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山口・光の母子殺害:弁護団賠償請求訴訟 橋下知事に賠償命令--広島地裁

2008-10-03 02:24:55 | 民事裁判
山口・光の母子殺害:弁護団賠償請求訴訟 橋下知事に賠償命令--広島地裁

 ◇「懲戒」扇動は違法 テレビ発言「弁護団に支障」
 山口県光市の母子殺害事件(99年)を巡り、橋下徹弁護士(現・大阪府知事)のテレビ番組での発言で懲戒請求が殺到し業務に支障が出たなどとして、被告の元少年の弁護士4人(広島弁護士会)が計1200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、広島地裁であった。橋本良成裁判長は「発言と懲戒請求との間に因果関係があることは明らか」として橋下氏に原告1人当たり200万円、計800万円の支払いを命じた。橋下氏は控訴する方針。

 視聴者の行為を促した発言が違法と認定されたことで、今後の番組制作や出演者のコメントに影響を与える可能性もある。

 判決によると、橋下氏は昨年5月放送の情報バラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)で光市事件の弁護団を批判。事件の動機が「失った母への恋しさからくる母胎回帰によるもの」などとした弁護活動に対して、「許せないって思うんだったら一斉に弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたい」などと発言し、4人に計2500件以上の懲戒請求が届いた。

 原告側は「発言は名誉棄損に当たり、裏付けのない理由で不特定多数の視聴者に対して懲戒請求を扇動する行為は違法」などと主張。橋下氏側は「懲戒請求は(請求者の)自発的意志に基づくもの」として発言との因果関係を否定していた。

 判決は、発言と損害の因果関係について「番組放送前に0件だった原告への懲戒請求が放送後に急増したのは、発言が視聴者に懲戒請求を勧めたためと認定できる」と指摘。「弁護団が元少年の主張を創作したとする証拠はなく、橋下氏の憶測に過ぎない」などと発言は違法と断じた。

 日弁連によると、弁護団メンバーに対し07年末までに計8095件の懲戒請求があったが、各弁護士会は「適正な刑事弁護」として懲戒しないことを議決している。【矢追健介】

 ◇法解釈誤っていた--橋下徹弁護士(大阪府知事)の話
 大変申し訳ございません。私の法解釈が誤っていた。裁判の当事者のみなさん、被告人、ご遺族に多大な迷惑をおかけした。

 ◇刑事弁護に理解--原告弁護団の児玉浩生弁護士の話
 我々の主張が全面的に認められた。裁判所に刑事弁護での弁護士の役割を理解してもらえた。

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 ◇判決骨子◇
◆名誉棄損にあたるか

 懲戒請求を呼びかける発言は、原告の弁護士としての客観的評価を低下させる

◆懲戒制度の趣旨

 弁護士は少数派の基本的人権を保護すべき使命も有する。多数から批判されたことをもって、懲戒されてはならない

◆発言と損害の因果関係

 発言と懲戒請求の因果関係は明らか

◆損害の有無と程度

 懲戒請求で原告は相応の事務負担を必要とし、精神的被害を受けた。いずれも弁護士として相応の知識・経験を有すべき被告の行為でもたらされた

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 ■解説

 ◇「根拠ない請求」戒める
 テレビを通じて懲戒請求を促した発言の違法性が問われた裁判で、広島地裁は橋下氏が単なるコメンテーターではなく、懲戒請求の意味を熟知した弁護士だったことで極めて厳しい判断を示した。光母子殺害事件報道についても、弁護団が「一方的な誹謗(ひぼう)中傷の的にされた」と苦言を呈した。

 根拠がないことを知りながら懲戒請求するのは違法とした最高裁判決(07年4月)がある。原告側によると、今回の請求の中には署名活動感覚で出されたものが多くあった。橋下氏は自らは請求しなかったが、判決は橋下氏が弁護士である以上「根拠を欠くことを知らなかったはずはなく、違法性がある」と断じた。

 懲戒請求は弁護士の品位を保つためにあり、数を頼んで圧力をかけることは想定していない。判決は「懲戒請求を呼びかけ、弁護士に心理的、物理的負担を負わせたことは不法行為」と批判。「弁護士は少数派の基本的人権を保護すべき使命もある」と強調し、(橋下氏の主張は)「職責を正解せず失当」とまで述べた。

 報道に関しては、問題の番組は録画にもかかわらず、発言をそのまま放送した。専門家は「弁護団の主張に違和感があっても、『気に入らないから懲らしめろ』では魔女狩りと変わらない。冷静な議論を」と警鐘を鳴らす。【矢追健介】

