騒音をもたらしている」。

 ――第四に、「米軍のプレゼンスは米軍地位協定によって規定されているが、この協定は日本の国会の承認を受けたことはなく、心ある日本人の間では、19世紀のアジアにおける西洋帝国主義の特徴だった治外法権の延長だとますますみなされるようになっている」。

 ――第五に、「(日本の駐留米軍へのコスト負担は)年間43億ドルに達し、(その一部は)『思いやり予算』と呼ばれているが、これは双方にとって気まずい思いをさせる言葉だ」。

 そしてパッカード氏は、つぎのようにのべています。

 「日本の新しい世代が、自国に置かれた外国軍の基地を我慢しなければならないのか疑問を深めるであろうことは、まったく当然である。米国は、韓国、ドイツ、フィリピンで、駐留規模を縮小してきた。新しい世代の日本人がこのような状況で不満を募らせることは、驚くべきことでも何でもない」

 これらのパッカード氏の問題提起は、日米安保条約の現状を包括的にとらえるとともに、心ある日本国民が抱いている感情を、リアルに言い当てたものだと思います。私たちとは立場を異にしますが、日米関係において重要な役割を果たしている人のなかから、こうした率直な見解が述べられていることを、私は歓迎するものです。

 私たちは、日米関係が、戦後65年たって、「平等なパートナー」とは程遠い現状におかれているという事実を直視することから、その未来を考えなければなりません。 

矛盾の集中点――沖縄問題とは何か、解決の道はどこにあるか

 このような日米関係の矛盾の集中点が沖縄です。

 パッカード氏は、「カリフォルニア州より小さな国の中の85カ所の基地」とのべましたが、そのなかでもひときわ米軍基地が集中しているのが沖縄です。沖縄本島の面積の18%、県全体の面積の10%が米軍基地とされています。

 いったい、米国でこれほどまでに基地が密集している州があるでしょうか。国防総省の報告書をもとに私たちが作成したデータでは、全米51の州のうちのどの州よりも、沖縄県の基地の密集の度合いは高くなっています。米国では、基地面積率が高い州でも、アリゾナが6%台、ハワイ、ノースカロライナが5%台、ネバダ、ニューメキシコ、カリフォルニアが4%台、多くの州では1%以下です。沖縄県は、全米51のどの州よりも、基地が密集している地域なのです。

 焦点となっている普天間基地とは、どういう基地か。普天間基地を抱える宜野湾市が作成した資料をお配りしたいと思います。一言でいえば、この基地は、「米国の基準では存在が許されない基地」です。普天間飛行場の周囲には、9万人の市民が居住し、121カ所の公共施設があります。とりわけ、米国では、連邦航空法で、滑走路の末端から「クリアゾーン」(利用禁止区域)を設定し、安全確保のために土地開発が制限されていますが、普天間基地においては「クリアゾーン」内に、公共施設、保育所・病院が18カ所、住宅が約800戸、約3600人余の住民が居住しています。米国の法律では決して許されない危険な基地が、日本ならば許されるという道理がどこにあるでしょうか。

 4月25日に、「普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設反対」などを掲げて、沖縄知事、県内41自治体のすべての市町村長(代理を含む)が参加し、9万人が参加した県民大会が開かれました。普天間基地の閉鎖・撤去とともに、県内のどこであれ新しい基地をつくることは許さないことが、県民の文字通りの総意、島ぐるみの総意として確認されました。私も、この県民大会に参加して、沖縄の情勢は、もはや後戻りを決してすることがない限界点を超えた、米軍基地への怒りが沸騰点を超えたと肌身で実感しました。

 基地にフェンス1枚で隣接する普天間高校で学ぶ女子生徒の訴えは、ひときわ胸をうつものでした。

 「厚さ6センチの窓。その窓いっぱいに見える飛行機の胴体。これが私たち普天間高校の日常の光景です。グラウンドに出れば騒音とともにやってくる低く黒い影。授業中でも、テスト中でも、容赦なく中断させる音。学校までの通学路は、どこまでも長い基地のフェンスが続きます。基地から上がる星条旗がみえます。いったいフェンスで囲まれているのは基地なの。それとも私たちなの」

 米軍は自由であり、沖縄の人々は自分たちの島に住みながら不自由を余儀なくされていることを、痛切に告発した言葉でした。

 沖縄で噴き出している深い怒りの根源には、戦後65年にわたる異常な基地の重圧が、忍耐の限界を超えているという、歴史の累積があります。

 なぜ本島の18%もの基地が存在するか。もともと沖縄の米軍基地は、第2次世界大戦末期に、米軍が沖縄に上陸し、凄惨(せいさん)な地上戦をへて占領したさいに、住民を16の収容所に強制的に囲い込み、軍用地のみならず民有地を強奪して建設されたものでした。普天間基地がつくられた場所には、民家も、役所も、郵便局も、墓地も、サトウキビ工場もあったのです。さらに、サンフランシスコ条約が締結された1951年以降、米軍は銃剣とブルドーザーで、抵抗する住民を強制的に排除し、民家と農地を押しつぶして基地を拡張しました。ハーグ陸戦法規は、占領下における略奪や私有財産の没収を禁じています。沖縄の基地は、生まれながらにして国際法違反の基地なのです。

 こうしてつくられてきた米軍基地によって、戦後65年間、沖縄県民は、耐えがたい苦しみを背負わされてきました。沖縄県民の心に共通して刻まれている痛ましい事件・事故があります。1955年には、6歳の少女が、強姦(ごうかん)され、殺されて、海岸に打ち捨てられました。1959年には、小学校に米軍ジェット機が墜落・炎上して、児童11人を含む17人が亡くなりました。1965年には、米軍機から落下傘で降下されたトレーラーに、少女が自宅の庭で押しつぶされて死亡しました。1995年には、小学校6年生の少女への暴行事件が、島ぐるみの怒りをよびおこしました。2004年には、普天間基地に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落し、あわや大惨事という事故がおこりました。これらはどれも沖縄県民ならば誰もが知る、忘れることができない、共通して心に刻み込まれた悲劇です。

 この長年の基地の重圧、悲劇の累積が、4月25日の9万人が集った県民大会なのです。

 いま日本政府は、県内の名護市・辺野古沖に海兵隊の新基地を建設する方針をすすめようとしています。しかし、美しいサンゴとジュゴンのすむ海を破壊しての新基地建設の計画は、県民の怒りの火に油をそそぐものとなっています。普天間基地をかかえる宜野湾市の市長は「県内移設を押し付けるなら、沖縄の米軍基地撤去を求めることになる」と言明しました。広大な嘉手納基地に町の面積の実に83%を占有されている嘉手納町の町長は、「安保条約の是非を正面から問うてほしい」とのべました。

