奥山のおとなのクマも人里へ 06年度大量出没の長野
2007年05月07日06時15分
昨年はツキノワグマの人里出没が記録に残る限り最も多い年だったが、全国トップの長野県では例年と違い、奥山にすむ成熟したクマが目立って多かったことが、研究者らのまとめで分かった。奥山で深刻なエサ不足があったためとみられ、状況は他県とも共通する可能性が大きい。
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信州ツキノワグマ研究会(林秀剛代表)での報告によると、06年度の全国の捕獲は北海道のヒグマを含め5185頭。最多の長野県は前年度の6倍近く、過去最多の704頭に達した。人身事故も長野は死者2人、負傷16人と過去最悪だった。
クマは7歳以上が成獣とされる。試料が送られてきたクマについて年齢を調べている同県環境保全研究所によると、昨年度の420頭では7、8歳以上が目立 ち(平均6.1歳)、2~5歳が多かった01~05年度分(計168頭、平均4.4歳)とは大きく違った。成熟したクマは奥山のエサ場を占拠しており、例 年は人里に出てくることは少なかった。
北アルプスのクマに電波発信機をつけて生態を追っている信州大農学部の泉山茂之准教授(動物生態学)によると、06年は追跡した28頭 のうち12頭が駆除された。標高1000メートル以上の奥山で暮らしていたクマまで里に下りたからだ。7年間追跡したメス(7歳)も、奥山圏から5キロ近 く下りた人里で捕まり、一度は奥山に放されたが、里に舞い戻って駆除された。
環境保全研の岸元良輔主任研究員は「奥山の自然の食料しか食べなかったクマが、里に出て捕殺された」とみる。例年あまり食べないオニグ
ルミの実さえむさぼるなど深刻なエサ不足が行動を狂わせたという。泉山さんも「クマを支えてきた奥山の異変だけに心配だ。春先の低温の影響が大きかったの
ではないか。今年も4月は低温だった」と指摘している。
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