山口・光の母子殺害:弁護団賠償請求訴訟・広島地裁判決 口は災い、橋下知事
 ◇「くそ教委」放言次々 謝罪傍ら控訴の意向
 「一斉に弁護士会に対して懲戒請求をかけてもらいたいんですよ」--。2日の広島地裁判決は、思い切った言動が身上の橋下徹弁護士(現・大阪府知事)がテレビ番組内で行った発言を「弁護士の使命・職責を正解しない失当なもの」と断じた。府知事に就任後も、さまざまな発言が物議を醸してきた橋下氏だが、厳しい判決に「重く受け止める」と神妙な表情をみせた。

 判決を受け、府庁で報道陣の取材に応じた橋下氏は冒頭、「地裁の判断は重く受け止める。表現の自由の範囲を逸脱していた」と頭を下げ、謝罪した。一方で、控訴の意向も表明。「3審制なので高裁の判断も伺いたい。1審の判断が不当だとかではない」と理由を説明した。

 「今後の表現手法に影響するか」と問われ、「今回の訴訟ではある意味、個人を攻撃した。政治家として扱っているのは大きな組織や社会制度。知事としての職務には影響しない」と話した。

 刺激的な表現は知事になってからも物議を醸しているが、最近は政治的メッセージを伝える手法と認識されている。9月には、全国学力テストの公表に消極的な教育委員会に対し、ラジオの生放送で「くそ教育委員会」と言い放った。府議会で批判され、「二度と言わない」と答弁したが謝罪はしていない。

 一方、判決後、広島弁護士会館(広島市)で開かれた会見で原告側弁護団は、「品性にもとる行動だった。あれが許されればなんでも許される」などと橋下氏への憤りを口にした。弁護団団長の島方時夫弁護士は「橋下弁護士は、光市母子殺害事件弁護団に対して謝罪すべきだ」と話した。【石川隆宣】

 ◇表現の自由逸脱
 広島地裁判決について、作家の高村薫さんは「痛快な判決だ。『ともかく懲戒請求すればよい』という橋下氏の論法はむちゃくちゃで、その不当性を裁判所は明快に示してくれた」と評価。一方、情報の受け手側に対しては「私たちが少しでも法律の感覚を持っていれば、このような懲戒請求がおかしいことは分かる。来年5月から裁判員制度が始まるが、参加する市民の側に弁護士活動への最低限の理解がなければ、信頼できる制度にならない」と指摘した。

 田島泰彦・上智大文学部教授(メディア法)は「マスメディアは橋下弁護士に乗せられたことに、深刻な自己批判をしなければいけない。物事を冷静に伝え、正当な批判・検証をするのがメディアの役割。一方の意見に利用されることは絶対にあってはならない」と指摘。橋下氏の発言については「表現の自由の範囲を超えている。数にものをいわせ、魔女狩りのような状況を作り出した。弁護士を萎縮(いしゅく)させ、自由な議論を妨げることにつながる」と批判した。

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 ◇知事の主な発言
 「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ、07年5月27日放送)で

 「ぜひね、全国の人ね、あの弁護団に対してもし許せないって思うんだったら、一斉に弁護士会に対して懲戒請求かけてもらいたいんですよ」

 「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会に行って懲戒請求を立てれますんで、何万何十万っていう形であの21人の弁護士の懲戒請求を立ててもらいたい」

 「懲戒請求を1万、2万とか10万人とか、この番組見てる人が、一斉に弁護士会に行って懲戒請求かけてくださったらですね、弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかないですよ」

(出所:毎日新聞 2008年10月2日 東京夕刊)

橋下知事に200万円賠償命令 判決要旨

 山口県光市の母子殺害事件の弁護団への懲戒請求をめぐる訴訟で、大阪府知事でもある橋下徹弁護士に賠償を命じた2日の広島地裁判決の要旨は次の通り。

 【主文】

 被告は原告ら各自に対し200万円を支払え。

 【事実及び理由】

■第1 請求の趣旨

(略)

■第2 事案の概要

(略)

■第3 裁判所の判断

 ▽1 発言が名誉棄損に当たるか

 「一斉に弁護士会に懲戒請求かけてもらいたんですよ」「この番組見ている人が一斉に懲戒請求かけてくださったら、弁護士会も処分出さないわけにはいかないですよ」といった発言は、弁護団に属する弁護士に対する懲戒を大規模に行うよう呼びかけるものであることは否定する余地がない。