 もはや日米両政府がどんな合意をしても、沖縄に新基地を建設することは不可能だということを、両国政府は直視すべきだと思います。それを強行するならば、全米軍基地撤去、日米安保廃棄へと怒りはさらに高まるでしょう。

 日本政府が、基地機能の一部を移すとしている鹿児島県・徳之島でも、島民の6割、1万5千人が参加した反対の大集会が開かれました。徳之島の三つの自治体の責任者は、そろって基地を拒否するとの態度を表明しています。

 もはや、沖縄県内はもとより、日本国内のどこを探しても、住民合意の得られる普天間基地の「移設」先はありません。唯一の解決法は、「移設条件なしの無条件の撤去」に踏み切るしかありません。それは、かつてラムズフェルド国防長官が「歓迎されないところには基地を置かない」とのべた、米国の政策にてらしても、唯一の選択肢であります。

 これは「日米安保条約があるから」という一言ですまされない問題です。かつて1969年、日米安保条約のもとでも、日米両国政府は沖縄の本土復帰で合意しました。サンフランシスコ条約第3条で日本が施政権を放棄した沖縄の返還は、条約上からいえば不可能の壁を越えたものでした。しかし、沖縄の島ぐるみの本土復帰闘争、本土の連帯したたたかいに押されて、本土復帰は実現しました。いま日米関係は、同じような歴史的決断が求められる、歴史的岐路に立ちいたっていると、私たちは考えています。

 沖縄問題は、たんに極東の一つの島の出来事ではありません。それは、日米関係のあり方の根本からの見直しを、日米両国の政府につきつけているのです。私たち日本国民のデモクラシーが試されているし、米国のデモクラシーもまた試されている問題なのです。 

アメリカ合衆国の建国の精神と、日本共産党の立場

 私たちは、日米安保条約を、このまま続けることの是非を、正面から問うべき時代に入ったと考えています。パッカード氏がいうように、「日本の新しい世代」は、巨大な外国軍駐留への疑問を深めていくでしょう。在日米軍は「日本防衛のため」というが、横須賀を母港とする空母が、沖縄を本拠地とする海兵隊が、出撃しているのは、イラクであり、アフガニスタンではないか。これほどまでに沖縄の人々に犠牲をしいる「同盟」が果たして必要なのか。多くの人々のこうした疑問に、納得のいく答えをもはや示せないでしょう。

 日本共産党の立場は、もとより反米主義ではありません。私たちは米国、米国民とのほんとうの友情を心から願っています。しかし、ほんとうの友情は、支配・従属のもとではけっしてつくることはできません。対等・平等の関係のもとでのみ、それは可能になります。そのために、従属関係の根源にある日米安保条約を廃棄して、それに代えて日米友好条約を締結しようというのが、わが党の綱領に明記された立場です。

 もちろん、それは一朝一夕になるものではありません。そのためには日本国民の多数の合意が必要です。そうした合意は、東アジアに平和的環境をつくりあげていく外交努力をすすめてこそ、達成されるでしょう。

 すでに東南アジアでは軍事同盟は解体され、かわりにASEANという外部に敵を持たない開かれた地域の平和共同体が形成されています。この流れを北東アジアに広げたい。北朝鮮問題が大きな懸案ですが、私たちは、困難はあっても「6カ国協議」を成功させ、核、拉致、ミサイル、歴史問題などの諸懸案の解決をはかり、この枠組みを北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させることが、何よりも重要だと考えています。日本国憲法第9条は、こうした平和外交をすすめる最大の力であり、羅針盤です。

 私たちの事業の大先輩であるカール・マルクスは、1865年、リンカーン再選にあたって送った祝辞の中で、合衆国を「偉大な民主共和国の思想がはじめて生まれた土地、そこから最初の人権宣言が発せられ、18世紀のヨーロッパ革命に最初の衝撃があたえられたほかならぬその土地」と呼びました。私たちは、あなたがたの国の革命、独立、民主主義の偉大な伝統に深い敬意を持っています。そうした思いも込めて、きょう、私は、「リンカーン記念館」を訪問しました。

 そして私は、リンカーンが翌年、マルクスにあてた礼状のなかで、合衆国はすべての国家にたいして「平等かつ厳格に公正」な関係をうちたてることによって「世界中の尊敬」を求めるという立場を表明したことをあらためて想起しています。私は、今日、合衆国が、日本国民、そして世界諸国民にたいして「平等かつ厳格に公正」な関係をうちたてることによって、「世界中の尊敬」を集めることを願ってやみません。

 昨年、7月2日、私は、在日米国大使館から初めて招かれ、合衆国の独立記念日(7月4日)のレセプションに参加しました。この日は、人類にとって記念すべき偉大な日と考えたからです。イギリスの植民地支配からの解放を求め、革命によって独立をかちとった合衆国の建国の精神は、今日、米国からの真の独立を実現し、対等・平等・友好の日本をめざす日本共産党の立場と、深く響きあうものがあるというのが、私たちの確信です。

 そして、こうした方向にこそ、21世紀の日米関係のあるべき未来があると、私たちは信じています。

(出所:日本共産党HP  2010年5月10日(月)「しんぶん赤旗」)
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米国訪問の全体をふりかえって-ワシントンDCでの日本共産党の志位和夫委員長の記者会見ー

2010-05-13 01:59:44 | 国内政治
米国訪問の全体をふりかえって
ワシントンDC 志位委員長の記者会見

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 日本共産党の志位和夫委員長が7日にワシントン市内でおこなった記者会見(要旨)は次のとおりです。志位氏は、冒頭、米国政府との会談の要旨(「しんぶん赤旗」5月9日付で既報)について、ブリーフィング(説明)をおこなった後、今回の訪米の意義についてのべ、記者団の質問にこたえました。

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「核兵器のない世界」、「基地のない沖縄」―日本国民の声を伝えることができた

 私たちのニューヨーク(4月30日~5月5日)、ワシントン(5月6日~7日)での活動の全体を通じて、二つの仕事ができたと思います。

 一つは、「核兵器のない世界」を願う、被爆国・日本国民の声を、国際社会に伝えるということです。ニューヨークでの活動の目的は、核不拡散条約(NPT)再検討会議に参加し、会議主催者、国連関係者、各国政府代表団と話し合って、「核兵器のない世界」への道をどう開くかについての私たちの要請をおこなうことにありました。私たちは、カバクチュランNPT再検討会議議長、ドゥアルテ国連上級代表(軍縮担当)、シディヤウシクNPT再検討会議第1委員会(核軍縮分野)委員長など、再検討会議を運営する中枢の方と会談し、私たちの要請を伝えることができました。核保有国、非同盟諸国、新アジェンダ連合、北大西洋条約機構(NATO)諸国など幅広く各国代表団のみなさんと要請・会談ができました。一連の要請・会談のなかで、「核兵器廃絶のための国際交渉の開始」という私たちの主張は、国際社会の大勢ともなっていることが確認できたことはうれしいことです。

