プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 星新一「ほしのはじまり」

2017年04月30日 | ◇読んだ本の感想。
新井素子編の星新一のショートショート集。けっこうな厚み。


しばらく前に最相葉月の「星新一 一〇〇一話をつくった人」を読んだ。
数十年ぶりに星新一を読み返してみようと思った所以。
多分、星新一の作品はほとんど読んでいると思う。兄が相当揃えてたから。

読んでみて、半分くらいは記憶にあったかな。
途中途中で新井素子のエッセイも入るんだけど、「作品が全然古びてない!星さんすごい!」と彼女が力説しているので、
ああ、ほんとだなあと思う。

50年前に書かれた作品。なかなか普通には読めませんよ。
ましてやなかなか流通はしませんよ。新井素子が言ってたことだが、
物故作家の作品が本屋で数多く置いてある状況というのは本当に珍しい。
うーん、そうなんだなあ。夏目漱石、芥川龍之介までいっちゃえばまた別の話、
没後20年というのはかなり中途半端ですよ。

それでも、まだ新しい読者が生まれているそうですからね。
まあわたしは実態は知らないけど、現代の中学生くらいで星新一を読み始めるということもあるらしい。
そういう層がないと、当然本屋でもおかないわけで……そうですね、すごい人だったんですね。

今となってみれば当たり前で、当たり前な分読み飛ばしてしまう予言的な内容も多数。
書いてる当時はインターネットの萌芽さえない状態(だそうだ)なのに、作品の中では現代のインターネット的
状況が普通に描かれている。
そういう部分の指摘を新井素子がしてくれているのは、わたしはありがたかった。


新井素子がこの本を編んだことは、わたしは肯定的に見た。
作家としての彼女を産んだのは彼。その経緯を、一応わたしはほぼ同時代に見てたから、
公私ともに付き合いが深かったのも(文章上で)知ってるから、ほほえましく見た。

でも星新一より少し年下の世代の読者で、SF読みってほどじゃない層はこの構成、納得は出来ないかもね。
新井素子の名前も知らなければ、当然関係性も知らないわけで、まあ言っちゃ悪いがどこの馬の骨かわからないのが、
星新一のアンソロジーを編んで、あまつさえエッセイもさしはさむ。
納得できないという人もいるだろう。

いや、でも星新一は喜んでいると思いますよ。
他の誰に編まれるよりも嬉しかったかもしれない。
そう思ってカンベンして下さい。彼女もエッセイで経緯を書いているけど、
ある意味秘蔵っ子だったのは間違いないですから。


ただわたしの新井素子に対する不満は。
なぜアンソロジーに「月の光」を入れてくれなかったのかということ。
まあたしかに今の時代、わざわざ幼女監禁のストーリーを入れるのは地雷かもしれないけどね。
でも一番好きな話なんだ。
全然ロマンチックな要素のなかった星新一の一連の作品で、ほんのわずかロマンがあったとしたらあの作品。



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