ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

大黒屋光太夫

2007-03-20 05:15:58 | 読書
吉村昭著『大黒屋光太夫』を読んだ。

三重県の白子浦から江戸に向けて乗組員17名の神昌丸が出帆したのが1782年12月13日、風向き・日和を窺うために鳥羽浦へ向かうが、ほとんどの船は日和が良いというので出港していた。

光太夫たちもすぐ後を追うように出港したが、夕刻には雲がたち込め、夜には雨が降り出し時化になった。

大きな波に揉まれた神昌丸は、真っ先に舵を破壊され、海の怒りを鎮めるため全員髷を切り、荷を捨て、最後には帆柱を切るが時化は収まらない。

当時出港した船は全て難破したが、光太夫たちは潮の流れに身を任せるしかない浮遊物と化した船に揺られ、北へ北へと流されていった。

積荷の米は献上米だったので捨てずにおいたのが、食糧を確保できた要因だった。

          

7月に入って水主が一人亡くなる。

その後、島を見つけるのだが、それはカムチャッカとアラスカの間のベーリング海に浮かぶアムチトカという島だった。

たまたまロシアから原住民に獣の皮を獲らせていた一行に出会い、ロシアに赴くことになったが、本国からの迎えの船が破船し、船を作らなければ帰れない状態になり新たに船を造り、カムチャッカ半島に向かう。島ではすでに7人の水主が亡くなっいた。

カムチャッカでは厳寒のため3人の水主が死んだが、ロシア人のキリロという人に出会う。このキリロが光太夫たちを励ましロシア皇帝に引き合わせ光太夫たちを日本に帰国させる。

カムチャッカ半島を横切り、チギリという地からオホーツクに船で向かい、ヤクーツクという街に滞在するようになるが、水主の1人が凍傷で足を切断しなければならないハメになってしまう。

ここから皇帝に対して、日本に帰らせてもらえるよう2度も願書を出すのだが、ロシア政府の意向はロシアに滞在して、日本語を教えよというものであった。
それを拒否すると、政府からは生活するための援助を打ち切られ、光太夫はじめ生存者達は皆絶望感に襲われる。

そのうちに又1人の仲間が亡くなり、仏教徒の水主たちは埋葬してもらえず、屍を野ざらしにされてしまい、宗旨替えをしてしまう者が2人出た。

しかしキリロは励まし続け、皇帝の元に直訴に出かけようと光太夫を誘ったのだった。
ロシアの東方ヤクーツクから西方の都ペテルブルグを目指し旅をする2人。
勿論、キリロの自費であった。

避暑に出かけている皇帝を追いかけて、ツワルスコエ・セロに向かい、そこでようやく女帝エカテリナに拝謁することが出来た。当時の日本の民衆にとって皇帝=天皇あるいは将軍に直訴するなどと言うことは、死を覚悟してのことだったが、ロシアでは寛大であった。

やがて日本に帰れる措置が執られるが、宗旨替えをした2人は無論帰れない。
そこに光太夫たちのやるせなさが漂う。
船出を前に一緒に帰りたい思いを募らせる2人、どうしようも出来ない光太夫たち3人・・・

蝦夷の地に到着して、日本に帰れた実感を喜ぶうちに、また1人が亡くなってしまい、江戸に帰れたのは出帆時17人いた者のうちたったの2人であり、出帆時32歳だった光太夫は44歳になっており、12年に及ぶ放浪であった。


今からおよそ220~210年前のことになりますが、読んでいて当時の人々の様子はとてもスローなのです。こうもゆっくり事が構えられたんですね。
まぁ、急ぐことも無かったのだろうし、急ぎたくても速くするものが無かったんですものね。

吉村昭を読んだのは初めてですが、文章が淡々としており、脚に色が付いていないので、沢山の仲間が死んだり、ロシアの皇帝に拝謁したりしているのに、何故か感動がないのです。涙無しには読めないようなものを書いて欲しいなぁ。




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2 コメント

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読んだ気分 (ちのと)
2007-03-20 12:59:14
私なら絶対買わない(いや、もう少ししたら読んでみたいと思うかもしれない)本の紹介をありがとうございます。

「『大黒屋光太夫』ってあれやん、ロシアに漂流して向こうで 偉い人にあったりしたけど仲間が死んでいく話やン。光太夫は帰り着いたっけ?西田敏行かナンカの映画・・やろ?ほら『おろしや国粋夢譚』という」ぼんくらさんのブログを読みながら、テレビで放送していたのを見た記憶があったもんで・・・。

でも作者が違ってました。井上靖原作でした。同じ人物を書いてるってことでしょ、読み比べてみたら?

私?だからまだ読みたい気分になりませんのよ。映画は脚色もあるから見られたけど・・・でも、物忘れの多い私が10年以上前の映画と題名を覚えているんだから、縁があるのかも・・
「おろしや」の『お』はなんだろ。御か?なにもそこまで へりくだらなくてもなんて当時思いました。
何故なのか判らないけど (ぼんくら)
2007-03-21 07:15:36

井上靖の小説は読もうという意欲が湧かないのです。

司馬遼や松本清張以前の作家は、どうも苦手です。
表現が難しいと思っているのかも知れません。

『おろしや国粋夢譚』という本は知ってましたが、光太夫のことを書いてあるとは知りませんでした。

10年も前にドラマ化されてたんですか?10年前といえば、私も相当に仕事が忙しかった頃で、TVなんか休みの日ぐらいしか見ることもなかったのです。
今は会社のお蔭でチャランポランな仕事をして、5時半になったらキッチリ帰ってますけどね。

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