 いま一つは、「基地のない沖縄」、「対等・平等・友好の日米関係」を願う、沖縄県民、日本国民の声を、直接、米国に伝えるということです。ワシントンでの活動の主要なテーマはこの問題となりました。沖縄問題が国政の重大な焦点となっているなかで、米国政府との会談、米連邦議会議員との懇談、全米法律家協会主催の講演会などでの発言をつうじて、沖縄県民の総意がどこにあるかを伝え、普天間問題の解決方法は「移設条件なしの撤去=無条件撤去」しかないことを伝えるという仕事をおこないました。

 「核兵器のない世界」、「基地のない沖縄」という二つの大きな問題で、日本国民の声を国際社会、米国に伝えることができたと思います。

米国政府・議会関係者との会談―「今後も意見交換をつづけよう」

 米国政府との会談では、とくに日米関係・普天間問題については、意見が対立するわけですが、最後に米側から、「見解が違っても意見交換するのは有益であり、民主主義の基本です。これからもつづけましょう」との発言がありました。私も、「それは重要なことです。今後も意見交換をつづけましょう」と応じました。

 わが党と米国政府の間では、核兵器問題では交わるところもありますが、日米関係では立場が真っ向から違います。しかし、意見交換は重要です。そのことで両者が一致し、今後も意見交換を続けていこうということになったのは重要です。初めての訪米で、こういう話し合いが始まったこと自体が、大事なことだと考えています。

 それから、私たちは、米連邦議会の議員と懇談の機会を持ちました。ビック・スナイダー下院議員(民主党)、ドナルド・マンズーロ下院議員(共和党)、トーマス・ピートライ下院議員(共和党)の3氏です。私から、核兵器問題、日米関係についての日本共産党の立場について話すとともに、率直で多面的な意見交換をおこないました。米国の建国の問題、歴史の問題も話題となりました。リンカーンとマルクスの交流のことなども私から話しました。立場の違いはあっても率直に意見をのべあう会談となり、今後も意見交換を続けましょうということになったことも重要だと思います。これも第一歩ですが、今後、発展させていきたいと思います。

〈一問一答〉

「抑止力」という考えをどうみるか

 問い 普天間問題で米側は「地元合意尊重」といっていた。この問題についての米政府側から反応はどうでしたか。

 志位 私が、「(県内移設では)住民合意は絶対に得られない」と伝えたのに対して、先方が強調したのは、「日米安保の重要性」と「海兵隊の抑止力の重要性」でした。(「住民合意」が得られないことについての)直接の答えはありませんでした。

 問い 海兵隊が北朝鮮や中国への抑止力となっているという考え方について、どうお考えになりますか。

 志位 「抑止力」というのは、いざとなったらその軍事力を使うことが前提となって、はじめて成り立つ議論です。「核抑止」についても、「海兵隊による抑止」についても、いざとなったら使うということが前提です。それでは、いったい朝鮮半島に海兵隊を出すことがありうるのか。中台の紛争がかりに起こったとして、そこに海兵隊を出すということがありうるのか。そんなことを考えている国はありません。米国も考えていない。悪夢のような話です。

 結局、海兵隊がなんのために沖縄にいるかといえば、事実が示しています。この部隊が展開している場所は、イラクでありアフガニスタンです。この部隊が、日本や、北東アジアにとって、平和のための「抑止力」だというのは、まったく根拠のないことです。

 沖縄県民にとっては、「抑止力」という言葉によって、長年にわたって基地を押し付けられ続けてきたわけです。「抑止力」さえいえば、住民の命を危険にさらすような事態を続けることが許されるのか、というのが沖縄県民の気持ちだと思います。私は、もはや、「抑止力」という抽象的で空疎な3文字で県民を「説得」することは、到底できなくなっていると思います。

訪米実現の背景に米国の変化

 問い 委員長の訪米が、なぜこれまで実現できなかったのでしょうか。なぜ、今回、実現したのですか。

 志位 直接には、5年ぶりにニューヨークでNPT再検討会議がおこなわれ、それに参加し、要請・交流をおこなうということが、訪米を計画した目的でした。

 同時に、この機会に、米国政府、議会関係者との意見交換も計画しました。それを可能にしたのは、やはり米国社会の変化だと思います。つまり、過去に存在した入国さえ難しかった反共の壁が崩れたということです。さらに、日本共産党というだけで、意見交換の対象から排除することはなくなったということです。

 くわえてオバマ政権の誕生は、わが党と米国との関係にも新たな条件をつくったと思います。もちろん、大きな立場の違いが多くの問題であります。同時に、核兵器問題などで一定の共通の方向も生まれてきた。そして、私が、この間、米国政府との関係で実感しているのは、この政権が、異なる意見であっても「聞く耳をもっている」政権だということです。

 私たちは、米国という国について、太平洋をはさんだ大事な隣国だと考えています。ですから、本当の友好関係を築きたいと考えています。そのためには、いろいろ立場の違いはあっても、なんでも話し合える関係になっていくことが大事だと思います。その第一歩を踏み出せたことも、大きな収穫だと思います。

新しい綱領のもつ生命力

 問い 今回の訪米の実現にあたって、米国社会が変化しただけでなく、日本共産党も変化した部分もあるのでしょうか。

 志位 私たちは、2004年の党大会で綱領改定をおこない、21世紀の新しい世界の分析にたって、帝国主義論を理論的に発展させました。すなわち、20世紀の最初の時期は、独占資本主義の国は、帝国主義の国になることが、当たり前の時代でした。独占資本主義の段階になったら、多くの国が、領土の分捕り合戦をやり、植民地の奪い合いをやるという帝国主義になるのが当たり前でした。ところが、戦後、植民地体制が崩壊し、植民地を許さない体制がつくられる。そのもとでは、独占資本主義の国だから帝国主義の国になるとはいえない、それはその国がとっている政策と行動の内容によって判断すべきだというように、帝国主義論を発展させました。それは新しい世界の変化に即した、私たちの理論の発展でした。

