■地元商店街、事業主体の堅いガードに不満
地上デジタル放送用として東京都墨田区に建設予定の新東京タワーをめぐり、地元と事業主体の東武鉄道グループに「温度差」が出ている。「情報を早く共有 し、一緒に街づくりを」とする地元に対し、東武鉄道は「確固たる情報しか出せない」との姿勢を崩さない。街の活性化という思いは同じだが、微妙な差が葛藤 (かっとう)を生んでいる。(西山典男)
「プラン発表の前に要望を聞いてくれず、内容を教えてもくれなかった。地元置き去りだ」
不満を漏らすのは、地元の押上・業平橋地区にほど近く、浅草を擁する東京都台東区商店街連合会の石山和幸会長だ。
プランとは、東武鉄道グループが設立した子会社「新東京タワー株式会社」が今夏に発表したプランのこと。
タワーの地上付近にはレストランやオフィス、商業施設などが入居するエリアを建設。遊休地だった建設予定地は「タワーのある街」へと変貌(へんぼう)を遂げる予定だ。
「わが社が、この地(墨田区押上)に移って100年。愛着のあるこの地域を活性化させたい」と同社計画本部の今村義人課長がいうように、総事業費500億円、高さ約610メートルの新タワーは、東京・下町の活性化の起爆剤となるはずだった。
「タワーへのお客さんは、浅草、両国などの下町へと足を向けてもらいたい」と期待する。
気持ちは、地元も同じ。建設予定地の押上付近は「都心へのアクセスがよくなり、人が素通りするようになった。人通りは20、30年前の4分の1か5分の1」(押上地区の商店主)。
下町に一気に客足を運んでくる新タワーに地元商店街の期待は大きく、誘致にいち早く動いた。
しかし、地元には東武鉄道側のプラン進行に自分たちの意見が反映されていないという思いが強い。
これに対し、同社は「不確定な情報を出して、混乱させるわけにはいかない。企業として発言に責任を持ちたい」(今村課長)という。
打開策として現在、同社や行政、地元関係者らが参加する「新タワー建設推進協議会」が発足。話し合いの場を設けた。
石山会長は「認識の差が埋まるといい」と期待を寄せている。
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【用語解説】新東京タワー
都心のビル高層化に伴い、電波障害を防ぐために建設される地上デジタル放送用の電波塔。民放など在京放送事業者6社の要請に応じる形で、東武鉄道グルー プの子会社「新東京タワー株式会社」が事業主体となり、来夏に建設開始、平成23年完成予定。一方、東京タワー(約333メートル)を運営する日本電波塔 株式会社(東京都港区)が、アンテナを80~100メートル高くして地上デジタル化に対応すると表明。放送事業者の今後の対応にも注目が集まる。
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