DRAPE~ドレープブログ~

Pen and message.のちょこっと情報ブログです

直して使う筆記具

2015年04月20日 | 商品について
モノがたくさん溢れる時代に、同じものを直しながら長く使うということの難しさを感じることが多くなりました。

家電製品は確実に「修理代より買った方が安いですよ」と言われてしまう。
2年前に買ったばかりのプリンター、色が出なくなって買ったお店に電話をしたら、「持って来て下さい」と言われた。
必死の思いで担いで修理カウンターに持ち込むと、店員さんが「色が出なくなったということは、一律15,000円の修理代が掛かるんです」と言う。
ん??それ、電話で分かるんじゃ・・・。重かったのに・・。
後継機種の方が安いですよ、と言われて切なかった。

修理に関して、ああ、修理に出して良かったという思いは筆記具以外でしたことがない。

最近、修理に出していた筆記具が戻って来ました。



「ビスコンティ リナシメント ビエナ」のローラーボールペン。私はどうしてこの時万年筆を買わずにローラーボールを買ったのか、今でも後悔しています。
それはさておき、このローラーボールのすごいところは、銀無垢の軸に手彫りが施され、キャップをした時のバランスがまさしく黄金比であるということ。普通のペンに比べると、キャップが短めです。もうね、美術品です。

ところがこのペンには明らかな弱点がありました。

もしかして、分かるかも知れませんが・・・・落としたら一巻の終わりなんです。はい、同軸を残して上下の樹脂部分に全ての負荷が集まり・・・割れます。
3分割ですよ、ペンが。
心も3つくらいに砕けます。

このペンを買ってから仕事中に一度落とし、泣きそうになっている私に当時の上司がカトウセイサクショのボールペンをくれました。
砕けた心は戻りませんでしたが、少し癒されたのを覚えています。
それから怖くなったのと、万年筆を使っていたので出番がなかったのとで、10年くらいは持ったままになっていました。
時折取り出してはその彫刻の美しさを愛でるくらいで。

でも、先日これじゃあ可哀想だなと思いなおし、お店の発注を書いていました。
しばらく機嫌よく使っていたのに、またもやあの悪夢が。

・・・カシャン!!

え!と思い振り返ると、2分割に飛び散ったペンが・・・。今度は2つに割れたのです。
蘇るあの悪夢。やっぱりこんなの、慣れません。
見た目にも少し傾いた様子の私に、少し遠くから眺めていた店主が「・・・また、割れたな」と。
当時の事も知っているので、2人して静かになりました。

黙って拾い集め、「寿命かな」とめいっぱい強がってみた。「ではないよね」と少し重ねたくらいの調子で店主。

それが去年のあれは・・・夏。

輸入代理店が変更になったこともあり、時間だけがいたずらに過ぎ、「もう修理できないよ、これで勘弁ね」とかって安めの万年筆とかになるんじゃないかと思っていましたが、ついに!・・・7か月後に修理が完了したのです。




全くの新品同様になって、「は~~い、おまたせ」くらいの感じでゆったりと戻ってきました。
本当にきれいになって・・・(涙)


10年以上が経っているのに修理ができたことにも感動しましたが、名入れしたキャップが変わっていないのに樹脂部分も新品の輝きなことにも感動。

これからは、デスクから離れず、ファックス用として活躍していただくことに。

修理したり、ペン先を調整したり、替え芯を取り換えたりして長く使うことができる筆記具というのはすごいなあと思いました。
使えなかったら新たな持ち主に出会えるよう、委託販売にも出したりできます。
消費していく社会の中でも、大切にしたい感覚ですね。


*当店でも修理を承っています。ペン先調整はその場で調整し、部品交換などが必要なものはそれぞれメーカーに送ります。
ただ日数が掛かり、1か月~6ヶ月(本国修理などの場合)が目安です。
ご自宅の眠ったままになっているペン、もう一度蘇るかも知れませんよ。



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2 コメント

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ハロー、アゲイン (ださわ)
2015-04-23 22:29:36
このお話で最もいいなと思ったのは、ちゃんと直したヴィスコンティの姿勢です。待っている人のことを考えながら、おーしっ!ちゃんと直したるけん!とねじり鉢巻きで職人のおっちゃんが一生懸命直す(想像です)。長い時間がかかったけれど綺麗になって帰ってきた1本のペンは、どこにもない唯一のペンですね。
 最近のいろんなモノは、修理を前提にしていないようで、従って購入する側も修理することなんて頭になくて、そんなサイクルが繰り返されているうちに、「直すより買い直した方が安い」ってことになります。
 馬場俊英の「吊り橋」という曲に使い古した自転車を捨てるというような歌詞があったようにおもいますが、この曲は聞いてドキッとした記憶があります。そういえばウチのオヤジは1台の自転車を何回も何回も修理して乗ってたっけ。
 私が阪神淡路大震災の3日前に求めた大橋堂の万年筆は、落下事故により天冠が欠け、仙台に送って天冠をつけ直してもらった後、更なる落下事故でペン先が曲がったのを貴店の店主様に直していただきました。この1本は私にとってどこにもない唯一のペンなのです。
 直して使う、いいですよね。こんどそのビスコンティに会わせてくださいな。
会って下さい~! (スタッフK)
2015-04-24 14:43:43
ださわさま

何でもそうかもしれませんが、壊れた時に「直すかどうか」でまず第一関門ですよね。
お金を出しても直したいかどうか。自分とモノが向かい合う時です。
そこで「直したい」と思えるモノなら直した後もきっと大切に使う気がします。

このビスコンティもしばらく離れてみてやっぱり好きだったことがよく分かったので(万年筆ならより良かったのですが)、大切にしようと思います。

一瞬、新品が帰って来た?と思うほどピッカピカで、私の様子を修理してくれたイタリアのおっちゃんが見たら「よしよし」と思うことでしょう!
ありがとうおっちゃん!!

修理をした万年筆の方が思いが強くなる・・のかも知れませんね。

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