 そのとき、米国については、米国がとっている世界政策を分析して、その世界政策はまぎれもなく帝国主義であるとの判断をしました。同時に、その米国も固定的にみないということを確認しました。すなわち、そうした米国であっても、世界のさまざまな平和や進歩の動きにおされて、前向きの態度を部分的にとることもありうるだろう、変化もありうるだろう、そうした変化が起こったときには、きちんと「複眼」でとらえ、覇権主義の政策と行動は批判するけれども、前向きに変化した部分はしっかりとらえて対応するということを綱領改定のさいに確認しました。

 私たちはそういう目で米国をみてきました。ブッシュ政権の時代でも、2期目に入って、たとえば北朝鮮の核問題をめぐる「6カ国協議」で、米国が積極的な役割を果たすという場面がうまれたときには、それに注目して評価することもしました。

 それがオバマ政権になって、「核兵器のない世界」ということを公式に米国が国家目標とした。これは明らかに前向きの変化です。そこで私たちは、歓迎と要請の書簡を送り、先方からも返書が来る。こうして、私たち自身も世界の変化に即して、理論を発展させ、それを実践に生かしてきた。それが今回の訪米を可能にしたと思います。

 問い 今後、引き続き、米側との意見交換を続けるというが、具体的にはどういうことですか。

 志位 それは情勢の進展に即してやっていきたいと思います。駐日米国大使との関係でも、米国政府との関係でも、立場は違っても話し合いを続けようとなったのは、たいへん重要ですから、それを大事に発展させていきたいと思います。

 米側にとっても、日本にいろいろな意見があるということを知るのは有益だと思います。私たちにとっても、日本国民の声を代表して、米国に伝えるということは重要な活動になります。

鳩山首相の政治責任について

 問い ところで日本の内政問題になりますが、普天間問題にかかわって鳩山首相は辞任すべきでしょうか。責任問題をどうお考えになりますか。

 志位 結局は、自らの公約を裏切り、沖縄県内に新基地をつくる。この政治姿勢こそ、深刻な責任問題です。これは国会で追及していきます。(辞任要求については)今後の展開いかんです。鳩山首相として、正式に具体的な案(「移設案」)を提示しているわけではありません。漠然と、「沖縄に負担をお願いする」という言い方ですから、これが今後どう明らかにされていくかが問題となります。私たちは、それがいかに無謀なものであるのか、国会で追及していきます。

 私は、訪米の前に、鳩山首相と党首会談をおこない、核兵器問題での私たちの立場とともに、沖縄問題についても話しました。いまからでも遅くないから、無条件撤去という立場に立つべきだ、その立場に立てば日本共産党は党をあげて応援するということも言いました。しかし、結果は、ご覧のとおりです。とりわけ沖縄県民は、「県内につくらない」という鳩山・民主党の公約に期待をして投票したのです。期待が大きかっただけに、裏切られたときの怒りは激しい。いま沖縄は怒りの炎につつまれていると思います。

歴史的スケールで今日の事態をとらえる

 志位 さきほど、米国務省との会談のなかでも話しましたが、いまの沖縄の事態を歴史的なスケールでみますと、本土復帰闘争に匹敵するものです。本土復帰闘争では、文字通り島ぐるみの大闘争によって、本土復帰を勝ち取りました。それと同じような深い怒りが広がり、同じような歴史的局面にたちいたっていると思います。

 1969年の沖縄返還合意にいたる米国務省、国防総省、在日大使館などとのさまざまなやりとりの文書をみますと、ある時点で、「ポイント・オブ・ノー・リターン」という言葉が出てきます。もはや後戻りできない限界点をこえたということです。沖縄の問題をこのまま放置したら、もはや日米関係はもたないということを国務省側はいうわけです。国防総省の方は抵抗しますが。結局、返還という方向にいくわけです。

 私は、きょうの米国務省での会談で、今日の事態はそれと同じような歴史的岐路だといいました。「ポイント・オブ・ノー・リターン」――後戻りできない限界点をこえていると、そういう認識をもたなければこの問題に対処できない、いろいろな理屈をいっても通じないという話をしました。そういう歴史的視野での認識を持つべきだと思います。

“二つの抑止力”にとらわれ、世界にも米国にもモノがいえない政府でいいのか 

 志位 訪米の全体をふりかえって感じることは、私たちが主張し、行動したようなことは、本来、日本政府がおこなってしかるべきことではないかということです。

 「核兵器のない世界」をめぐっては、日本は唯一の被爆国です。世界の大勢は、核軍縮のための個別の部分的措置とともに、核兵器廃絶の国際交渉を始めようという動きとなっています。これをなぜ、被爆国・日本の政府がいわないのか。それは米国の「核の傘」=「拡大抑止」という呪縛(じゅばく)にとらわれているからだということを、率直にいわなければなりません。

 普天間基地の問題で、日本政府が、なぜ沖縄県民の立場に立って米国にモノがいえないのか。普天間を撤去しなさいということを正面からいえないのか。こちらもまた「海兵隊は抑止力」だという呪縛にとらわれているからです。

 核問題では「核抑止力」にとらわれ、沖縄問題でも「海兵隊の抑止力」ということにとらわれ、この“二つの抑止力”に縛られて、世界にモノがいえない、米国にモノがいえない、こういう政府でいいのか、ということが問われていると思います。

(出所:日本共産党HP 2010年5月11日(火)「しんぶん赤旗」)
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日本共産党の市田忠義書記局長が憲法集会で行った発言-軍事同盟の日米安保廃棄へ合意広げようー

2010-05-09 21:16:01 | 国内政治
9条と相いれない軍事同盟――
日米安保廃棄へ合意広げよう
憲法集会での 市田書記局長の発言

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 日本共産党の市田忠義書記局長が3日、東京・日比谷公会堂での憲法集会で行った発言は、次の通りです。

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 会場いっぱいにお集まりのみなさん、場外でオーロラビジョンをご覧のみなさん、日本共産党の市田忠義でございます(「頑張れ」の声、拍手)。志位和夫委員長がNPT(核不拡散条約)再検討会議に出席するためにアメリカに行っております。今年は私が代わってスピーチをいたします。よろしくお願いします。(大きな拍手)

 きょう、私は、二つのことをお話ししたいと思います。一つは、今日の憲法状況について、もう一つは、今年改定50年を迎える日米安保条約と憲法との関係についてです。

改憲策動をめぐる今日の状況を見る
国民のたたかいに確信をもとう

 明文改憲の策動は、いま、国民のたたかいによって重大な困難に直面しています。

 この間、具体的な改憲策動を推進する先頭に立ってきたのが、中曽根元首相を会長とする「新憲法制定議員同盟」でした。この同盟には新体制発足時(2008年3月)、150人近くの衆院議員が参加していましたが、昨年の総選挙で再選されたのは、このうちわずか53人にすぎませんでした。(拍手)