 光市事件の被告人の主張を弁護人が創作したという趣旨の発言については、刑事事件では被告人が主張を変更することはしばしばあり、本件でも弁護人が創作したものかどうかについては、弁護士であれば少なくとも速断を避けるべきだ。発言は原告らの名誉を棄損し、不法行為に当たる。

 原告らの弁護活動は懲戒に相当するものではなく、橋下弁護士がそのように信じた相当な理由もない。

 ▽2 発言がそれ以外の不法行為に当たるか

 弁護士懲戒制度は弁護士会の自主性や自律性を重んじ、弁護士会の弁護士に対する指導監督作用の一環として設けられた。しかし懲戒請求を受けた弁護士は根拠のない懲戒請求で名誉を不当に侵害される恐れがあり、弁明を余儀なくされる負担も負うことになる。

 そうすると、請求する者は請求を受ける者の利益が不当に侵害されないように、根拠を調査・検討すべき義務を負う。根拠を欠くことを知りながら請求したときには不法行為になる。また当該弁護士の所属弁護士会に請求すれば十分であって、公衆に対し請求するように呼びかける必要性は一般に想定できない。

 ことにマスメディアを通じて特定の弁護士への請求を呼び掛け、弁護士に不必要な負担を負わせることは、懲戒制度の趣旨に照らして相当性を欠き、不法行為に該当する。原告らは1人当たり600件を超える極めて多くの懲戒請求を申し立てられ、精神的、経済的な損害を受けたと認められるから、被告の発言は不法行為に当たる。

 橋下弁護士は、多数の請求がされた事実によって、原告らの行為が弁護士の品位を失うべき非行に当たると世間が考えていることが証明されたことになり、違法性はないと主張する。

 しかし弁護士は少数派の基本的人権を保護すべき使命ももっているのであり、その職責を全うすべき活動が、多数派の意向に沿わない場合がありうる。

 また刑事弁護人は被告人の基本的人権の擁護に努めなければならないのであって、その活動が違法なものでない限り、多数の者から批判されたことをもって弁護人の活動が制限されたり、懲戒されることはあってはならないことである。橋下弁護士の主張は弁護士の使命・職責を理解していない失当なものである。

 橋下弁護士の発言は懲戒事由として根拠を欠いており、かつ、そのことを橋下弁護士は知っていたと判断される。

 橋下弁護士が今回の発言で示した懲戒事由は、(1)弁護団が被告人の主張として虚偽内容を創作している(2)その内容は荒唐無稽(むけい)であり許されない-ということである。

 しかし創作したことを認められる証拠はなく、被告の憶測にすぎない。また被告人の主張が不合理で荒唐無稽だったとしても、弁護人が被告人の意向に沿った主張をする以上、それは弁護人としての使命・職責を果たしたと評価でき、弁護士としての品位を損なう非行とは到底言えない。

 橋下弁護士は、原告らが一般市民や被害者遺族に対し、差し戻し控訴審で新たな主張をするようになった経緯や理由を説明すべきだったと非難する。

 しかし、そもそも弁護人がそのような説明をしなければならない法律上の根拠は全くない。弁護人が訴訟手続きの場以外で事件について発言した場合、その結果を予測することは困難であり、被告人に不利益をもたらすこともある。

 現に弁護団は記者会見を開いたが、その主張はほぼすべての報道機関により誹謗(ひぼう)中傷の的とされた。橋下弁護士のいうような説明をしなかったことも、弁護人の使命・職責を果たすために必要だったと評価することもでき、懲戒事由に当たらない。

 ▽3 発言と損害との間に因果関係はあるか

 橋下弁護士の発言は全国で放送され、前日の平成19年5月26日まではゼロだった請求件数は、放送後20年1月21日ごろまでに原告1人当たり600件以上になった。

 またインターネット上には懲戒請求書の書式が掲載され、請求の多くはこれを利用していた。書式を掲載したホームページには発言を引用したり番組の動画を閲覧できるサイトへのリンクを付けて発言を紹介、請求を勧めるものがあった。

 これらのことからすると、多数の請求がされたのは橋下弁護士が視聴者に請求を勧めたことによると認定できる。橋下弁護士は請求は一般市民の自発的意思に基づくと主張するが、因果関係があるのは明らかだ。

 ▽4 発言で生じた損害の有無と程度

 原告らは請求に対応するため答弁書作成など事務負担を必要とし、それ以上に相当な精神的損害を受けた。もっとも橋下弁護士の呼び掛けに応じたとみられる請求の多くは内容が大同小異で、広島弁護士会も懲戒しないと決定した。経済的負担について原告の主張そのままは採用しがたい。