 改憲派の“オピニオン・リーダー”を自任する「読売」の憲法世論調査でも、注目すべき結果が出ています。同紙の調査では、1993年以来、「(憲法を)改正する方がよい」とする回答が、「改正しない方がよい」とする回答を大幅に上回っていました。ところが、あいつぐ自衛隊の海外派兵、改憲勢力の問答無用の改憲ごり押し姿勢を目の当たりにした国民の中に危機感が広がり、2004年を境に「改憲賛成」が減少の一途をたどりはじめ、今年、ついに「改憲賛成」と「反対」が拮抗(きっこう)する結果となりました。また、きょうの「朝日」の世論調査では、「9条改正反対」が67%(大きな拍手)、その9条が「平和に役立つ」と答えた人が、7割を占めました。(大きな拍手)

 一時は“一瀉(いっしゃ)千里”にすすむ勢いだった明文改憲策動は、国民のたたかいの前に「頓挫」ともいうべき状態に陥っています。

 みなさん、改憲策動の芽が根絶されていないことに十分に警戒心を払いながら、国民がつくりだしたこの状況に、お互いに深い確信をもとうではありませんか。(大きな拍手)

「国会改革」による解釈改憲に警戒を

 同時に、形を変えた解釈改憲のくわだてには、特別の警戒心が必要であります。

 鳩山政権は、成立以来ことあるごとに、“憲法解釈については、従来の内閣法制局長官答弁に縛られることなく、政治主導で決めてゆく”という立場を表明しています。鳩山政権の掲げる「内閣法制局長官の国会答弁禁止」措置の狙いは、この立場をおしすすめようとするものです。

 歴代の法制局長官は、解釈改憲に手を貸しながらも、海外での武力行使、他国の軍隊の武力行使と一体となった活動は「憲法違反」だという一線を越えることはできませんでした。

 他方、民主党の立場はどうでしょうか。小沢幹事長が公言しているように、「国連の決定があれば、それにしたがって自衛隊が武力行使することはなんら憲法に抵触するものではない」というものです。この立場を公式の「政府見解」に仕上げるためには、従来の答弁に固執する法制局長官をそのまま答弁席に座らせておくことはできない――これが真の狙いにほかなりません。

 「国会改革」の名で、無法きわまる憲法「解釈」を国会と国民に強制するたくらみを阻止するため、世論による包囲と運動をいっそう強めようではありませんか。(拍手)

日米同盟、とりわけ軍事基地問題を考える

 昨年のこの集会でわが党の志位委員長は、日本国憲法には核廃絶の願いが込められていると強調しました。ちょうどいま、第8回NPT再検討会議がニューヨークで開かれています。日本共産党は核廃絶へ大きく一歩を踏み出すために、次の二つのことが大事だと考えています。一つは、2000年のNPT再検討会議で合意された「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を、再確認すること、もう一つは、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくること、この二つの実現のために全力を尽くす決意であります。(拍手)

普天間基地は無条件撤去こそ解決の道

 さて、今年は、戦後65年、安保改定50年の歴史的節目の年です。

 きょうは、日本国憲法とは相いれない存在である日米軍事同盟の核心の一つ、米軍基地問題について、ご一緒に考えてみたいと思います。

 4月25日、米軍普天間基地の撤去・県内移設反対の旗を掲げた県民大会が、沖縄・読谷村(よみたんそん)で開かれました。仲井真知事をはじめ、代理を含む41市町村すべての首長が参加し、地元紙は「日米揺るがす県民総結集」(「沖縄タイムス」)と書きました。私も志位委員長や小池晃政策委員長とともにこの集会に参加しました。訓練の移設先とされた徳之島では、島民の実に6割が参加し、東京に置き換えれば720万人という空前の規模で移設反対の集会が行われました。

 もはやみなさん、沖縄県内はもとより、日本国内のどこにも、「地元合意」が得られる場所などありません(「そうだ」の声、拍手)。普天間の苦しみは、日本のどこに移しても同じ苦しみです。みなさん、際限のない「移設先」探しではなく、アメリカにもって帰ってもらって、アメリカのどこに置くかは、アメリカに決めてもらおうではありませんか。(「そうだ」の声、割れるような拍手)

 私は、沖縄の施政権返還の際の経緯を思い出します。1969年、日米両国政府は、沖縄の施政権返還で合意しました。これは、条約上から考えれば不可能の壁を越えたものでした。すなわち、日本政府は、サンフランシスコ条約第3条で沖縄の施政権を放棄しました。にもかかわらず、沖縄を日本に返還させました。これは、国際社会がかつて一度も経験したことのない画期的なできごとでした。

 なぜこんなことが可能になったのでしょうか。それは、抗しがたい沖縄県民と日本国民の運動の盛り上がりがあったからであります。

 68年、初の琉球政府主席公選で沖縄の「即時無条件全面返還」を掲げた屋良朝苗氏が当選しました。その直後に沖縄を訪問した米国務省日本担当のリチャード・スナイダー氏は、ラスク国務長官にあてて次のように報告しました。

 「返還問題で引き戻し不能の地点まで来てしまった」「日本でも沖縄でも圧力が嵩(こう)じて……返還をいつにするかを来年末以降にのらりくらり引き延ばすことはできなくなった」(68年12月24日の沖縄訪問報告)

 本土と連帯した島ぐるみの世論とたたかいが、いかに大きな力をもったかを、これ以上雄弁に物語るものはありません。(拍手)

 いま沖縄県民のたたかいは、たとえ安保条約という鎖はあったとしても、69年の沖縄施政権返還と同じように、あまりにも理不尽な事態は変更させる――すなわち普天間基地の無条件撤去という決断を、日米両政府に厳しく迫っているのです。

主権国家にあるまじき実態

 わが国には、戦争直後の全面占領の時期につくられたアメリカ軍事基地の大きな部分が、戦後65年を経ていまだに、133カ所にも置かれ続けています。米軍に提供している基地面積は、自衛隊との共同使用を合わせると、80年以降は減るどころか、1028平方キロへと2倍以上に増えました。これは、東京23区の総面積の1・7倍にあたります。

 世界的にみれば、ソ連が崩壊した91年に海外配備されていた米軍総数は半分以下になりました。ヨーロッパに駐留する米兵は3分の1以下に、アジアでも在韓米軍は4割が削減されています。にもかかわらず、日本に駐留する米兵はほとんど変わらない異常さです。(「カネを出すからだ」の声)

 在日米軍基地の実態は、数量的な面だけではありません。質的にもきわめて異常で、日本国民に耐え難い重圧と負担をもたらしています。(1)世界でも例がない、首都圏に広大な面積を占有する横田基地や横須賀基地、(2)人口密集地での米空母艦載機の夜間離着陸訓練などによって耐え難い騒音公害が続く嘉手納基地・厚木基地・三沢基地・岩国基地、(3)宜野湾市のど真ん中を占拠し、交通や上下水道などを分断し、騒音や墜落事故の被害が絶えない普天間基地、(4)港湾水域の8割の使用が制限され、造船業や漁業に甚大な被害を与えている佐世保基地、(5)沖縄では、市町村面積の3割以上を基地に奪われ、住民の生活と安全に重大な影響を与えている自治体が、嘉手納町をはじめ十指にのぼるなど、どれ一つとっても主権国家にあるまじき異常な実態です。

いま安保の是非問う声が起きている

 米軍基地が町面積の83%を占める、日本でもっとも米軍基地の重圧に苦しめられている嘉手納町で、5期20年にわたって町長をつとめてきた宮城篤実(みやぎとくじつ)氏は、こう語られました。

 「いくら何んでも基地の存在がこんなに長く続くとは思わなかった。戦後65年、あと35年で100年」「新たな外交展開で、アメリカの質的な軍事支配から脱却することは主権国家として当然の義務だ」(「沖縄タイムス」4月17日付インタビュー)。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 沖縄県民のなかで、この苦難に満ちた現状を変えるためには、日米安保条約の是非そのものを問う必要があるという動きがおこっていることは重要です。

 さらに、98歳になる聖路加病院の日野原重明さんは「半世紀前に結んだ日米安保条約を考え直す時期」「いまから10年先を目標にした安保条約の解消を、意を決して提案します」と述べられています(「朝日」1日付)。(拍手)

 さらに、注目すべきは、長く日米関係にたずさわってきた米側関係者のなかでも、日米同盟の包括的見直しが必要だという声がおこっていることです。ライシャワー元駐日大使の特別補佐官だった人が、最近発売されたアメリカの外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』で、「日米同盟の将来を決めるのは最終的に日本の有権者である」とのべ、多くの米軍基地が居座っている異常さを次のように指摘しています。

 「駐留米軍の75%近くが沖縄に駐留している。こうした米軍の存在は沖縄の住民にとって頭痛の種であり続けている」「専門家の中には、そもそもなぜ沖縄に海兵隊が必要なのかと鋭い質問を投げかけるものもいる」

 かつて米政権の近くにいた人でさえ、戦後65年たってなお多くの米軍基地が居座っている日本の現実は異常であり、「同盟全体の再検討が必要」だと認識しているのです。(拍手)

 政府は、日本の安全保障の観点から、「抑止力としての米軍は必要だ」という立場にたっています。しかし在日米軍は、海兵遠征軍・空母打撃群・航空宇宙遠征軍という、その名が示すとおり、そもそも「日本を守る」という任務をもたない、“殴り込み部隊”ばかりであり、「抑止力」どころか、「戦争力・侵略力」そのものではありませんか。(拍手)

安保半世紀、節目の年に

 日米安保条約改定から半世紀。この、世界でも突出した従属的で危険な体制を、これから先、未来永劫(えいごう)続けようという勢力には、日本の独立も平和も語る資格はありません。(「そうだ」の声、拍手)

 安保改定半世紀の節目の年にあたって、日本国憲法に根本からそむく日米軍事同盟の実態を広く明らかにしつつ、東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていくために、あらゆる知恵と力を発揮しようではありませんか(大きな拍手)。日本共産党もみなさんとごいっしょに、全力をあげることを表明して私のスピーチを終わります。(大きな拍手)


(出所:日本共産党HP 2010年5月4日(火)「しんぶん赤旗」)
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日米関係、核兵器、普天間基地問題ー日本共産党の志位和夫委員長がニューヨーク市内でおこなった記者会見ー

2010-05-09 21:10:05 | 国内政治
ニューヨークでの活動について
志位委員長の記者会見

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 日本共産党の志位和夫委員長が5日、ニューヨーク市内でおこなった記者会見は次のとおりです。

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 日本共産党の訪米団のニューヨークでの活動は、今日をもって終わり、ワシントンに移ります。

 私たちの今回の訪米の最大の目的は、核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席するとともに、その成功のために唯一の被爆国の政党として、可能な最大限の努力をはかることにありました。4月30日から5月5日までの6日間の活動で、この目的は基本的に果たすことができたと思います。

NPT再検討会議成功にむけ、前向きで建設的な意見交換

 私たちは、NPT再検討会議への要請として、1枚の要請文を作成し、会議主催者、国連関係者、各国政府代表団に渡しながら、会談を重ねてきました。

 要請の中身は、二つの点です。第一は、2000年のNPT再検討会議での核保有国による核兵器廃絶を達成する「明確な約束」を再確認することです。これは会議成功の土台となるものです。第二は、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくることです。これは「核兵器のない世界」にすすむうえで核心中の核心の問題です。

 私たちが、この6日間で要請・会談をおこなったのは、つぎの方々です。

 NPT再検討会議主催者側では、カバクチュランNPT再検討会議議長とシディヤウシクNPT再検討会議第1委員会(核軍縮)委員長。国連関係者では、ドゥアルテ国連上級代表(軍縮担当)とお会いしました。今回の再検討会議の運営の要となる方々とお会いし、要請をおこない、つっこんだ会談をすることができました。

 NPT再検討会議参加国の政府代表団、国連代表部などとの会談では、核保有国ではイギリス。非同盟諸国では現議長国のエジプト、前議長国のキューバ、さらにベトナム。新アジェンダ連合ではスウェーデン、ブラジル。核兵器禁止条約を提唱しているコスタリカ。さらに北大西洋条約機構(NATO)加盟国のオランダ、ドイツの国会代表団との会合もおこないました。

 すべての要請・会談が、たいへん前向きの建設的な内容となったと思います。

 さらに、短い滞在期間ですから、直接に要請・会談ができた国はかぎられましたが、わが党の要請文は、要請・会談ができなかった国もふくめて、再検討会議に参加したすべての国々にお届けしました。

NGOとの交流と連帯、ニューヨークでのパレード

 この会議に参加した国際非政府組織(NGO)、各国NGO、日本原水協のみなさんとも交流と連帯の活動、意見交換をおこないました。初めての訪米で、ニューヨークのマンハッタンを、NGOのみなさんとともにパレードすることができたのは、私たちにとって大きな感動でした。