 弁護士として相応の知識・経験を有すべき橋下弁護士の行為でもたらされたことに照らすと、精神的、経済的損害を慰謝するには原告ら各自に対し200万円の支払いが相当だ。

(出所:10月2日21時45分配信 産経新聞)

弁護団懲戒請求の判決要旨 光市の母子殺害事件

 山口県光市の母子殺害事件の弁護団懲戒請求をめぐる訴訟で、橋下徹大阪府知事に賠償を命じた広島地裁の2日の判決の要旨は次の通り。

 【名誉棄損】

 被害者を生き返らせるためだったなどと弁護団が許されない主張をしているという被告の発言は、正確性を欠いているものの弁護団の主張と著しく乖離しない。弁護士が主張を組み立てたという発言は、刑事事件では被告人が主張を変更することはしばしばあり、本件でも原告らが選任される前の弁護人の方針により主張しなかったことも十分考えられる。創作したかどうか弁護士なら少なくとも速断を避けるべきだ。弁護士である被告が真実と信じた相当な理由があるとは認められず、発言は名誉を棄損し、不法行為に当たる。原告らの弁護活動は懲戒に相当するものではなく、そのように信じた相当な理由もない。

 【それ以外の不法行為】

 弁護士懲戒制度は弁護士会の弁護士に対する指導監督作用の一環として設けられた。だが根拠のない懲戒請求で名誉を侵害される恐れがあり、請求する者は請求を受ける者の利益が不当に侵害されないよう、根拠を調査、検討すべき義務を負う。根拠を欠くことを知りながら請求した場合、不法行為になる。

 マスメディアを通じて特定の弁護士への懲戒請求を呼び掛け、弁護士に不必要な負担を負わせることは、懲戒制度の趣旨に照らして相当性を欠き、不法行為に該当する。原告らは極めて多くの懲戒請求を申し立てられ、精神的、経済的な損害を受けたと認められ、被告の発言は不法行為に当たる。

 被告は、多数の懲戒請求がされた事実により、原告らの行為は非行に当たると世間が考えていることが証明されたと主張するが、弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る。

 また刑事弁護人の役割は刑事被告人の基本的人権の擁護であり、多数の人から批判されたことをもって懲戒されることはあり得ない。被告の主張は弁護士の使命を理解しない失当なものである。

 被告の発言は懲戒事由として根拠を欠き、そのことを被告は知っていたと判断される。被告が示した懲戒事由は「弁護団が被告人の主張として虚偽内容を創作している」「その内容は荒唐無稽(むけい)であり、許されない」ということであるが、創作と認める根拠はなく、被告の憶測にすぎない。また荒唐無稽だったとしても刑事被告人の意向に沿った主張をする以上、弁護士の品位を損なう非行とは到底言えない。

 被告は、原告らが差し戻し前に主張しなかったことを主張するようになった経緯や理由を、一般市民や被害者遺族に説明すべきだったと非難するが、訴訟手続きの場以外で事件について発言した結果を予測することは困難であり、説明しなかったことも最善の弁護活動の使命を果たすため必要だったといえ、懲戒に当たらない。

 【発言と損害の因果関係】

 発言は多数の懲戒請求を呼び掛けて全国放送され、前日までなかった請求の件数は、放送後から2008年1月21日ごろまでに原告1人当たり600件以上になった。

 またインターネットで紹介され、氏名や請求方法を教えるよう求める書き込みがあり、ネット上に請求書式が掲載され、請求の多くはこれを利用していた。掲載したホームページには発言を引用したり番組動画を閲覧できるサイトへのリンクを付けて発言を紹介、請求を勧めるものがあった。

 多数の請求がされたのは、発言で被告が視聴者に請求を勧めたことによると認定できる。被告は請求は一般市民の自由意思で発言と請求に因果関係はないと主張するが、因果関係は明らかだ。

 【損害の程度】

 原告らは請求に対応するため答弁書作成など事務負担を必要とし、相当な精神的損害を受けた。

 もっとも呼び掛けに応じたとみられる請求の多くは内容が大同小異で、広島弁護士会綱紀委員会である程度併合処理され、弁護士会は懲戒しないと決定した。経済的負担について原告の主張そのままは採用しがたい。

 弁護士として知識、経験を有すべき被告の行為でもたらされたことに照らすと、精神的、経済的損害を慰謝するには原告らそれぞれに対し200万円の支払いが相当だ。

(出所:2008/10/02 12:49 【共同通信】)
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