 このなかで、日本原水協が果たしている役割が国際的にもいよいよ大きなものとなり、信頼が高まっていることを強く実感したことも、たいへんうれしい思いです。

バーモント州での交流について

 4日には、バーモント州議会を訪問しました。バーモント州では上下両院で、核兵器廃絶国際条約の交渉開始のための計画をNPT再検討会議に提出するようオバマ大統領に求める決議が採択されています。私たちは、そのニュースを日本で知り、これは核兵器廃絶交渉を開始しようという私たちの立場とまったく一致する方向だ、ぜひ訪問しようということで、現地にうかがいました。

 私たちは、上下両院議長に温かい歓迎を受けました。また、議事堂のホールでは、決議の採択に尽力した議員のみなさんを中心に、約50人の議員が私たちを温かく迎えてくれ、私の短いスピーチに、大きな拍手で連帯の気持ちをあらわしてくれました。

 驚いたのは、下院の本会議が開会中だったのですが、午後のセッションに参加してくれということになり、普段は上院との合同の会議がおこなわれるさいに上院議員が座る席に私たちが案内されて着席したことです。日本共産党の代表団だということが紹介されると、議員のみなさんが長いスタンディング・オベーション(総立ちでの拍手)をしてくれたのです。心のこもった、連帯の気持ちがとても強く伝わってくる拍手でした。外国の議会で、あのような歓迎を受けたのは、初めての経験でした。

 米国でも、草の根の平和の運動とむすびついて、こうした動きが起こっていることは、たいへんうれしく感動的なことでした。

核廃絶交渉の開始を求める声は世界の大勢

 会議主催者、国連関係者、参加国などへの要請と会談、そしてNPT再検討会議で始まった討論など、全体をつうじて、つぎの点を感じています。

 第一に、全体として、「核兵器のない世界」を築くという意思、この歴史的チャンスを必ず生かしたいという思いは、文字通り国際社会の圧倒的多数の流れとなっていると思います。5年前の再検討会議と比べると、情勢の大きな前向きな発展があると思います。

 第二に、核兵器廃絶のための国際交渉の開始という私たちが提起している点についても、世界の国々の大勢がその方向に向かっているということが、一連の要請・会談でも、討論を聞くなかでも、確認できました。

 ですから、これは、核兵器保有国が決断すれば、すぐにでも始めることができるわけです。核保有国が核廃絶交渉の開始に合意して、交渉のテーブルにつくことが強く求められていると思います。

 再検討会議のなかでは、個々には困難な問題、複雑な問題も起こっており、その成り行きを予断を持っていうわけにはいきません。しかし、ぜひ、各国政府が、「核兵器のない世界」をめざすという大局にたって、困難な問題、複雑な問題に適切に対処しながら、この歴史的な会議を成功させることを願ってやみません。

 わが党としても、再検討会議の成功のために、可能な努力をひきつづきおこなっていきたいと思います。

米国の草の根の民主主義の伝統にふれた

 最後に一言、私たちは、まだニューヨーク市内とバーモント州しか行っていないので、米国社会が全体としてどんな姿かということの体験は、ごくささやかな最初の段階にすぎません。

 バーモント州での体験で強い印象を受けたことですが、米国は、草の根の民主主義の伝統が深い国だと感じました。バーモント州で起こっているようなことは、全米のあちこちであるのだろうと思います。

 この国には、いろいろな多面的な側面があるでしょうから、まだその一端に触れただけですが、州議会でお会いした人々の姿は、本当に、だれかれも平等で親愛の情で接するのです。議場に座っていますと、衛視さんがやってきて、私たちと親しく会話が始まります。日本の国会では考えられないことです。私たちと一緒に記念撮影をしたガールスカウトのお嬢さんたちも自由に出入りして、討論しています。市民に自由に開かれている姿をみることができました。

 この連帯性がどこからくるのですかと聞いてみましたら、植民地の最初の時代に、非常に生活が苦しく飢餓もひどかった、そのときに助け合って、共同して社会を支えていく精神がつくられ、いまにも生きているという話でした。

 バーモント州は、奴隷解放戦争で人口比でもっとも多くの兵士を送り、北軍の先頭に立ってたたかったことを誇りにしているということですが、今度も核兵器廃絶交渉の開始を求める決議を全米で最初に採択したことを誇りにしていました。

 米国社会には、独立革命、民主主義の偉大な伝統が、いまもさまざまな形で生きているということも感じているところです。

《一問一答》

米国社会が大きく変化しつつある

 問い かつては共産党員の米国入国が制限されていた時期がありましたが、今回の訪米で共産党への偏見を感じましたか。

 志位 そこは変わったと感じます。1980年代までは、コミュニストというだけで、入国が難しかった時期があったわけです。その後、だんだん変化が起こってきています。今回の訪米につながる最初のきっかけは、オバマ大統領の昨年4月のプラハの「核兵器のない世界」をめざすという演説にたいし、私が、これを「心から歓迎する」、同時に世界に宣言したことを実行してほしいと要請する書簡を大統領に送り、大統領側から返書が届いたということにありました。返書が届いたということについて、米国社会にずいぶん変化が起こっていると感じました。

 東京の米国大使館とは、米国独立記念日のレセプションに参加するなど、さまざまな交流が始まりました。今回、訪米して、政府や議会の関係者ともお会いすることで、米国が大きく変化しているということを感じます。

「核兵器のない世界」――原点は言語に絶する被爆体験

 問い 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が広島訪問を発表しましたが、オバマ米大統領の広島・長崎訪問についてどう考えますか。

 志位 国連事務総長の広島訪問は、たいへんすばらしいことです。潘基文さんの演説は、2000年のNPT再検討会議の合意を再確認しながら、それを拡張・発展させるという立場を明確に打ち出したもので、とても良いものでした。

 NGOの国際会議でも潘基文さんの演説を聞きましたが、そこでは核兵器禁止条約の交渉という提案もされました。同氏の5項目の核軍縮計画の第1項目は、核軍縮・廃絶のための国際交渉です。私たちの主張と響きあう主張が、国連事務総長から聞けたということはうれしいことです。

 被爆者の多くの方が、オバマ大統領の広島訪問を願っています。私は、「核兵器のない世界」をもとめる動きの原点は、言語に絶する被爆の体験だと思います。その原点を見据え、その悲惨さを胸に刻んで、すべてが始まっていくわけですから、オバマ大統領が、広島・長崎を適切な機会に訪問することを願っています。

キューバとの会談――「非同盟諸国に要請文を紹介したい」

 問い キューバとの会談はいかがでしたか。

 志位 キューバとの会談もとても良いものでした。私たちの要請文について、「全面的に賛成です。非同盟の国々に紹介して良いですか」と聞いてきたので、「願ってもないことです」と応じました。

 後で話す機会がありましたが、キューバは、私たちの要請文を、非同盟の国々に紹介してくれたとのことでした。非同盟諸国首脳会議の前議長国の手で、私たちの要請文が非同盟の国々に伝わったことは、たいへんうれしいことです。

ミュージカルの発祥の地で

 問い ブロードウェイの観光などには行きましたか。

 志位 ブロードウェイでミュージカルを見ました。「マンマ・ミーア」という作品です。本場のミュージカルは、歌も踊りも本格的で素晴らしかった。

 私は、「レ・ミゼラブル」「ベガーズ・オペラ」など、東京でもミュージカルはよく見ます。ミュージカルはもともと、米国が発祥の地です。ポップとかジャズとかクラシックとか、多様な音楽がベースとなり、そこに踊りが入っている。米国が生み出した文化ですから、ぜひ行ってみたいと思っていました。

 5月2日の日曜日の夜の日程がたまたま空いたので、見ることができました。

普天間問題――首相の行動は地元の怒りの火に油をそそいだ

 問い 鳩山由紀夫首相と徳之島の3町長との会談についてどう考えますか。

 志位 徳之島では、島民の6割、1万5000人が参加する大集会が開かれ、米軍基地をもってくるのはまかりならないという絶対的な意志がはっきりしています。三つの自治体の責任者がそろって反対を表明しています。会う前から結果は明らかだと思いますが、公式にそれが明瞭(めいりょう)になると思います。

 問い 会談の実現が問題の解決になりますか。

 志位 なりえません。むしろ、いよいよ深刻なゆきづまりがはっきりしてくることになるでしょう。

 鳩山首相が4日に沖縄を訪問して、一連の行動をおこなった。そのことが、沖縄県民の怒りの火に油を注ぐという結果をつくっています。沖縄では、4月25日に、9万人が参加する県民大会がおこなわれ、知事と県内41すべての自治体の首長(うち代理2人)が参加し、県内に基地をつくることはまかりならないということが、文字通り県民の総意となりました。

 鳩山首相は、新たな基地を県内につくるという方針を持っていったわけですが、これはまさに県民の総意に逆らうものです。自らの公約に反するものをもっていった。そのことが、沖縄県民の怒りをいよいよ広げることになった。首相の行動は、県民大会で示された新基地建設を許さないという全県民的な団結を、さらに強める結果となったと思います。

 もはや「県内移設」で住民合意を得るのは絶対に不可能です。徳之島への一部移転も理解を得るのは不可能です。普天間基地は、無条件の撤去を求めて、米側と交渉する。これが唯一の解決の道です。そのことがいよいよ明瞭となったと思います。

「党の公約ではない」――こんな無責任な言い逃れはない

 問い 普天間問題での鳩山首相の政治責任についてどう考えますか。

 志位 ともかく沖縄県内には新しい基地をつくることはしないというのが、民主党の総選挙での公約でした。この公約に、沖縄県民は期待したわけです。その公約を裏切ることをやろうということは、どんな言い訳をしても許されるものではない。その政治責任は重いといわなければなりません。

 公約違反を記者に問われて、鳩山首相は、「民主党の代表としての公約であって、党の公約ではない」といったそうですが、こんな無責任な発言はありません。党首が自ら言ったことが、党の公約ではないということになったら、党首討論会などやる意味はないし、選挙での党首の発言の意味はなくなります。こういう無責任な言い逃れを現地でやったそうですが、これも現地での怒りを広げています。

 公約にそむいていること、県民の総意にそむいていること、ここに一番大きな政治責任があります。


(出所:日本共産党HP  2010年5月8日(土)「しんぶん赤旗」)

第8回NPT再検討会議にたいする要請
核兵器廃絶のための国際交渉を
開始する合意をつくることをよびかける
2010年5月2日 日本共産党幹部会委員長・衆議院議員 志位 和夫

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 日本共産党の志位和夫委員長が、核不拡散条約(NPT)再検討会議の成功に向けて、カバクチュランNPT再検討会議議長や国連関係者、各国政府代表、非政府組織(NGO)代表らに手渡している「要請文」(全文)は次のとおりです。

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 第8回NPT再検討会議は、「核兵器のない世界」をめざす国際政治の大きな進展のもとで開催されます。

 私は、核兵器による言語を絶する惨害を体験した世界でただ一つの被爆国において、核兵器廃絶を日本国民とともに求め続けてきた政党を代表して、NPT再検討会議が、人類にとっての歴史的チャンスを生かし、大きな成功をおさめることを心から願って、つぎの要請をおこないます。

 1、2000年のNPT再検討会議で合意された「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を、再確認すること。

 NPT体制は、五つの大国が核兵器を持ちながら、他国にだけ非核保有を義務づける差別的な体制です。それでも国際社会がこの体制を受け入れたのは、核保有国が核兵器廃絶への真剣な努力をおこなうことを約束したからです。2000年の核保有国の「明確な約束」の再確認は、再検討会議を成功させる土台として意義があると考えます。

 2、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくること。

 米ロ間の新しい戦略核兵器削減条約の締結、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准・発効、兵器用核分裂物質の製造を禁止する条約(カットオフ条約)、核兵器の先制不使用、非核保有国への核兵器使用・威嚇の禁止、世界各地の非核地帯条約など、核軍縮の個々の部分的措置を前進させることは重要です。

 同時に、そうした部分的措置の積み重ねだけでは、「核兵器のない世界」に到達できないことは、核兵器問題をめぐる外交の全歴史が証明しています。核軍縮の部分的措置と一体に、また同時並行で、核兵器廃絶のための国際交渉を開始してこそ、「核兵器のない世界」への道は開かれます。すなわち、核兵器廃絶の目標そのものを主題として、この目標にいたるプロセスを検討する国際交渉を開始することが必要です。いま、世界がこのような核兵器廃絶の国際交渉に踏み出すことは、個々の部分的措置を前進させるうえでも最良の力となるでしょう。

 2000年のNPT再検討会議では、「適切な限り早期における、自国核兵器の完全廃絶にいたるプロセスへのすべての核保有国の参加」が合意されています。

 2009年9月の国連安保理首脳級会合が採択した決議(決議1887)では、「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」するとともに、NPT締約国が、条約第6条にしたがって、核軍備の削減と撤廃にむけた誠実な交渉をおこなう約束をすることを、よびかけています。

 私は、これらの国際社会の到達点をふまえ、第8回NPT再検討会議において、核保有国をはじめすべての国が、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくることを、強く要請するものです。

(出所:日本共産党HP 2010年5月4日(火)「しんぶん赤旗」)
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